第68話 王都よりの使者
スライム退治やらようやく依頼をこなせることができ、スライムならではムフフな事があったりしたが、スライム退治などだけでは当然5人分にもならず苦労した為、アース家が高難易度の依頼を受け、お金を援助して貰っていたことは内密である。そんなこんなで何とか7日間過ごすことが出来た。少しはランクを上げた方が良いだろうか思い始め、どんな目立ちにくくそれなりの生活を送れる冒険者になる為にはどうしようかと考えていたが、それが無意味になるとはこの時は思ってもいなかった。
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太陽が真上に上ってきたころ王都からの者達が到着した。馬車などはモヒカン公爵の執事の人に対応してもらった。
「こちらです。」
「うむ。」
レンが王都から派遣されて来た兵達を先導する。立派な髭を撫でてレンの後ろに付いていく50代ぐらいの男。立派な服装に肩からマントを棚引かせている。一目で偉いさんだと分かるような格好だ。その男の左右に20代ぐらいの男、黒髪に額当てをしており、その額当ての真ん中に青い宝石がはめ込まれており、青い服装に青マントを棚引かせ、腰に剣を滞納し、左手に盾持っている。まるで某RPGの主人公のような服装だ。反対側には蒼い髪に青を基調とした神官服を身に纏い、杖を持ち、同じく某RPGの僧侶のような女性が並んで歩き、その後ろに一般兵達が並んで付いてくる。
案内した場所は、公爵の屋敷。そして、アース家一行が公爵と戦った広間。そこに街の住人がすでに大勢入っている。広間の中心に簡易な台が設置されており、そこにアーク、イル、ルーシー。そして、モヒカン一家にブルーとイエローが拘束されて立っていた。夢叶はやって来た王都の者達と反対側におり、少し離れた位置で見ている。あの額当てをした男どこかでと首を傾げる夢叶だが、離れて顔をハッキリと確認することができない。まぁ、わざわざ魔法を使って凝視するほどでもないかと気に留めず、王都から来た人達どうするのか、そちらに意識を集住させる。
「お、おお!?まさか陛下自ら御越しになっていただけるとは。なんとありがたいことでありましょう。」
立派な髭のおじさんはどうやら国王らしい。
「うむ。此度はご苦労であったな。」
「勿体なきお言葉。」
陛下の言葉にハハーと頭を下げる公爵。
その様子を見ながら夢叶一行とアース家一行は疑問を感じていた。そもそも、公爵の伝令が助けを求めに行ったはずである。なのにも関わらず、陛下自らが先頭に街にやって来た。普通、戦闘前提なら陛下自ら先頭に立つことはしないはずだ。戦闘狂を覗いて。後者なら仕方はないが、それでも街に付けば、「公爵はどこにいる?」とだけ訪ね、道中、この街に公爵の罰、罪を決めてもらう裁判的な事を説明したが、ここまでこれといった事は何も言わずに付いて来たのだ。
「其方達がこの公爵を倒したのかね?」
「そうですが?」
ルーシーが一歩前に出て陛下の問に答える。
「其方達4人で我が国のトップクラスの実力者である公爵を倒すとはかなりの腕前と見る。ランクSの実力は持っているのではないのかね?」
「いえ、私一人ですが。」
その瞬間、陛下含め周囲の人達がざわめく。
「チームエメランスと互角以上に戦った二人といい。あのパーティーは一体何者なんだ?」
「うむ。それは我も是非聞きたいものだ。」
周囲の言葉に陛下が便乗して訪ねる。そして、悟られないように頷いた時に隣に控えている黒髪の額当てをした男に視線を送る。
「何者と言われまして、ここより遠い所からした世間知らずの者としか言いようがないですね。」
(恐らくですが、一人一人が私でも苦戦を強いられてしまう程かと。)
陛下の視線の意図をとらえ、そうコッソリと言う。
「・・・そうか。しかし、公爵までも倒すその力。是非、我が国の為に使っては貰えないだろうか。」
手を広げ寛大さがあるように言う陛下。その勧誘に周囲が騒めく。国王自らが頼むなどそう滅多にあることではない。しかも公衆の面前で。
「陛下!?一体何を考えていらっしゃるのですか!?この者達は私達親子にこのような仕打ちをした悪人ですぞ。」
叫ぶように言う公爵を睨み付けて黙らせる陛下。
「ならば、貴族であり、この街を納める人間が自分の息子の犯罪を隠蔽どころか容認し、権力を持って好き勝手し、この街の者達を不幸にしているというのは悪人とは言わないのかね?」
「・・・え?いや・・・その・・・。」
まさか陛下からそんな言葉を貰うとは思いもせず、冷や汗が滝のように流れる。
「公爵、この時をずっと待っていたのだよ。」
「・・・え?」
「其方を処罰すると色々と問題があったのだよ。この街は最前線の一角を担っている為、元ランクSで現役ランクSよりも強いその腕を今、この街から抜けると前線維持が難しくなる。現に、先の魔物の異常な群れの対応は其方がいなければこの街は落とされていたというではないか。だから余はな、其方以上の強い人物を探していたのだよ。この意味分かるかね?」
公爵もそこまで馬鹿ではない。陛下の言っている事を察し、膝を付きガタガタと体が震えだした。
なるほど、だから戦うつもりはなく、国王の護衛というつもり戦力というわけか。恐らく国王自身がこの場に来ているというのはお忍びだろうと考えた。出なければ、護衛が少ない過ぎる。情報が漏れていた場合この人数では、好機とみられる可能性が高い。それか公爵以上の実力か同等の持ち主でもいるのだろうか。
「お、親父・・・。どういう事だ?俺には陛下の言っている事が分からない。親父の事を要らないと言っているように聞こえるんだが。俺が馬鹿だからそう聞こえるだけだよ・・・な?」
モヒカンレッドも冷や汗が滝のように出ながら現実を受け止められないように親父に確認する。
「・・・そうだ。・・・そう、おっしゃっておるのだ。」
目を瞑り、歯を食いしばって言う公爵。
「・・・そんな。」
モヒカンレッドだけでなくブルーとイエローも膝を付き、唖然と心ここにあらずという状態だ。
「そういうわけで君達さえ我が国に力を貸してくればこの下膳な者達を排除できるのだ。協力してくれないかね?最も、こう公言してしまったからには処罰は確実に行うがね。・・・おっと。そもそも、今回はこの街の住人に、判決をしてもらうのだったな。住人達よ。この公爵をどうしてほしい?この公爵がまだ必要だというのなら今回、余は今回の件は不問使用。必要としないのならそれ相応の処罰を下すが?」
・・・静寂。
「お、俺は反対だ!俺の娘は公爵の息子に酷い目に合わされたんだ。こんな奴がこの街を納めていい顔している何て我慢できない!断固反対だ!」
一人が声を上げることにより、周りも一斉に口々に俺も私もと声上げ出す。その声の全てが公爵を批判する声で段々と収集が付かない程になってきた。
「静まれい!!」
陛下の威厳ある大声に一瞬で静まり帰る。
「皆の意見はよく分かった。本日より、公爵は爵位を剥奪し、身柄を奴隷商に引き渡す。これまでの功績があったからこそ命があると思え。本来なら斬首でも生温いのだぞ。これまでの行い。残りの人生全てを使い反省せよ!次はないと思え!」
体から力が抜け、地面に倒れる公爵、いや、モヒカン奴隷一家と青と黄色。
「連れていけ。」
陛下の少し後ろにいた兵がモヒカン達を引っ立て、広間から出て行った。
特に邪魔する必要もないのでやらせておく。
「手間を取らせたようで済まないな。それで、協力してはれないかね?報酬として爵位を与え、金も与えよう。何、政治の事はこちらから助手を提供しよう。少しずつ慣れて行けばよい。素人であってもあの公爵よりは良い街になるだろう。他にも何か要求があれば可能な事ならばしてやれるが受けて貰えるかね?」
受けて当然だろうという顔をしている。
「いえ、遠慮しておきます。私達にそのような器なければ、資格もありません。それに私達は冒険者です。自由気ままに生きていきたいのです。」
周囲が騒めく。これ程の破格な条件はそう滅多にあることではない。普通なら誰もが飛びつく。それを迷いもせずに断ったのだ。周囲からすればこいつら頭悪いかおかしいとでも思われている事だろう。
「他の者も同じかね?」
「「「はい。」」」
レン以外の3人も即答で断る。
「これは、少し困ったな。前線であるこの街は、強者を頭にその指揮の元防衛するようしてあるのだ。だからこそ、あの公爵・・・元だが、愚行の処罰に踏み出せなかったのだ。チームエメランスでも構わないが、あれはチームワークが良いからこその強さだ。少人数パーティーでは実力を出すが、団体では対応しきれない。かと言って、一人で戦況を覆す程の力もない。最低でも100人以上の指揮を取ることが出来る者か1人で戦況を覆す程の力がなければならないのだよ。そして其方達は後者に位置する。後者は指揮官を別に取れば良いだけで、自身出れば戦況に変化を与えることができるのだ。文句を言う人間もおるまい。」
「それだと前者でも同じではありませんか?」
陛下の言う事は少し矛盾する。前者も後者も結局は実力がなくてもこの街を納めることはできるのだ。
「さすがに気付くか。前者はな。100人以上の指揮を取れ、さらにそれで戦況を覆す程の指揮能力が必要なのだよ。ありとあらゆる戦術で如何なる強者もその前に倒せるほどのな。例えば、先日現れたという白いドラゴンすらも倒せるほどの戦術を生み出せる者だけが前者の者に当てはまるのだよ。つまり、どちらも一人の存在で戦況を変えるほどの実力がなければ前線は維持できないのだよ。」
「では、もしその一人に何かあればこの街は終わりということですね。」
レンが冷たい視線で陛下を見る。
「うむ。本来なら、その者に後釜を育てて貰うのだが、あの元公爵はこちらが提示した最低戦力維持をランクSを雇い、チームエメランスなどでそれを賄いそれをしなかった。冒険者は予備戦力扱いでこちらの提示した数には入っていないのだが、雇うことでそれを補ったわけだ。結果、今現在、雇い主である元公爵が無くなり、その冒険者もこの街にいる必要もなくなった為、戦力が大幅に下がった為、危険ということだ。其方たちはこの街を見捨てると言うのかね?」
「む。」
最初からこう持ってくるつもりだったな。最低でもこの街に住んで防衛に協力しないとお前たちのせいでこの街の者達は死ぬぞと遠回しに言っているのだ。
「なら、あなたの隣にいるそこの青マントの人にやらせれば良いのでは?」
黒髪の額当てをした男を指さす。アース家は気配探知系の魔法を用いてある程度相手の強さが分かるようになっているのだ。細かい事までは分からないが、自分を基準に強いかどうかの判断基準はできるのだ。そして、レンは青マントの人を自分と同等程度と見ている。
「この者が強いと分かるか。紹介しよう、この者は我が国の勇者、アソベ・ユウタだ。」
ん?アソベ?ユウタ?どこかで聞いた名前だ。
そのアソベ・ユウタが台に上り陛下の方を向き頭を下げる。顔をこっちに向けろと内心思っていると、今度はこちらを向き、頭を下げる。そして、頭を上げ、はっきりと顔が見える。その口が開く。
「皆さん、始めまして。アソベ・ユウタです。俺は異世界から来て、今年で約5年ほど経ちましたが、俺は魔王を倒す為日々鍛錬してきました。その結果ようやく、その力を身に着けたと思っています。俺の実力は元公爵よりも圧倒的に上です。この街に残り皆さんをお守りしたいのは山々なのですが、皆さんを苦しめるその根源を倒さなくてはなりません。どうか、お判りいただきたい。」
お辞儀をする。拍手が巻き起こる。
「勇者様!俺達の事はいい!根源を倒してくれ!」
「勇者様がいなくてもこの街を守って見せます!」
「勇者様頑張って!」
など、勇者を声援している。
「くくく、あははは!」
その中で、一人の男の笑い声が不気味に広場に響いた。




