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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第4章 バーザルド
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第86話 お金が入ったので贅沢にご飯を食べたのだけど


 ジッ・・・。


 夢叶を見上げる視線。決して、可愛く見上げているわけではない。むしろ睨み付けていると言って良い。


「だ、大丈夫だ。問題ない」

 睨み付けていた顔がパアと明るくなるが直ぐに引っ込め、いつものクールな顔のカミナ。


「なら良い」

 若干、赤みがある肌でそっぼを向く様子が可愛い。


「それでは、買取をさせていただいてよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」

 剣を持って裏に戻り、暫くすると大金貨550枚を革袋に持ってやって来た。ズシっと重たい。良い重みだ。ニヤニヤするのを必死に隠す。


「よーし!今夜は宴会だ!頼むぜ少年!」

 最初に奪おうとしてきた男が声を上げながら肩を叩く。こいつ・・・集る気だな。


「何で?」

「は?大金が手に入ったら豪勢に宴会しに行くだろう?普通」

 何を言っているんだと当たり前の様に言う男。


「まぁ、これだけの大金だ。少しは贅沢しないとな」

「そうだろうそうだろう」

 うんうんと何やら頷いている。


「まぁ、そういうわけだ。何処か良さそうな店を探そう」

「「だねー」」

「カミナも来るだろ?」

「ん」

 ロシィとリリィの息の合った返事にカミナもこれからは一緒に行動するんだ飯も一緒でないとな。ギルドを出る際に、鑑定をする事が出来る男から深々と頭を下げられた。「いいから」と軽く手を上げて出て行く。10人程だろうか、夢叶達が出た後からズラズラと出て来たのが分かった。


「ここ。この街最高」

 無駄に高いと言っても良い一軒家の料理店。装飾も無駄に盛大にされており、高級料理店ですよとアプールしまくっているように感じる。

「まぁ、この金があれば大丈夫だろ」

「余裕」



「いらっしゃいませ」

 中に入ると、天井も高く、高級ホテルのレストランと思うかのような店内だ。木製だが。


「何名様でしょうか?」

「7名」

 夢叶、ロシィ、リリィ、シルヴィ、エリィ、ティエ、カミナだ。ライムは席を取らないし入れなくても大丈夫だろう。


「ご案内いたします」

 案内され、8人用の席に座る。残った壁際の1席にライムをポンと乗せてやる。


「こちらがメニューとなります。お決まり次第及び下さい」

 会釈して立ち去る店員。


「おう、師匠。もっとパーっと行かないのかい?」

 剣を取ろうとした男が10人程連れてやってきた。やたらと絡んでくる男だ。ギルドを出た後直ぐに出て来た者達だろう。


「何頼んでも良いか?」

 何故、訪ねてくるのか。


「?自分の好きにすればいいんじゃないのか?」

「おー。そいつは良い!」

 男達が歓声の様に騒ぎだした。


 訳が分からないよ。


 ガハハ、ワハハと皆豪快に注文して飲み食いをしだした。

 こちらはこちらで自分達が好きな物を好きなだけ頼んだ。


 一時間程すると皆食べ終わったのでお会計に向かう。男達はまだ酒を飲んでいる。途中、何度か話しかけられたが、流していた為、段々と来なくなった。特に知り合いという程の間柄でもないので、そのまま会計をする。贅沢はするとは言ったが、宴会をするとも奢るとも言っていない。勝手に付いて来て勝手に自分・・で注文しているだけだ。


「俺らと彼らは何の関係もないので、金は彼等からしっかりと徴収してください。払う約束も一切していませんから」

 明らかに集ろうとしているのが見え見えなので、念の為に店員にも言っておく。後で店から払えと言われても面倒だ。所持金が足らなくても知った事ではない。それでうちの仲間誰一人傷付かないのだから。仮に逆切れ、逆恨みして来ようと叩きのめせれば良いだけだ。この世界で人質になるような人物も特にいないし何の問題もない。精々カミナの家族、知人ぐらいか。因みに、大金貨2枚となった。食事にこの値段。贅沢に食べたものだ。


「なぁ、カミナは家族とかはいるのか?」

 その辺りが気になり、店から出て歩きながら聞いてみる。ついでに、男達はこちらが出た事に気が付いていない様子だ。


「・・・いない」

 少し顔を伏せて言う。恐らく、何かしらの理由で死んでしまったのだろう。


「悪い」

「いい」


「悪いついでであれなんだが、大事な人はいるのか?」

 ああいう小悪党は何をしでかすか分からないから用心する必要がある。カミナの大事な人間がこの付近にいるなら巻き込む可能性がかなり上がる為だ。


「孤児院の皆」

 小さい頃に親を失っているなら孤児院に行くのは当たり前と言えば当たり前だ。受け入れられずに孤児になる可能性も十分あっただろうが。


「それはこの街か?」

「うん。街外れにある」


 あちゃー。そんな気はしていた。カミナはこの街のギルドでかなり人気者だ。街外れにあるならば、普段行かない店では顔を知られていないのも理解できる。孤児院からギルドに通っているなら冒険者以外に顔が売れていないのも分からなくはない。


「この街から出るの?」

「ああ。そのつもりだが?」

「なら、その前に孤児院に」

 挨拶しておきたいのだろう。


「分かった。カミナの家は孤児院か?」

「違う。・・・泊まる?」

 泊まると言う時に若干、声に震えがある。

「・・・襲うの?」

「襲っちゃうの?」

 ロシィとリリィの揶揄うスタイル。


「あり得ない」

 まぁ、そうだろう。ドラゴンに乗っていた時に、バランスを崩して触れただけであの怯えようだ。恐らく男性恐怖症か何かだろう。弟子になるからにはちょっとでも克服しようとカミナなりに勇気を出したはずだ。


「ああ。お邪魔する」


 カミナの家はギルドから少し離れた所の裏通りにあり、普通の少し古い目の一軒家4LDKだった。Sランク冒険者ならもう少し良い家に住んでいると思ったがそうでもない様だ。


「孤児院に入れてる」

 その疑問を察してか、そう答えるカミナ。


「偉いな」

「世話になった。当たり前」

 当然と言う風に言いながらも少し照れている様子が可愛い。


―――― 


「それでどうするの?」

 ロシィが問いかける。カミナの家に帰って少しゆっくりしてからリビングに全員集まって今後の話をしているのだ。


「取り合えず、上級魔族討伐の依頼でもこなそうかと思うが」

 チラリとカミナを見る。


「早くない奴でなければ勝てる」

「カミナって魔法は詠唱しているのか?」

「?当然。効率上昇」

 首を傾げながら答える。


「無詠唱はどの程度出来るんだ?」

「中級までなら」

 ドヤと言う顔だが、夢叶が創造を無詠唱で行い、あれ程のも剣を作った事を思い出し、ため息をつく。


「カミナはどうやって魔法を使っているんだ?」

「それは、詠唱を糧に魔力消費」


 ああ、昔のティエと同じだな。


「やっぱりなぁ」

「?」

 首を傾げるカミナ。


「多分、俺に教えられるのはこの部分だけだと思うが、極意と言っても過言ではないと思う」

「極意」

 ゴクリと唾を飲み込むカミナ。


「ああ、それは・・・」


 ダンダンダンという玄関を叩く音で中断する。


「お客さんみたいだな」

「むぅ」

 良い所で中断されて不満顔となりながらも玄関に応対へ向かう。


「カミナちゃん!あの野郎は何処にいる!?」

 玄関ドアを開けると第一声がそれだ。食費を払えなかったのだろう。案の定集る気満々だったようで、必死に探している。カミナを昔から知っていたのだろう。様付ではない。カミナは嫌な顔をしている。余りこの男は好きでない様子だ。


「何処にいるって聞いてるんだよ!このままじゃ、俺達奴隷になっちまう!」

 カミナの肩を掴もうとする男を瞬時に、風の魔法で吹き飛ばす。


「ぐは!」

 吹き飛ばされて転がる男。


「なぁ、頼むよカミナちゃん!」

「カミナ様、あの男の場所を教えてください!」


 男と一緒にいた10人程の男達が必死にカミナに群がる。無理やり、家の中に入ろうとする者まで出てくる。


「近寄らないで」

 流石にそれを許すわけもなく、再び風魔法で吹き飛ばす。簡単な魔法なのに、カミナは肩で息をしている。

 男性恐怖症ならこんな男共が押し寄って来たら怖がるのも無理はないか。


「あの男って誰の事だ?」

 後ろから聞こえた男の声(夢叶)にカミナが一瞬ビクっとなるが、道を開ける。


「「「「「お前だよ!!」」」」」


 仲いいな。


「それで?何の用だ?」

 分かり切っているが知らない振りをする。


「何の用じゃないんだよ!何、店で金を払わねえだ!」

「は?払っただろ?」

「払ってないわ!お蔭で俺達が食べ逃げする悪党にされたじゃねぇか!」


 いや、悪党というか小悪魔なのは間違いなだろ。という心でツッコミを入れる。


「店の人に確認を取っても構わないが?」

 まだ日も変わっていないし、支払いをする時にあの人達関係ないのでと言う人間も普通いないだろうからまだ記憶に残ってくれているはずだ。


「ああ、言ったな。早速来てもらおうか」

「ああ。ちょっと行ってくるわ」

「面白そうだから行くー」

 ロシィがトテトテーと付いてくる様だ。


「・・・私」

「ああ、カミナは残ってくれてていいぞ。こんな連中嫌だろ?」

 男達に聞こえないようにカミナに言うとコクリと頷いた。


「それじゃ」

 軽く手を上げカミナの家を出る。



――――


「はい。確かにこちらのお客様からはお客様の代金は頂いておりませんが、こちらのお客様の代金は頂きましたよ」

 店に行くと、男達の一人が訪ねた内容に答える。


「ほらな?払っているだろ?」

 自分達の分は。


「何で俺達の分を払ってねぇのか聞いてるんだ!」

「何故、俺がお前達の分まで払わなければいけないんだ?」

 怒鳴るように言う男に冷静に答える。


「何でって宴会するって言ったろ?」

「言ったか?」

「言ってないよー。贅沢はするって言ったけど~」


「何頼んでも良いと言ったら良いって言っただろうが!」

「いや、自分の金で食べるんだから、自分の好きな物食べれば良いだろ?正直、何言ってんだこいつ?と思ってたんだが?」


「「「「「な!?」」」」」


「全て、お前らが勝手に勘違いしただけで、俺は奢るとも金を出すとも一言も言っていない。そもそも、何故赤の他人にしかもその日に会った人間を大金が手に入ったからと言って奢らないと行けないんだ?」

 赤の他人に気まぐれで奢る程お人好しではない。飢え死にとかしそうなら兎も角、特にこいつは人の物を奪おうとする人間だ。慈悲などない。


「そんなの当たり前だろ?大金が手に入れば皆の親睦を深める為に騒ぐんだ。それがここの常識だぞ」

 滅茶苦茶の理由だ。


「・・・分かった。良いだろう」

 了承に歓喜が起こる。


「ただし、条件がある。取り合えず、お前等全員のギルドーカードを貸してもらおうか」

「は?これは大事な物だ。他人に貸して無くされてはたまったものじゃない」

 当然の様に拒否される。


「なら、この机に全員のギルドカードを並べてくれ。直ぐ終わる」

「まさか、燃やすんじゃないだろうな?」

「そんな事をはしない。したら無条件でここを払ってやるよ」

 渋々と男達が机に自分達のギルドカードを並べ始める。机の仕様の許可は店員に貰ってある。

 並べ終わるとカメラを構えるポーズでスクリーンショットの如く、ギルドカードが並べられた物を写し取り、紙媒体となる。一人一人の情報がしっかりと読み取れるようにA4サイズで一枚に4枚ずつのギルドカードが移った物が3枚作り出される。その紙に驚きを見せているがスルーする。

 

「ギルドカードは返すよ」

 困惑気味だが、自分のギルドカードを回収していく男達。


「それじゃぁ、次にギルドに行こうか」

「待て!」

 店を出ようとすると呼び止められた。


「今のが条件ではないのか!?」

「んなわけないだろ。条件の為の前提条件だよ。嫌なら、奴隷にでも何でもなればいい」

 それを言われると何も言えなくなるみたいで渋々と夢叶達に付いてギルドに訪れた。


「えー。皆さん、この街のギルドでは大金を入手すると皆に宴会して奢るのが当たりませのようですね」

「「「「「はい?」」」」」

 声を上げ、注目を集めるも何を言っているんだこいつはという視線だ。視線が辛いが我慢。


「この者達が俺にそう言って、この街で一番高い街で了承もしていないのに勝手に飲食いをしてそう言うんだ」

「「「「な!?」」」」」

「ちょっと待て!」

「何?」

 必死に止めてくる10人程の男達。ロシィが笑いを堪えている。


「常識なんだろ?」

「ぐっ」

 と言葉に詰まる男達。


「ここでの大金っていくらだ?」

「そうですね。一度の依頼で金貨3枚もあればかなりの稼ぎですが・・・」

 それが何か?という反応だ。


「ここにいる者達はその金貨3枚という大金が手に入れば宴会を開いて皆に奢ってくれるそうだ」

「「「「「な!?」」」」」

 男達は何だそれはという顔だ。


「あ、これそいつらのギルドカードの写しだから、一度の金貨3枚以上手に入れたら、絶対に皆に奢らせるようにしてくださいね。でなければ、あの剣を回収しに来るから」

「え!?」

 困惑するギルドの受付員。


「おいおい。何勝手に決めてるんだ!お前!!」

「何?これが俺の条件だ。どうする?」

 物凄い形相で距離を詰めてくる男。


「そんな事になったら俺達は一生貧乏暮らしじゃねえか!」

「何でだよ。細目に依頼こなせばいいだけだろ。大金手に入れば宴会して奢るのが常識なんだろ?大金貨8枚払うのとどっちが良い?それとも奴隷になるか」

 男達からすれば究極の選択だろう。この条件をのめば、冒険者である限り、毎日細々とした依頼をこなさなければならない。依頼しだいでは年中無休でしなければならない。それが10人以上いるのだ。そうなった場合、確実に何人か依頼を受け取れなくなる。かと言って金貨3枚以上の依頼を受けようものなら結局、その日の内に他人の食事代として消えてしまうのだから。危険も難易度も上がるのに報われないだろう。そもそも、遠距離の場所なら準備すらも出来ないから受けれる依頼も少なくなる。そして、大金貨を払わなければ奴隷となり、待遇も更に最悪となりこき使われる存在となる。最悪、冒険者の奴隷にされれば、より死ぬリスクが高くなる。盾代わりにされるからだ。


「クソ!こうなったらやるぞ!」

「「「「「おう!」」」」」


 ・・・愚かな。


「こいつがどうなっても良い・・・!?」

 ロシィを後ろから首を絞めて、短剣を首元に当てようとするがその前に吹き飛ばす。


「ゴミがロシィに触れるんじゃねぇ」


 ・・・何だが、独占欲が物凄く強くなってきている気がする。


「キャー」

 ピョンピョンとロシィは嬉しがって抱き着いて来る。


「お、お前魔法使いじゃないのかよ!」

「魔法使いだ。魔法使えるからな」

 屁理屈的な回答をしながら全員を重力を掛けて地べたに這いつくばらせ動けない様にする。


これ以上は店の床に穴が開きそうだし・・・。


「残念だよ。穏便に済まそうかと思ったが、俺の女に手を出すのが悪い。死ね」

 手をクイっと上げて、重力を軽くして全員を浮かせ、全員を一か所に吸い込まれるかのように纏める。勢い良くそれぞれがぶつかり、頭同士でぶつかった者は頭から血が出ている。


「待って!待ってくれ!」

「助けて!」

「何でもするから!」

「命だけは!」

 それぞれが悲鳴と助けを乞う。


 ん?今何でもって・・・いやいや男とか誰得だよ。


 そして、そのまま男達を圧縮圧縮。空気じゃないけど圧縮し、段々と人の形が崩れて潰れて跡形もなく消える。


 シーンと辺りは静まり帰るが、ロシィだけはいまだに抱き着いて頬をすりすりさせている。


「あ、お騒がせしました」

 何事もなかったかのようにギルドを出る。


 あ、あの店の人には迷惑をかける事になるな・・・まぁ、まだ金に余裕はあるから払ってやるか。あの店に罪はないのだから。


――――


「・・・化物だ・・・」

 ギルド内でそう認識されているというのはまだ夢叶は知らない。



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