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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第1章 魔法が使われていない世界
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第8話 宿屋にて

「待て、この者は私の客人だ。ある事情の為、同行してもらっている。」

 エイリが間に入ってくれる。


「しかしですね。こういうのは礼儀ってやつを教えておかないと駄目なんですよ。」

 ドスのきいた声の男が言うと、後ろ4人もうんうんと頷いている。


 ほら見ろと言わんばかりにこっちを見てくるエイリ。

「申し訳ありません。今後気を付けますんで・・・」

「私も許しているし、許してやってくれないか。」


 絡んできた5人がコソコソしている。

「・・・わかりました。エイリ隊長がそういうのなら今回は多めにみましょう。しかし、次はありませんからね。」

「ああ、悪いな。」

 エイリが言うと道を開けてくれたので、居心地が悪くなったギルドをそそくさと出る。


「すまん。助かった。」

「構わないが、言ったそばからこれだと先が思いやられる。とりあえず、殿下がいる宿屋に向かうぞ。」

「ああ・・・っと、わかりました。」

 エイリはやれやれと肩を落とす。


――――――――


 目的の宿に着くと、殿下の部屋に行きノックをする。

「殿下、戻ってまいりました。」

「入りなさい。」

 ガチャとドアを開けて入ると殿下が椅子に座っており、後ろに護衛2人が控えていた。殿下がエリスの後ろに夢叶の姿を確認すると

「あら、残念。どんなお仕置きをするか考えていたのに。」

 と残念そうな素振りで残念そうじゃない声で言う。


「まぁ、ランクMのエリィから逃げられる者なんて、指で数えるほどいるかどうかでしょうけどね。」

 殿下は、エリィから逃げられるはずがないと確信しているようだった。


 とりあえず、念のために身体強化の魔法を掛ける。


「さて、お子様。王都に行く前にある程度、話を聞いておきましょうか。」

 嫌味めいたその言葉に殿下の言葉にイラっとする。


「そろそろ、俺怒ってもいいかな?」

 さすがに、今日一日お子様ばかり言われると腹が立ってきた。殿下でも例外ではない。


「何よ?文句あるの?」

 イラッ。


「多いにあるなぁ。」

「な、なによ!?」

 あると返ってくるとは思っていなかったのだろう。ビクッと反応した。そもそも、殿下である自分にそんな態度を取れるとも思っていなかったであろう。


「お前達は、何か?人に愛称、名前を呼ばれただけで侮辱だなんだ言って首を刎ねるくせに、名前ですらない言葉で侮辱しまくっているお前らは首を刎ねられないとでも思っているのか?」

 殺気を出す。出してるつもり。

 殿下の後ろに控えていた親衛隊が前に出る。エイリも戦闘態勢に入る。

 どうやら殺気を出せていたようだ。よかった。


 沈黙が続く。


「落ち着け、貴様に我々からこの部屋から逃げることはできない。」

 男の親衛隊が言う。殺気を出し慣れていない為か、全く平気そうだ。イメージ的には殺気でこいつやばい、いやな汗が出る。ってやりたかったのだけど。まぁいい、そのうちできるようになってやる。

 狭い部屋というが、この宿屋の中でも最大の部屋で広さは十分である。なにより、エイリとの距離が今度は3歩は空いている。逃げることは可能だ。


「そうだ!それに貴様は殿下に対する不敬の数々、殿下が何も言わず、殿下を助けるという功績がなければ私がすでに貴様の首を刎ねている。」

 女の親衛隊がエイリと同じようなことを言っている。


「それじゃあ、まず。殿下さんよ。今までの俺のあんたに対する数々の不敬とやらを罰するか?まぁ、罰すると言った時点で俺はここを去るがな。」

 殿下が一瞬考える。まさか、本当にこの3人を相手に逃げれるのか?とエイリの方を見る。エイリが首を横に振る。それは、逃げられるということだ。エイリを信じ、ため息をつく殿下。


「そもそも、助けてもらっておいて、その程度で罰するような器が小さいつもりもないし、何か言うつもりももともとなかったわ。」

 意外と寛容だ。


「侮辱してごめんなさい。もう、お子様とは呼ばないわ。それと、改めて言わせていただきます。今回は助けていただき、感謝します。」

「「殿下!?」」

 2人の親衛隊が驚きの声を上げる。

 殿下が頭を下げたのだ。

 殺気を収め(つもり)、頭を掻きながら別にいいと、手をひらひらとする。そもそも、殿下自身にはそこまで怒っていない、塵に積もったのが殿下の、お偉いさんの特有とでもいうのだろうか“私偉い”オーラと上からの物言いにプチっとなってしまっただけなのだ。内心、少し大人気なかったかなと反省。まだ、子供だけど。


「殿下!なぜこのような平民のお子様ごときに頭を下げるのですか!?」

 女親衛隊が大きな声で不満を言う。男の親衛隊が「馬鹿やめろ」という反応をする。


「殿下さんよ。この女の人、親衛隊から外した方がいいんじゃないか。」

 呆れたように殿下に言う夢叶。


「お子様風情が!私を馬鹿にするのか!我々は、2人ともランクSで、さらにはランクMのエイリ隊長がいて、お子様ごときが逃げきれるなどありえない!」


「黙りなさい!!あなた!私の顔に泥を塗る気?」

 殿下が女親衛隊よりも大きな声で制する。

「この者がなぜ怒っていたのかわからないの!?」

「それとこれとは話が別です!このような平民のお子様などに我々が、ましてや殿下に不敬をし、殿下に頭を下げさせるなどあってはならないのです!」

 女親衛隊は、怒りで歯止めが利かないような状態になっているようだ。ここまで怒れるというのは殿下は余程信頼のおける人物ということだ。


「わかっていないようだから、馬鹿なんだろ?いや、クズと言った方が?」

 あきらかに馬鹿にしている言動をとる。


「貴様―!!」

 剣を抜いた。


「あー。駄目だ。こういう奴は、殺したくなってくる。」

 低い声で、睨みつける。全員がゾクっと寒気を感じた。


「いい加減にしないか!」

 エイリが怒声を出す。


「た、隊長。し、しかし!」

 怒声に慌てる女親衛隊。


「今、向かって行ったら確実に殺されていたぞ。」

 そんなまさかと夢叶を見る。夢叶はすでにイライラしている感じが見えるが普通に立っていた。


「そもそも、なぜ、我々がこの者を王都につれて行こうとしているのか忘れたのか?低レベルにも関わらず、たった1人で殿下を助けただけでなく、無傷でサラマンダーを倒した男だぞ。どのような力を隠し持っているのかわからない相手に単純に襲いかかっては簡単に殺されるぞ。さらに言うならば、私とて、この者に勝てると確証を持って言えないほどの者だぞ。」

 ランクMのエイリですらこの低レベルの相手に勝てるかどうかわからないと言う。さすがにこれには殿下も含め驚きを隠せなかった。それと同時に、女親衛隊の方は汗が滝のように出てきていた。


「この者が、我々について来てくれている理由はわからないが、おそらく善意が大半だろう。そのことを忘れるな。」


 ・・・善意?善意ではないと思う。こんな王族と親衛隊隊長のかわいい美少女2人と知り合ったのだ、縁を無駄に切る必要はない。それだけだ。ッフ。心の中で決めポーズを取る。


「部下が大変失礼をした。」

 エイリが女親衛隊に変わって頭を下げる。それを見て慌てて親衛隊2人も頭を下げる。女親衛隊の方は、下げすぎだろ?と思うぐらい下げている。


「ああ、もういいよ。それよりも、もう疲れたから寝たいんだが、俺の部屋は?」

 いろいろとありすぎて疲れた。

 部屋を出て行く時、女親衛隊は頭をまだ下げたままだった。その下げた女親衛隊の顔は誰にも見えないが酷く歪んでいた。


 通された部屋は、なんとエイリと相部屋だった。

 殿下は女親衛隊と同質。男親衛隊は1人。そして、夢叶とエイリという組み合わせだ。どうやら、見張りはエイリでないと、簡単に逃げられるということらしい。さすがに

見張りをはずしてくれるほどまだ信用はされていないらしい。善意でいるって言ってくれたのに。



 部屋に入ると、エイリと2人っきり。ドキドキ。さすがに美少女と二人っきりというのは緊張する。そんな耐性はまだできていない。無駄にいろいろと良からぬ妄想が膨れ上がる。

 だって、ベッドが1つしかないのだから。


「ベッドはそっちが使えばいい。」

 やはり、女の子にベッドは使わせてあげないとね。


「いや、私は貴様の見張りだ。寝るつもりはない。」

 バッサリと言われる。


「もう、俺が逃げないのはわかっているだろ?そっちも殿下の護衛で疲れてるだろう。俺は地べたで寝るからいいよ。」

 そう言われても、やはり抵抗がある。


「そういうわけにはいかない。」

 ただでさえ、美少女と二人っきりなのだ。緊張してゆっくりと寝れるわけがない。そこに監視の視線がずっとあれば、寝れるに寝れないし、寝れても疲れが取れる気がしない。

 エイリは椅子に座って、道具の整備をしている。・・・ふむ。全く信用されていないわけでもないらしい。でなければ、こんなにも明らかな隙は見せないだろう。殿下や2人の親衛隊が信用していない手前、見張りの任についているだけで、エイリ本人は思ったより信用をしてくれているのか。

 そう思うと少し嬉しくなった。まだ、この世界に来て1日目だが、美少女とも知り合えたし、その美少女とたったの少しではあるだろうが信用して貰えたのだから。

 しかし、横になっていても寝れる気が全くしないので

「少し、外の空気吸ってくる。」

 立ち上がり、扉の方に向かう。


「外はもう暗いぞ。」

 心配してくれているようだ。


「遠くまでは行かないから大丈夫だ。」

 以外にも案外、あっさりと外に出してくれた。殿下達はすでに寝ているようだ。



―――――


 外。

 人通りが少ないほど暗くなった道を歩き出す。

 すると、すぐにギルドを出ようとした時に礼儀を教えてくれると言った5人が出てきた。


「よう、お子様。礼儀を教えに来てやったぜ。」

 ニヤニヤと近づいてくる。


「誰だっけ?」

 夢叶は覚えていなかったが・・・。

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