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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第1章 魔法が使われていない世界
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第6話 街の中で

第6話 街の中で


「とりあえず、もう遅いですし、街に戻りましょうか。ここから徒歩で王都に行くと2日ほどかかってしまいます。それに、街はすぐ近くですから。」

 エイリの指示に従い、殿下とエイリ含む護衛3人と一緒に街に戻る。

 すぐ近くだった。2時間ぐらい歩いたら街に着きました。歩き疲れた。


街の門の近くに行くと、3人の兵士とあれは・・・冒険者試験の試験管が駆けつけてきた。

「殿下!ご無事でしたか。」

「御苦労。」

 威張っている。


「エイリ隊長もお疲れ様です!」

 兵士が敬礼している。殿下にはしていない。・・・あれ?


「ニールマイル、サラマンダーがなぜこの周辺に現れたか原因がわかるか?」

 試験管の男にエイリが尋ねる。


「ッハ!ご存知だと思いますが、ここ、コノエ街からビギワンス王都に続く道の間で朝9時頃、天へと昇る炎の柱が目撃されました。あの規模の炎の柱はドラゴン以外考えられないとほとんどの街の兵士が出払ったのですが・・・」

「いなかったのか。」

 何やら考え込むエイリ。


「はい・・・周辺を捜しましたが、ドラゴンがいたという形跡すらありませんでした。ですが、サラマンダーは普段、火山付近の地中で生息していますが、おそらく炎を食べると言われていますので、その炎の柱に引き寄せられたのでしょう。地中から同時に20体ものサラマンダーが現れまして、ドラゴン退治の為の精鋭部隊を中心としていたので多少の犠牲はでましたが、19体のサラマンダーを倒したのですが、1体をコノエ森林へと逃がしてしまいました。」

 夢叶が倒したサラマンダーの事だろう。


「逃がしたサラマンダーを追いかけていたら、突如部隊が津波に襲われました。さすがに精鋭部隊といっても混乱しまして、何しろコノエ森林周辺にはそういった津波が起きる要素が何一つないのですから。」

 あちゃー、兵士の皆さんも巻き込んでいたか。悪いことをしたな。


「幸い、津波による死人はでませんでしたが、怪我人が多数と押し戻されてしまいまして、サラマンダー討伐が遅れてしまい、誰かに倒されていました。そのほかに一か所だけ雨が降ったりと摩訶不思議なことが起きて正直、何がなんだかさっぱりです。」


 心の中で誤っておく。

(ごめんなさい。)


 エイリがこちらをチラっと見るが、気にしない。

「おや?そちらの少年は・・・いや、失礼。お子様でしたな。」


訂正した方が失礼だろ!心の中で突っ込んだ。


「いろいろあってな。サラマンダーから囮となって殿下を逃がしてくれたらしい。」

「なんと!?サラマンダーからよく逃げられたな。お子様。」

 関心か貶すのかどっちかにしてほしい。むしろ、関心だけに・・・。ムスっとしている。


「それぐらいにしてやってくれないか。この者は、怒ると何をしでかすかわからないのでな。」

 エイリにチラっとまた見られる。


「はっはっは。御冗談を。油断していたとしてもお子様に遅れはとりませんよ。」

 ピクっと夢叶の肩眉が上がる。


「聞きたいんだが、あんたはサラマンダーを1人で倒せるのか?」

「ん?当然だ、私は冒険者ランクAだ。苦戦を強いられるが、実際1人で倒したことがあるぞ。ランクAの者でも1人でサラマンダーを倒せる者は少ないだろう。」

 だったら、こいつは俺より弱いな。次にお子様とか言ってきたら何かしてやる。などと思っていたら、寒気がしたので

「そうなんですかー。」(棒)

 と話を流した。


「それよりもさすが、エイリ隊長です。サラマンダーを大した焼けどもなく倒すなんて。」

「まぁ、その話はあとにして、一旦街に入りましょう。」

気が着くと周囲に人が集まっていた。殿下見たさだろう。きゃっきゃしている。


「あと、ニーマイル。」

「ッハ!」


「悪いが、ラビットは5体ほどしか倒していないらしいのだが、この者に試験合格の書類を渡して上げてくれないか?」


「わかりました。エイリ隊長がおっしゃるなら。それにサラマンダーから逃げられるのなら十分でしょう。」

 ニーマイルは少し考えたが、何やら頷き、懐からA5サイズほどの書類、取り出し渡してくれる。


 書類を見ていると、真ん中に冒険者試験合格と日本語で書かれ、ニーマイルの名前が行書体でサインのように書かれていた。


「ギルドで手続きをしてくれ。頑張れよ!お子・・・と失礼。少年。」

 睨みつけたら言いなおした。でも、少年だった。


「っじゃ、これで。」

 書類を受け取り、立ち去る。


「おい、どこに行く?」

 ガシッとエイリに肩を掴まれる。

「ギルドに行こうかと・・・」

「ならば、我々も付き合おう。殿下、申し訳ありませんが他2名に送らせますので先に宿へ行っておいていただけませんか?」


「ギルドは、試験の前に見ているから・・・わかったわ。街の宿屋というのもどんなものかゆっくりと見ておきたいし、エリィ。逃がしたりするんじゃないわよ。」


「了解しました。我が身命を掛けてこの者を連れてまいります。」

 敬礼するエイリ。


「それじゃあ、逃がしたらお仕置きね。」

 ニヤっとする殿下。良い顔だ。


「ッハ!2人も殿下をしっかりとお守りするのだぞ!」

「了解です!」

 2人の護衛が元気よく返事する。

 逃がしてくれないのか・・・と肩を落とす。

 それにしてもお仕置きという言葉にスルーとはいつものことなのだろうか。

 そして、殿下と別れてギルドへと向かう。



 エイリと並び歩き、街に入る。ギルドへと向かっていると


「ママーどこー!?」

と子供の泣き声がした。辺りを探していると、家の前で泣きながら回りを必死に見ている男の子がいた。それに気付くとすぐに男の子に駆け寄るエイリ。


「君、大丈夫?迷子になっちゃったの?」

 目線を男の子に合わせ、今までに聞いたことのないやさしい声だ。


「うん・・・気が付いたらママがいなくて・・・グス。」

 鼻を啜りながら答える。


「どっちから来たんだ?」

 エイリの後ろからやってきて、男の子の目線と合わせ、優しく声を掛ける夢叶。エイリがハッとこちらを見たが、すぐに男の子方へと視線を戻す。


「・・・あっち。」

「よし、ならあっちに行ってみようか。今まで来た所をママが探しているかもしれないからな。」

 よっと、男の子を抱きあげ、肩車をして立ち上がる。エイリが意外そうな顔をしている。


「なんだ?」

 ちょっと照れてるのでぶっきらぼうに言う。


「いえ、別に・・・。探しましょう。」

 


「この子のお母さんはいませんかー?」

 男の子を肩車した夢叶の横でエイリが大声を出して呼びかけながら男の子が通ったと言う道を戻っている。


「おい!貴様も声を出せ。」

「嫌だ!」

 即答した。


「俺は、大声出したり、大勢の前に出るのとか注目浴びるのはかなり苦手なんだよ。そんなことをするぐらいなら、今すぐ迷子捜しなんてやめる。」

 真剣マジな顔だった。


「・・・わかった。・・・貴様の方が、身長が僅かだが高い。もう少し、肩車をして上げてくれ。その方が見つかるのが速いだろう。」

「・・・はいよ。」


 再び、声を出すエイリ。

「エイリ隊長、迷子ですかい?」

 髭を生やした、気の良さそうなおやじさんがエイリに話しかけてきた。これまでにも、何人か話しかけて来た者はいたが、有力情報は得られなかった。


「そうだ。見ていないか?」

 男の子の母親の特徴を言う。


「ああ、それならさっき見ましたぜ、向こうも探しているみたいでしたぜ。」

「助かる。」

 

 母親を見たという方に向かい、声を上げるとすぐに見つかった。


「エイリ様!?ありがとうございます。ありがとうございます。」

 母親がペコペコと頭を下げる。エイリは結構人気あるのかな?街の人が声をよく掛けてきたり、顔を知っていたりする。通信手段とかないはずだから顔を知れ渡っているとなるとよほどの嫌われ物か人気者のどちらかになると思うんだが。


「いえ、もう目を離さないように気を付けるように。」

「はい!ご迷惑をお掛けしました。」

 頭を下げる母親。


「良かったな。」

 夢叶も一言声を掛ける。


「うん!ありがとう、お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

 手を振って別れる。


「・・・どうして、逃げずに迷子捜しなんて付き合ってくれたのだ?」

 迷子の男の子を見つけて思わず、夢叶を忘れて駆け寄ってしまった時の事を言っているのだろう。

「・・・俺1人だけならほっておいただろうな。言った通り、大声とか大勢の注目を浴びるのは苦手だからな。でも、明らかに困っているのにそれをほっておいたら、罪悪感とか残るだろ?俺が目立たずに助けられるならそれに越したことはない。まぁ、あんたが思いのほか人気者で予想以上に目立ってしまったのはかなりきつかったがな。」


「それは・・・すまなかった。」

 申し訳なさそうな表情だ。


「それに、俺が逃げたらあんた、お仕置きされるんだろ?どんなのか知らないけど。」

 少し、エロイ妄想してみた。

 訝しむ目で見られたのですぐにやめた。


「そうか・・・」

 今まで、驚いた顔ぐらいしか見てなかったが、初めて笑った気がした。

 そのまま無言で、日が沈んでいく中、ギルドへと向かった。

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