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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第4章 バーザルド
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第78話 前触れ?

「何処からでも掛かって来たまえ。」

 タイゼンは剣を抜き、構えて手をクイクイとさせている。


「いやいや、そちらこそ何処からでも掛かって来たまえ。」

 対してリリィは剣を抜かず、棒立ちのまま、手を同じようにクイクイとしている。


「いやいやいや。そちらから掛かって来たまえ。」

「いやいやいやいや。」

「いやいやいやいやいや。」

 いやいやとクイクイの応酬である。


「いやいや。早く始めてください!」

 ミレディが叫ぶように言う。


「「いやいやいやいや。」」

 リリィとタイゼンがハモりなが手を横に振る行為まで一緒だ。


 ・・・訳が分からないよ。


「良いだろう。遊びはここまでだ!・・・行くぞ!」

「来たまえ!」

 腕を組んで威張る様に言うリリィ。


 ・・・うん。ホントにね。遊びだったね。


 ゆっくりと助走しながら駆け出すタイゼン。


「いやいや。ようやく始まりました!」

 ミレディが盛り上げようと声を上げる。マイクらしきアーティファクトを使い、正にマイクの効果で音声を拡張している。風魔法により、音を広く伝えているのだろう。


「いやいや。何でいつも試験なのに見世物で実況されるんだ?」

「いやいや。所定だよ。」

「いやいや、くど過ぎ。」

 夢叶、ロシィ、ティエといやいや言うている。


 直後、辺りが不自然に静まり帰った為、リリィの方を向いて見るとタイゼンが壁に吹き飛ばされ気絶していた。


「いやいや。早過ぎだろ?」

 いやいやとは言わないつもりではいたが言わずにはいられなかった。


「い、一体何が起こったのでしょうかー!?あのギルドマスタータイゼンが!引退したとは言え、まだAランクの実力を持つギルドマスタータイゼンが一瞬の内に倒されてしまいました!ギルドマスターが一瞬の内に、一瞬の内に倒されてしまいました。」

 何度も一瞬って言ってあげないでよ。可哀想になってくる。


「リリィナさん。一体、何をされたのでしょうか?」

 タイゼンを放置してリリィに問いかけるミレディ。治療は大丈夫なのか?と思ってたら、タンカがやって来てタイゼンを回収して行った。


「え?えーと。言わなきゃ駄目?」

気まずそうに言うリリィ。

「絶対ではないですが、出来ればお教えいただけるとありがたいです。」

 少し鼻息を荒くして教えて教えてと尻尾を振っている。


「んー。取り合えず、突っ込んで来たから牽制のつもりで突いた。以上!」

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 ドヤーと言うリリィに周囲は唖然としている。ステータスプレートによる強化はここまでに違うのか。体を改造しているようなものだから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが、これだけ異世界を渡ってレベルの概念がない異世界で圧倒して来てしまうとレベルの概念がある異世界でないと恐らく夢叶達の敵になる者はいなさそうだと判断せざる負えない。


「も、もももう一度お願いしても良いですか?」

 動揺し過ぎではなかろうか。


「えっと。小突いただけ?」

 何故か疑問形。


「い、一体どこに!?この体の何処にそれ程までの力があると言うのかー!?魔法を使ってるんですよね?ね?」

「ま、まぁ。そんなところ。」

 誤魔化すが、ある意味間違ってはいない。魔法、マナにより体を身体能力を強化するように作り変えているのだから。


「恐らく、身体能力強化の魔法でしょう!身体能力強化は体に負担が大きく、諸刃の剣とも呼ばれている魔法です!その為、使い手は極僅かしかいないのですが、リリィナさんはその魔法を使いこなしているようです!そして、この試験の都合上、リリィナさんのパーティの中にはリリィナさん以上の実力者がまだ5名もいるという事が判明いたしました。一体何者なのですか!?」

 興味深々で尻尾をわっさわっさと振っている。


「旅人・・・冒険者だよ。うん。」

 異世界巡りのと頭に付く気がするけど間違ってないよね。

「何か引っかかるような言い方でしたが、このパーティの強さは謎に包まれたままということですが、私はどうも何かが起こりそうな予感がしてなりません!今後の活躍に期待いたしましょう!」

 歓声と共に試験の幕が下りた。



「さて、何ランクになるんでしょうかね?」

 ギルドの室内に戻って来たミレディの第一声である。


「あれ?今の試験は・・・?」

 ランクアップの試験であったはずだが。


「いえ、見極める為のギルドマスターが気を失ってしまったので分からないのですよ。恐らく、Sランクだと思いますけど。何たって、あのギルドマスターを一瞬で倒したのですから!一瞬で!」

 ミレディはギルドマスターに何か恨みでもあるのだろうか。ギルドマスターへの貶し具合が半端ない。


「Sランクって世界に何人いるんだ?」

 異世界的にこういうトップランクの人間は数える程しかいないというのが定番だと思うが。


「そうですね。各国に大体、3人ぐらいですかね。ですので、もしもSランクと判定された場合、パーティ全員がSランクとなりますのでこれは異例中の異例ですよ。この情報を他国が知れば、勧誘して来る事間違いなし。安定した生活、裕福な暮らしが約束されていますよ。」

 興奮した様子で両手を前でギュッとして耳をピコピコさせている。


「裕福な暮らしは良いけど、国のお抱え冒険者って奴だろ?国の命令に従えってやつだろ?」

「まぁ、そうですけど。何処も国王の護衛が基本ですので、戦争とか何もなければ、安全な場所で裕福な生活ですよ?憧れます!」

「だが、断る。俺達は、自由を愛する者達だ!」

 キリッ。

「それでは、またご連絡差し上げますので、何処でご宿泊されていますか?」

「ああ、まだ決まってないんだ。最短で一番稼げる依頼ってないです?」

「えーっと、少々お待ちください。」

 ペラペラと資料をめくり探すミレディ。


「俺達は自由を愛する者達だ。キリッ。」

 ボソとロシィが真似して言う。

「やめてあげて!ユウは頑張ったのだから。」


 何を!?


 ティエが庇ってくれるという嬉しい出来事があったが、庇ってくれている感じがしないのは気のせいだろうか。


「ほら、もう一度しっかりと言ってあげて!」

「え?」

 ティエがよく分からない事を言い出す。


「ほら早く。」

「お、俺達は自由を愛する者達。」

 き、キリッ?半分棒読みで、言われるがまま勢いでやってしまった。


 プークスクス。

 プークスクス。

 周囲からも笑いが漏れる。リリィやミレディも笑っている。さすがに、これはちょっときつい。


「リカバー。・・・はぁはぁ。」

 心臓がバクバク言っている。


「あ、あのごめん。ちょっとやり過ぎた。」

 夢叶の辛そうな顔に流石に悪い事をしたと気付くティエに。ロシィやリリィ達。


「ごめんなさい。皆の前で弄ったら緊張とかしがちなのが慣れるかなと思って。」

 必死の言い訳、いや。事実そうなのだろう。ティエは普段こんな事をしている所は見たことがない。前の扱いでもなかったことだ。


「あ、ああ。俺もそう思って一発やったんだけど。二発目してあの反応はちょっと流石にきつい。お前達じゃなかったら薙ぎ払ってる所だ。」

 まだ、息が少し荒々しくそう答える夢叶。その表情はマジで殺りそうだとティエ達は思うと同時に、二度とボケた後に下手に弄るのはやめておこうと誓うティエ達であった。

 だが、そこに阿保が現れた。


「だっせー。何が自由を愛する者達だ。キリッ。だってさ。ぶわーっはっはっは。」

「「ぶわーっはっはっは。」」

 3人組の頭の悪そうな男が現れた。


 どうやら、異世界最初の3人組は皆死ぬ運命にあるらしい。


「・・・なぁ。こいつら殺したら罪になるのか?」

「え!?え?勿論なりますよ!彼らは別に何もしていないのですから。」

 突然の殺しても良いのかという質問に驚くミレディ。


「おいおい。こいつ俺らを殺すってさ。」

「そんな度胸もないくせに。」

「笑わせてくれるぜ!キリッ。」

「「「ぶわーっはっはっは。」」」

 夢叶の残念なネタを使い、豪快に笑う男達。


「駄目だ。ちょっと今の俺は我慢出来そうにない。」

「ちょっ!?もうちょっと我慢して!」

 リリィが慌てて夢叶と男達の間に割って入る。


「お?嬢ちゃん。さっきはどんなトリックを使ったんだい?」

「きっとこの剣が凄い力を秘めているに違いない。」

「是非見せてくれないか?」

「え?まぁ。いいけど。」

 なんとなく予想が出来たリリィは鞘ごと剣を渡す。


「さて、これで嬢ちゃんはただの女の子だ。俺達と一緒に来な。この剣は俺達が有効に使ってやる。」

「これで、俺達もSランクだ。」

「「「ぶわーっはっはっは。」」」


 そう笑いながらリリィの腕を掴もうとする男。それをパシっと叩き落とす。


「んだ?少年?邪魔をするのか?」

「俺達には既にこの剣があるんだぞ?」

「死にてえのか?」

 ドスの声にメンチを斬る男達。


「ミレディさん。放っておくとこいつらに俺の女が酷い目に合わされてしまうんだが。それでも殺しては駄目なのか?」


「え?い、いえ。流石に目の前で犯罪を行おうとする者は、殺されてもおかしくはなく、罪に問われることはありませんが・・・。ここにいる皆さんが承認ですし。ただ・・・。」


「つまり、こいつらはただの馬鹿か、自分達の実力を過信して好き放題しているクズどもということか。その様子だと後者のようだな。」

 気まずそうにミレディ及び周囲が頷く。


「ぶわーっはっはっは。」

「やれ。」

「死ねー!・・・!?」

 堂々と殺しに来る事に驚くほどの阿保さ。男は奪った剣を抜こうとして、一瞬、稲妻がその男の体を走り、そのまま倒れた。


「な、何をしやがった!?」

「別に何も?その剣は使い手を選ぶんだよ。」

 夢叶のアーティファクト仕様の剣である。所有者、夢叶一行以外が使おうとすると盗難防止等の為に稲妻(致死量)が流れる仕様になっている。耐性がなければ倒れた男は死んでいるだろう。


「そんな魔剣みたいなのがあってたまるか!」

 魔剣という存在は認めているじゃないかというツッコミを心の中でする。

「ッハ!?そういえば、鞘に入れて使っていたぞ!?」

 倒れた男の傍にある剣を拾い振りかぶる。そして稲妻が放たれて倒れる。武器として扱おうとすれば発動するのだ。


「そ、そうだ!?突きだ!?」

 最後の一人が剣を拾い、突きを繰り出した瞬間、稲妻で倒れる。


「本当に阿保だな。」

「脳筋って奴じゃない?」

「それは脳筋に失礼なような気が。脳筋って戦闘に関しては突出した奴等だろ?こいつらそれ以前の阿保じゃない?」

 ロシィの脳近説を否定すると確かにそうかもと頷く。


「だが、これでは俺のストレスがやばい。リカバーしても気分的にやばい。よって、処分するが構わないよな?」

「え・・・?しょ、処分ですか?か、構いませんけど。」

 ミレディは恐らく、外にでも放り出すのだろうと思い返事をした。しかし、違うと分かった時には後悔した。夢叶が手を翳した瞬間、男達から黒みがかった炎が出たのだ。焦げた匂いと共に普通の炎ではあり得ない程のスピードで男達が足から消滅していく。最後の一人は稲妻でも辛うじて生きていたようで、その炎により気が付き、悶え苦しみながら足から消滅していく。叫びにもならない声で叫びを上げる。その光景に周囲の者は顔を引きつらせている。今まで、強さだけはあった連中をどうにか出来るのは嬉しいが、これは何という惨い殺し方なのか。足が徐々に徐々に削られ消滅していく。計り知れないほどの苦痛だろう。おまけに心臓付近まで消滅すると今度は手から消滅していく。痛みで失神してもすぐに目を覚ますの繰り返しだ。時間にして数分の事だったが、あまりにも長く感じる光景であった。

 そして、その場にいた者達はこのパーティには下手に手を出さないで置こうと心に決めたのであった。





―――――――― 地球 とある警察署内


「な、何だ!?」

 警察署内で突如として現れた長い膝辺りまである黒い髪、邪馬台国時代のような服装をした妖麗な女性。


「あの小娘め。小細工をしよって。まだ、マナの残留が新しいな。どれ。」

 マナを操り、その場であった出来事を時間を戻しながら閲覧する。


「お、おい。何者だ!?」

 勇敢なおじさん、上司は、脳裏に以前の出来事が蘇る。遊部が死に、その息子が虫の息で生き残った。そして、そうした本人は魔法のようにどこかへ消えたあの日を。

 そう、遊部勇太は辛うじて奇跡的に生き残ったのだ。今だ入院中で、油断を許さない状態ではあるが、命は繋いだのだ。


「ほう、くくく。あーっはっはっはっは。なるほどなぁ。」

 1人納得して笑う女性に、その場にいた警察官達は壁際により、成り行きを見守っている。前回の人外の者達を目の当たりにしているため、この女性も突如現れたことから同一の可能性が高い。何事もなく立ち去ってくれるのを祈る事しかできない。


「これはなかなか良いおもちゃを見つけた。探す手間も多少減らすことが出来るか。一石二鳥とはこのことじゃ。くくく。」

 女性は笑いながら開かれた空間から、遊部親子を襲った少年の様に消えた。


「一体、何だったんだ・・・。」

 安堵と共に力が抜ける。しかし、これから嫌な予感が起こるような気がしてならない警察官達であった。


―――― 地球 とある病院 夜中


「ん・・・ここは?」

「病院だ。」

 遊部勇太。昔、夢叶を虐め、死の間際まで暴行を加え、夢叶に復讐されて瀕死の重傷となった男に答える黒い長い髪をした女性。

「俺は、そうだ。夢叶の野郎!」

「くくく。そうか。今は夢叶と言うのじゃな。その夢叶に勝つ為の強さは欲しくはないか?」

 病院のベッドから体を勢いよく起こすと体に付いていた医療器具が外れる。周囲を見渡すとテレビでよく見る生命維持の為の医療らしき物がある。つまり、先ほどまで死にかけていた。いつ死んでもおかしくはない状態だったと推測できる。しかし、今は体が全快どころか体が軽くすら感じられる。


「あんた何者だ?」

「我は、神じゃ。先ほどの返答はどうする?」

「・・・親父は?」

 少し考えそう尋ねた。


「お主の父親は、お主を刺した後傷口が開き、そのまま死んだ。」

 手を血が滲むほどに力強く握り締める。


「・・・神だろうと何だろうと俺はあいつを再び叩きのめさないと、嫌、今度は殺さないと気が済まない。俺に力をくれ!」

 神と名乗る女性の目をハッキリと見、そう力強く答えた。


「くくく。良いだろう。お主に力を与えよう。ただし、この力に慣れるのにそれ相応の時間は有するだろう。だが、これでお主の復讐も叶うだろう。」

 女性の笑いは、夜中の病院の一室の中で響き渡った。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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