第85話 金持ちに
前向きに考えよう。依頼達成となるかは一か月先まで分からないという事は、一か月はこの辺りに居とかないといけないという事だ。そして、王都との距離の時間による矛盾を解決してくれる。魔族討伐をこなしても一か月なら問題ないはずだ。
「カミナ。宿代出してくれるんだったよな?」
「ん」
憐みの目。カミナだけでなく、ギルド全体から憐みの視線を受ける。そんな目何かに負けて飯が食えないよりは良いと思うんだ。
「・・・暫く、出して上げても良い」
・・・絶対に何か裏があるはずだ。
「条件を聞くだけ聞いてやろう」
無駄に上から目線で言う。
「弟子にしてください」
「ふぁ!?」
「「「「「「「「ファ!?」」」」」」」」」
ペコリと頭を下げるカミナに夢叶だけでなく周囲全員が驚く。
「カミナ様が弟子に!?」
「という事はあの少年はカミナ様以上という事か!?」
「あの少年は一体何者だ!?」
ザワザワ。
「ダメデース!」
「これ以上はダメダメ」
ロシィとリリィが却下し、それにうんうんと首を縦に振るティエ。シルヴィとエリィは複雑そうだ。
「なぜ?」
キョトンと首を傾けるカミナ。
「順番がー・・・」
「二人っきりの時間がー・・・」
「デートの時間がー・・・」
ロシィ、リリィ、ティエがブツブツと言っている。
「弟子になるだけ」
「そんな保証は何処にもない!」
言い切るカミナとロシィ。ロシィの言葉に夢叶女性陣は頷く。
「お金?」
「金はギルドで稼ぐから問題ない」
不安要素はあるが、何とかなるはずだ。
「当ギルドでは、夢叶さん達の依頼を受け付けない事となりました。カミナ様の師匠さんならお受けいたしますがいかがなさいますか?」
ニッコリ笑顔の受付さん。カミナの方が圧倒的に人望が高い。皆カミナの味方だ。
「お願い」
つぶらな瞳で下から覗くように見上げてくる。可愛い。
「ぐぬぬ」
「ユウ!しっかりして!」
「私達がいるでしょ!負けちゃダメ!ちゃんと断って」
「ヒシッ」
リリィとティエが断るように言ってくる中、ロシィは見せつけるように抱き着いて来る。すると「あ、ずるい」とリリィも抱き着く。ティエは人前だと恥ずかしいのか、少し羨ましそうな目線でチラっと見るが、カミナを睨み付ける事で誤魔化した。後で、なでなでしてあげようかな。
「・・・メリットは?」
「ん?」
「お前を連れて行く利点は何だ?」
何とか断る理由を作ろうとする。
「んー・・・」
少し考える。金は夢叶達の実力ならギルドの依頼をこなせば問題なく稼げるだろう。魔法の実力も負けているからこその弟子入り志願だ。問題があるとすれば、その師匠が男ということだ。女性陣も秘めた強さを持っていそうなので、そちらにお願いするのも良いかもしれない。しかし、考えても夢叶達の利点になる物が思い付かない。何かないか。夢叶達には無くて、自分にある物・・・。
「顔?」
「いや、確かに可愛いが」
「!?」
面と向かって言われたのは初めてで顔を赤くして動揺するカミナ。
「違う」
すぐさま、冷静に否定する。先程の一瞬の動揺は目の前にいた夢叶以外には気付かれていないはずだ。そう思いたい。
「萌えた」
「うん」
そんなロシィとリリィの声がカミナの耳に入った。気付かれていないと思いたい。心の中で涙目状態だ。
「有名」
カミナは自分の顔を指差す。
「うん?」
「交渉便利」
「あーなるほどね。ドラゴンの件でも今でも十分効果を発揮してるな」
カミナの名前と顔、人望を使っても良いという事だろう。正直、カミナがいると隠れ蓑に出来るから有難くもある。勧誘とか色々と面倒だからね。それに、カミナが転移を使えるのは知れ渡っているみたいだから、移動がかなり楽になる、こそこそとする必要があまりなくなる。
「んー。悪くはないが・・・たぶん、少しぐらいしかは教えられるものはないと思うぞ?」
「その少しが重要」
困ったものだ。どうしたものかと仲間の方を見るとロシィと目が合った。
「ユウがここに居たいと思うなら別にいいんじゃないかな」
(ここ?)
こことはこの国の事かとカミナは首を傾げる。ロシィのこことはこの世界の事である。他の皆もそれで良いようだ。それは夢叶も理解してそのうえで考える。
「・・・何でかな。今までの場所より、ここは居心地が良いんだよな」
「だろうねぇ」
ロシィの言葉に夢叶は何故そんな言葉が出るのか若干疑問に思ったが、只の相槌だろうと特に気にしなかった。
「・・・分かった。出もあまり期待するなよ?」
「ん。よろしく師匠」
何故か周囲の人達が喜びの声を上げる。カミナはこの街の人達に愛されている様だ。
・・・師匠。良い響きだが、何だがむずがゆい感じがしなくもない。
「師匠!何か見せてくれ!」
「何かって?」
野次馬の様な一人の男が話しかけて来た。
「何でも良い。凄いのをバーンとやってくれよ!」
・・・凄いの?
「やって」
カミナも見たいようで目を輝かせている。
「・・・どうしたものか」
ギルド内だし、アイデアを貰おうと再び仲間の方を見る。ロシィとリリィは体全体を使って、シルヴィ、エリィ、ティエは手だけで何やら何と言っていいのかどうツッコンで良いのか分からないような動きをしている。きっと言ってしまうと面白み、驚きが減るだろうからジェスチャーでしているのだろうが、それにしても動きが可笑しいしさっぱり分からない。
「そうだ」
創造ならどうだろう。カミナには一度見せてしまっているが、どの程度作れるか知らないだろう。ただ、やりすぎは危険だろう。カミナは空間魔法を使える事は知っているが、他の者は知らないのだから。
何処かの錬金術師の様に掌をパンと合わせ、少しずつ離していく。掌の間にバチバチと不必要に火花が起こり、そこから金属が現れ始め、柄まで黄金の剣が出来上がった。見た目が派手な方が良いかなと思っての演出、剣だ。
「「創造魔法・・・」」
何人かが呟く様に言う。
「そ、その剣は何で出来ているんだ?」
先程の男が聞いて来た。
「さぁ?」
黄金の剣という思考の元作ったから正確には分からない。そのまま金かもしれないし、単純に色だけかもしれない。ただ、武器として使えるように切れ味は良くしてある。折角作ったのなら何かに使えるかも知れないし。
「切れ味を試してみようぜ!」
意気揚々と椅子を持ち上げ、何も言ってないのに放り投げつけて来た。
剣を掲げ、椅子に軽く傷が付く程度に終わらせるつもりが、剣に椅子が触れた先からスパッと見事に椅子が真っ二つになった。
「「「「「なっ!?」」」」」
その切れ味の良すぎる剣に驚きを隠せない。夢叶自身さえも。よく切れる剣という設定で創造したが、切れすぎた事に驚きだ。
「な、なぁ。その剣はずっと残るのか?」
わなわなと聞いてくる男。
「期限設定も何もしていないから、何もしなければ消える事はないはずだが?悪いが長期間の創造は試した事がないから保証は出来ない」
「その剣はどうするんだ?」
「特に何も考えてなかったが・・・」
「なら、貰ってやるよ!」
バッと剣を奪い取ろうとする手をサっと手を動かして避ける。ぐっという顔をしている男。
「その剣を譲ってくれないか?」
「いや、俺に譲ってくれ。金なら出す!」
「いえ、私に!」
「私にくれたら、私を好きにして良いわよ」
わらわらと剣欲しさに群がってくる。
「受付さん、これの鑑定ってお願いできる?」
「え!?えっと、少しお待ちください。担当の者を及びします」
バタバタと二階に上がり、呼びに行ったようだ。
「お待たせしました。こちらの剣でしょうか?」
やって来た人は少し厳つい顔をしたオジサンだ。まじまじと黄金の剣を見ている。
「正統なる価値を我に。鑑定」
そのまんまの名前の鑑定魔法か。
「・・・ほう?・・・な!?は!?」
剣の情報が頭の中に入ってくるのだろう。感心、驚き、驚愕と顔を変えていく。
「この剣はどうやって入手したのですか?」
「創った」
「創った!?まさか、創造魔法ですか?」
「ああ」
「・・・信じられない」
目を見張る。
「創造魔法は普通、数分から数時間、数日。簡単な物なら数か月等、消える事なく創造する事ができるのですが、私の鑑定はそう言った情報も得られるのですが、この剣にはそれがない。つまり、いつまでも消える事がないという事です。」
「「「おお!!」」」
「流石、師匠!」
「この様な物は今まで見たことはありません」
「そうなのか・・・。それで価値は?」
「あ、はい。この剣は全て、金で出来ています。それだけで、大金貨300枚はするでしょう」
大金貨は金貨10枚分の価値で通常の金貨より一回り程大きい。
「「「「「全部金!?」」」」」
「それだけではありません。聖剣をも凌ぎかねない切れ味。幾ら、創造魔法と言えど簡単に作れるような物ではございません。仮に作れたとしても数分、数秒保つのが良い所でしょう。そもそも創造魔法すら出来る者が少ないのですから、この剣は非常に素晴らしい物です。などから大金貨500枚の価値はありますね」
「金貨500・・・流石にその様な金は持っていない」
「大富豪かSランク冒険者でもない限り無理だ!」
皆が絶望している。
「こちらを我がギルドにお売りいただくことは出来ないでしょうか?少し載せて大金貨550枚で買い取らせていただきます。いや、買い取らせていただきたい!」
鑑定人が鼻息荒く詰め寄ってくる。
「しかし、それほどの剣だとしたらバランス《・・・・》を崩しかねないんじゃないのか?」
「一本ぐらいならいいんでない?聖剣とかもあるみたいだし、それ以上ではないみたいだしねー」
バランスとは世界のバランスの事である。あまりに強い剣を出してしまうとその剣の強さのおかげでその者が無双して、何かしらの種族を絶滅させてしまわないか心配なのだ。
「んー。じゃぁ、ここにいる者、いやこの街の人間全員が約束してくれたら売っても良い」
「それは流石に無理があると良いますか・・・」
「徹底してくれたら良い。まず、ここにいる者達全員が、この剣を俺が作ったという事は内密だ。もし、発覚すれば、この剣は取り上げると共に、その者を・・・まぁただ殺すだけでは終わらないな・・・」
全体を睨み付け殺気を放つ。ゾクリとしてはる。殺気を放つのにはだいぶ慣れたものだ。
「それと、貸出は一切なしだ。この街が危険にさらされている時のみ、一番信頼出来る者が使用するとする。これが無理なら諦めてくれ。ついでに・・・」
剣に魔力を通すと剣が輝き、フラッシュの様な一瞬の光を放つ。
「「「「「うわ」」」」」
「この様に魔力を少し、この剣に流すと目くらましが出来る機能もある。相手の不意を突く事が出来るし、遠距離の相手の目くらましにも使え、接近しやすく出来る地味に使える代物だ」
「何やら私の鑑定に、閃光と会ったのはこういう事だったのですね。どういった物か私には分からなかったので評価が出来なかったのです。まさか、魔剣とは」
鑑定だとそんな風に見えるのか。ステータス表示みたいなものだろうか。
「これなら大金貨700枚の価値はありますね。魔剣は非常に作るのが難しいのです」
魔剣は剣に魔力を通して、何かしらの効果を発動する事を言うみたいだ。
「しかし、大金貨700枚は流石にギルドと言えどそう簡単に出せる金額ではありません。
ですので、先ほどの要請を受け入れる代わりと言っては何ですが、最初の大金貨550枚にして頂いても宜しいでしょうか?」
正直、幾らでも作れるから只でも良いレベルだが、そう量産しても良い代物ではこの世界ではない。
「良いだろう。もう一度念を押しておくが、この事は内密に頼むぞ」
貰える物は貰っておく。これで金にも困らなくなったしな。
「ねぇねぇ。金がこれだけ手に入るなら、別にカミナの顔を使わなくても良くね?」
ロシィが身も蓋もない事を言う。
「え・・・」
カミナが物凄くシュンとした顔をして、顔を伏せるのであった。
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