第94話 サイランの街 その後
―――― サイランの街
「「あ!」」
「ユウ!」
「ロシィ!」
サイラン上空から街の人に見つからないように建物の陰に転移して蔭から手を振るとリリィ達が気付いて駆け寄って来た。
「こらこら。街の人に見つかったらどうする。俺は今、この街の人達に完全に敵と思われているはずだぞ」
「「「「あ」」」」
「「ごめん・・・」」
「「すまない・・・」」
それに気づき謝る皆。幸い、俺を倒したと言う喜びで誰も気づいていない様だ。
「何処に行ってたの?」
「んー。・・・お義父さんとお義母さんと会っていた感じ?」
「ニヘヘ~」
「ムムム」
はにかむロシィを見て、損した気分になる一行。
「しかし、普通にテレポートやゲートとかで転移した様子じゃなかったのだが?」
「そうそう」
シルヴィの問いに皆頷く。
「ああ、どうやら異世界から俺を召喚しようとしている者がいるらしい。それで強制的に転移されたんだ」
「それで何故、ロシィとお義父さんとお義母さんと会う事に?」
最もなエリィの質問。
「そこの中間で転移のサポートをしているのがロシィの親だったんだ」
「・・・何者なの?」
物凄く怪しんでいる。
「・・・どうする?」
「・・・まぁ、良いんじゃない?釘指すぐらいで」
「・・・そうだな。お前達の事は信用しているから言うが、くれぐれも他言で無用で頼む」
少し真剣な夢叶の言い方にゴクリと唾を飲み込む。
「俺は・・・俺達は神だ!」
ズバッ!無駄なポーズを決めて後ろに爆発が起きたように幻を見せる。
「「「「は?」」」」
固まる。
「ザ・〇―ルド!かっこセルフ」
いつものロシィの調子で無駄にドヤ顔で言う。ラートの面影など何処にやら。
「冗談?」
「冗談ではない!」
キリッ。
「・・・いや、正直納得した」
シルヴィが呟く様に言う。
「妾は、田中太郎という神、いや人間か・・・に作られた存在だった。田中太郎が殺されたのに何故、妾は消えずにいるのかずっと疑問だったのだ。人間達は分からなくはなかった。作られた命から自ら新たな命を紡ぎ、新たな個として存在していたのだろうからな。だが、妾はずっと田中太郎に作られた存在だったのにも関わらず、何故消えないのかと」
すっと、温かい目をロシィに向ける。
「妾を個としての命を与えてくれていたのだな」
「・・・流石、シルヴィ。一度に個の命として固定する反動があるからね、バレちゃうだろうから何回もじゃれて、ちょっとずつしていっていたんだよ。ついでに、シルヴィはドラゴンじゃなくて、ドラゴニュート、竜人だよ。私の後を追っかけるような感じだったからさ、真似するんだろうなぁと思ってそうした!ドラゴンがずっと人間に変化してるからって存在の仕方が反対になるわけないじゃん?それに、竜人だからこそユウとできるわけだし?」
さらっと答える。最後だけニマニマとおっさん化して色々と台無しだ。
「全く、お主という奴は・・・ありがとう」
苦笑いして頭を下げる。
「ううん。悪いけど礼を言われるような事じゃないんだ。むしろ、謝らなきゃいけないのはこっちなんだ」
夢叶がイザナギであった事、イザナミの事を話した。
「・・・そのイザナミの戦力として私はシルヴィを使うつもりだったんだ。ごめんなさい」
勢いよく頭を下げる。
「ねぇ、もしかして、マナ操作って神様の力なの?」
「ああ。そうだ。俺もさっき思い出しただけなんだけどな。それに、今更解除しようとは思っていない。俺はお前達を信じているからな。そのまま力を持っていた方が安心できる」
「「「「・・・ユウ」」」」
「感激している所悪いんだけど、私はその事について謝らなきゃいけないんだ・・・」
「「「「「え?」」」」」
その言葉にはリリィ達でなく、夢叶も驚く。
「契約して貰ったのって、ユウの使えるマナ量を増やす為だったの。繋がっていれば、その人の中にあるマナを使えるから。当然、その人のマナを使い過ぎれば死ぬことだってあるのに・・・私は・・・」
「ロシィ・・・」
あのロシィが涙目になっている。なんだかんだで、それほどリリィ達の事を思っていてくれていた証拠だ。
「イタ!?」
ペシッとリリィがデコピンをする。
「何、らしくない事言ってるの。私達は皆、ユウの嫁なのよ。死ぬ時も一緒よ。契約があったから私達は今までずっとユウといられたし、これからも一緒に繋がっている事が出来る。私達のマナがユウの助ける為になるのならそれは本望な事よ。ね?」
リリィは皆の方を振り向くと皆、頷く。
「ね、エリィだってさり気に嫁って言っているのに否定せずに頷いてるし」
「ちょ!?それは、流れ的に!・・・ユウの助けになるのなら良いとは思ってはいるが、それとこれとは!?」
エリィが顔を真っ赤にして否定している。
「素直になりなさいよー。王女命令よー」
「なっ!?私は別にユウの事は良い人とは思・・・って、リリィは、今はただの冒険者でしょ!」
「バレたかー。ぐへへ~でも、ほとんど言っちゃったよね~」
おっさん化したリリィとエリィがキャッキャウフフしているのを皆が和やかに見ていた。しかし、その小さな騒ぎに上級魔族ガードが気付いてしまった。驚きと怒りの顔をしている。他の者は誰も気づいていない様子だ。直ぐに声を上げようとするが、手を口元に当て、静かにと合図して、時計塔を指差す。ガードは叫ぼうとした口が塞がっていないまま、時計塔と夢叶を交互に見る。
「・・・ガード?」
カミナがガードのおかしな様子に気付き、夢叶がいる方の物陰に目を向けるが、そこには誰もおらず、首を傾げている。
そして、何かに気付いたガードは慌てて時計塔に向かって走り出す。
「!?」
カミナは慌ててガードをお掛ける。まさか、まさか夢叶がまだ誰かを殺しに来ているのかと。消えた理由は他の場所の人を殺す為?嫌な予感が脳裏をよぎる。ガードも恐らく同じ思いだから、必死に走っているのだろうとカミナも必死にガードを追いかけたが、直ぐ近くの時計塔に駆け込んで行った。
何故、時計塔に?
「・・・どういう事だ?」
ガードの直ぐ傍まで行くとそう呟いた。その先に広がる光景を見て、カミナも同様の言葉が頭の中を埋める。
「あ!」
「ガードさん!やっと終わったの?」
「待ちくたびれたよー」
「なら、もうこいつら程いても問題ないよな」
「街の人達との誤解は解けたんだろ?」
時計塔の中の広間に消されて死んだ人達がいた。拘束されて消された者はそのまま拘束されており、拘束されていない者はそのまま座って待っていた様で立ち上がり駆け寄って来た。拘束されていなかった者達は皆、ガードが助けた者達であった。
「あ・・・あぁ・・・」
理解が追い付かない。
「それで、オウセさんはどうしたんだい?礼を言いたいのだが」
「・・・どういう事だ?」
助けた者の1人の男性が近寄り、小声で話しかけてきたが、ガードとカミナは首を傾げる。
「ん?聞いてないのかい?オウセさんが悪者になってそれをガードさんが止めればどれだけ街の人達の為に行動してくれているかわかるからって・・・、だから、消す振りをして転移で時計塔に飛ばすから、暫く、そのまま迎えが来るまで待っていてくれって言われていたんだが・・・」
よく見れば、最初に消されたはずの少年、ミナトも雑談しながら拘束を解くのを手伝っている。他にも離れた時に消された者達は分からないが、少なくとも目の前で消された者達全員がこの場にいた。
何故、それを先に言ってくれなかったのか。軽くあしらわれてはしまったが、本気で殺すつもりで攻撃をしたというのに・・・
カミナも同様に思い、尊敬・・・いや、崇拝すらしそうにもなっていた。
「本気で怒らないと意味がないだろ?」
「「っ!?」」
ガードとカミナが言葉の方を振り向いた先には誰もいない・・・いや、一瞬建物の隙間に人影が見えた。ガードは転移する程の力はもう残っていない。カミナが転移してその建物の隙間の屋根に移動する。
「悪い!」
カミナの目の前には、その崇拝しようとしている者がスライムに頭を下げている姿っだ。
『いつもいつも僕を忘れちゃってくれてさ!扱い酷くない!?』
「ワザとじゃないんだ。その・・・存在薄いからさ・・・」
『酷い!もう怒った!』
ライムが元の大きさに戻り、建物の間の道一杯に広がり、夢叶を飲み込む。ロシィやエリィ達があらーというような何とも言えない顔でその様子を見ている。ちゃっかりと飲み込まれないように離れながら。
「ごめん、ごめんって!」
夢叶の体を全て飲み込んで。ライムの液状の体の中をグアングアンと上下左右に動かされたり回転させたりと、普通なら絶対に目が回るか、酔うだろうちうように振り回している。当然、そうならないようにマナ操作で防いでいるが、振り回されっぱなしだ。
「・・・ここにある核を突いたらどうなるんだろうなぁ」
ボソっと夢叶が普通なら見えないように隠しているはずの核を的確に指摘しながら言うとピタっとライムの動きが止まり、夢叶の首だけライムの体から出る。ついでに、スライムに取り込まれていると当然、液状が体全てを包んでいるため、口も塞がれていて喋れないのが普通だ。マナ操作により喋ることを可能にしている。
「よう、お前も混ざるか?」
スライムから首だけ出して、浮いているような滑稽な姿でカミナを何故か誘う。
「いい」
当然カミナは首を横に振った。
「あの人、さらっと自然に誘いながら、ライムにカミナの服を溶かして貰うつもりでしたよ」
「流石は変態さんですね」
「自然と変態な行動を取れるとは流石です」
ロシィとリリィとティエに何故か敬語で罵倒される。
「おいコラ!そのアイデアいただこう。さぁカミナ飛び込んで来い!」
良い顔で言ってみた。
無言で、イノセントメテオが頭上に出現した。
「・・・無詠唱は中級までって言ってませんでしたか?カミナさん?」
「自分でも驚き。怒りの力」
とりあえず、こんなデカいのがまた出現していたら騒ぎになるだろうから、とりあえず、掻き消す。
「む・・・」
「それで、何の用だ?一応これでも・・・人?を待たせているんだが」
人ではなく神だが、危うく神と言いかけたので疑問形になってしまった。
「どうして黙っていたの?」
恐らく、悪役になる事だろう。
「本気で怒った方が、後で芝居だとバレたとしてもそれだけ、この街の事を思ってくれているというのがわかるだろ?それに、もう1人ぐらい本気で対応したら信憑性も増すかなって。それがSランク冒険者なら尚更な」
「むぅ」
分かるけど納得できないと言う感じだ。
「それで、俺達はそろそろここから離れるわけだが、用は終わりか?」
「・・・弟子」
「えー。殺そうとしてきた奴を弟子ってなぁ・・・」
「・・・そっか。そうだよね」
あからさまにシュンとなる。
「あー。まぁ冗談だが・・・」
「じゃぁ!」
顔が少し明るくなる。
「だが、弟子に出来ないのは本当だ」
「そう・・・」
チラリとロシィの方を見ると頷いてくれる。
「えっとな。俺達、この世界の人間じゃないんだわ。ここから離れるっていうのもここと違う世界に行くんだ。だから、弟子になって俺達に付いて来るって言うなら、復讐は出来なくなるぞ」
いいのか?と顔を見ると流石に驚きを隠せないでいる。
「更に、俺達に付いて来るとなったら契約して貰う事になる。奴隷の」
「!?」
まぁもしも付いて来ると言っても能力授与で特に能力を渡すつもりもないが、渡しても魔力操作向上ぐらいで良いだろう。そんな能力ないが、マナ操作でどうにでもなる。チート過ぎる。それに、それぐらいの気持ちでないとこの先やっていけないだろうし、信用も出来ない。更に神の領域に踏み込むことになるかもしれない、最低でも神同士の戦いに巻き込むことになるのだからそれ相応の覚悟は必要だ。
「そこまで必要?」
契約がなければ付いて来る気か・・・。まぁ、ロシィも嫁が増えるのは反対してみたいだし、可愛い子が増えるのは大歓迎なのだが。
「ああ、悪いが、お前と出会ってから日が浅過ぎるし、信用出来るとはまだ思っていない。あの怒り方して悪い奴じゃないと言うのは分かるが、それだけだ。それに、この先は人外の出来事が起こるからな。覚悟がない奴は直ぐに死ぬだろうし、足手纏いだ。嫁や友人なら守る気にもなるが、そうでない奴何て、自ら危険を犯してまで守るなんて有り得ない」
「付いてく」
「え?」
即答ですか。
「知ってた」
「まじで?」
ロシィの知ってた発言に聞き返してみる。
「一応この作品ってハーレム要素含んでるんだよ?知らなかった?」
「・・・そんな気はしてたけどさ」
なんだかなー。まぁ、可愛い子が増える分には良いか!開き直ることにした。
ーーーー神の領域 謎空間
「待たせて申し訳ない」
ゲートでレジェンドドラゴンと天御中主神であるお義父さんとお義母さんがいる場所にやってくる。
「・・・貴様の女達か」
「あらあら、ドラゴニュートの旦那様は人気者なのね」
何処か不満そうなレジェンドドラゴンと楽しそうな天御中主神。
「まだ、1人が違うがな」
「!?」
「ユウ、私はまだ!」
「・・・ま・だ・・・でしょ?」
少し照れるカミナと嫁の1人に含まれているエリィの講義にニタニタとリリィが弄っている。
ここに来る前に、カミナには能力授与で裏切らないように契約している。また、服装が服装なだけにスカートを捲り上げてする事になってしまったが・・・あれは・・・良い物だ。壺を指で弾きたい。
「ユウ自身は良いみたいなんだから今夜にでも」
「っ!?そんなハレンチな!?」
「おやおや。何を想像したのかな?エリィさんは」
リリィとロシィに弄られているエリィを放っておいて話を進める。
「それじゃぁ、送ってくれるか?」
「ああ、ドラゴニュートを、娘を頼むぞ」
「お願いね」
「勿論だ」
二人に返事すると辺りを光が包む。
ブックマ評価ありがとうございます。




