第84話 依頼達成・・・?
さて、どうしたものか。
ジーとカミナの視線が突き刺さる。
あれからギルドに行き、カミナのおかげでスムーズに話が付いた。ライムの存在を公開する事になり、大騒ぎになるがカミナの信頼度は非常に高いようで直ぐに収まった。その後、ドラゴンの縄張りに手を出さなければ襲われないという事を周知徹底するようにお願いし、実行してくれるようだ。
ただ、協力した報酬としてドラゴンと話をさせろとカミナに半ば強制的に認めさせられた。一度は断ったのだがカミナが「お願い」と頼むと周囲があのカミナ様がお願いしているんだぞと凄い目線で訴えかけて来たのだ。別にまだ、わざわざ周囲を敵に回す程の事はしたくない為、渋々と了承したのだが、ゲートで行くわけにもいかない。どうしたものか。
ジー。
「いつ行くの?」
「取り合えず、俺達は金がないから日帰りで出来る依頼を今日は受けようと思っているんだが」
「なぜ・・・」
物凄く憐みの目で見られた。
「宿代出す。今すぐ行く」
「いや、悪いだろ。明日で良くないか?山で野営しないといけないぞ」
何故かカミナの目つきが鋭くなる。遠慮したら駄目なのか?
「おかしい」
「え?」
「山まで一日は掛かる。まず、山にたどり着けない」
しまった。そんなに遠いのか。山の距離を全然考えていなかった。アイミス山というからアイミスの街の近くにある物だと思い込んでしまった。
「でも、嘘じゃない。ならどうやって」
皆に助けを求めるように視線を向ける。
「こ、この前は朝から強行したから一日で行けたの」
リリィが必死の言い訳を繰り出す。
「早馬で魔法で支援しても一日掛かる。馬何処?」
「うっ」
馬何てないよー。
『馬!』
ライムが馬の形になってくれる。
「・・・乗って」
・・・リリィが乗る。ブヨンと若干沈むが乗れている。
「ちょっと!私が重たいみたいじゃない!」
リリィが顔を赤くしてブーブー言う。
「もう一人」
軽そうなロシィに視線を向けるとロシィが頷き、ライムにダイブ!なんでや!
ベチョ!
つぶれた。
「「「「「ライム!?」」」」」
「大丈夫か!?」
少しゼリー状の体の一部が飛び散っていたが、核が無事な為、うにょうにょと再び引っ付き元に戻る。
『死ぬかと思った』
「ごめんね」
「ごめん」
リリィとロシィが謝る。
「で?」
ぐぬぬ。
カミナの視線が冷たい。ライムで移動は無理という事が立証されてしまった。
「騙されたと言う」
ゆっくりとワザとらしく受付の方に体を向けるカミナ。
「分かった。分かったよ。ただし、絶対に他言しないと約束すればな。守らなければ」
「する」
言い切る前に了解を得た。
「途中なんだけど。奴隷になるか死んで貰うかっていうつもりだったんだが?」
「問題ない」
「本当に?」
「元々言うつもりない」
表情を変えずに淡々と言うカミナにこれは梃子でも動かないなと思ったので諦めた。
「じゃぁ、人気のない所に行くか」
「襲う?」
体を守るように手を自分の体に回す。
「好きでもない女を襲うわけないだろ」
「む」
魅力がないと言われたように捉えたのだろう、カミナ少しムっとした顔をする。
「行くぞ」
「ん」
納得のいかない様子だが渋々と夢叶達の後を追ってギルドの外に出た。
―――― 人気のない所
最初に転移してきた所に移動する。
「襲う?」
先程と同じように手を自分の体に回す。
「この世界の一番凄い魔法って何?」
「むー」
「で?」
何時ぞやかの意趣返しのつもりで言う。
「ぐぬぬ」
「で?」
「むー。空間、転移」
不満たらたらに言うカミナだが、その膨れっ面が少し可愛い。
「どれくらいの人間が出来るんだ?」
「転移ならSランク魔法使い、空間は複数人掛かり」
不貞腐れながら答えているカミナだが、どこの世界も似たようなものかと違う事を考えて気にしていない。
「秘密守れよ?」
「ん」
ブオンとゲートを開ける。カミナをチラリと見るが、一瞬見開いたような顔になるが思ったより反応が薄い。
「驚かないんだな」
「察してた。でも転移だと思ってた」
「まじかー」
「山との時間、異質さ」
時間が把握できていなかった事と、魔力が子供以下という異質な体からこの答えにたどり着いていたのだろう。
―――― アイミス山 ドラゴンの巣
「「やー」」
ロシィとリリィがゲートの先にいたドラゴンに手を上げる。
『ん?早いな。首尾はどうだ?』
ドラゴンがこちらに気付き、話しかけて来た。
「喋ってる」
「だろ?」
『この前にはいなかった奴だな』
カミナを見てジロジロと見る。
「ああ。Sランク冒険者だそうだ。このカミナが話を付けてくれて、お互い関与しないという事で話が付いた。まぁ、この周辺に来なければお前も襲うなよってことだな」
カミナがサムズアップしている。
『そもそも我は、自分の縄張りに侵入した者と狩りで以外では襲っていないし、人間などたいして旨くもないからこちらからは襲っていないぞ』
やってない事をやったと言われているのと同じな為不満そうだ。
「悪い。そうだったか。ならこっちが徹底させないと駄目だな。縄張りの範囲内を教えてくれないか?」
『良かろう。我の背に乗れ』
飛んで教えてくれるという事は結構広そうだ。
『・・・待て、何故全員乗っている』
「乗る側になりたい」
「うむ」
ロシィとシルヴィが頷き合っている。ロシィとシルヴィ、リリィとエリィ、カミナとティエ、そして夢叶の2列に並んで背中に乗っている。
「気にせず行こうぜ」
「ドラゴン、初めて」
『はぁ。仕方がない。行くぞ』
溜息をつきながら、翼を動かし、空高く急上昇する。
「「ヤーッハー!」」
「「キャッ」」
ロシィとリリィは雄叫び?をカミナとティエは短い悲鳴を上げ、シルヴィは無言。エリィは声を出すのを耐えた様子だった。カミナとティエは急上昇により、後ろに倒れそうになった所を夢叶にしがみつく。カミナも同様に夢叶に咄嗟にしがみついてしまう。その瞬間、バッと突き放し、体を小刻みに震わせ、自分の体を冗談ではなく、本当に守るように手を回している。
「ご、ごめん」
「大丈夫か?」
肩に手を置こうとした所、氷柱、小さなアイスジャベリンらしき魔法が出現し、手に突き刺さる事もなく、先端から潰れる。その様子にカミナは驚愕する。魔法を何もせずに防ぐのだ。尋常ではない。
「わ、悪い」
兎に角、様子がおかしいので謝っておく。カミナの様子に皆が少し心配そうな顔をする。
『何をしている?行くぞ?』
背中で何が起きているか分からないドラゴンが準備は良いかと聞いてくる。
「あー。ちょっと待ってくれ」
ドラゴンの端の方により、手を地面に向けて翳す。
「もういいぞ。正確に動いてくれよ」
『うむ。落ちるなよ』
バサバサとドラゴンが移動を開始する。急上昇した時に落ちかけた為か、その時ような速度ではなく、落ちないように気は使ってくれている様だ。夢叶は、手から下に黄色い粒子が風に靡くことなく降り注がれる。
「何してんの?」
ロシィが横に来て下を覗く。すると、黄色い粒子が地面に付着し、地面が黄色に染まっていく。付着した黄色い粒子は幅1メートル程の線でドラゴンが縄張りの範囲だと飛んだ範囲を繋いで円となる。
「いや、縄張りの範囲を明確にしようと思ってな。これならこの黄色い線を見逃す事はないだろ?通る時に目に付くはずだ。転移とかで移動しない限り」
「グッジョブ」
カミナが褒めてくれる。
「・・・戻る?」
しかし、少し考えた後そう疑問を口にした。
「ああ。一か月ぐらいで消えるんとは思うぞ。地面を削ったりしたら消えるはずだ」
一か月日持ちするペンキをイメージして創造した物だ。創造魔法が想像の通りに働いてくれているなら問題なく消えるはずだ。
「・・・創造?」
首を傾げるカミナ。
「ああ。創造魔法だな」
「・・・」
物凄く訝しむ目だ。
「まぁ、これで依頼完了だな」
「だねー。ドラゴンさん報告に戻るよ」
『ああ』
リリィに返事をしたドラゴンが巣の卵のある場所に戻る。
「また、機会があれば会おう」
ビシっとゲートを使う。アイミスの街のいつもの人気のない場所に出て、ギルドに向かう。
―――― アイミスの街 ギルド
受付で縄張りの範囲を明確になるように黄色の線を引いて来たと言ったら周囲に驚かれたが、カミナが転移魔法を使えると言うのは周知の事実らしいので「カミナ様流石です」で片付いた。黄色の線だけはどうやったのかという事を聞かれたが、カミナが「ナイショ」と言うと残念そうに潔く引き下がってくれた。
「一か月後にドラゴンがこの山から去っていれば依頼完了となりますね」
依頼達成かを尋ねると苦笑いしながらそう答える受付の人に言われて絶望する夢叶一行。金が一か月先まで入ってこないのだ。
絶望した!
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