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11.カントリーロードこの未知、ずっと、行けば、最悪ムショだ

誠意って金の顔してるんだぜ? 知らなかったか?

byシガレット

「国盗りってマジでやるのか?」

「そふぉあもふぃろんでふお」

 口いっぱいに食べ物を詰め込んだグルーパーが訳も分からないことを言う。

「と言ってもどうすんだ、俺たちは金なしコネ無しのノマドもいいところだ」

 シガレットが昼間からウイスキーをキメながら正論をぶつける。

「そうだな、もうちょっと取引できる品目があればなぁ、せめて薬草が集まればそれなりになるんだがな」

「今コボルトたちに仕事させていますが取引までには時間が必要です」

「バレット、調査書をくれ」

「ほらよ」

 バレットは紙に書かれた調査書をグルーパーに渡す。

「たしか、ええと、あったあった、明日辺り第一王女のパレードがあるんですよ、そこで一芝居打つってのはどうでしょう?」

「一芝居?」

「ええ、ピンチのところを助太刀って感じで、ばれたらブタ箱行きは確実ですけどね」

「小説みたいだな」

「ええ、こういうのは雰囲気が重要ですからね。それに――」

 

 グルーパーは不敵に笑い、グラスのウイスキーを流し込む。

「おいそれ、俺のグラスなんだが?」

 シガレットがため息交じりに指摘する

「……それに――」

「おい、テメエ話逸らしやがった」

「ごめんて! 口付けてない俺のやるから」

「寄越せ、まったく……続けろ」

「もうすぐ王位決定だそうなんですよ」

「……なっおま!」

「この国には、第一王女ヨヨ、第一王子リオン、第二王女ヨルハラの三人」

「おう、一人死んだほうがよさそうなやつがおるな」

「メロカルさん落ち着いて下さい、サラマンダーよりずっと遅いですから、しかもこの人が人間性的にもマトモな方ですから、なので第一王女の命を狙いましょう」

「お、暗殺か?」

「モラセス正解」

「やったぜ」

「というかこんな飲食店の真っ昼間に話して良いことなのか?」

「大丈夫っすよ、傍から見ても俺たちは酒飲んで与太話に華を咲かせているアホ面共ですので」

「そんなもんか」

「というか、酒場で酒飲んでるやつらの言葉を真に受ける馬鹿がいるかって話ですよ、信じてもらえないなら本当のこというでしょ?」

「お前のそういうところほんと尊敬するわ、死んどけ?」

「そんな褒めなくても、モラセスが生け贄を用意しているので明日まで地理を把握しておいてくださいね」

「おう、頼まれていたからな、ゴロツキを薬漬にしておいた」

「クズゥ!」

「どうせ殺す命、有効活用っすわ」

 モラセスは笑いながらコーラを飲む。

「ところでサニーの件はどうすんだよ」

 ハードロックは呆れながら言う。

「かれこれ半年この国を調査しているがどこにもそんな情報がない。となると王家とかの地位が高い身分だけが知り得る特別なものっていう線か?」

 シガレットはウイスキーをチビチビと含みながら言う。

「ご明察!」

「なるほどな、意外に考えてるな」

「まぁ、打算ではあまり動きたくないですし、あのクソったれゴミカスに一泡吹かせてやりたい気持ちもあるので九割九分九厘」

「ほぼ私怨じゃねえか」

「そうだな……どのみちだが、この国はダメだ」

「なんかあるのか?」

「そもそも鎖国は」

 グルーパーは適当に話を切り出した瞬間、テーブルの上にある肉を口に運ぶ。

「なんでそこで食ったんだ?」

「そもそも鎖国は……なんだっけ?」

「おまえ脳みそ梅干しと交換したのか?」

「メロカルさん、クコの実くらいですよ。梅に失礼」

「クコの実……? なんだそれモラセス?」

「杏仁豆腐の上にある赤いあれです」

「あー、あの高級中華とかにあるやつか、行ったことねえけど」

「縮んでんじゃねえか!」

「ハードロック、グルーパーは食欲と好奇心しかない男だ。脳みそがクコの実でも生きていける」

「全くもってその通りだから何も言えない。肉うめえ」

「いや、話を続けろよ鎖国から」

「問題点は大きく分けて二つ、鎖国と奴隷人口ですね。バレット解説お願い、ヴォトカ、真面目な話するからロボと遊んでるな」

「お、おう?」

「じゃあ説明しますね。獣人の奴隷人口は現在、増えていく一方なのですが、人間の方は減少の一途を辿っています。起因は税金と過疎化ですね」

「どういうこと」

「あー、鎖国したことで経済が縮小、商売が出来なくなるため家計に火がつく前にこの国から撤退、残った人間はこの国でしか商売が出来ないもしくは税を徴収する側、金が無い以上は子供を作って増やすということは経済的に厳しい」

「獣人が増えているのは?」

 シガレットが眉間に皺を寄せながら聞く。

「鎖国で国外から出れなくて、人間たちから逃れたのが集落を形成、それが人間に発覚、連れ戻される。これを繰り返した結果だね」

「それだけじゃ、増える理由として妥当性が弱い」

「第一王女ヨヨが獣人に人権を与えようとしている。彼女が管轄している区域は特定自治区として獣人が生活できている。それがここ数年の話、これが起爆剤かな」

「なるほどな」

「まぁ、あとの情報は王家にお近づきになれてからで良いだろう。明日が楽しみだな」

「自作自演か……」

「ハードロック、これはゲーム、現実じゃ無い」

「いやそうだけど、なんか思うところはある」

「……その気持ちは大切にしな、今回は――死んだ奴らの仇討ちとでも思えばいい」

「そうだな」

 それからグルーパーはステーキ二枚とウイスキーをボトルで一本、ビールを五杯飲んで泥酔したところを他のメンバーに介護されながら宿にたどり着いた。


空はあんなに蒼井そら

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