第80話
「貴様!国王に逆らうのか!?」
「逆らうのか!?」
「逆らうのか!?」
ギルバートが言うと15歳の男女二人も続いて指を指して言う。
「いや、別にこの国何とも思ってないし?冒険者登録したら勝手に所属になっただけだし?しゃーなしで?みたいな?感じ?」
何故か昔のギャル風な喋り方である。
「承知で冒険者になったはずだろ!?」
「だろ!?」
「だろ!?」
「いや、まさかそこまで束縛されるとは思ってなかったし。名前だけ借りてるみたいなつもりだったんだよ。別に悪くもするつもりもないし。」
面倒だという風に答える。
「・・・よかろう。ならば、この俺と戦え。俺を納得させてみろ!」
「「させてみろ!」」
「いらん!」
15歳の男女の台詞が被り、お互いをムッと睨み合うからの即答の拒否での驚きへと表情が変わる。
「そんな気はしていたさ。だが、戦わないとずっと俺達はお前達を追いかけるぞ。」
悪い笑みを浮かべるギルバート。
「えー。超面倒。」
「・・・貴様。そんな露骨に嫌な顔されると少し傷付くぞ・・・。」
「傷付くぞ・・・。」
「傷付くぞ・・・。」
そんなしょんぼりしなくても・・・。偉そうだった顔との差が激しい。
「分かったよ。殺ればいいんだろ?殺れば。」
「ちょっと、字が違うんじゃないかなー?」
ゲシゲシとロシィに横腹を肘打ちされる。「アタタ。」とさする。
「そうこなくてはなぁ。受付よ。裏を借りるぞ。」
「借りるぞ。」
「借りるぞ。」
ザッザッと裏側にある広間に振り向かずに向かって歩いて行った。
「逃げたら怒られるかな?」
「次は飛び掛かってきそう。」
「だよなぁ。・・・はぁ。」
「で、誰で相手をすればいいんだ?」
「勿論、貴様のパーティの中で一番強い者だ。まがいなりにもSランクらしいからな。この俺自らが相手になってやる。この二人も相当強いが、Sランク相手に1人は厳しいからな。まぁ貴様等の実力が本物だったらだが。」
余りSランクという実力を信じていないようだ。
「えー。誰か暴れたい人~。」
「ハイハーイ!」
ロシィが手を上げて背伸びする。
「妾も・・・。」
その後ろでシルヴィも肘を曲げて手を上げている。
「じゃぁ、ジャンケンな。」
「恨みっこはなしだよ!ドラゴンじゃーんけーん。」
「ストーップ!普通のジャンケンで頼む。」
慌てて止めに入る。翼を広げられたら騒ぎどころではなくなるだろう。
「そんなの決まってるじゃん。そこまで馬鹿じゃないよ。」
ペシペシと背中をロシィに叩かれる。ぐぬぬ。
「じゃーんけーん。」
「・・・おい。貴様が一番強いわけではないのか?何女子に戦わせようとしている。」
怒りの形相で近寄って来た。
「いや、偶には暴れさせないとストレス溜まるだろ?アンタ強いみたいだし、ちょうど良いかなと思いましてー。」
今更中途半端に敬語を使う。
「ええーい。ふざけるな!貴様が戦え!他は認めん!」
「「えー!!」」
ロシィとシルヴィが不満がる。
「ほら、二人もアンタと戦いたいと言ってることだし。」
「この俺がこのような女子に負けるとでも?」
「あー。ユウ。殺っちゃって。これ、大したことないわ。」
「そうだな。見た目で判断するとか雑魚の台詞だ。」
「な!?」
ロシィとシルヴィはやる気を無くし、雑魚扱いされたギルバートプルプルとしだす。ロシィさんや。あなたも字が駄目な気がするんですが気のせいですかね?
「ええい。この俺をコケにするとは!良いだろう。貴様等!自分の男が無様にやられるところを見ているが良い!」
「え?まだ、俺がやるって言ってない・・・。」
チラっと仲間を見ると、頑張ってと両手をギュっと肘を曲げていたり、サムズアップしたり、苦笑いしていたりと様々だ。
「はぁ・・・。」
盛大なため息とともに肩を露骨に落とした。
「殺しは出来れば無しでお願い致します。お二方ともどちらかが無くなられてしまっては、国として大損失にもなりますので。そ、それでは、準備はよろしいでしょうか?」
ミレディが審判を務めるようだ。
「良いだろう。」
「ああ。」
ギルバートが剣を一本抜き、構える。
「それでは、始めてください!」
スタコラーと合図と共に被害に合わない場所に移動するミレディ。
「本当に、杖も何も持たずに手ぶらとはなぁ。」
「まぁ、色々と自信があるから。」
「良いだろう。その自信。打砕いてやる!」
ダッと一気に詰め寄るギルバート。
早い。グラディオでのSSランクはあるだろう。だが、最初に合った時のエリィよりも数段遅い。まぁ、エリィはその上のMランクだったわけだが。
「シールド。」
盾を張り、ギルバートの剣を防ぐ。
「ほう?自信があると言うだけはある。この俺の剣をシールド如き魔法で、しかもほぼ無詠唱で防ぐとはな。」
適当にそのまんまの魔法名を言ったら存在した様だ。口振りからして下級魔法の位置づけだろう。
「ほらほら、いつまで持つかな?」
ガギンガギンと、力任せにシールドを正面から壊すつもりのようだ。
「おっと。中々器用な奴だ。」
攻撃を中断し、後ろに飛退くギルバート。夢叶の頭上にシールドの上から狙い撃つように5つの拳程度の大きさの火球、ファイアボールをギルバートを狙い撃とうとしていた。
「舐めてると死ぬぞー。」
ホラッと言う風に火球を一つ一つタイミングをばらけさせて放つ。それをギルバートは前進しながら火球を躱しながら詰め寄る。
「はい、ドーン。」
目の前にまで近づいて来た所を範囲の大きいアイスウォール、高さ5メートル横幅は50メートルはある氷の壁で叩きつけるように放つ。
「なるほど、この世界のSランクはそれなりに強いな。」
誰にも聞こえぬような声で呟くように言う夢叶の視線は上に向き、アイスウォールを跳躍して躱し、飛び掛かってきているギルバートを捉えている。
「ファイア。」
空中にいるギルバートに3つの火球を放つ。普通の人間なら躱す事は出来ないはずだ。浮遊系の魔法が一般的なら別だが。今までの世界からすれば、浮遊系も上位の魔法に位置する。剣士であるギルバートが使えるとは思えない。
「甘いわ!」
ギルバートの剣が淡く光、3つの火球を切り裂き、そのまま夢叶に切り掛かる。
「こいつは驚いた。魔法を斬る奴がいるとは。」
「驚いたのはこっちだ。まさか、魔法すら斬る俺の攻撃をシールドで防ぎ、平然としているとはな。」
軽く後ろに飛退き、間合いを取る。魔法使いに距離を置くのはどうなのだろうか。
「確かに、お前はSランクの実力はある。いや、それ以上かもしれない程の規格外の魔法使いだ。認めよう。だが、それとは別に、何処までの強さか見てみたい。少し、本気で行くぞ。」
ギルバートの雰囲気が変わる。
「えー。認めたなら試合終了で・・・。」
「行くぞ!」
話を聞かずに向かってきた。
「燃えあがーれー。燃え上ーれー。ふふふふん~。」
鼻歌を交えながら10の火球を繰り出す夢叶。
「その程度か!?」
ギルバートの腰の剣3本が宙に浮き、剣先が淡く光、火球を切り裂き、剣がそのまま真っ直ぐ向かって飛んでくる。
「へぇ。」
やってみたい攻撃ランキングに入る技だ。
大き目のシールドを張り、3本の剣を防ぐ。その隙にギルバートは速度を上げ、真後ろへと回り込む。
「獲った!」
真後ろを取り、夢叶は振り向いていない。完全に捉えたと思った一撃は、シールドにより、阻まれる。
「残念。」
ゆっくりと振り向く夢叶。
「だが!」
防がれる可能性を考えていたのだろう。3本の剣の内、2本が夢叶の真横へ移動して挟撃する。だが、それもシールドにより阻まれる。
「だが?」
余裕で返す夢叶。
「4面にその強度でシールドを瞬時に張るとは、想像以上だ。しかし。」
4面、ギルバート自身を含め全てが剣劇をシールドを解いて移動させまいと攻撃を続けている所に、ギルバートの背中の真ん中の剣が宙に浮き、頭上から夢叶に迫る。
「しかし?」
しかし、それもシールドで防がれる。
「5面・・・!?・・・だと!?・・・しかし、これでは貴様の魔力がこのまま尽きるのを待つだけだな!さあ!どうする!?」
ひたすらに攻撃を続けるギルバート。
「どうするも何も。お前がどうする?」
手をクィと上げ、ギルバートの足元から氷の柱を突き上げる。それを辛うじて躱すと躱した先の足元から次々と突き上げてくる。
「はい。チェックメイト。」
裂けていたギルバートはいつの間にか氷の柱に囲まれて逃げ場を無くしており、その柱から氷の棘が少しでも動けば体に刺さるように伸びている。
「ぐ!?馬鹿な馬鹿な馬鹿な!この俺が!こんなぽっと出の奴に!」
ギルバートの持つ剣が光り輝き、棘を切り裂こうとする。だが。
ガキーン。
「馬鹿な!?」
苦虫を嚙み潰したように言うギルバート。
「それにもシールドを張ってるんだ。頑丈だぞ。」
簡単に言う夢叶だが、ギルバートはあり得ないと驚愕している。
「今の俺の一撃は上級魔法すら切り裂くことが出来る物だぞ。それをこんな簡単にシールド如きで防がれるなど・・・。貴様!本当に何者だ!?」
「ぽっと出の者です。」
キリッ。
「ふざける!貴様の様な実力者が何故今まで隠れていた!何故今現れた!」
怒声の様に声を上げる。
「え?・・・たまたま?」
夢叶の本当に心辺りすら何も思惑がなさそうな反応に驚くギルバート。
「・・・分かった。興が冷めた。貴様の勝ちだ。」
やれやれと手を上げるギルバート。
「しょ、勝者!ユウト・オウセーー!!!」
大きな歓声が響き渡った。




