第64話
「・・・君達は何者だね?」
ギルドに戻り、夢叶達と別れたアース家が、ギルドマスターに呼ばれていた為、ギルド二階にある部屋に赴くと、無言でアース家四人が座らせられ、ギルドマスターゴウエン・ガーンズの威圧するような第一声がそれだった。
冷や汗がダラダラである。アース家4人がお互いの顔を見合わせる。
「ど、どういう意味でしょうか?」
まず、レンが口を開いた。
「どういう意味も何もそのまま意味だ。」
変わらないゴウエンの威圧。
「い、意味が分かりません。私達は普通の人間です。」
そのレンと回答にジっと睨みつけてくるゴウエン。
「なるほど、普通の人間ときたか。つまり、最低でも普通の人間ではない者を知っているまたは見たことがあるということだな。」
失言だった。レンは焦り、他のアース家を見ると、ルーシーが「あちゃあ」と顔に手を当てていた。レンの仲間の顔を焦って見るという行動が肯定してしまっているのだ。
「別に取って食おうなどというようなことは思っておらん。君達は勇者かね?」
勇者?と揃って首を傾げる4人。
「この世界には異世界から来た勇者が何名か存在するのだ。正確には勇者候補だがね。その中から魔王を倒した者が真の勇者と認められるのだが・・・。君達はその勇者のパーティではないのかね?・・・違うようだな。だとしたら益々君達は一体何者だね。異世界から来る勇者達は女神の力により、特殊な固有能力や情人以上の身体能力を与えられる。だとするならばその若さであの強さは納得できる。だが、その様子からするとそうではないのだろう?」
睨みを利かせるゴウエン。些細な挙動すら見逃すまいという眼だ。
「や、やばい。どうする?」
「怒られるよね?」
「この人の強さも分からないし。」
「うん、最低でもエメランス?の人ぐらいはありそうだけど。」
ひそひそと相談している。ゴウエンはそのひそひそ相談を待っている。
ざわ・・・ざわ・・・
「何やら下が騒がしいな。」
会話が中断されたことにより、ゴウエンの耳に1階で揉め事が起こっているようなざわつきが耳にはいる。
「また、あのお坊ちゃまか・・・。厄介な事この上ないな・・・。」
「どうかしたのですか?」
困った様子のゴウエンにアークが訪ねる。
その問いかけにゴウエンは掻い摘んでモヒカン戦隊の事を説明した。
「なら、その人を俺達が痛めつける代わりに、俺達の事は黙っておいて貰えますか?」
レンが提案する。ただ、黙っていてほしいだけではない。人を自分の言うことに従うべきと思っているような、人を物のように思っている奴には虫唾が走るからだ。自分達の過去ほどのことではないにしろ、多少なりともかぶってしまう。
「何か、他にも訳がありそうだが・・・。良いだろう。なら、頼むとしよう。だが、これは君達個人が勝手にすることであって、ギルド、及び私個人と君達とはこの件に関しては一切関知していない。つまり、ギルドのサポートも何も受けれず、君達が全てをこなさなければならないということだが?」
念を押すように問いかける。
アース家の瞳に揺らぎはなく、その決意を口に出そうとした瞬間。
「あ~れ~。おやめになってーお代官様~。」
1階から女性が乱暴されているような声が聞こえた。
瞬間、バンと扉を開きアース家四人は直ぐに1階へと向かった。
1階にはユウさん達がいる。それにユウさんはこういう輩は一番嫌いなタイプのはずだ。なのにも関わらず事が起こっている。一体何が起こったのか。アース家に緊張が走る。
「ロシィ!そのセリフはせめて、最低でも着物は着ておくべきだー!」
ヨヨヨ。リリィ達は着物?と首を傾げていた。
1階の状況が見える所に足を踏み入れた瞬間、その叫び声?が聞こえ足を止める。そして、体を180度反転し、ギルドマスターの部屋へと戻る。
『どうした?まだ、時間はかかりそうなのか?』
『はい。騒ぎに駆け付けたのですが、問題なさそうでしたので。こちらが異世界人だとばれてしまいまして、俺達以外にも勇者という異世界人が女神から力を授かって俺達並みの力は持っているらしいですよ。』
階段を下りて来ていたにも関わらず、戻った事に疑問を感じ、夢叶はテレパシーでレンに尋ねると呆れたように答えた。
『勇者・・・ね。まぁ、異世界人の前例があるならそこまで危惧することもないだろう。とりあえず、俺にとばっちりが来ないようにしてくれれば構わない。好きにしたらいい。というか、いつも許可を取る必要ないぞ。迷惑さえ考えてくれれば好きにしてくれれば構わないぞ。それと簡単そうな依頼があったからそれでも受けておく。またテレパシーで連絡してくれ。』
『わ、分かりました。ありがとうございます。お気をつけて。』
名前を付けたくらいでそこまで主従関係とか気にしなくてもいいのになと思う夢叶であった。
「ど、どうした?行ったらと思えばすぐに戻ってきて黙り込んだりして。」
言葉の通りの行動に心配する。
「あ、すいません。予想通りのモヒカン達でありましたが特に問題ないようでしたので。」
手を出した相手が夢叶達で、連れていかれたのがロシィだ。おまけに夢叶のあのノリだ。正直に内心なんであんなことをしたのかと後から羞恥心で公開しているであろうと思うノリだった。
・・・まさに、その通りだ。
(何で、あんな阿保みたいなことを叫んだのか・・・恥ずい。)
恥ずかしさで心臓バクバクだ。リカバー。
「えっとですね。その貴族の家の場所はどちらでしょうか?」
「まさかとは思うが、直接乗り込むつもりじゃないだろうな!?」
「え?他に何かあるんですか?」
レンの対応に驚愕するゴウエン。
結構脳筋思考なレンである。
「いや、息子の悪事を明確にしてそれに責任を問わせるとか色々とあるだろう。」
「でも、その貴族は息子の悪事を黙認してるんですよね?なら、明確も何もないですよね?」
「それは・・・そうなのだが・・・。」
そう、息子の悪事も貴族が黙認しているからこそ誰も手が出せない。それに加え、本人は現役を引退したにも関わらず現役のランクSのチームエメランスのリーダーと副リーダー二人を同時に相手しても勝てる凄腕。さらには。
「身辺警護の者にはランクSが一人にランクAが最低でも3人はいて、尚且つ警備兵が確認出来るだけでも10人はいるのだ。勝てるわけがない!」
「でも、その貴族の人が一番強くて、チームエメランスの二人よりも少し強い程度なんですよね?」
「ああ、接戦の末勝てるという具合だが、それは訓練の試合だからだ。殺しありとなればさらに差は開くはずだ。」
・・・程度だと!?やはり、試験の時の力はごく一部だったということか。一体この者達はどれ程の力を持っているというのだ。
「・・・わかった。そこまで自身があるのならもう何も言うまい。」
ゴウエンは諦めた様子で場所を教えてくれる。
「それじゃあ、行ってきます。」
さっぱりとした様子でアース家が軽く頭を下げ部屋を出て行った。
(本当に何者なんだ・・・不思議だが俺も勝てる気がまるでしない。)
ゴウエンもまた貴族と同等の強さを持っている。しかし、相手は貴族。下手をすれば国の逆賊ということになりかねない為、手を出せずにいた。あの貴族の駄目息子をどうにかして処罰を下したいが貴族によって守られている為に手が出せず困っていたところにあの者達が現れた。特にこの国に未練などといった事には興味はないようなのが救いだ。もし危険が及んでも彼らは冒険者、他国に行き、行方を眩ませるればどうとでもなる。ゴウエンは彼等なら何とかしてくれるとそう信じていた。
・・・そんな事を思っていた時期もあったな。ふぅ。
彼らは1時間もしないうちにこの部屋、ギルドマスターであるゴウエンの部屋にいる。ここから貴族の家に行くまでには約30分は掛かる。往復だけでも1時間は掛かる。そこに説得や戦いがあるはずだ。1時間で戻ってくるなど不可能だ。
「申し訳ありません。地図を書いていただいてもよろしいでしょうか・・・。」
アース家は方向音痴であった。
(・・・本当に大丈夫だろうか。)
大きなため息をついているゴウエンであった。
―――― 前の世界 魔法の世界
王城のとある一角。隠し通路となり、魔法により隠蔽された特殊な部屋。
「参ったぞ。調子はどうじゃ?・・・おい、田中太郎?」
いつものように気まぐれにやって来た女性。その姿は人ではあるがどこか人ならざる者の気配を纏っていた。長い膝辺りまである黒い髪、邪馬台国時代のような服装をした妖麗な女性。いつもならしばらく経てば田中太郎が出てくるが、今回はその様子が一切ない。辺りを見回し異変がないか感じ取る。
「田中太郎が殺されたのか・・・。それにこのマナの残留・・・。ククク・・・アーッハッハッハッハ!」
一人、部屋で大きく笑うとフッとその部屋から姿を消した。




