プロローグ
まぁ、なんか、面白そうだったし、誘ってやってみようかなと
by メロカル
「もうゲーム内時間は一年になるのか」
グルーパーは紙巻き煙草を咥えながら、自家製ウイスキーを煽る。水桶に沈め砥石を取り出して、ボロボロになったナイフを研ぐ。
「まだプレイし始めてリアルじゃ二週間も行かねえからな」
部屋の反対向きでシガレットも同様にリボルバー拳銃のシリンダーに潤滑油を差していた。
「脳機能補助装置、最初はどうなるかと思ったけど、案外何とかなるもんだな」
「俺も最初抵抗があったな、でもまぁ補助のおかげで体感時間が長くなる。しかもリアルじゃ睡眠しているのと大きく変わらないときた。寝ながらゲームできるなんて夢みたいなもんだろ?」
「シガレットの言うとおりだな、転職してから中々時間も取れないしこういうのはありがたい。それに大学時代の仲間と会えるんだ。これ以上何もないさ、ただまぁ、初期地点は……うん」
「全くだ、おかげこんな森の中で男七人サバイバル生活だ。ファンタジーとは一体? みたいなもんさ」
「悪かったって言ってただろ」
「まぁ、これはこれで楽しいがな」
シガレットは咥え煙草の伸びた灰を灰皿に落とすと、リボルバー拳銃の部品をひとつひとつ組み合わせていく。
「こっちは大まかな錆落としと整形が終わり、そっちに任せるよ」
「そこまでやってくれりゃ上出来、そういや他のメンバーは?」
「バレットがばっくれたバイトの穴埋めで遅刻、他も残業」
「リアルじゃ、師走だもんな忙しいな」
「かき入れ時だしな、俺は年中忙しいよ」
「違いない、撃つぞ」
シガレットはリボルバーの撃鉄を起こし引き金に指を掛ける。
バンッ、という音が部屋に響き渡る。
「実弾?」
「空砲、大丈夫そうだな」
「例の錆だらけのリボルバーか?」
「ああ、幸い錆が噛んでいるだけみたいだったからな、何とかなった」
「弾の方は?」
「バレットが一式を鋳造してくれる、モラセスが火薬とプライマリを調合済み」
「あとは作成だけか」
「それはヴォトカに頼んでコボルトたちに作成させてる」
グルーパーのちょっとした危惧に対してシガレットは段取りよく準備を進めていた。
「さてレストア作業も一段落ってところか」
「試射したいが、どうだ?」
グルーパーはにっこりと笑い、煙草を灰皿に押しつけた。砥石を再び水桶に戻すと、バックパックを背負う。
薄暗い工房から外に出ると、辺り一面に森が広がっていた。
ここは『白い森』と呼ばれている。
MMORPG『ファンタジー・ソサエティ・シミュレーション』通称FSSは今日も大勢のプレイヤーで賑わっているらしい。
そんな中で、グルーパーたちはひっそりと、森で小さな冒険を積み重ねていた。
社会に疲れたアラサーの男たちがひっそりと駄弁りながら面白おかしく、そこで生活していた。
FOOOOOOO!!!!!!
楽しくいこうぜええええ!!!!
すみません、あらすじとプロローグを間違えました(修正済み)