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最強魔女と狼娘  作者: 双碧
第一章
9/26

英雄イズク

「広いから迷っちゃって、もしかしたら置いてかれたかもと思ってね。こんな場所にいるとは思わなかったけど」


 いまだに肩で息をしているイズクは庭園のベンチに腰を掛けてそう言う。


「そんなことしないですよ。とにかくお疲れ様です。飲み物いりますか?」

「ん、ありがと」


 私が水筒を手渡すと、イズクはものすごい勢いで喉に水を流し込んでいく。


「はぁ~生き返る……冬なのにこんな所で汗かくことになるとは思わなかったよ。で、アズリエナは置いていかないかもしれないけど、シア、だったっけ?貴女は普通にあたしのこと置いていくでしょ。あたしに全く興味ないし」

「状況次第かしら」

「ほら、そういう感じだしさ」


 シアが近くの手すりから遠くを眺めたまま、イズクに返答し、イズクは少し拗ねたように私に振ってくる。


「んで、思ったんだけど、シアって英雄の一人だったりする?だったら色々と納得なんだけど」

「んーーー…………」


 私はどう答えていいか悩んでしまう。

 英雄というと強力な戦闘能力を持つ人間だったり、優れた采配能力をもつ人間を指すことが多いから、そういう意味では確かに英雄には振り分けられそうなんだけど。


 そもそも魔女だし……


 かといってここで英雄ではないと言うとそれはそれで追及されそうだし。

 逆に英雄と言うのもそれは後々問題になりそう。

 困ってシアの方を見ると、イズクはあっけらかんに笑い。


「ま、自分で英雄だ、なんて言う英雄はいないよね。全員が全員称号持ちでもないし」


 そういいながら服の袂から一枚の紙を取り出す。


「すっかり忘れてたんだけど、目的地までの地図貰ってたんだ。でもあたし実は地図読めないから意味ないんだけど……どっちか読める?」


 イズクの広げる地図を脇からのぞき込むと街を含めた周辺の詳しい地形まで書いてあるのが窺える。

 と、ふと目に入るのは大きく赤いバツ印が街の北側についていること。


「いやー、バツ印が到達地点なのは分かるんだけど、今どこかさえ分からないからね」


 そう呟くイズクを見ながらシアの服の袖を引っ張る。

 それに応じてシアは軽くこっちを向き。


「あの、あの場所って」

「うん、私たちの目的の場所と同じだね」


 地図をちらりとも見ずにシアはそう答える。


「えっと、もしかしてこうなるって分かってたり、しました?」

「うん」

「その、面倒だから避けようとした、とか……?」

「一番の理由は違うけど、ま、それもあるよね。彼女、トラブルメーカーだもの。それに精霊に嫌われてるなんてよっぽどよ」

「そこまで、なんですか?」


 確かに勘違いしやすくて、おっちょこちょいっぽくって自分の考えを疑わないし、人の話をしっかり聞いてなかったりするけど……って、あれ?結構問題が多いかも?

 それに確かに精霊がイズクの周りを避けてるような動きをしていなくもないような……。

 当のイズクは見られているのに気づいて首を傾げているけど。


「ま、この後どうするかはアズが決めるといいよ。どちらでもどんな形でも対応できるから」


 例によってそう言うシアに少し苦笑いして。


「あの、もしよければですけど案内しましょうか?」

「え、いやいや、その提案は助かるけど、危険だよ?あ、もしかしてあなた達もそういう口なの?なら最初からそう言ってくれればよかったのに」


 何をどう勘違いしたのかわからないけれど、イズクはそう言うとパッとベンチから立ち上がって。


「それじゃあ改めて。あたしはイズク。『迷い手』『自在の二刀』のイズク。イルジオネ国公認の英雄なのさ」


 イルジオネ国とは今私たちがいる土地や、住んでいる森も範囲としたそこそこ大きな国で、そこの公認の英雄となればかなりの成果を出していないとなれないもの、と聞いたことはある。

 普通だったらこれで委縮したり、驚いたりするんだろうけど。


 なんだろう。


 空になった水筒を片手にポーズを決められても、しまらない。

 そんな微妙な気分になっていることを知ってか知らずか。


「と、それじゃあよろしくお願いね。あとこれありがとう」


 そのまま水筒を私に手渡してくるイズクだった。




「それでどうするの?遺跡出たのはいいけど」

「街の北の川を越えなきゃいけないからそっちに向かうのよ」


 遺跡から街道を歩きながら話をしている。

 出るときにイズクに対してもう来ないでほしそうな視線が向いているのを感じたのは気のせいじゃないだろうけど、それはさておき。


「もう日が傾き始めていますけど……」


 ざっと傾き親指四つ分というところだろうか、あと三時間もすれば辺りは暗くなってるだろう。

 心配する私にシアは、問題なさそうに答える。


「川までならそんなに時間かからないはずよ。宿泊施設も確かあの辺りにはあったはずだしね」

「そうなんだ???」


 イズクは地形が頭に入っていないからか、大量の疑問符を浮かべているようだった。


「とはいえ、着くころには確かに真っ暗かもね。灯り、持ってたりするかしら」

「そりゃあ長期の移動だもの、持ってないわけないじゃない」


 シアの言葉に突っかかるようにイズクはバッグからカンテラを取り出す。

 シアは軽くうなずき。


「それじゃあそのまま街には寄らずに一気に進みましょうか。特に必要なものもないしね」

「……えっと、そういう割にそんな服装とか持ち物で大丈夫なの?」


 イズクの言わんとしていることはよく分かる。

 足取り軽くステップを踏むように歩くシアはどう見てもこれから危険な場所に繰り出す人の様子ではない。

 大体ロングスカートで袖が手の中ほどまであるくらいの白のワンピースにところどころ装飾がついていて、傍目から見れば中流階級以上のお嬢さん、とかそういった類に見えるだろうし。

 それを言ったら私も似たような格好ではあるけれど……


「大丈夫、こう見えてもそういう必要なものはちゃんと持ち歩いてるから。ね?」

「え、あ、そうです、ね」


 急にシアから同意を求められ、内容の把握に時間がかかって困惑しながら返事をしてしまう。

 物が必要ならいつでも取り出せるシアだからこその技ともいえるけど。

 イズクが不思議そうに、ふーん、という。


「ま、どういう武器とか防具とかって人それぞれだもんね。それにシアに関しては心配なさそうだし、うん。あ、あとで軽く手合わせしてみない?やっぱり少し気になるというか、第六感が当たってるかどうかっていうの」

「あんまりやりたくはないんだけど」

「だって、力が分からず連れてって大けが、とかなったらあたしの責任になるじゃない。一応英雄だから、無謀な一般人を止めるのも役割として担ってるし」

「……わかったわ」


 強い語気で話すイズクに折れる形でシアが頷く。


「……いいんですか?」

「ええ」


 私は少し心配になりシアの顔色を窺う。

 まったく気にした様子がなさそうで、安心したが。


「あ、アズリエナも当然実力確認するからね~」

「えっ」

「頑張ってね」


 宿に着くまで終始にこやかにするシアに反し私としては内心冷や汗が止まらなかった。




「それじゃ、準備はいい?」


 宿付近の河川敷まで私たちは出て、準備をしていた。

 イズクがしょっちゅう迷子になりかけること以外は特に何も起きず到着できたことは純粋に驚いている。


 とはいえ時間はかかってしまい月もそこそこ上っている。

 それ故に周囲は暗く、普通の人間だったら自分の身長と同じくらい離れたらよく見えなくなるだろう。

 私は夜目が利くから、全く問題なく見えるけど、イズクは大丈夫なんだろうか。

 自分の両手剣をシアから受け取り軽く素振りをしながらそんなことを考える。


「あたしは空気で動き読めるから大丈夫だけど、アズリエナは大丈夫?なんなら朝でもいいんだよ?」


 どうやら心配は無用だったみたい。

 となると。

 私の心の問題の方が大きいかな。

 素振りでごまかしているものの、少し緊張してしまい足が震えている。


「だ、大丈夫です。それに暗い中で戦えなければダメな場合もありますよね?」

「ま、そうだね」


 イズクは二本のうち一本だけ細身の剣――確か刀とか言ったか――を抜いて構える。


「アズ、何ならウォーミングアップとして私が後衛でサポートしようか?」

「あ、それがいいね。震えてるみたいだしまずは慣らしが必要かな」


 シアの私への提案に乗っかるイズク。

 それと同時にシアが私の後方に移動していく。


「じゃあ私は投げナイフだけ使って援護するから。好きに戦っていいよ」


 シアは私にだけ聞こえる声でそう言うと、袖からナイフを数本手に持つ。


「ほうっ………」


 私は緊張をほぐすために大きく一息吐き出し、剣の柄を握りなおす。


「お願いします!」

「よしっ!」


 私の一声と同時にイズクが瞬時に距離を詰めてくる。

 開始直後すぐに突っ込んでくるとは思わず、一瞬硬直する私。

 間髪入れず視界の端からナイフが数本通り過ぎる。


「うわっと」


 イズクは慌てて足を止め刀の柄、刃の側面で流すようにそれぞれのナイフを弾き飛ばす。


「アズ、しっかり!」


 シアの声を受けて我に返り、足を止めているイズクにそのまま下段から切りかかる。

 それを受けてイズクは大きく一歩下がり。


「いいね!その姿勢!」


 イズクは背に回り込むように足を捌き。

 私はさせまいと一歩下がりながら振り切った大剣を構えなおそうとし。

 再び炸裂する金属音。


「って、あぶな!」


 再びイズクがナイフを受け止めて足を止める。

 今度は刺すように肉薄するとイズクは半身になりすれすれで回避し、刀を私に振ろうとした。


「ちょっ、単なる投げナイフなのになんで一本一本こんなに重いの!?後ろ側にはじくだけで精一杯なんだけど!」


 ようにみえたが、飛んできていたナイフを捌くために大きく後ろに飛びながら刀でナイフを流す。

 イズクは発言のわりに余裕そうに笑って刀を構えなおす。


「それぐらいにしないと貴女止まらないでしょ?」

「そうだけど、息合いすぎでしょ!アズリエナの攻撃だってしっかり訓練されてるみたいだし!当たったら割とシャレにならないでしょ、両方とも!」


 シアの微笑みに対して、楽しそうにキレるイズク。


「っ?!」


 と、刹那殺気を感じて後ろに下がりながら大きく剣を正面横に振りぬくと。

 ガキンッ

 強く大剣が弾かれる音が聞こえた後、強い衝撃が剣の柄から伝わり手が痺れる。

 次いでイズクがこちらに肉薄してくるのが目に入る。

 と同時にナイフが脇から通り過ぎイズクの動きを一瞬緩める。

 そのまま後ろに下がることで衝撃を殺して次の一撃に備えるように構えなおそうとし。


「瞬発力もよし……と」


 イズクの目線が私から急に逸れる。

 ついでイズクが私の右手側に一歩踏み出しかけているのが目に入る。


 シアに行くつもり……?!


 咄嗟に右手側に両手剣を盾のように構えて体当たりする。


「えっ!?」


 イズクはその動作が予想外だったのか驚いた声をあげながら私に弾き飛ばされる。

 が、刀で衝撃を流し、後ろ跳びすることで何事もなく直立している。


「いやー無茶するねー。うん、あたし相手にそこまでできるなら合格でしょ」


 イズクは刀を鞘に戻しニコニコとこちらに近づいてくる。


「そう、ですか?」


 濃密な駆け引きで少し疲れ、両手剣を地面に刺して思わず屈みこむ。


「ウォーミングアップ程度と思ってたけど想像より熱くなっちゃったよ。強いね。傭兵の構えだと思ってたけど、防御特化型だとは思わなかった。あの一瞬でシアを狙うのを見極めて体当たりは普通出来ないって」

「あれは反射的にしちゃっただけで、そんな見極めなんてしてないですよ」

「だとしても二人でいい勝負なら問題ないでしょ。それと……シア」

「なにかしら」


 呆れた表情でシアに話しかけるイズク。

 シアもこちらに進んで歩いてきて、何食わぬ顔で返事をする。


「貴女……私が突っ込んできたらそのままそのナイフで受け流すつもりだったみたいよね?」

「どうかしら?その時次第だからなんとも言えないかな」

「ふふ……」


 私はイズクの笑い方に少しぞくっとしてしまう。

 なんと表現したらいいのか……恐怖とも不安とも似ても似つかぬ何か、そういった怯えの感情がイズクのその表情を見ると渦巻く。

 そんな私を二人は気にした様子なく。


「さて、じゃあ手加減無しでやるから、気をつけてね」


 さらりとそう言うイズクは刀を二本とも抜き構える。

 一方めんどくさそうにシアはシアと同じくらいの長さの杖を手に持ち、所定の位置に移動する。


「じゃあ、始める?」

「いいよ!」


 シアの問いかけと同時にイズクが真っすぐ駆け出した。




 戦いの幕が明けてからはせわしなく状況が変わり、目で見るのが追い付かなくなっていた。

 より正確に言えば、イズクの動きを目に留めることが。


 ガキィン!


 けたたましく杖と刀がぶつかる音と共に、イズクが盛大に弾き飛ばされた。

 そしてそのまま空中で地面に向かって刀を振った、その次の瞬間にはシアに打ち付けた背後から切りかかっている。


 一方シアは殆ど動くことなく、躱し、捌き、時には見ることなく杖でイズクと打ち合っている。

 ただ、なんとなくだが、さほど攻撃をしていないように見えなくもないけれど……。


「あはははは!シア、面白い戦い方するね!こんなに自由に戦えるのは久しぶりよ!」


 そんな私の第一印象とは裏腹に、イズクは笑いながらも矢継ぎ早に刀で切り付けていく。

 ……ちょっと狂気がかってて少し怖い。

 私と打ち合う前にこんな形で始められていたら、恐らく辞退していたと思う。


 昼間と印象が全く違う。

 あの抜けてたイズクはなんなんだろうと思うほど。

 そんな風に思っているうちにもイズクは切り筋を変えたようで。


「じゃあこれにはどう対応するのかな!?」


 両手で持った杖が上段に構えられて、防ぎにくいだろう足元を切るように突っ込んでくるイズク。


 普通だったら一歩引くか、左右に避けるか、手前に杖を立ててはじくか……。


 イズクの経験から想定できる行動はそういった類のものだったのだろう。

 だから。


「ぐあっ!?」


 まさか腕をそのまま直下に落として左手の刀を叩き落とし。

 そのまま左手だけで杖を持って外側に薙ぎ払うことで右手の刀を弾き飛ばし。

 そして肩を外回転させることで杖を正面に突きつけなおすなんて、思いもしなかったのだろう。


 加速していた無防備な身体を思い切り杖にぶつけてしまい、イズクは鈍い悲鳴をあげる。

 その隙に杖で地面に落ちている刀を払いのけ、イズクの手の届かない位置まで転がし、そのまま喉元に杖を突き付けなおし。

 イズクは片膝をついた体勢で両手を挙げている。


「これでおしまいね」


 シアがさっと杖を戻すと、イズクはへにゃんとその場に座り。


「あれは分からないでしょ~……何あの動き……絶対変だよ……」


 直前に受けた攻撃について泣き言を呟き始める。

 その傍ら、シアはイズクの持っていた刀を手に取り。


「アズ、おいで」


 さっきまでの様子を遠くで見ていた私を手招きする。

 私がふらふらと近づいていくと。


「この刀ね、面白い性質してるの。ちょっと持って地面を軽く叩いてみ」


 シアが私に刀を押し付けてくる。

 言われたまま軽く刀で地面を叩くと、私の身体がふわっと軽く浮かび上がる。


「!?!?」


 ちょっとした浮遊感を得て、硬直する私を見て満足げにするシア。

 地面はえぐれてもいないようで、余計不思議な感じが増す。


「あーあ、ネタもバレちゃった……そう、その刀は切りつけるとその力をどれくらいか計ってないからわからないけど、増幅して持ち主を吹き飛ばすのよ」

「だから瞬間移動しているみたいにあちこちに突然現れたように見えたんですね」

「そういうこと……ま、それはいいんだけど、シア、貴女やっぱりどうかしてるわ」


 私にネタ晴らしするイズクは恐ろしいものを見るような目でシアにそう言う。

 シアはというと弾き飛ばしたもう片方の刀を拾いに行って、戻ってきているところだった。


「そう?」

「だって普通上段に構えててそのまま腕下げるだけで刀を手から弾き飛ばすって無理でしょ?当てるだけならまだしも。それに関節どうなってるのよ、一連の流れで力が入りそうな動きなんて一つもなかったのに」


 イズクは理不尽だと言わんばかりに言葉を放ちながら、シアから刀を受け取り鞘にしまい、立ち上がる。

 私もシアに続きイズクに刀を手渡す。


「ん、ありがと。それにあたしの速度にほぼ動かずついて来れているのも余程よ。今までこのあたしの剣技を受けきれた相手は数えるほどなのに」


 イズクの意見ももっともな気もする。

 太刀筋も読みにくく鋭いし、反射神経も獣人以上にいい。

 そしてあの速度で一撃一撃も決して軽くなく見えたので、あれを受けきれるのは確かに余程の手合いだろう。

 なにより、シアの服装は昼間と何ら変わらない動きにくそうなワンピースでなのだから、それをより際立たせている。


「ま、久しぶりに本気を出して刀を振るえたのは良かったけどさ」

「それならよかった」

「まったくあたしの手だけ聞いて、分かってそっちの開示はないの?まあ勝ったほうはする義理ないけどさぁ」


 イズクは納得いかなそうながらも楽しそうに笑う。

 ああ、傭兵の中でたまに見かけたことのある戦闘狂タイプだ……。

 私がイズクの評価を再設定しなおしている間に。


「じゃ、うん。合格も合格だね。明日もよろしくね!あ、よければ一緒に討伐までする?」


 イズクがそんなことを言うのに対し、シアが呆れたような表情を浮かべ。


「貴女、確か待ち人いたんじゃないの?」


 一瞬イズクはポカンとし。


「……あああああ!すっかり忘れてた!?明日絶対ディアムに怒られるじゃん!いや、怒るって言っても何も言わないから、絶対無視される!どうしよう!」

「ちょっ、ちょっとイズクさん、落ち着いて!」


 おろおろと私の肩を掴んでゆすられ、あまりの激しさに思わず口元に手を持っていく。


「あ、わ、ごめん!つい!」


 イズクが我に返り肩を離してくれたが、ふらふらとよろめき倒れそうになる。

 そっとシアが後ろから支えてくれたおかげでそうはならなかったけど。


「い、いえ、それより時間的にどうしようもないのですし、明日早く出たほうがいいんじゃないですか?」


 こみ上げる吐き気を抑えつつそう提案すると、イズクは大きく頷き即座に河川敷を後にしようとする。

 全くの正反対の方向に。


「イズクさん!そっちじゃないですよ!」


 結局逸るイズクを止めながらとなり、宿屋に戻るまで二時間ほどかかってしまったのであった。

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