第81話
「上には上がいるものだな。特に、魔法使いに負けたのは初めてだ。同じSランクの魔法使いがこの国にもいるが、貴様に比べるとそいつが可哀そうになるほどの者だ。魔法は確かに他の者より数段上回っているが、最初の距離によっては詠唱する前に終わらせることが出来るからな。それに比べてお前は、あの短い距離であの強固なシールドを張り、さらにはこの俺の素早さに付いてくることが出来ていた。それだけでなく、シールドを張りながら反撃に転じることが出来る集中力に魔力量。並大抵の者は貴様を殺すことなどできはすまい。俺が知る限り、他国も含め貴様が人類最強だ」
フッっとまるでどこかの王子みたいに言うギルバート。
「さぁ、心置きなくSランクを名乗るが良い!」
「良い!」
「良い!」
トコトコーと15歳程の男女がやって来てトウという感じで言う。
「だが、断る!」
「「「「「「な!?」」」」」」
驚愕する皆々様。
「いや、最初からいらんって言ってるだろ?束縛されるの嫌なんだよ。理不尽に魔物とか襲われてるとかならまだ助けようとは思うが、戦争とかそんなんに駆り出されたくもないし、城の中でずっと暮らしてるなんてもってのほかだ。ぐーだらとするのは理想的だが、それだと折角のこの世界、勿体ないだろ?冒険して青春したいんだよ」
「青春送れなかったからね~ユウは。」
トテトテーとロシィが近付きながら言うと他の仲間はそうなんだ?と首を傾げている。
「・・・ふむ。しかし、流石にこれ程の実力を持ちながら、俺の一存で手放しにする事は出来ない。王命だから、王と直接話を付けて貰わなければならない」
「ならない」
「ならない」
「しょうがないなぁ。それで面倒事が無くなるなら会うだけ会ってみるわ」
「感謝する」
「感謝する」
「感謝する」
軽く会釈をする3人。
「早速だが、来られるか?」
「ああ。宿代さえ、出してくれるならな。」
「・・・え?」
「・・・・え?」
「・・・・・え?」
微妙に間がちょっとずつ伸びてる。
ギルバート達3人はミレディや他の者を見ると苦笑いして頷いている。
「ぽっと出って言ったろ?その日の宿代稼ぎで精一杯何だよ。」
「・・・分かった。国王には俺からも進言しておこう。」
「ついでに、拒否っても出してもらうからな。俺達の時間を潰すんだから当然だろ?」
「分かった分かった。最悪、宿代ぐらい俺が出してやる。」
「「出してやる」」
・・・あ。被った。にらみ合っている。
「なら問題ない。それと、他の皆も一緒に行けばいいのか?」
親指でクイっと指す。
「ああ、Sランクの強さがある者だけで良い」
「「だけで良い」」
あ、また被った。ポコスカしだした。
「なら、全員だな」
「何!?」
「何!?」
「何!?」
二人はポコスカするのをやめて凝視してくる。
「悪いが、俺達の中で一番弱い奴って言うのはあまり言いたくないが、それでもお前と互角以上はあるぞ。お前が、ある魔法を使えないなら確実にお前より強い」
そもそも身体能力だけで勝てる。グラディオでSSランクの身体能力なら全員がその程度はある。さらに身体能力強化は全員が使えるようにしている。そうすれば、剣士であるギルバートに勝てる術はないだろう。
「・・・ある魔法とは?」
「魔法とは?」
「魔法とは?」
「身体能力強化」
「まさか、貴様等全員が使えるのか!?」
「使えるのか!?」
「使えるのか!?」
「ああ」
周囲がざわつく。
「・・・一つ聞くが、先ほどの戦いで、身体能力強化は?」
「していない。」
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な」
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な」
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な」
ワナワナと体を震わせている。
「貴様等、化物か!?」
「化物か!?」
「化物か!?」
「ケダモノか!?」
「ケダモノです。」
ペシペシとロシィとリリィの頭にチョップする。
「っく。まさか、ケダモノとは・・・。女を侍らす見た目通りだな」
「見た目通りだな」
「見た目通りだな」
「そこはのらなくていいから」
ツッコミを入れながらノル様なキャラじゃないと思ったんだけどなぁと首を傾げる。
「・・・さっさと行かないなら依頼を受けたいんだが?」
「あ、ああ。分かった。向かうとしよう」
「しよう」
「しよう」
「し・よ・う♡」
「し・よ・う♡」
「後でな」
「「キャー!」」
15歳の男女とは違う意味のロシィとリリィのしように答えてキャッキャしている二人を和やかに見つめる。
「あー。良いか?」
「良いか?」
「良いか?」
「ああ。行こう」
ギルバート達の後ろを歩き出すと、後ろからシルヴィとティエが寄って来た。
「妾も良いか?」
「私も良い?」
上目遣いで甘えてくるように言う。普段あまりしない二人の行動は破壊力は抜群だ。
「ああ。順番にな」
パンパンパンとシルヴィとティエが手を叩き合う。いつの間にそんな仲に・・・息ピッタリ。
――――― 王都ハネス 城門前
「着いたぞ」
「着いたぞ」
「着いたぞ」
馬車で揺られて約6時間、日が落ちかけている。腰が痛い。テレポートで移動するのが当たり前と言う環境は改めなければ体力がきついな。
「「お帰りなさいませ!ギルバート様!」」
ビシっと敬礼する門番二人。
「失礼ながら、Sランクの実力者だけを招くようにとの事だったはずですが・・・」
「ああ。異例だが、全員その実力はある」
「な、何と!?このような幼い女子まで・・・」
主にロシィとリリィを見ている。見た目的には一番小さく見えるからね。
「ついでに、この少年は。この俺よりも圧倒的に強い」
「「は!?」」
驚愕する門番二人。
「なかなかの冗談ですね」
乾いた笑いで言う。
「冗談だと思うならそう思っていると良い。ただ、忠告しておく。こいつらは仲間が第1だ。もし、こいつらの誰かに手を付けようとするなら死すら生温いと知れ。現にギルドで制裁をこいつが加えいている所を何人も見ている。」
「「わ、分かりました!」」
ビシっと敬礼して返事をするも、何処か信じられない様子の門番二人である。ギルバートの言葉は信じてはいるものの、夢叶達の見た目が見た目なだけに信じきれないようだ。
その後、暫くお待ちくださいと門番の1人中に小走りで入って行く。その間、もう一人門番にマジマジと見られ、居心地が悪い。
「あなた、言いたいことがあるならはっきり言いなさい。ジロジロと気分が悪いわ。」
ティエが門番を睨み付けて言う。
「も、申し訳ございません!」
門番は慌てて視線を逸らす。
「チッ。小娘が。」
舌打ちしながら小声でぼやく。
「聞こえているわよ。」
門番の真後ろから突如聞こえる女性の声。それは先程迄、少し離れた所にいたティエであった。
「貴様、この俺の忠告を無視するとはな・・・」
「無視するとはな・・・」
「無視するとはな・・・」
門番を睨み付けるギルバート。
「そ、その様な事は決して・・・!」
「まぁ、別に俺は貴様がどうなろうが一向に構わないからどうもしないがな。」
「しないがな。」
「しないがな。」
慌てて否定する門番を嘲笑するギルバート3人。先ほどのティエの動きを見て歯を食いしばる門番。反論出来ない。下手に手を出せば、返り討ちに合うのは自分なのだから。しかし、この様な何処の誰かも分からない様な小娘にいいように言われるのは気分が悪い。この門番は、貴族出身で、5男な為、家督を継ぐことはない。その為、貴族の兄弟の中であっても、大した能力もなく、下に見られる事が多くあった。しかし、努力は続け只管勉学と剣術を学んだ。そして、自ら親の手を借りず、上にのし上がる為一番手っ取り早いのが兵士となり功績を上げる事。その目論見で兵士となり、それなりの成績を収めた為、国王の城の警備の一人に抜擢されたが、所詮は兵士である。貴族であるこの俺がこんな所でくすぶっていて良いはずがないと、近々隣国と戦争になるだろうと噂されている為、そこで上に上がると自分を鼓舞していた。そんな矢先に新しいSランクだなどと話が飛び込んで来れば、自分の活躍の場が減る可能性が非常に下がる。タイミングが悪かった為、遂イラ突きが声に出てしまったのである。
「貴様・・・。確か、ハイネス家のナーガルとか言ったか?」
「言ったか?」
「言ったか?」
「は?・・・ハイ!」
まさか、ただの兵の顔と名前をSランクであるギルバート様が自分の事を覚えていてくれたことに感激する門番ナーガル。
「人は、見かけによらん。見た目だけで判断すると痛い目に会うぞ。かく言うこの俺も人の事は言えんがな」
「言えんがな」
「言えんがな」
「五月蠅い」
ガンガンと15歳の男女に拳骨をお見舞いするギルバート。二人して頭を擦っている。
「肝に銘じて置きます!ご助言ありがとうございます!」
ビシッと敬礼。
「お待たせしました。陛下は直ぐにお会いになるそうです」
小走りで門番が帰って来た。
「・・・さて、ここの王は寛大であってくれよ」
帰ってきた門番に先導され、城内に入っていく。
「期待薄~」
「私を見習って欲しいものね!」
胸を張って言うリリィ。
「今のリリィが王になっても残念な未来しか見えないんだけど気のせいかな?」
「失礼ね!」
ギャーギャーとロシィとリリィが騒いでいる。
「皆さま、こちらです。ここからは他言無用でお願いいたします」
謁見の間に着いたようだ。
ノックをし、
「Sランク冒険者の方々をお連れしました。」
「入れ」
「失礼致します!」
中々許可が出る声が聞こえ、扉を開ける。
玉座迄、50メートル程ありそうな距離に、レッドカーペットの様な長い、大きな赤いコンクリートの様な地面が伸びている。その両脇に兵と文官らしき偉そうな人達が並んでいる。
「止まれ」
玉座に近づいて歩いていると制止の声が聞こえたので止まり、そこで片膝を付き、頭を下げる夢叶。その様子に驚く夢叶一行。ギルバート達3人も同じように頭を下げている。慌てて、夢叶一行も同じように頭を下げる。
「表をあげい」
国王の横にいる男性が声を上げる。
「よくぞ参った。・・・ギルバードが認めた者達だ。私からは何も問うまい。これから、其方達もこの国の為に力を振るい大いに活躍を期待する」
じっと、一人一人の顔を見て何処か微妙そうな顔をするも、そう答える国王。国王はギルバードの事をかなり信頼している様子だ。
「退出したまえ。」
国王の横の偉そうな人がそう言う。
はて・・・顔見せだけという事か。しかし、どうも俺達がこの国に属すると思われている。
「あー。発言良いか・・・ゴホン。よろしいですか?」
軽く手を上げ、敬語に言い直しながら立ち上がる。内心緊張してバクバクだ。中々こういった場は慣れないものだ。リカバーを当然の如く使って平静を装っている。
「発言を許可する。」
「俺達は、この国に属するつもりはないんだが?・・・というか、話聞いてないのか?聞いてないんですか?」
「・・・ご、ゴホン。では、何故この場に来た?」
夢叶の言葉遣いに眉間にしわを寄せる。偉そうな人。
「ギルバートから伝言とかなかったの・・・ですか?」
「この城に束縛されるのが嫌なのだろう?それぐらいの配慮はするとも」
「いや、この城に束縛されるのが嫌というわけではない。国に束縛されるのが嫌なんだ。です」
国王も偉そうな人も交え、どういう事だと騒ぎだす。
「どういう事だね?ギルバート殿。自由にさせていればこの国にいるのではなかったのかね?」
「はい。俺の言葉をそのまま受け止めてくれていなかった様子ですが、自分の都合の良いように受け止めず。そのまま受け止めてください」
ギルバートの言葉に眉を寄せる。
「自由とはまさに自由。俺の様に彼らをこの国に縛る事もない。まさに冒険者として自由に行動する事です。そうすれば、彼らは、当分はこの国に滞在してくれるとの事です。なお、無理やりにでもこの国に従わせたいと仰るならそれ相応の覚悟をして頂くことになります」
半分、脅す様に言うギルバートにその場にいた王側は唾を飲み込む。
「確か、貴殿よりも強いとの事だが・・・?」
「はい。彼は魔法使いという事で、Sランク冒険者の魔法使いと同様の立ち回りをしました。本気ではなかったとはいえ、それでもSランク冒険者の魔法使いを倒せる程の力を出していました。それでも手も足もでず、最後に上級魔法すら切り裂いてきた俺の本気の剣ですら切れぬ魔法を軽々と扱う程の腕です。憶測ですが、本気を出した私よりも倍以上・・・いえ、それよりも遥か上の強さをこの者は持っていると考えています。」
ギルバートの言葉に騒ぎが大きくなる。
「ですので、この様な手練れを俺個人の判断で自由にしてしまえば、俺に責任が来るのではと思った次第で、説得はお任せしますよ」
やれやれと言った態度だ。しかし、先ほどから男女二人はリピートしないな。流石に空気を読んでいるのか。
ギルバート達は自分の役目は終わったとその場を離れ国王の傍で成り行きを見守る様だ。まぁ国王の護衛として雇われているのだろうから位置的にも当然の場所か。他の者も何も言わないし。
「あ、あと彼等を怒らせたらこの国を滅ぼすそうなので十分注意してくれ」
急に敬語じゃなくなったが、建前的な感じで先ほどまでは使っていたのだろうか。
「冗談にしては面白くないぞ。ギルバート」
「残念ながら、冗談ではない。先程言った通り、彼は私よりも遥かに強い。そして、その仲間の女子達も最低でも私と同等の強さだ。そんな者達を相手に喧嘩を売ってみたまえ。この俺一人でもこの国にかなりの被害を与えられるというのに、俺以上の者が複数人いるのだ。滅ぶ事は簡単に想像できる」
国王の言葉に真剣な言葉で返すギルバートに驚愕する人々。
「そ、そうか。十分に気を付けよう。・・・それで、君達はどういった条件なら我が国に仕えてくれるのかね?」
国王が少し緊張した趣で夢叶達に尋ねる。
「いや、この国に仕える事はない。誤解がないように言っておくが、この国だけでなく、全ての国に仕えるつもりは全くない。偶々、最初に来た国がここと言うだけで会って、別に害をするつもりもないし、困っている者がいれば助けようとすら思っているぐらいだ。後は、精々自由に楽しく暮らしていくのが俺達の目的だ。当然、戦争とかにも参戦するつもりは毛頭ない。まぁ・・・もし?もしも、この国が俺の中で大切な国となったらならこの国に被害が及ぶような事があれば助けるかも知れないが」
しつこく説得されるのも面倒だし、妥協しながら益になるかもしれない部分をちらつかせながら話をする。
「だから、基本的には不干渉で頼む。冒険者として指名依頼等は内容によっては受けてやらんこともない。ただし、戦争とかの類には関わらないからな」
「すまないが、少し時間をくれ」
頷くと国王含め、偉いさん達が話し合っている。
「・・・しかあるまいな。・・・・待たせたな」
「ああ」
10分掛かっていない程の時間で話し合いが終わったようだ。そもそも向こう側に選択肢はないはずだ。自国最強に位置するギルバートの倍以上の強さ、戦力だどうにか出来るわけがない。
「そちらの言い分は分かった。我が国は其方らに干渉はしない。自由にしてくれ。・・・ただ、出来れば出来る限り、この国に居てこの国を好きになって貰いたい」
「ああ。何もない限りは当分はいさせてもらうよ」
そう言って、謁見の間を夢叶達は颯爽と出て行った。
「・・・あ。宿代貰っとかないと!」
慌てて、戻るのであった・・・。
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