第7話 冒険者ギルドの説明回
ーーーーーーーーーーーギルドへ向かう道中
「なあ、あんた。悪いがサラマンダーを倒したのはあんたということにしといてくれないか?」
「別に構わないが・・・隠さなければ今後、いろいろと良いクエストなど受けられるようになると思うが?・・・ああ、そういうのは嫌いなのだったな。」
「悪いな。」
サラマンダーの核をリュックから取り出し渡す。
「冒険者になる時ってステータスプレートを職員に渡さないといけないのか?」
「そうだ。普段のクエストでは問題ないが、ランクアップなどする時は手続き上必要だな。」
渡して、新人冒険者がいきなりレベル25だとわかると騒ぎになりそうだし、どうしたものか。
「あんた、親衛隊隊長ならそれなりの権力あるんじゃないのか?」
「・・・ああ、言いたいことはわかったが、ギルドは、直接この国とは・・・いや、ほかの国とも関係ない、中立組織なのだ。ある程度の融通は聞いてもらえるが、どこかの国に属することはまずない。冒険者たちの依頼仲介人というだけだ。」
エイリの権力で、ギルドにステータスの事を黙っているように言ってもらおうという魂胆だったが当てにならなそうだ。
「まぁ、言うだけ言ってみてくれ。」
「わかった。あと、ずっと言いたかったのだが」
微妙に怒っていらっしゃる!?
「な、なんだ?」
「貴様という平民がなぜ殿下や私に敬語を使わない。殿下を助け、殿下が何も言わなかったから我慢していたが、本来なら斬首されてもおかしくないことだ。」
睨みつけて言うエイリ。
「いや、別にあんたらに尊敬とかそういうのはないし、王族だと貴族とか身分で気を使わないといけないとかめんどうだし、疲れるだろ。」
内心、怖いよエイリさんと思いながらリカバーで平常心を保ち答える。
「それでも、上の身分に対する礼儀は必要だろう!」
「いや、だから身分とか気にするのが嫌なんだって。絶対に護れと言うなら俺は逃げさせてもらう。」
その瞬間、エイリが剣の柄に手をあて、いつでも斬れる戦闘態勢に入り、殺気を放つ。それとほぼ同時に、身体強化の魔法を発動する。
正直、サラマンダーを相手しているより圧倒的にやばい。またもリカバーで落ち着き、集中する。
幸い、ここは人通りが少ないのか、今は誰もいない。
「逃げられるとでも?」
「ああ。」
事実、逃げられるのだ。首筋に剣を当てられていたり、認識できない事をされないかぎり、危険と判断すればテレポートで逃げればいいのだから。
サラマンダーでレベルが大幅に上がり、身体強化もしている、そして相手は正面にいて距離も2歩ぐらいの距離はある。認識できないはずはないのだ。愛称を誤って呼んでしまった時は0歩の間合いで無理だった。しかし、今回は2歩も距離があるのだ。あの時より数段速いスピードで来られても反応できる自信はある。
そもそも、逃げるだけなら不意にテレポートすればいいだけなのだが、出来れば縁は切り離したくない。
そういったことからの返答だった。
「貴様は、本当に何者だ?この私から逃げられると確信しているようだが。」
「それは、言う機会があれば教えてやるよ。」
やれやれといった様子で、お互いに戦闘態勢を解く。
「貴様が別にそれでいいなら別にいいが、王都や街中とか人がいるところでは私や殿下ぐらいには敬語を使った方がいい。」
「だーかーらー。」
まだ続くのかよと思う。
「殿下は言うまでもなく、私もその殿下の親衛隊隊長を務めていて、それなりの高い地位にいるのだから、そんな殿下と私に敬語を使わないとなれば、あいつは何者だ?なぜ殿下と親衛隊隊長にあんな口の聞き方をするのか、などと違う意味で注目を浴びることになるが?」
違う意味、親衛隊隊長の恋の相手とかなら良い気分ではあるが、そんなことはまずないだろう。まず、面倒なことになるのは間違いはない。
「・・・気を付けます・・・。」
カランコロンコロン
ギルドの扉を開け、入る。少し後ろからエイリが付いて来ていた。
「おい、あれ、エイリ隊長じゃないのか?」
「なぜこんな所に?」
「横にいる奴は何者だ?」
周囲がざわついている。すでに注目浴びて、エイリが言った通りになっている。やだなーと思いつつ。
「冒険者試験に合格したんだけど。」
周囲を無視して、ギルドの受付員に言うと、はいはいと書類を受け取った。
「それでは、ステータスプレートに反映させるので、提示お願いします。」
スッとエイリが横に来て、
「すまないが、この者のステータスプレートの内容は極秘で頼めないか?」
受付員にだけ聞こえるようにエイリが口添えしてくれた。
「別に、構いませんが・・・」
と、ステータスプレートを見て驚きの表情である。
「え?一日も経たないうちにこれですか!?」
驚きのあまり少し声が大きくなってしまったようだ。シーと人差し指を口の前で立てる夢叶。しかし、すでに周囲は異変を察してかこちらに注目しているようだ。冷や汗がでてきそう。
「す、すいません。」
ペコリと頭を下げる受付員。作業に入、ステータスプレートを作った石板に乗せると、石板と共にステータスプレートが淡い光が包む。
「これで更新完了です。」
ステータスプレートを見る。
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名前 ユウト・オウセ
職業 冒険者 ランクB
レベル 25
体力 500
力 60
防御力 40
素早さ 50
次のレベルまで 14800
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職業にランクBが増えている。
「ギルド、冒険者について説明させていただきます。」
ギルドランクについて
ランク レベル
D 1~9
C 10~19
B 20~29
A 30~39
S 40~49
SS 50~59
M 60以上
レベルによってランクが変わるようだ。
魔物のランクは、冒険者ランクが倒すことができるレベルということらしい。
冒険者ランクBなら魔物ランクBの魔物を倒すことができ、冒険者ランクBが魔物ランクAの魔物相手には簡単にやられてしまうという。
なお、ランクが適正だとしても、同じランクでは確実に勝てるというわけでもなく、魔物にはランクBでも冒険者のレベルがあるように魔物にも差があるのだ。倒せるランクだからと油断すると簡単に殺されてしまう。
「レベル60以上は何人いるんだ?」
「世界で5人ほどですね。ついでに、そのうちの1人こちらにいらっしゃるエイリ様です。」
バッとエイリを見る。当然のような顔をしている。・・・まじか。
「次に、依頼の受注ですが、そこに張り出されている用紙を持ってきていただくと、こちらで受注の登録を行います。なお、その時にステータスプレートを提示していただき、依頼内容に沿っているか、本人確認を行わせていただきます。あ、ステータスプレートですが、本人以外の物を持って来たとしても、登録する際に識別することができますので、もし、他人の物を持ってきた場合、厳しい罰が与えられます。」
「たとえば?」
受付員が少し上を向き考え、
「そうですねぇ。依頼完了時の報酬を減額したりが主ですね。何度もやっていると死んでいただきます。」
ニッコリと良い笑顔だ。
「え?もしかして、かなり強い?」
「はい。我々、ギルドの従業員は最低ランクがSです。」
ドヤ顔だ。一応、怒らせないように気を付けよう。
「ついでに、ランクSは何人ぐらいいるんだ?」
「だいたい300人ぐらいですかね。あとランクSSは100人程度です。」
多いのか少ないのか微妙な数だ。
「他に、特にこれといった決まりごともないのですが、不正だけはしないようにお願いしますね。」
ニッコリ。なんだろう、この人はSなのだろうか。いや、ランクではないよ。
「最後に、これが一番重要なのですが、魔物を倒した際の核は必ずこちらに提出していただきます。当然、隠し持っていたりするのがわかると死んでいただきます。」
ニッコリ。
「・・・罰ではなくて?」
「はい。罰ではなく、死、です。」
ニッコリ。
「それは、なぜ?」
「詳しくはわかっていないのですが、ずっと所持していると、その物が魔物となったり、病気や呪いにかかったりといろいろと危険なのです。ですねので、こちらで管理しているわけです。」
「隠し持っていた者はいたのか?」
「はい、いましたが見つけ次第すぐに死んでいただいています。」
ニッコリ。
「と、言うわけで、お二人が所持している核を御出ししていただけますか?」
特に持っておく必要もないのでリュックから取り出す。エイリもサラマンダーの核を受付員に渡す。
「これは、コノエ森林で出たというサラマンダーですね。」
おおー周囲がざわつく。さすがランクMと。
「こちらは、ラビットが7枚・・・あ、いえ、ラビットが5枚とキングラビットが2枚ですね。」
ざわっ。
あれ?
「あいつ、確かお子様だったよな?」
「ああ。しかも、正式に冒険者登録されていない奴がキングラビットを倒せるのか?」
「いやいや、ありえないだろう。キングラビットはランクBの魔物だぞ。」
ざわざわ。
「すまない、貴様に預けていたのを忘れていた。これは私が倒したものだ。」
エイリが言う。
「あ、ああ、そうなんだ。」
エイリの気転に合わせる。
「そうですか。」
一瞬、睨まれた気がした。
「わかりました。では、こちらがユウトさんの報酬とエイリ様の報酬です。」
夢叶に銀貨1枚。エイリに金貨2枚が渡された。
「金貰えるんだ。」
夢叶が呟く。
「はい、核を換金できるようにしてからは、核を隠し持つような事をする人はほぼほぼいなくなりました。」
「・・・なにかメリットがあるのか?核は危険な物なんだろう?」
「大きなメリットはないですが、一応ありますよ。核の取り扱いについては企業秘密です。」
ニッコリ。これ以上深く聞いては駄目な気がする笑顔だ。
「そ、そうか。最後に聞いてもいいか?」
「なんでしょう?」
首をかしげる受付員。
「なぜ、俺達が核を持っているとわかった?俺だけなら冒険者試験でラビットを倒すことが内容だからわかるが、お前は、お2人が所持していると言った。なぜ、こいつまで持っているとわかった?」
クイっと親指で指す。
「ああ、ギルドと街の入り口付近仕掛けがしてあるんですよ。核を所持しているかがわかる。ですので、出る時にそれが反応するということは隠し持っているってことですよね?その場合、死んでもらいます。」
ニッコリ。
「ついでに、その仕掛けはどうやって・・・」
「企業秘密です。」
仕掛けの方法を聞こうとしたが言いきる前に、口元に人差し指を置き、ウィンクしてかわいらしく言われてしまった。どこかの未来から来た人が言ってそうな感じで。
今は、特に他に用もないのでギルドを出ようと足を向けると、
「おい、エイリ隊長に向かってあの態度はなんだ!?」
ああ!?とドスが聞いた声で言い寄ってくる。その後ろに4人も来ている。
(しまったーー!)
ギルド入る前に気を付けると言ったばかりなのに、やっちまった。エイリをこいつ呼ばりした挙句、親指で指してしまった。やっぱり、こういう奴らに絡まれてしまうんだよな。
はぁ、と肩を落とす。胃が痛い。リカバー。