第77話
ブックマ・評価ありがとうございます!
チュンチュン。朝チュン。
「んー!」
ベッドから体を起こし、伸ばす夢叶の隣には裸で布団の中で眠っているティエ。頭をそっと撫でる。
「ん・・・。」
眠そうに眼を開けるティエ。
「悪い。起こした。」
「んー。」
ヒシと抱き着いて来るティエ。あのティエが何故かこんなにも可愛くなった。話を聞くと、どうやらだいぶ最初の頃から好意は抱いてくれていたらしい。しかし、名付けてくれたリリィと同じ人を好いてしまってはリリィに迷惑が掛かる。リリィと同じ人を好きになるなんて恐れ多いと遠慮して、紛らわす為に夢叶に対しては特にきつく当たってしまっていたらしい。しかし、リリィの他にロシィにシルヴィも一緒になっている様子を見ていると段々と我慢出来なくなってきて、自分も良いのではと思うようになって来た所についポロっと口走ってしまいこうなったのだとか。
「「おはー。」」
「「おはよう。」」」
「うーす。」
「おはよう。」
ティエと共に宿の食堂に入ると皆既に起きており、朝の挨拶を交わす。
「どうだった?」
「どうだった?」
「何が?」
ロシィとリリィの問いかけに首を傾げるティエ。
「そりゃぁ。」
「ねぇ?昨夜の事ですよ。」
ニマニマとウリウリとしている。
「な!?」
何を聞きたいのか理解したティエは顔を真っ赤にする。
「そ、そんな事、リリィ様にだって言う必要ないでしょ!」
フンと顔を背ける。
「ムフフ。で?ユウはどうだったの?ウリウリ。」
おっさんとなりかけているロシィとリリィにサムズアップする。
「「キャー。」」
「おい。そろそろ飯を食べないと。ギルドに行くんだろ?」
「そうだった。」
賊の件でギルドに行くのだ。結局、依頼という形で回収をすることになった。報酬は、懸賞金を報酬として渡し、装備品を貰う。懸賞金がなければ、装備品を全て報酬として渡す。もしも、両方なければ何か今度困ったら頼み事を聞いてくれという事となった。この依頼を受けてくれたのがマサイのパーティだ。ちょっかいを出した詫びという事で格安で引き受けてくれた。魔物に食われてなどしていなければ、8人の懸賞金で十分だ。賊の討伐は最低保証、銀貨3枚の懸賞金が手に入る。さらに賞金首として値段が付いているならばその分利益となる。
そして、予定では昨日、その依頼を言ってから直ぐに向かってくれたマサイパーティが昼前頃には帰ってくる予定となっているのだ。夜の行動となる為、賊がいた場合、回収した後野営をしてから朝に帰路につくということらしい。
――――
カララン。
「お。来たな。」
ギルドに入ると一番に声を掛けて来たマサイ。
「悪い。遅れたか?」
既に待っていた様なので謝る。
「構わないさ。それよりも依頼達成だ。賊は全員無事だった。賊の親玉が1人賞金首リストに載っていたからこちらとしてはかなりの大儲けになったんだが、本当にそれでいいのかい?あの装備品を売ってもこっちの取り分の半分にもならないぞ?」
賞金首がいたことによりかなりの取り分となったマサイが本当に良いのか聞いてくる。本来ならそこまでわざわざ報告せずに黙って貰っておくのが普通で、依頼主にも言いに行くことはない。ギルドがその仲介を引き受けてくれるのだから。今回は直接本人と会っている為と詫びもあっての事で自らも報告しに来てくれたのだろう。
「ああ。もしかしたらその装備品すらも手に入らなかった可能性があったからな。装備品だけでも一晩全員が泊まれるぐらいにはなるだろ?」
「まぁ、8人分の装備品だからな。状態はあまり良くないが金貨2枚分ぐらいにはなるだろう。」
「そうか。なら、適当な依頼でも受ければまた一晩の宿代は稼げるな。問題ない。」
また、近場の討伐依頼でも受ければ良いだろうと考えているとマサイが提案してきた。
「なぁ。昇格試験を受けないか?」
「ん?確か、依頼を数回受けないと駄目じゃなかったか?」
受付のお姉さんがそんな事を言っていたはずだ。
「ああ、だが。明らかに実力とランクが会っていない場合、そいつよりもランク上の人間が推薦する事で特別に受ける事が出来るんだ。一人の推薦では駄目だが、ここにいる奴等全員推薦してくれるだろうぜ。」
なあ?とマサイが周囲を見ると全員が頷いている。
「ふむ。そうか・・・。ならその昇格試験とやらを受けてみるか。」
「そうこなくっちゃ。ミレディさん。そう事だ。準備を頼む。」
「わかりました!」
事前に話し合っていたのだろう。スムーズに処理されている。皆の推薦用紙も既に用意されていた。ついでに、ミレディとは犬耳お姉さんの名前らしい。
――――
ギルドの裏側にある広間。ここは普段、大きな魔物や、大量の換金物等が持ち込まれた時に使う場所だ。学校のグラウンド程度の広さだろうか。そのグラウンドの端の方には埋め尽くさんばかりの人が大勢いる。普通、特別昇格試験はなかなかあるものではない為、皆興味深々で冒険者でない者達ですら見学に来ている。
「では、我がマディーナギルドのギルドマスターである元ランクA冒険者、タイゼン・ラウド様です。」
歓声と共にグラウンドの中央付近まで歩いて来る
「噂は聞いている。うちのトップ3であるマサイが新人に簡単に地に伏せられたとな。」
イケメンオジサンな髭面でミスリルのプレートに身を包み、腰に片手剣を滞納してやって来た男、タイゼンは相手の体をまじまじと見る。
「・・・変態。セクハラ。殺したい。」
リリィの体を。仲間に害を成すものならば殺すという夢叶にも少し染まってきてしまっているリリィ。今回は害を成す者の対象は自分だが、性的な害、命に関わる事ならば殺しても構わんのだろ?と言う思考にまで染まっている。
「はっはっは。殺したいか。出来るものならば構わんぞ。」
笑い飛ばすタイゼン。
なぜ、夢叶ではなくリリィなのか。パーティ内で一番弱い者が合格すれば全員が合格できるという時間短縮が出来るからである。仮にここで一番強いと嘘をついて合格しても後の実力で強さがバレれば、冒険者登録を剥奪及び、罰金まである。信用も全て失い、真面な生活すら出来ない可能性が出てくる為、余程上手く世渡り出来る人間でもない限りリスクは非常に高いため、嘘を付く者はほとんどいない。
「あと、そのキモイをやったのは私じゃないよ。」
「キモイ?マサイの事か?・・・あいつはイケメンだと思うが・・・ふむ。ならば、ここに立っている君はパーティの中で一番弱いということか?」
「んー。まぁ一応そうだね。」
本当に一番弱いのはティエだろう。リリィには能力授与の契約によりマナ操作が出来る。しかし、それは反則級のチート能力である事が世界を渡り分かっている。その為、マナ操作は出来るだけ使わないようにしているのだ。その為、身体能力はグラディオのステータスプレートによりほとんど同じようなステータスだが、リリィは普段から魔法を使っていたティエよりも魔法使いとしての実力が劣る。という事からリリィが一番パーティの中では弱いと判断された。ティエはリリィ様がそんな!?と抗議しては来たが。
「えー。そして、こちら。試験を受けるリリィナ・ビギワンスさんです。」
「そのうちリリィナ・オウセになるけどね。」
ミレディの紹介により、ボソっと言いながらムフッとしている。
「「「お嬢ちゃん頑張れー!」」」
「「「ギルドマスター!虐めるなよー!」」」
などと、リリィが負けると思っての声援が多い。
「それでは、殺しなしでギルドマスターが実力を見極めたら終了となります。」
「え?この変態、さっき殺しても良いと言ったけど?」
「え?え?」
差も当たり前のように、殺せるかのように言うリリィにあたふたするミレディ。
「まぁ、殺しはなしだ。本当にお嬢ちゃんが強ければ、反射的にこっちも殺してしまいかねないからな。」
「チィッ!」
露骨な舌打ちに苦笑いしかできないミレディとタイゼン。
「あ!事故ならしょうがないよね!?」
「駄目です!」
思いついた様に言うが内容がしょうがないで済まない内容なので即答で却下するミレディ。
「しょうがないなぁ。まぁ、ユウ達以外と戦うのってかなり久しぶりな感じがするし、まぁ我慢するか。加減忘れてたらごめんね!」
「ぬかしよる。こういった調子に乗った若者には少し痛い目を見て世の中を分からせてやらないといけないな。」
両者、お互いの方が強いと確信しているかの言い合いだ。
「そ、それでは始めてください!」
歓声が響き渡った。




