第93話 お義父さんお義母さん
「グスングスン」
超強大なドラゴンがすすり泣いている。
「「引くわー」」
夢叶とロシィ、二人でドン引きだ。
「昔のイザナギとドラゴニュートはもっと思いやりがあって優しかったのになぁ。シクシク」
実際には持っていないが、ハンカチでわざとらしく涙を拭いている様子が浮かぶ。
「悪いな。もう、昔の私じゃないんだ。今はこれが俺なんだ」
「そして、私ももう、昔の私じゃないの。これが、今の私なのだ!」
シャキーンと謎のポーズを取る。
「こんな子に育てた覚えはありません」
「育てられた覚えもない」
「覚えはあるけど、こんな子に育っちゃった。テヘ」
お義父さんの言葉は悲しく、流れ去った。
「まぁまぁ、お義父さん、ドラゴニュートが幸せならそれで良いじゃないですか」
「おお、アメノミナカヌシ。お前も来たのか」
「ええ。娘が愛した男と再会して私の旦那と会っているのだもの。気になるじゃないですか」
天御中主神?最高神とか言われてる奴だっけ?跪いた方が良いのだろうか・・・
天御中主神は、黒い髪を上の方で団子にして結んではいるものの足元付近まである長い髪で、十二単の様な装束を身に纏い、天女の様な羽衣を数えきれないほど身に纏うように宙にフワフワと浮いていた。
「フフ。話は聞いていたのですが、本当に昔のイザナギと違いますね。私を見たらすぐに跪いていらしたのに」
ボーッと天御中主神とドラゴンの様子を見ていると別に怒る様な風でもなく、只普通に世間話の様な雰囲気で話しかけて来た。相手はロシィの母親だ。悪い印象は出来るだけ避けたいので慌てて跪こうとしたら。
「良いのですよ。私達の息子となるのですからね。是非とも家族としての付き合いをして貰いたいわ。ドラゴニュートと・・・いえ、今はロネシリィ、ロシィでしたね。娘と話しているように普通に話してくださって結構ですよ」
ニコリと柔らかな笑みを浮かべる。
「はい。分かりまし・・・分かった。これから、よろしくお願いします。ロシィ、娘さんの事は絶対に幸せにしますので」
ロシィの手を取り、ロシィの手が痛くならない程度に力強く握る。少し、ロシィが頬を染めている様だ。
「フフ。まだ敬語ですね。ええ、ロシィの幸せさえ守って下されば私は何も言う事はありませんわ」
「親しき中にも礼儀ありって奴ですよ。任せてください」
「・・・我と態度違い過ぎないか?これでも力は神達の中でも最強とされるのだぞ」
ロシィに力強く宣言すると片方で悲しく抗議するドラゴン。
「そういえば、オトウサマは何ドラゴンでしたっけ?」
「我の扱い・・・。まぁよい。聞いて驚け、我はレジェンドドラゴンである」
「・・・何だ。シェ〇ロ〇とかじゃないのか」
「う、うむ。それは色々と問題があるのではと思ってな・・・」
何だか残念そうだ。
「パパは、力と見た目に対して結構、気にするタイプだからねぇ~」
「パパ!?・・・何という響き」
茶化す様にパパと言ったロシィの言葉に何だか感激しているレジェンドドラゴン。
「パパ呼びされて、感激しているドラゴンとか・・・まさに伝説に残るんじゃないか?」
「貴様にも娘が出来れば我の気持ちが分かるわ!」
照れ隠しの様にぶっきらぼうに言うパパ。
「ッハ!?しかし、そうなるとドラゴニュートが貴様なぞに・・・」
何やら想像しはじめるドラゴン。
「自分の娘がしている姿を想像するとか伝説だわ。流石だな!」
「パパのエッチ・・・ッポ」
「パ~パ~?」
「ご、ゴホン。これは・・・その・・・」
皆に弄られ、天御中主神からも弄られるという伝説。何とも言えない平和な・・・家族の時間を過ごせたと思う。自然と笑顔になる。その笑顔に笑顔で返してくれるロシィ。絶対に幸せにすると改めに心に誓った。
「そういえば、何で俺こんな所に呼ばれたんだ?」
暫くして、思い出したように言う夢叶。
「おう。そうだった。我も忘れていた」
「・・・」
無言の天御中主神の視線がレジェンドドラゴンに突き刺さる。
「ゴホン。貴様は異世界召喚の対象者として選ばれたのだ」
「まじで!?」
「異世界召喚キター!」
あれ?でも結構話し込んでたんだが・・・
「ここはその世界とは時間の流れが遅いから、気にしなくても大丈夫よ」
心を読んだかのように捕捉してくれる天御中主神。最高神、侮れない。
「それで、まぁ。神となれば時間がほぼ無限にあるからな。我も暇なのだよ」
よくある暇つぶしにか。神の都合、ましてや暇つぶしで人間を異世界に送り込むなど、どれだけの迷惑が掛かると思っているんだ。送り込まれた者だけでなく、その周りの人間もどれだけ心配して迷惑を掛けるか。
「そう、怒るな。我の暇つぶしだ。その辺の配慮はちゃんとしてある。むしろしないと我が天御中主神に何をされるか・・・」
ガクガクブルブル。
「・・・どういった配慮を?」
何だか可哀想な動物を見る目になってしまった。
「殆どが、死んだ者が対象だ。死んでいない者が対象となった場合でも、転移先の世界で死ねば、転移されたその時の状態に戻しつつ、その時の記憶も蘇る様にしている。更に転移先で手に入れた知識経験はそのままだが、魔法など元の世界で起こりえなかった事はほぼ出来なくなっている」
死んだ者は、まぁ生き返らせてもらったような感じだろうか良いだろう。生きている者も元の世界に戻れるなら良いんじゃないか?大概、戻れない事が多いし。数十年生きて、当時の記憶も忘れるだろうから、その辺りの配慮もされている。
「・・・ほぼ出来なくなっているというのはどういう事だ?地球でそんな奴は見た記憶ないが」
「力が強すぎる者が偶に、我の制限を超える者がおるのだ。その超えた部分が、発動できるようになる。例えば、指先から街を飲み込む程の魔法が放てる者がいるとすれば、指先からマッチの火よりもか弱い火が出たりとな。まぁ、街を飲み込む程度の力なら何の問題もないがな」
微妙にドヤ顔している。
「過去に居たのか?」
「そうだな・・・。卑弥呼や聖徳太子何かが有名ではないか?・・・後はそうだな・・・織田信長とかもそうだったはずだ。・・・最近はそこまでの人物はいないな」
第六天魔王と呼ばれていたのも何だか納得が出来るかもしれない。・・・しかし。
「そもそも時間に干渉出来るのか?神であろうと過去に戻るのは実質不可能なはずだと思うが」
実際には可能は可能だ。だが、その時点でタイムパラドックスが起こり、パラレルワールドとして、派生するのだ。いくら過去に戻って元の世界に戻ったとしてもその世界は何も変わらないのだ。ド〇ゴンボールの未来トラ〇クスの関係みたいなものだ。
仮にマナ操作でその派生した世界のその元の世界と同じ時間の戻ったとしても、過去改変により、自分が望んだ世界になっているかは分からない。
よくある例えだとは思うが、道端の石ころを蹴飛ばしたその先に、誰かがいてそれが当たり、それにより誰かが死んでいた場合、その人物、その子孫が開発したであろう物が無くなり、あったはずの物が無くなっていたり、建物の配置も変わっている事になるだろう。それに、最初の元の世界のその人物は消息不明となる。更には、その派生した世界にもう一人の自分が存在する事になる。ただ、これも某アニメと同じで別人の様な扱いとなるが、自分と全く同じ顔が存在すると言うのも余り良い気分ではないだろうし、その自分が既にいるのだからその自分が住んでいる家に居場所など当然なく、その世界にその人物を知っているのは誰もいないのだ。超常的な力を持つ者なら何とか出来るかもしれないが、地球の様な化学では、人の出会いに恵まれない限り、某猫型ロボットのアニメ程のチート道具でもない限りは不審人物として牢屋に入れられるだろう。
「・・・その通りです。ですから、先ほどパパが言ったような転移、転生の様な事をする世界は、時間の流れが全く異なるのです」
・・・だから、天御中主神さん。人の心を読まないで下さいよ。
「フフ。ごめんなさいね」
確定じゃないか。まぁ良いか・・・良くないけど。
少し話がそれるが、天御中主神の能力だろう。神は、何かしらの能力に特化した者が多い。当然、全員マナ操作が可能だが、その特化した部分を無効か防ぐには通常よりも多くのマナが必要となる。だから、天御中主神と戦う場合、心を読まれないようにする結界を上乗せしなければならない為、短期決戦に持ち掛ける必要があるわけだ。
「地球の時間より、転移先の時間の流れは桁違いに速いのです。1年経ったとしても、地球では秒も経っていないのですよ」
なるほど、そういう世界を作ったのか。
「その通りです。異世界物は今流行っていますしね。対応しなければいけません」
「そんな理由で作ったのか・・・」
「それに、生きている者を途中で転移させるとその時点でタイムパラドックスがほぼ確実に起こるので実際は余り関係ないのですけどね。知識や経験がその時点で大きく変わってきますから」
確かに・・・。知識や経験があった時となかった時で派生するという事だろう。特に経験は大きいだろう。異世界物と天御中主神自身が言っているから大体はファンタジー物だろう。つまり、戦闘経験がかなりの確率で付く。その経験はかなり大きいだろう。地球のゴロツキなんか可愛い者に見えるだろう。そのゴロツキ、不良なんかを避けて通るのと気にせず絡まれて対応することでまたその関わった者達の人生も左右する事になりかねない。
「まぁ、神である我々も何かしら世界に干渉していたいのだよ。自分達で作った世界は特にな」
レジェンドドラゴンで締めくくられるが結局、肝心な事を聞いていない。
「結局、俺はその異世界に飛ばされるのか?」
「出来れば言って貰いたいが・・・イザナギなら自分で行けるだろうけどな」
「まぁ、行けるだろうけどさ。行かないと・・・お義父さんは問題あるんじゃないか?」
レジェンドドラゴンを何と呼べばよいのか一瞬迷った。
「む・・・これといった事はないが、神としての信用がなくなるな。ある供物を条件に召喚という儀式に手助けをしてやっているのだ。それをないがしろにしては、その供物の今後入手量が減ってしまう」
・・・供物?・・・まさか!?
「人間とかそういった生贄の様な類ではありませんよ。俗に言う、アーティファクト、魔道具です。マナを蓄える力がありますのでもしもの事態に陥った時はその蓄えたマナが約に立ちますから」
察して説明補足をしてくれる天御中主神。
神同士の戦いの為の保険だろう。自身の持つマナ量が勝敗を分けると言って良い。それをアーティファクト等で貯蓄できる量を増やしているのだろう。当然、そのアーティファクトには他の神が干渉出来ないように結界が張られる訳だが。
・・・そうか、俺も考えた方が良いな。イザナミの事もあるし。
「その方が良いですね」
「そのアーティファクトは入手は困難なのか?」
「いいえ、寧ろ、自身で作り出す事すら出来ます。神の干渉が出来ないと言った特殊な物でも何でもありません。そもそも神が干渉できない物など神同士の物以外では見た事も聞いた事もありません」
「では、何で・・・」
「備えは必要ですからね。ただ、表立ってすると逆に誰かを殺そうとしているなどと物騒な勘違いをする者がいますから、こうして入手すれば暇つぶしに干渉する為の物だと言えますし、僅かながらにでも貯める事が出来ますからね」
「・・・他の神はしていないのか?」
「している者もいるでしょうが殆どはしていないでしょう。神は不干渉が基本ですからね。貴方やイザナミの関係は極めて異例なのですよ。まぁその異例を間近で見てしまったから私達もこうするようにしたのですが」
「それと、転生・転移者にはギフトとして何かしら能力などある程度の望む力を与える様にしているのだが・・・」
「・・・分かった、じゃぁその異世界に飛ばしてくれ」
「・・・聞いていたか?ギフトとして何かいる物はないか?・・・と言っても神だから自分で出来るだろうが・・・」
どうした物かと困っているお義父さん。
「ギフトじゃないが・・・お義父さんからなら既に貰っているさ」
「ん??」
何もやった覚えはないという顔だ。
「お義父さんとお義母さんの為なら、これぐらい安いもんだよ」
ポンと横にいたロシィの肩を抱く。そして、見つめ合う。
「そうか・・・貴様がそう言うのであれば有難くそうして貰おうか。・・・ただ、ちゃんと一つだけ約束をして貰おう」
「約束?」
「娘の幸せが第一だ。ドラゴニュートが泣くような事は二度とするな。良いな?」
殺気に近い威圧を出すレジェンドドラゴン。流石はドラゴンこれに屈するわけにはいかない。二度と言うと・・・恐らく一度目は、俺がほぼ死んだことだろう。転生はしたが、その間は死んだも当然だったからな。その間にどれだけラートを・・・ロシィを泣かせたのか。そんな事はもう二度とさせないと新たに自信に誓い。
「勿論だ!」
気合を入れて、その威圧を跳ね返してハッキリと言った。
「ならば、問題ない。では送るぞ」
何処か満足に笑っているように見えた。天御中主神も満足げの表情だ。
景色が光に包まれ始める。この神の流域ともいえる場所とはお別れだ。
さて、次はどんな世界が待っているのだろうか。
「あっ!ちょっと待ってくれ」
「・・・何だ?」
訝しむ目で見られた。
「仲間に俺の事を無事と伝えて行いと心配してしまうだろ」
「・・・ふむ。仕方がないな。貴様がいた世界とこれからいた世界は時間差が大きくは離れていないからな」
「そうなのか。なら尚更だ直ぐに戻るからちょっと待っててくれ」
そう言ってサイランにいるリリィ達の元にロシィと共にゲートで移動した。
「しまらないな」
「まぁまぁ偶にはこういったものも良いではありませんか」
「そうだな・・・」
年寄夫婦の様な会話をする二人であった。
ブックマ評価ありがとうございます。




