プロローグ
チンパンジーとかいう頭チンパン野郎共とは違うんですよ
森、樹木が生い茂っている場所。青々とした木がしげり、その中で生き物たちは様々な進化をして熾烈な生存競争を繰り広げている。
そして森の中の森、人々に絶対に入ってはいけないと称される『闇の森』では他よりも一段と特殊な生物達が暮らしていた。
ある木は根を足として動かして大移動を行い、ある虫は菌によってによって木を直接的に殺して餌とするようになり、ある魚は空を飛び虫を食らい、ある鳥は視認できないよう透明となり、ある動物は全てを殺す毒を手に入れた。
そしてその森にまた新たな生物が野太く力強い産声を上げることになる。
「ウホホウホー!?ウッホー!?(何だこれは!?一体なんなんだ!?)」
当然だが、その生物にも例に漏れずに特異的な特徴がある。
「ウッホー!!?(ゴリラアアアアアアアア!!?)」
ただし、今回の生物のは特にキテレツな特徴だろう。
「ウッホー!!??(俺は人間だぞコノヤロオオオオオ!!??)」
なぜなら彼は、元人間なのだから。
「ウホホホー!ウホ…ウッホホー!?(拝啓みんなあああ!俺…ゴリラになんだけどおおおおお!?)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ウホッ…ウホホ…(ふぅ…良い運動だった)」
溢れ出る感情を木登りとドラミング(手のひらを胸に何度も叩きつける行為)、バナナを見つけて食べるという一連の行為に発散した俺は現状を再確認してみる事にした。
「ウッホホウホ…?(ゴリラになる直前の記憶は…?)」
そうだ…!俺は…トラックに轢かれてしまって…なんて事もなく普通に休日に呼び出されて出勤して上司にラリアットして家に帰って飯食って風呂入ってゲームして寝たはずだ。
つまりここから何が言えるかというとだ
「…ォゥ?(ゴリラになる要素は一切無いな…?)」
そう、俺はトラックに轢かれて死んだわけでもなく、神様に出会ったわけでもなく、寝て起きたら唐突にゴリラになってしまっているのだ。まったくもって意味がわからない。
そしてゴリラになった理由がわからないということは…。
「ウホホォ…(元の身体に戻る方法もわからない…と…)」
理由が分からなければ直す方法もわからない。自明の理である。しかし、元の身体に戻らないという選択肢を即座に選ぶわけにはいかない。
職場にはドジで間抜けでムカつくが憎めない上司に能力だけはあるがコミュ力と家事能力に難のある後輩。実家で漁師をやっている父親とそれを支える母親、家に残した愛犬のシュナイザー、唐突な別れで終わりたくはない。
そして何よりも…!
「ウホウホ!(俺の体にゴリラ入ってるだろこれ!)」
ゴリラに俺の精神が宿っているということは、俺の体にゴリラが入ってるに違いない。あの一世を風靡した入れ替わる系の名前を聞く映画がその証拠だ。
今頃は俺と化したゴリラは家で大暴れしているのではないだろうか。シュナイザーが震えてないか心配である。いや、あいつは昔から謎なほど賢いから大丈夫かもしれないが。
「ウホ…(しかし…)」
とてつもなく腹が減ってきたな。先ほどよりも少し冷静になったからか体の調子にまで注意が向き始めたのだろうか。先ほど本能に身を任せて入手したバナナを食べたばかりだというのに、妙に体がエネルギーを要求してくる。何も食べてなかったというか、元から何も入っていなかったというか、そんな感じだな。
よし!決めたぞ!
「ウホホ!!(まずは飯だ!食えるだけ食ってみるぞ!)」
元の身体に戻るにしても戻らないにしても、なんの糸口も見つけてない現状、おれが出来ることは限られてる。とりあえずは衣食住を揃えてから情報をもう一度洗い出してじっくり考えてみるとしようじゃないか!腹が減った状況で考え続けても良い案はでねーしな!
「ウッホー!(まずはあっちだ!)」
とりあえずはさっき取ったバナナでも集めるとしようじゃないか!
俺はナックルウォーキング(拳を地面につけて擬似的な四足で歩く)と木登りを駆使してバナナを集めて集めて集めまくることにした。
それにゴリラと言ったらバナナだしな!
ゴリラ適正S:身体はゴリラで出来ていたって自慢できる