〜異世界よりお送りいたします〜
一日の仕事を終え、風呂にも入り、あとは眠るだけ。
家に仕事を持ち帰らない主義なので、ここからは本当にやることがない。スマートフォンのゲームなんかをやることもあるが、そこまで熱中もしていない。
その代わりに、必ず聞いておくラジオがある。
祖父から譲り受けた古いラジオの周波数はずっとそこに合わせたまま。他の放送が流れることはなく、その時間になったときだけ動き出すそれを心から楽しみにしている。
布団に入り、ラジオをつける。
砂嵐のような音がうっすらと聞こえているが、それが次第に静けさの中に消えていく。
いつもの放送が始まる合図だ。
『……ちら、異世界放送局。
こちら、異世界放送局です。
パドゥキア王国歴613年、本日の放送を始めます。
この放送は、地球の方に向けてお送りしています。
私はかつて異世界へと迷い込んだ父、ヒーロー・タナカの子、オランドゥ・タナカです。
生前の父が続けていた放送を引き続きお送りさせていただいております。
もしも電波に詳しく、この放送の発信源を突き止められる方がいらっしゃいましたら、ぜひお返事をお聞かせください。
では、本日の放送をお楽しみください』
今日は異世界で何があったのか。
これは、仕事に疲れた私のちょっとした趣味だ。