外伝 ロネシリィ・ノアルーフ その1
5章の前に忘れる前にやっておこうと思いました。
イザナギによってイザナミの手から救い出して貰ったが、傷が未だに言えない。マナ操作により、癒えないという事はこれはイザナミの能力なのだろう。イザナギから貰った癒しの力ですら治癒が遅い。あの短時間で全ての癒しの力を貰ったわけではないから仕方ないのだが、これは強力な呪いだ。
しかし、イザナギに言われた通りに逃げるわけには行かない。イザナギがまだ肉体を得ずにイザナミから逃げる様に世界を飛び回っているのを感じる。転生する為の母胎探しているのだろう。だが、その間もイザナミはイザナギを追いかけている。
転移でイザナミの元に行き、イザナギは肉体がないが為に上手く扱えなくなったマナ操作の為に上手く逃げる事が出来ない。その為、イザナギの所に行き、イザナミの目の前に現れて気を引きながらイザナギを転移で別の世界に送る行為を繰り返した。倒そうとしなかったのは、自分自身も呪いにより、万全な状態ではなかった為にまともに戦えば、神の中でも強いとされる龍の血を引く竜人であろうと負けるからだ。さらに、目の前で見られている為、転移先を偽造する事が出来ない。
親であるレジェンドドラゴンや天御中主神が何故出てこないのか。基本的に神は不可侵という暗黙の了解が存在している。今回の様な例は、初めだ。親二人が出てしまえば、他の神達も何かしらの行動に移す可能性がある為、迂闊には動けなかったのだ。最悪、神同士の戦争になり兼ねない。
数年かけてようやく、隙をついてイザナミが見ていない所でイザナギを転移させることに成功した。
その後、自分も転移を繰り返しては、イザナギは手がかりである私を追いつつイザナギを探しながらのイザナミはこちらに集中しきれずに偽造をしながら身を隠す事が出来たのだ。それにイザナミもそこまで私に興味はない為、無理に折ってくるような事はなかった。イザナギと共にある私が邪魔なだけであって、イザナミにとって最優先はイザナギの確保か殺害だ。殺害と言っても愛のある殺害だ。質が悪い。「貴方を殺して、私の心の中で永遠に生きるのよ」というパターンだ。
そして、更に数年、傷もようやく癒えた。
(久しぶりにゆっくりと空を飛べるわ)
イザナギを待つ間にやって来た世界グラディオ。
(ん?)
優雅に飛んでいると、こちらに向かってマナの動きを感知した。
「ブラックドラゴンだ!」
「良い素材になるだろう!」
「我々の力をこの世界で見せる時だ!」
ペチペチと何かが当たる。
・・・これは何?攻撃?
人間なんて最近イザナミに集中していたから様子を見る暇なかったけど。
「マジェスト様!奴に聞いている気配がありません!」
「く、距離があり過ぎるか・・・重力魔法を使える者は奴の高度を下げろ!」
「「「了解!!」」」
地上にいる100人もの人間の集団が何かを放っている。
何を地上からペチペチと・・・。マナ的に気にする程の物でもないが鬱陶しい。槍や弓などでは私に傷1つ付けられるはずがないのだが、それらはマナを動かす必要がない。存在する為のマナだけだ。なのに、今は大したマナではないが迫ってくる。
!?何か、急に体が重たくなったような気がする。
「よし!少し下がったぞ!重力魔法をそのまま維持、余裕のある者はもっと強力に!他の者は攻撃の手を緩めるな!」
「「「了解!」」」
それぞれの魔法が次々と放たれる。
・・・鬱陶しくなってきた。いつまでするつもりだろうか。こんな攻撃も出来るようになったのなら守りの方もどれ程の物なのかしら。
「どれ程か試してあげる」
軽く、地上に、人間全体に当たる様に炎を吐く。
「「「ぐわー!!」」」
「「「ギャー!」」」
炎に包まれ100人もの集団が燃え上がり地面に倒れる。
(・・・守りの方は駄目みたいね)
燃え上がる様子を少しじっと見た後、その場を離れる。
「な、何という事だ・・・おのれ!ブラックドラゴン!必ず殺してやる!同法の仇!」
一人の男が倒れた人の下から這い上がり、涙を流し吠える。仲間が庇ってくれたのだ。必ず仇を取ると心に誓うのであった。
―――― 約500年後
『殺したい。殺したいなぁ』
イライライラ。
河川敷の橋の下、1人の少年に3人掛かりで殴り蹴るの暴行が行われている中学生の子供達の様子を近くで見ている少女がイラつきを隠せずにいる。その少女は、鮮やかな十二単ではなく、黒、紺色といった黒に近い色ばかりの十二単に身を包んでいた。
しかし、この場所では普通ならしない服装、異様と言える服装にも関わらず、近くにいる少年達ですら気が付いていない。少女は、特殊な力により、存在を他人に感じられないように遮断しているのだ。
「ふう。今日は、この辺にしといてやるよ」
「じゃぁなー」
「スッキリした」
不良らしい、殴った相手を只の物の様に扱い、最低な言葉だけを残して去って行った。
――――
放課後、少女は、1人の少年の後をついて歩いていると本屋に入って行った。
『最近、はまっている本だよね。私も見てみようかしら』
少年は、本屋で立ち読みをしているようなので、その横に立ち、同じ作品を読む。
『やっぱり、地球の人間は良い物を作りますね』
本、漫画を読み、笑い、涙、作品によってさまざまな物語が描かれ、それに感心する少女。
そこに何か見覚えのあるバトルシーンを見た。魔法だ。そういえば、昔に何か変わった攻撃をしてくる人間達がいたけど、あれは魔法だったのね。それにしても、地球の人間はマナを感じる事が全くと言って良い程出来ないのに凄い発想力よね。
「・・・帰らなきゃ・・・」
自虐的に呟き、漫画を棚に戻し、店を出て少年は帰路に就く。
少年は、家の前に付くと「よし!」と気合を入れて笑顔を作り、家に入っていく。
「ただいまー」
「お帰り、夢叶。手洗いうがいをしてきなさい」
「はーい」
台所にいる母親に言われ、洗面所の前の荷物を廊下に置きに手洗いうがいをすると、荷物を持って自分の部屋に戻った。
「夢叶ー。ご飯出来たわよー」
「わかったー!」
「いただきます」
「召し上がれ」
夢叶の言葉に微笑んで返す母親。
(今日は、何もされてないようね・・・良かった)
内心、ホッと胸を撫で下ろす母親。
「夢叶。何かあったら、何でも言うのよ?大切な二人っきりの家族なのだから」
「・・・分かった。ありがとう」
――――
いつもの様に帰って来て、家の前で気合を入れて家に入ろうとすると家の中から誰かが出て来てぶつかって倒れてしまう夢叶。
「チッ!」
チラっと夢叶を見ると封筒をポケットに入れて露骨な舌打ちをして足早に去っていく。
「とう・・・!?」
そんな夢叶の声は、足早に去る男には耳にも入っていない様子で、直ぐに叫ばないと聞こえない距離まで離れてしまった。内気である夢叶にはこんな外で大声を出す勇気などだせるはずがなかった。
その夜、ぶつかった男、父親の事を尋ねたが、話をはぐらかされて何も教えて貰う事は出来なかった。
―――― 数日後
「お母さん、今日から仕事増やすから留守が多くなっちゃうけど、1人でも留守番にご飯、大丈夫よね?」
「うん。無理しないでね」
「ありがとう。それじゃぁ行ってきます」
夢叶の頭を愛しく撫でて出かける母親を夢叶は見送った。
―――― 2か月後
『フフフ。私の右手が疼く・・・なんちゃって』
存在を隠して漫画を読みながら痛い台詞を右手をワキワキさせながら呟く少女。不治の病、中二病に侵され始めていた。
「・・・はぁ」
大きく溜息をつき、漫画を棚に戻し、店を出る。
『・・・』
その様子に漫画を見るのをやめて少女は心配そうに後を追った。
殴り蹴るの暴行は、今も続いている。それを隠す為に母親の前では笑顔でいようとしているのだが、最近、笑顔でいようとすると何故か、母親は辛そうな表情をするのだ。
(・・・大好きなお母さん、昼も夜も仕事をして、僕の世話までしてかなり疲れているんだろうな・・・。もう少ししたら、俺もバイト出来るから、少しでも負担を減らせれば余良いな・・・)
「よし!」
いつもの様に気合を入れて家に入ろうとするが玄関がしまっている。夜も仕事に行っているが、いつもは俺が帰ってから出かけているはずなんだけど。
家の鍵は渡されているから、ズボンに無くさないように太目の紐で括り付けられた家の鍵を使い、家に入る。
「ただいまー」
やはり、返事がない。
リビングに行くと机の上に、手紙とお金が置いてあった。
これで適当に買って食べなさい。 母より
いつもは作ってくれているのに。急に仕事で呼び出されたのだろうか。
しかし、次の日、その次の日もそれから毎日がそうなっていた。しまいには、毎日置手紙を残すのが面倒になったのか、1か月分の食事と纏めて渡されるようになった。
理由を聞いても仕事が忙しいからとしか答えてくれない。
―――― それから2か月
「お母さん、仕事は?」
「辞めた」
ある日、学校から帰ってくると、仕事だと聞いていた日にも関わらず家にいた母親に尋ねるとやる気なく一言が帰って来た。
「そう・・・なんだ」
今までが働き過ぎていたんだ。ゆっくりとしてほしい。
そこから、段々と、母親は食事を作らなくなってきた。そして、食事も貧相なになってきた。
―――― 運命の日
『・・・っ!?』
歯を食い縛り、血が出る程手を強く握り締める。無暗に手を出してしまって変に記憶が戻っては困る、そう思うとギリギリまで手が出せなかった。
いつもの暴行よりも激しい。今までは倒れたらそれ以上はあまりしてこなかったのに、今日は倒れてからもずっと暴行を続けている。
これ以上はまずいと思い止めようと手を伸ばしたその時、夢叶に暴行を加えていた3人が燃え上がった。
『まさか・・・!?』
2人は転げまわり、1人は川に飛び込んだ。
更に、地球ではあり得ない程のマナの動きが川の中で起こる。
『あれは、流行りの異世界召喚!?』
実際にしている神もいるのね・・・。正直、地球の漫画に汚染されている自覚はある。だが、面白いのだからしょうがない。
そんな事よりも夢叶だ。
『・・・良かった。大丈夫そうね。念の為、少しだけ回復しといた方が良いわね』
少しでも早く治る様にという程度の回復魔法を使用する。
『救急車呼んでおこう』
電話なんて物は所持していないから創造した。
――――
『流石、イザナギだね。感覚をどんどん取り戻している』
幸い、記憶には影響ないみたいだけど、体がマナの扱いを覚えてるんだろうな。病院で練習する姿を温かく見守る。
マナの処置をするのも大変だ。イザナギに気付かれないように自然とマナが霧散させなければならない。
小さいマナの動きばかりだから、同じ世界に居なければ、イザナミには気付かれないだろう。
次の日、異世界に飛ばされた父親が病室にやってきた。
『これが、母親のする事なの・・・?』
肩を落とし、涙を堪え自首しにの行く夢叶の姿を今にも抱きしめそうになるのを必死に堪える。
―――― 牢屋生活
『可哀想なイザナギ。でもどんどん力の感覚を取り戻している。その調子だよ』
牢屋の中でコソコソとマナ操作の練習をする。本人はマナ操作を魔力操作と思っている様だが、そのマナの動きをイザナミに悟られないように結界を牢屋に張る。
「?」
一瞬、夢叶が周囲を見渡して首を傾げた。
『感知も多少は出来るようになったのかな?マナ操作をしているから動きに敏感になってきた?』
結界を張った時に違和感を覚えて周囲を見たのだろうが、そこまでで練習を再開する夢叶を眺めている。
・・・暇だ。結界を張っていれば余程の事をしない限りはイザナミにバレないだろうし・・・。よし!漫画を読みに行こう。
―――― 数日後
毎日、一日中、漫画を読み漁っていた為に、面白そうな漫画がなくなってしまった。
・・・そういえば、魔法を使っていた世界があったよね。行ってみようかな。
―――― グラディオ
魔法使いはいるかなぁ。人の姿、肩より少し長い黒い髪に赤い瞳。黒のワンピース姿となり街を歩く。
あの魔法使いがいた近くの街の酒場に来た。
「ねぇねぇ。魔法使える?」
その言葉にプッと周囲が笑いを上げる。
「お嬢ちゃん。ここはお嬢ちゃんの様な子が来るところじゃねぇ」
「ああ、御家にお帰り。ギャハハ!」
イラッ。
「それに、魔法使いなんて御伽噺の話だろう。俺達は皆、自身の相棒である武器で魔物と戦っているんだ。そんな魔法みたいな夢みたいなことが出来たら魔物を倒すのも楽だろうよ」
ワハハと周囲も笑っている。酔っているからか笑い方がいちいちむかつく。
「そっか・・・。あの集団が特殊だったのかな・・・」
「ん~?何だって~?」
呟いた所にキモイ顔で顔を寄せてくる。
「近ッ!キモイ!」
反射的に言って、後ずさる。
「ああん!?誰に向かって口を聞いてんだ!?言っておくが、俺は幼女趣味だぞ!」
スラリと腰の剣を抜きながら事案発生な事を言ってくる。
「おい、やめとけ。可哀想だろ」
中には止めようとする善良な者もいるようだが、残念ながら殆どが、「公開プレイ!」とふざけたことを抜かしている。
「痛い目に会いたくなかったら嬢ちゃんでも分かるよな?」
グヘヘとキモイ顔をしながら剣をブラブラさせながら近寄ってくる。
そして、手を肩に延ばされた時、その男の手が曲がらない方に曲がった。
「ああー!?!?」
「何か言った?」
痛みで膝を付く男に冷たい目で見下ろす。
「この糞が!」
剣を振りかぶる男。
悲鳴が上がるが一瞬で静まり帰る。
「・・・嘘だろ?何者だ・・・?」
剣を素手で受け止めたのだ。そして、そのまま握り潰し、剣を粉々にする。
「ここは思ったより駄目ね」
周囲を見渡すと、その視線が向いたところから小さな悲鳴が上がる。
そして、最初の男に目を向けると折れた腕も気にせず、土下座して謝っていた。
「すまない!いや、申し訳ありませんでした!命だけはお助けを!」
頭を地面につけて叫ぶように媚びる。
「二度とこういう事しないでね。勿論、他の人にも」
「分かりました!」
溜息をついて酒場を出て行こうとすると、後ろから予備の短剣だろう剣を振りかぶって迫る先程の男。
肩部分にグザリ。ではなく、ポキッと剣が折れた。
「「「え?」」」
その光景に、周囲全員が唖然としていた。
「もう、救いがないね」
デコピンの動作をして頭を吹き飛ばし、来た足取りで酒場を後にするのだった。
そして、その場にいた全員が逆らわないようにしようと満場一致で目を見合わせ頷き合うのだった。
死体の後始末は酒場のマスターが何とも言えない顔をしながら処理したそうだ。本来なら迷惑料を貰うが、相手が相手なので言いづらく、もう片方は死んでいるのだから諦めるしかなかったが、その死体に残っていた資金を頂戴する事で我慢した。ついでに、食事代が払える程度であまり余分な金は持っていなかったようで肩を落とすマスターであった。
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