第82話 取り合えずSランクになったよ。
「今回の国王は話が分かる奴で良かったなー。また違う所に行かないと行けないかと思ったぞ。滞在記録更新できそうだ」
宿代プラスαを受け取って出て行く夢叶一行。
「何やら不穏な事を言っていた様な気がするのは気のせいだろうか・・・」
「恐らく事実の可能性の方が高いだろう。噂では経験があるという事だったからな」
呟く国王にギルバートはそう絶望の様な言葉を返し、謁見の間から出て行く夢叶達一行を見送る事しか出来なかった。
ついでに、宿代を貰いに貰った際にランクはどうするのかと尋ねるとSランクで構わない。干渉はしないから安心してくれて良いという事でSランクになることが決まった。
―――― 次の日
城から普通に出て行ってしまった為、城に泊めて貰うという事が出来ず、後悔しながら城近くの宿に泊まる。
マディーナのギルドで、ギルドカードを返そうとはしたものの騒ぎになり、結局返せなかったのだが、結果としてSランクになった為、結果オーライといった状態である。
という事で、日々の生活費を稼ぐために、ハネス城下町ギルドにやってまいりました。
カララン。
お馴染みの視線を向けられる。
「初めて見る顔触れだな」
「あんなので冒険者か?」
「冒険者の格好じゃねぇ」
「依頼をしに来たんだろ?」
「中々可愛い女もいるじゃねぇか」
「あの坊やもそそるわね」
「そうねぇ。お尻をなぶりたいわ~」
様々な見た目評価を話している。最後の方の声は色々とやばい。女性ならまだしも渋いおっさんの声だった。背筋がゾクっとした。
掲示板を探し、そっちに移動する。
「ほう。冒険者なのか」
「初めてではないようだな」
「・・・ん?いや、まだ初心じゃないか?見てみろ。あいつらが見ている欄はAランク以上が張られている所だ」
「ククク。本当だわね。ますます可愛いわぁ~」
「やっぱ、取り合えず金だよなー。まずは自分達の生活をしっかりと確保しないとな」
「だねー。あ、ドラゴン退治だって。大冒険の予感だよ?」
「おおー。ついに望んでいた大冒険が!?」
「ユウ、こっちは上級魔族退治だって。ドラゴンとあまり報酬が変わらないよ?何か陰謀の予感だね」
リリィとロシィがSランクの依頼を発見する。他の者も色々と見ている様だが、他のはパッとした物はないようだ。
ドラゴン退治は、アイミス山に住み着き、食料を取りに行くことが出来ずに困っているとの事。
上級魔族退治は、ここ最近頻繁にサイランの街にやって来ては人を老若男女問わずに攫って行かれて困っているとの事。
「ハッハッハー。少年少女達よ。そこは君達が見るべき所じゃないヨー」
外人の片言の様に話しかけて来た、黒人スキンヘッドのオジサン。がっちりとした肉体に最低限の鎧で剣を腰にぶら下げている。
「ビッ!これが目に入らぬかー!」
自分でビッと言いながら人差指と中指でギルドカードを挟み、黒人の目の前にドヤ顔で突き出すロシィ。
「ん?ンンンー!?ナ、ナンダッテー!!!?」
驚きの声に周囲がどうした?と寄ってくる。
「「「「「な、何だってー!!!?」」」」」
近寄って来た周囲の人達も驚きの声を上げる。
「Sランク・・・だと!?」
「新しく増えたのか?しかも六人も一度に!?」
「そんな話、誰か聞いたか?」
「こんな子達が!?」
「恐ろしい子」
フフンと鼻を高くするロシィ。
「嬢ちゃん達、ギルドカードの偽装は処罰の対象だぞ」
「今なら見なかった事にしといてあげるから」
「早く本当のギルドカードを掲示しな。な?」
信じた者も多くいたが、信じていない者はこの様な反応だ。
「皆様、この方達は紛れもなくSランクです。そして、Sランク冒険者ギルバート様よりも強いとの事で、対応には十分注意してくださいと今朝早く連絡が来ております。」
騒ぎを伺っていた受付のお兄さんがやって来て説明をする。
「まさか!?」
「本当に!?」
「ギルバート様よりも強い!?」
「嘘だろ!?」
騒ぎが大きくなる。
「これとこの依頼を受けようかと思うんだけど」
ロシィがピピッとSランク依頼のドラゴンと上級魔族討伐の二枚を剥がして受付のお兄さんに渡す。
「はっ!?」
渡された依頼二枚を見て驚愕する。
「ドラゴンと上級魔族討伐を同時進行!?冗談ですよね?」
顔を引き攣らせて確認をする受付のお兄さん。
「冗談ではない」
何処かの大佐の様に言うロシィ。
「ドラゴン、上級魔族共にはAランク冒険者なら10人以上、Sランク冒険者なら何とか勝てる程の相手ですよ。それを二つ何て・・・」
「Sランク冒険者で勝てるんだろ?そのSランク冒険者が6人もいるんだ。何の問題もないだろ?」
「それは・・・そうかもしれませんが・・・場所もかなり危険な所で道中もかなり強い魔物が現れる場所ですがそれでも行きますか?」
渋々と最終確認をする受付のお兄さん。
「勿論!」
胸を張るロシィ。いいよね?と一応今更確認を取ってくるロシィだが、別に問題ないので頷く。
「・・・分かりました。Sランク冒険者となっていきなり死ぬ何てことにはならないで下さいね」
「大丈夫大丈夫」
ロシィが気楽にそう言って受理を受付で待つ。
「そ、それではお気を付けて」
受理が終わり、さっさと出て行く夢叶一行その様子を呆気に取られて見送るギルド内にいた人達。しかし、暫くすると。
「おい、両方討伐して戻ってくるか賭けるか?」
「俺は戻ってくる方に賭けるぜ。あの得体の知れない何とも言えないオーラがそう言っている」
「俺は、一体だけで戻ってくるに賭ける。流石に連続でSランクの魔物2体は厳しいだろう。」
などと、賭けの話で暫く盛り上がったのだった。
「さて、このアイミス山という街は何処だ?」
「聞くの忘れちゃった」
テヘペロとするロシィ。
「「「「「・・・」」」」」
ロシィに5人から無言の視線が突き刺さる。
「ゲ、ゲートで行けば、解決!」
舌をチロっと出してサムズアップ。
「はぁ。今からあそこに戻るのは何か嫌だしなぁ。しょうがないか・・・歩くのだるいしな!」
マディーナ森林まで歩いて行き、周囲に誰もいない事を確認し、ゲートを使う。パッと先を覗いた感じ普通の山の中みたいだった為、何も考えずに全員がピョンピョンとゲートを潜った。
『貴様達・・・何者だ?』
潜った矢先に真後ろから声が聞こえて来た。振り向くとそこには大きな青いドラゴンがー。「キャー」ヒシッと抱きついて来るロシィとリリィ。ドラゴンから漫画の様な汗が一滴落ちたのは気のせいだろうか。
『貴様等、空間魔法すら扱うのだ。ただ者ではないな?やはり、我の子が狙いか!』
グルルと威嚇と共に殺気を放つ青いドラゴン。よく見ると青いドラゴンの後ろに卵がある。ドラゴンの大きさは30メートルほどあるだろうか。かなり大きく卵ですら3メート程ありそうだ。
しかし、ドラゴンは知能が高いのか。人語を話す事が出来る。実際に口から喋っている気配がないので翻訳魔法の類を使っているとは思うのだが。
「いや?アイミス山にドラゴンが住み着いて食料が取れないとかって話だから倒しに来た」
『・・・我を倒す?・・・愚かな。我が子を狙うならまだ可能性があるだろうが、我を倒すと言うか?笑止!』
殺気が強くなる。
「?ドラゴンの卵って何か良い効果あるのか?」
『・・・?・・・本当に我が子が狙いではないのか?』
夢叶の疑問顔を見て殺気を少し緩める。
『秘薬を作る為に必要だという話だ。何度もここにいる間にそういう輩が襲って来たが全て返り討ちにしてやった』
フンスと鼻息を吐き出す。
「・・・んー。何でここに住み着いてんの?」
『・・・貴様も中々面白い人間だな。我を見て恐怖もせず、戦おうともしない。それどころかまるで友人の様に話しかけてくる人間など長年生きているが初めてだ』
殺気が無くなり、クックックと笑っている。
「まぁ、実際怖くないしな。それで?住み着いた理由は?」
『・・・はぁ。何、我が子を育てる為だ。ここは中々良い獲物が多いからな都合が良いのだ』
何処か諦めたように言うドラゴン。
「・・・なら、子育てが終わればこの山を去るのか?」
『無論』
「いつ頃になる?」
『あと1週間程で我が子が孵る。それから落ち着くまで約一か月程だろう。そうすれば、我が子は独り立ちをして世界の何処かに住み着くだろう』
「一か月か・・・。食料問題が何処まで深刻化しているかだな・・・」
「一度、アイミスの街に行ってみたら良いのではないか?」
ドラゴンの話を聞いて真剣に悩む夢叶にエリィが提案する。
「そうだな。そうするか。また、来るわ」
『ま、待て!』
じゃっとゲートを開こうとする夢叶をドラゴンが止める。
『貴様等、我を倒しに来たのではないのか?まるで、我を助けるような話に聞こえたが?』
「ん?あー。お前が特に意味もなく蹂躙してるっていうなら間違いなく殺したが、子供の為だからな。一方的にただ殺すのも可哀想だし。聞いた感じじゃ、襲われたから返り討ちにしているだけなんだろ?」
『う、うむ。そうだが・・・』
「なら、別に俺は悪い事ではない。当然の行為だと俺は思う。だから、これから街に行って、一か月程したらドラゴンが何処かに去るから我慢してくれと交渉しようと思うのだが問題あるか?」
・・・こんな人間は初めてだ。ドラゴンである我の為に行動する人間などかつていたことはなかった。人間にとってドラゴンは驚異の存在。素材などでしか見られる事はなかった。常に狩るか狩られるかの存在だけだったのだ。それをこ奴等は・・・。
『もう無理だよ!』
ロシィの腰の革袋に入れられていたライムが元の大きさになって飛び出て来た。
『一体、いつまで小さくなっていればいいんだよ。』
プンプンとしているが、聞こえてくるのはプニプニだ。
目を逸らす夢叶一行。
『まさかとは思うけど忘れていたわけじゃないよね?』
ちょっと激おこプニプニ丸の様子だ。
「どうだ?俺達は魔物ともちゃんと分かり合える人間だと思うが?」
『ちょっと、話逸らさないで・・・!?ドラゴン!?』
プニプニしてたのがビクーと飛び上がり夢叶の後ろにササーと隠れる。
『・・・確かに今までの人間とは違うようだ。それに何故か、体が貴様を倒そうとしても拒絶する。貴様には何か不思議な力を感じる・・・良いだろう貴様に任せてみるとしよう』
「おう。また来るわ」
ブオンとゲートを開くと、ライムが奴隷の首輪によってちょんまげとなった部分をピョコピョコとさせ、ドラゴンの方を振り向きながらゲートに入った。
「「ヒャーッハー!」」
『ヒー!?!?』
ロシィとリリィは上空からのダイブを楽しみ、ライムは初めての空に悲鳴を上げている。その他の者は周囲を確認しているようだ。
アイミスの街上空にゲートを開き、お馴染み人気のない所に転移する。
『あんちゃん達、本当に何者なの!?』
「あんちゃんです」
空間・転移魔法をほいほいと使う夢叶達に驚愕するライム。やはり、空間・転移系の魔法はかなり珍しいようだ。
『あんちゃん、一生付いて行くよ!』
目を輝かせて言うライム。目は本当はないが、器用に星を自ら作り、つぶらな瞳でセルフで目をキラキラさせている。本当に器用だ。
取り合えず、帽子と化して貰い、ロシィの頭の上に乗る。『またー?忘れないでよね』と渋々と言った感じだが。
「ここはどんな雰囲気の街か分からないからな。まだ魔物を奴隷化した何て情報はこの街には来ていないだろうし、騒ぎになるのは間違いないし要らぬ争いが絶対に発生するからな。悪いが頼む」
『分かったよー。なるべく早くしてね』
「ああ」
ポムポムとライムを優しく叩くロシィ。
情報収集はやはりギルドか酒場である。早くに見つかった方に入ろうという事になり、先に見つかったのが酒場だ。
中に入ると中世ヨーロッパを思わせるような酒場だ。昼時前の為、そこまで人は多くはないが少し早めの昼ご飯という者達が来ているといった感じだろう。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
元気の良い16歳ぐらいの茶色い短髪にそばかすが似合う少女が駆け寄って来た。メイド服のフリルなど白い部分を全部取ったような紺色のワンピースだけの様な格好だ。
「6名だ」
「6名様ですね。こちらにどうぞ」
カウンター近くの少し大きめの席に案内される。丁度6人用の席のようだ。
「こちらがメニューになります。お決まりになりましたらまたお声掛けください」
ペコリとお辞儀をして別の客を対応しに行く少女。
「さて、何食べようかなー」
鼻歌まじりにメニューを見だすロシィ。
「待て・・・重大な話がある」
いつになく真剣な声の夢叶。
「どうしたの?ユウ」
さすがのロシィもメニューを見るのを中断し、他の者も夢叶に注目する。
「・・・金がない」
手を組み、机に肘を置いて口元に当てて何処かの指令のように言う夢叶。
「「「「「・・・」」」」」
誰もがそうだったという反応をする。
「国王から宿代を少し多めに貰ったが、残り銀貨5枚しかない。6人分の食事を適当に腹いっぱい注文したら所持金をオーバーしてしまう。さて、これ如何に?」
腹いっぱい食べようと思うと丁度銀貨1枚掛かるかどうかと言った所だ。普通に注文すると確実に予算オーバーしてしまうのである。
ズーンと空気が重たくなったのであった。
ブックマ評価ありがとうございます




