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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第4章 バーザルド
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第92話 往世 夢叶

「何故、ロシィがここに?父上って・・・?」

 謎空間に現れた声の主であるロシィに尋ねる。


「記憶を思い出したら、また壊れるかもしれない」


 また?壊れる?どういうことだ?それにそれだとロシィは俺の事をずっと前から知っていたという事か?


「おお、ドラゴニュート。久しいな」


 ドラゴニュートって言えば、竜人の事か?

「っ!?」

 突如、その言葉でズキッと頭が痛み、手で抑える。


「父上!思い出す様な言葉を使わないで!」

「お、おお。すまない」

 強大なドラゴンが娘に怒られている親父の様だ。いや、実際話からするとそうなのだが。ドラゴンの姿だから何とも言えない光景だ。


「ロシィ・・・。何を忘れて、それをお前が何を恐れているのかは分からないが俺の記憶だ。取り戻させてくれ」

「でも・・・!」

 辛そうな表情をするロシィ。


「・・・ラート。それでも俺は思い出したいんだ!」

「!?」

 ラート。自然と出て来た。言ってから気付いたが昔のロシィ・・・いや、ドラゴニュートの愛称だ。女の子がドラゴニュートって名前はどうなんだと少しでも可愛い様にと愛称としてそう呼ぶようになったのを思い出す。


「「「・・・・・・」」」


 実際は数秒程だろうが、かなり長く感じられる沈黙。


「・・・分かった」

 更に数秒、ラートが沈黙を破る。


「ユウ・・・あなたは神なの。いえ、正しくは神にもうすぐ戻ると言った方が良いでしょうね。そして、記憶を取り戻せば、恐らく再び神となるわ」


「俺が・・・神?」

「ええ。もう500百年ぐらいも前の話よ」



 イザナギとして生を持ち、イザナミと恋に落ちた。しかし、イザナミが死んだ時、黄泉の国へと会いに行った。いや、会いに行ってしまった。黄泉の国にいたイザナミは腐敗して蛆にたかられていた。その変わり果てた姿に恐れ、逃げ出してしまった。黄泉の国の入り口を岩で塞いだが、イザナミは逃げ出した事を裏切りと捉え、「お前の国の人間を1日1000人殺す」と言い、「それならば私は産屋を建て、1日1500の子を産ませる」と言い返したそうだ。


 ここまでは、地球の神話としてある情報と大体同じらしい。夢叶は詳しくは知らない為、そんな感じなのを何処かで見た事がある程度の感じに捉えていた。問題は、どうやらそこからのようだ。



 黄泉の国を塞いだ岩は、当然特殊な結界を張られ、神と言えどそう簡単に壊せるものではなかった。神同士なのだその辺りは考慮されての結界だ。

 数百年後、ようやく岩を砕き、黄泉の国から出たイザナミはイザナギを探し、イザナギが作った世界をことごとく壊していったのだ。そう、壊したのは世界だ。イザナギは地球を愛していた。その為、似たような世界、いくつも作り、1日に1500の子を産ませるという事を実際にしていたのだ。

 しかし、イザナギは1日に1000を壊すどころか、1日に1つの世界を壊していったのだ。

 当然、イザナミを止めにイザナギは動いたが、黄泉の国からイザナミと共に出て来た者達により阻まれ、なかなか止める事ができなかった。そして、ようやく止める事が出来た時にはイザナギの愛する世界は地球だけとなっていたのだ。その地球もイザナミ自身も愛着がまだ残っていたから壊されなかったような物であった。

 そして、イザナミは壊しながらもちゃっかりと自分の世界を黄泉の国の者達に邪魔を指せている間にいくつも作っており、それを知ったのをきっかけにイザナギは「今度は貴様の世界を壊しつくしてやる」と壊される側から壊す側へと修羅へ変わったのだ。

 

 イザナミの様に仲間、駒がなかったイザナギはイザナミに阻まれながらもイザナギの世界を数年かけて1つ、また1つと壊していった。

 その間、イザナミが自身の作った世界が壊されて泣いているという事などその時のイザナギが知るよしもなかった。

 そして、さらに数年かけて壊し回っていた時に出会ったのが、ロシィ。ドラゴニュートだ。二人の酷い争いを見るに見かねて間に入って来たのだ。本来、神同士は無干渉が基本なのだが、ドラゴニュートは作られた世界で生まれた者達は何の関係もないのに自分達の勝手で殺すのはおかしいと我慢の限界が来た為に間に入ったのだ。


「貴方達がしている事は只の虐殺行為よ」

 その言葉が二人の胸に突き刺さった。冷静さを取り戻した二人だが、昔はイザナギとイザナミは恋仲だったが、イザナギには勿論その様な感情はなくなっていた。しかし、イザナミにはまだその感情が残っていたのだ。恐らく、お互い、冷静に考え治してから再度話し合い、昔の様に戻ろうと話そうとでもしていたのだろう。だが、その機会を上手く作ることが出来ず、その間に、イザナギとドラゴニュートが恋仲となったのだ。

 それを許す事が出来なかったイザナミが再び怒り狂う事となった。


「何故!?貴方などに私のイザナギが!!」

 そう叫んでは、イザナギとラートを切り裂こうとまるで死神の持つ鎌を持って追いかけてくる。恋仲を切り裂くという事ではなく、物理的にラートを切り裂こうと追ってくるのだ。恋敵は死すべきと。

 ラートと新たに作った世界は無暗に壊されることはなかったが、必要以上に追い掛け回された。そして、ついにイザナミの手がラートに届いた。


「そうか・・・前にロシィが倒れた時に一瞬、誰かと被って見えたのはロシィ自身だったのか・・・」

 シルヴィが田中太郎に操られ、ロシィが倒れた時の事を思い出す。それと同時に当時の光景がひもづる式に思い出してきた。


 重傷を負ったラートに止めを刺そうと放った一撃から身を挺して守ったイザナギ。愛するイザナギに重傷を負わせてしまった動揺の隙を付き、イザナギはラートを少しでも回復させ、何処かの世界に転移して逃げるように言った。


「イザナギ!貴方はどうするの!?」

「私は・・・あいつの落とし前を着ける」

「その体で無茶よ!」

「・・・!?・・・もう死になさい!イザナギは私の物よ!」

「行け!」

 ラートが無事な姿になっている事に再び怒りで動揺がなくなったイザナミが迫り来た為、投げ飛ばす様にラートを逃がす。


「どうして!?どうして私の物になってくれないの!?」

「私は物ではない!神・・・いや、人間だ!私に構うな!行け!ラート!!」

「・・・っ!!」

 歯を食い縛り、何処かの世界に行こうとゲートを開ける。今、思えばこの時に選択を失敗したと思う。何処か、イザナミが関与していない別の世界に移動しようとしたのだ。イザナギとラートが関与した世界は全てイザナミによってしらみつぶしにあっている。つまり、全く未知の世界の場所に転移すれば、負傷している今のラートが何処まで対処できるのかも未知数である。その保身から行き先を覗けるゲートを選択してしまった。


「逃がす!ものかー!!」

 怒り狂うイザナミ。鎌でイザナギと間合いを取り、首に巻いていた9つの勾玉を砲台にするかのように手を翳した手首付近を舞い、勾玉から一本一本の光が就職してレーザーの様にラート目掛けて放たれた。

「!?」

 ゲートの先に気を取られていたラートは反応に遅れ、直撃するその瞬間。転移でラートの目の前に現れたイザナギがイザナミの攻撃を受け止める。


「イザナギ!?」

「ガハッ!?」

 イザナミの勾玉にはマナが濃縮され、それを速射だった為に少しとはいえ解き放った一撃は、イザナギの即席で作られた防御結界等突破され、イザナギの心臓真下を貫通は防ぎはしたが、見事に抉り取られた。


「・・・行け!俺はきっと再びお前と・・・共に・・・!」

 ラートの背中を押し、無理やりゲートを閉じる。閉じるその瞬間に涙ながらにイザナギと何度も叫んでいた。

 閉じたゲート向こうでラートは背中の手の温もりを抱く様にして大声で泣いた。



「その温もりは、イザナギとの能力授与による繋がりだったの。ユウがしていたみたいに貸し与えるような物ではなく、イザナギの能力を貰ったの。それと同時に、魂の繋がりもしていたのよ。・・・あの瞬間に、貴方は、イザナギは私と再び確実に出会えるようにしたのよ」



 その後の事は、ラートは知らず、只々、イザナミに見つからないようにイザナギとの再会の為に身を隠しながら傷を癒したという。イザナミの能力で傷がマナによる治療でも中々完治しない呪いの様なものだった。イザナミの能力、呪いを身に受けているという事はそれをイザナミは察知できるはずである為、それを防ぎながら治療しなければならなかった為に尚更掛かったにかなりの年月、数十年は掛かったと言う。

 只、その治療もイザナギからの能力授与がなければ、数百年は掛かっていたらしい。


「俺の能力は、癒しだ。イザナミも正確には癒しの能力を持っていたんだ。だが、黄泉の国に行ってしまった為、どうやら能力が反転して呪いとなってしまったみたいだ」

「イザナギ!?記憶が!?」

「まだ、完璧じゃないがな。お前の話を聞いていて思い出してきた」

「でも・・・それじゃぁ!」

「大丈夫だ。どうせ、記憶を取り戻したらまた修羅だった頃に戻るんじゃないかとか阿保みたいなことを心配してたんだろ?」

「阿保!?・・・ンンッ。まぁ、その様子だと私の取り越し苦労だったようだけど。数年間の私の苦労は何だったのだろう・・・」

 わざとらしい咳とずっともしも修羅だった頃に戻ったらと心配していた自分が馬鹿みたいと自嘲気味に後半は呟いた。


「悪い。でも、俺の事をずっと守っていてくれたろ?転生に失敗して記憶を失っていた俺を。今なら分かる・・・ありがとう」

「・・・っ!?」

 ラート、いやロシィに頭を下げる往世夢叶。その言葉に涙を流し口元を抑え、コクコクと頷く。


 何をどう、守っていたのか。見守り、イザナミからの脅威から守っていたのは当然だ。しかし、神はマナの動きを読み取る事が出来る。誰が、どうマナを使ったのか。「あれは〇〇の気だ」と言う風に。つまり、今まで散々、転移やゲートを使っていたのをロシィが陰ながらそのマナの動きを誤認するようにしていたのだ。マナが動いた事実は隠せない為、何処に転移したのか悟らせない為、ユウのマナありとあらゆる世界に拡散したのだ。ユウの存在に気付いてもそう簡単にはたどり着けないように。その間に、力だけでも取り戻してくれれば良いと思っていたのだ。記憶は、修羅に戻る可能性があった為、最終手段として、その時は話そうとしていたらしい。


 そもそも神と神の戦いは不毛な戦いと言っても良い。お互い、マナを操ることが出来る。好きな事象を起こせるのだ。「お前死ね」たったこれだけで人を殺せるのだ。しかし、それを防ぐために「俺絶対死なない」というバリアを張る。「それを打ち破って死ね」「それすらも守る」などと言うようにまるで子供のような戦いなのだ。それを周囲のマナを使ってするのだ。永久ループだ。よって、その子供の遊びを前提にしながら自身の内包するマナが勝利の鍵を握る。

しかし、その内包するマナで「死ね」などというような行為に及んでも周囲のマナで既にそういう直接的な死因となる物からは守られている為、無意味である。結果、物理か魔法というような攻撃による類、かつ不意を付く類でないとまともなダメージ、怪我を負わす事すら出来ないのだ。

その不意な強力な攻撃をされ、無理やり守りに行ったために、イザナギは致死量のダメージを受けたのだ。



「お前をゲートに放り込んだ後は、もうドン引きだったよ」

 

話を戻そう。


「はい?」

「俺に致死量のダメージを与えたからな、イザナミがとち狂ったんだ。あの狂い方はやばかった。奇声を上げまくって何を言っているのかさっぱり分からんかった。まぁそのお蔭で俺は転生する為の事象を起こす事が出来たんだが。死に掛けでマナが少なかった為か、転生する時期にもかなり遅くなって、さらに記憶もなくなっていた。おまけにマナの使い方も忘れてただの人間として過ごしていたんだからな。成功とは程遠いが」

 やれやれと肩を竦める。


「そうそう。私もどうしたものかと思ったわ。家庭は最悪な環境だったし、虐められてるしで。でも、虐めてた奴のお蔭で目覚めだしたんだけどね。我慢の限界が超ギリギリだったわ」


 ・・・そうか。そんな時から既に・・・いや、転生する前からずっと俺を待ち続け、見つけて見守っていてくれたのか。普通、そこまで1人を想って待てるわけがない。数年なら待てる者もいるかもしれないが、桁が違うのだ。気が遠くなるほどだっただろう。


「・・・本当にありがとう」

 そう思ったら自然と言葉が出た。

 見つめ合い、抱きしめ合う。


「・・・ゴホン。我がいる事を忘れてはいないか?」

 わざとらしい咳をするラートの父親であるドラゴン。


「そういえば、居たな。お義父さん」

「う、うむ。仲が良いのは良い事だが場所はわきまえたまえ」

「父上のエッチ」

 イヤンという風に言うラート。


「・・・ラート。俺はこれからもお前と共に生きていきたい。俺と一緒に生きてくれるか?」

「勿論です」

 二人の唇が近付く。


「ウォッホン。ウォッ・・・ゴホゲホガハッ」

 わざと咳をしようとして咽るドラゴン。


「「・・・」」

 唇の接近は中断され、生暖かく咳き込んで涙目になっているドラゴンを見る。


「ゴ、ゴホン。ンン!それで、イザナギよ。我の娘を娶るのは構わない。だが、貴様は今後どうして行くのだ?イザナミを殺すのか?」

 鋭い目だ。冗談を言って良い雰囲気ではない。


「正直、分からん。俺は、記憶を失っていたせいか、イザナギよりも往世夢叶としての自覚の方が高い。イザナギは過去の話・・・幼かった頃の記憶みたいな位置付けにあるんだ。だから、どうするかは今のイザナミ次第だと思う。イザナミがとち狂っている間に、転生する為に力を使って意識がなくなったから、その後どうなったのか分からないからな」


「・・・つまり貴様は、イザナギとしてではなく、往世夢叶として今後生きて行くという事か?」

「・・・ああ。別にイザナギだろうが、往世夢叶だろうが、俺は俺・・・だろ?」

「じゃぁ、イザナギがユウなら私はロネシリィ・ノアルーフ、だね!」

 ピョンと抱きついて来るラート。いやロシィ。


「ラー・・・、ロシィ。やっぱ、ラートでいる時の方が華がある良い女って感じだったぞ」

「ラートのままの方が良いかしら?」

「・・・いや、どっちでもお前はお前。俺の愛する女に変わりはないさ」

「キャー」


 ヒシッ!


「そろそろ義父さん泣いても良いか?」

 ドラゴンが悲しく呟くのだった。

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