第90話 絶望
お待たせしました
「・・・さて、次はどいつにしようかな」
品定めをするように人々を見渡す夢叶。
「ミナトを!ミナトを返してー!」
崩れ落ち泣き叫ぶミナトの母親。
「貴様!何をする!魔族と結託していたのか!?」
冒険者らしき男女が8人前に出る。しかし、全員腰が少し引き気味だし声が震えている。
「はぁ?俺はお前達と同じように思考して、それを実行しているだけだが、何か問題があるか?」
やれやれと大袈裟に肩を竦める。
「ふざけるな!俺達を魔族と同じにするな!」
吐き捨てるように言う冒険者の男に「そうだ!」と便乗する他の人達。
「お前達は魔族だから信用出来ないんだろ?俺達は、お前達人間が信用できない。だから、お前達が魔族だからと見つけ次第殺す様に俺達も人間を殺すのに何の問題がある?やっていることはお前達と何一つ変わらないと思うが?」
「何をふざけたことを!」
「ふざけているのはお前だ。少し黙ろうか」
怒鳴り出た冒険者の男の口を布で縛る。
「んー!?んー!!」
口を塞がれ血が上ったのか、突撃してきたので手足を拘束すると当然倒れるのだが、倒れた後もジタバタと暴れまわる。
「う、うぜぇ・・・」
そう言いながら、あまりのウザさにミナトと同様に跡形もなく消し去る。
「もう、面倒だ。殺ってしまうか」
ニタァと邪悪な笑みを浮かべ、上級魔族に攫われていた人達を次々に跡形もなく消し去っていく。恐怖で街人は尻餅をつき、逃げられずにいる。
「貴様ー!何のつもりだ!!」
攫われていた人が最後の1人となった時、怒りを露に街の人達の間に割って入る。
「いや、お前を信じて貰おうと思ったんだが、聞き分けがないからさ」
「・・・やはり、信じたのが間違いだったか。許さん。・・・許さんぞ!」
怒りに震えているガード。
「相手になってやろう」
クイクイと手招きする。
「あれ、やりたいだけだよね」
「ちょっと調子に乗っているよね」
ロシィとリリィが指さしてコソコソと話している。
聞こえているんだけど!?
顔が若干赤くなるのが分かる。落ち着け俺!
「例え刺し違えてもこの街の者達、サイラン殿の街は私が守る!・・・地の底より湧き出る悪魔の炎よ、我が敵を飲み込め!」
詠唱と気合と共に強大な魔力を作り出し、マグマの様な赤い球体が、ガードの手を上げた所に出来、段々と元気を集めた玉の様に大きくなっていく。
「街の者達よ!早く逃げよ!私が刺し違えてもこいつを倒して見せる!」
ガードの声にハッと我に返り、悲鳴と共に各々が逃げ出す。動けない者も近くにいた動ける勇敢な者達が何とか一緒に走って逃げだして行った。
「貴様達を信じた私が愚かだった!・・・デビルフレイム!」
気合と共に赤い炎の球体を放つ。
「おいおい。守る街を消し去るつもりか?」
夢叶の消し去る発言は置いといて、でブルフレイム。被害はかなりのものとなる。
「貴様がいれば、街どころではなくなる!」
それに、ガードは既に周辺に結界を張り、被害はこの一帯だけで済むようになっている。これには被害を軽減するだけでなく、衝撃を中に閉じ込め、威力上げる目的もある。
「そりゃそうだな。悪魔なら天使か・・・」
「貴様に逃げる場所はない!」
「フン。天使の輪よ。脅威を取り除き、悪魔を滅せよ!エンジェルリング!」
手を翳すとデビルフレイムの上に天使の輪が現れ、その我が包み込むようにデビルフレイムの中心付近まで下がると輪が小さくデビルフレイムを飲み込むように消し去り、光の粒子となって空に天使の輪の様に広がって消えた。
何も知らない人が見れば綺麗な光景だ。逃げていた人達でさえ思わず足を止めてしまう程に。だが、夢叶にはそれを眺めているその暇がなかった。
「白く、大いなる氷結、その前に全てを踏み潰す結晶、イノセントメテオ!」
その粒子となった矢先にデビルフレイムと同等の白く美しさを思わせ氷の塊、イノセントメテオが真上から圧し潰さんとしている。
「天使の輪よ。氷解さす炎となれ。エンジェルフレイム!」
エンジェルフレイムと同様にイノセントメテオを輪が消し去る。違う点は輪が天使らしい色ではなく炎の様に赤い。イノセントメテオは赤と白の粒子となって消えた。
「どういうつもりだ?カミナ」
そう、イノセントメテオを放ったのはカミナであった。
「皆!早く逃げて、Sランク冒険者!カミナ・ミナツキ、この魔族に協力する!この人間は危険すぎる!」
無口なカミナが大声で叫び、街の人達を鼓舞する。その声で我に返り、再び走り出す街の人達。
「カミナ様だ!もう安心だ!」
などと、逆に安心して逃げるのをやめて野次馬になる者までいる。
「俺が危険だと?師匠に向かって言う台詞ではないよな?」
名一杯怖い顔にして言う。
「何も教わっていない」
「・・・確かに!」
特にこれと言って教えた記憶がなかった。
「だから」
足元から氷柱が夢叶を目掛けて出現する。それを無駄無く躱すと身動きが出来なく無くなるように氷柱が夢叶を囲んでいた。
「でかしたぞ。カミナとやら!デビルフレイム!」
再び、放つデビルフレイム。
「逃げ場も無ければ、その状態ではまともに打ち返す事も出来まい!」
勝ち誇るガード。
「カミナ、見ておけ。俺の仲間になるって事は、これぐらいはして貰わないといけない」
身動きが出来ない状態で迫りくるデビルフレイムの前にあまりに落ち着いている夢叶に寒気を覚えるガードとカミナ。
夢叶がデビルフレイムを睨むと先程と同様エンジェルリングにより天使の輪の粒子となって輝いて消えた。
「「な!?」」
先程と同様にデビルフレイムが消えたが、夢叶は無詠唱でデビルフレイムを睨んだだけだ。
デビルフレイムはそもそもSランク級の魔法の威力だ。地表に当たれば間違いなく地面は抉れ、地形が変わるほどの威力を持っている。それを無詠唱で見ただけでエンジェルリングなる謎の魔法で相殺したのだ。連発出来ない魔法と言うのなら、大きな魔力を消耗すると言うのならまだ納得も出来なくはないが、その様子が全くない。次元が違うと言っても良いだろう。そう、ガードとカミナは察した。
「無謀だった」
「く、ゲートを使用できる時点で只者ではないとは思っていたが、まさかここまでとは・・・」
やらかしてしまったかと思うカミナとガード。しかし、夢叶をここで止めなければ被害は広がる。そんな事は出来ない。
「終わりか?なら・・・」
「くっ!」
ガードは結界を狭めて強化する。被害を抑えるための結界ではなく、夢叶を抑える為に。
「無駄だ」
狭まってくる結界を前に、右手を街の方に翳す。
「まさか!?」
野次馬の1人となっていた、最後の救出された人を消し去る。
「悪いな。助けたのが無駄になったな」
「くそ!」
「!」
歯を食いしばる二人。
「ひ、助けて!!」
悲鳴を上げながら逃げ出す野次馬達。
「五月蠅いな」
野次馬だった者達が全員、手足、口を拘束されて地面に倒れる。
「まずは誰にしようか」
目に涙を為、全員が自分でないことを祈っている事だろう。
「やらせない」
アイスウォール。夢叶と元野次馬達との間に、一軒家程の大きさに厚さ15センチ程の氷の壁が生えるように出現する。アイスウォールは氷系統の魔法の中では初級魔法だ。カミナも無詠唱で可能だ。そこに渙発入れず同じく初級魔法のアイスランスを夢叶目掛けていくつもの、槍の先端の様な氷を放つ。
「何だか、面倒になってきたな」
そのアイスランスを全て炎の壁ファイアウォールで消し、そのままアイスウォールもすぐに溶けて消え去る。
「・・・残念」
ガードのテレポートにより夢叶の懐に入りゼロ距離でデビルフレイム(小)を放つが、それを躱してそれを掻き消し、放つ為に手を出していた腕を掴み、拘束している野次馬達の元へと放り投げる。
「んー!んー!」
投げられた場所にいた野次馬達が必死に目で助けを求めている。
「せめて、少しでも・・・遠くに逃げろ」
布での拘束の為、簡単に解く事が出来た。
「す、すまない。俺達がアンタを信じなかったばかりに・・・」
「構わない。この街の皆が幸せなら私は・・・」
野次馬達が感謝を述べながら走って逃げる。
「夢叶よ。この者達を殺すなら私を殺してからにするんだな!」
手を広げ、ここは通さんと立ちふさがる。その横にカミナも降り立つ。
「無駄だな!」
夢叶の姿が二人の目の前から消え去る。
「何処!?」
「しまった。テレポートか」
周囲を探すが、何処にも表れない。テレポートは瞬時に移動できるが、潜伏できるようなことはできない。なのになぜすぐに表れないのかと、冷や汗が流れる。知らぬ間にガードとカミナはお互いの背中を預け合っていた。
数秒もしない内に、野次馬達が逃げた方向から悲鳴が聞こえて来た。
「しまった!もう狙いは私達ではなく、街の人々を殺す事にしたのか!?」
「悪」
最大速度で向かう。ガードはテレポートとデビルフレイムにより魔力の消耗が激しく、カミナに遅れを取っている。
「・・・そんな」
「ぬぅおおオーーー!!!」
現場に辿り着いたカミナとガードが目の当たりした光景。それは、多くの倒れた街の人が消え去る瞬間であった。




