第62話
(終わった。私は、どうしてこんな事を・・・。少し頭に来たからと言って新人相手になんて魔法放ってしまったの・・・。こんなのがランクS何てね・・・。)
自暴自棄になりかけているエメラ。
「エメラ・・・。」
ランエスが駆け寄り、エメラの肩を抱く。
「ごめんなさい。私・・・!」
涙声で謝るエメラ。
「起きてしまったことはしょうがない。俺は、ずっとお前を待っている。」
強く抱きしめ合う。
「あー。ビックリしました。竜巻に弾かれて外に中々出れませんでした。凄い魔法ですね。」
間抜けと言ってもいい声が二人の耳に入る。
「ど、どうして・・・?」
どうして無事なのか、エメラの目に涙が溜り、最後まで言葉にできない。
「あれ?何をしてるんですか?」
首を傾げて何事もなかったかのように訪ねかけてくるアーク。
「ど、どうやってあれを防いだの!?」
叫ぶように問うエメラ。
「え?別に何も。」
『氷で防いだと誤魔化せ。』
「えっと。氷防ぎました。」
キョトンと正直に言いかけたアークに夢叶テレパシーで誤魔化すように慌てて言うことにより、遅いかもしれないが苦笑いしながら誤魔化すアーク。
何故夢叶は離れたベンチで聞こえているかというとそう言う魔法を使っているからだ。ついでに、スピーカー的な魔石を用いてベンチにいる皆にも聞こえるようになっている。
「え・・・。今・・・。いえ、それよりもあなたの氷はそれほどまでに強度があるの?それに詠唱する暇もなかったはずよ。」
別に何もという所が物凄く気になりつつも、氷で防いだという言葉も信じられずに訪ねる。詠唱もなしに、あの短時間に氷で防げるほどの物を作れるはずがない。
「ええっと。・・・はい。」
アークは何か考えたかと思うと簡単に氷を自身の横に作り出す。自身を覆う程の氷を。
「エアカッターで壊してみてください。」
アークに言われた通り、エメラは半信半疑でエアカッターを放つ。結構全力で。
カシュン。
「な!?」
短時間、無詠唱であれほどの氷を作るのだけでも驚きなのに、この氷はエメラの全力のエアカッターを防いだのだ。しかも、少し削れた程度にしか傷が入っていない。この氷を割るのにあと何回エアカッターを放てばよいのか、最低でも5回以上は必要だ。しかも全力の魔力を込めたもので。
「・・・エメラ。」
諭すように言うランエス。
「負けよ、負け。あなたみたいな若い子がいる何てね。自分は強者だと思っていたのが馬鹿みたいになったわ。」
やれやれといった感じで肩を竦める。
「しょ、勝者!新人冒険者!・・・すみません。お名前は・・・?」
「アクシアです。」
「勝者!アクシア選手!」
受付のお兄さんが終了コールをするが、アークの名前が分からずなんとも言えない感じになってしまったが、盛大な拍手と歓声が巻き起こる。
「って、あれ?まだ、私これといってしてないんですけど・・・。」
そんなアクシアの呟きは歓声に飲み込まれた。
エメラは立ち上がり、アークと握手をする。
「どうしたらそこまで強くなれるの?」
「え、えっとですね・・・」
エメラの素直な質問にランエスも頷き聞きたがっているが、アークはかなり困っている。グラディオのステータスプレートによる強化は極秘にするようにと言われているからだ。
「その・・・!私の遠い場所にある故郷にいた人に教わったのです。」
今閃いたかのように言うアークに怪しむ目を向けるチームエメランス。
だが、一応嘘は言っていない。遠い場所=異世界。故郷にいた人=異世界から来た夢叶。故郷に住んでいた人ではなく、いた人だ。
「まぁいいわ。あまり聞くのはご法度だしね。残念。」
残念っぽさが感じられない感じで言うエメラだが、実際聞けるとは全く思ってなく、聞けたらラッキー程度の軽いつもりで聞いたため残念でも何でもない。むしろ、話すようなら厳重に注意するところだ。良人ならともかく悪人に強くなる方法を聞かれでもすれば、かなり厄介なことになる。それに自身の強さであるアドバンテージもなくなってしまう、デメリットが大きすぎる。
周囲が歓声とは別のざわつきが起こり始めた。エメラとアークに男が一人近付いて来たのだ。
「諸君!知っている者も多いとは思うが、私はガーベダのギルドマスター、ゴウエン・ガーンズだ!」
近付いて来た男はどうやらこの街のギルドマスターのようで、体はごつく、無精髭がよく似合うおじさんだ。銀のプレートメイルに赤のマントで身を纏い、冒険者というよりは騎士といった格好で、所属場所間違ってね?という感じだ。
「本来ならば、ランクB以上になる為には試験を受けて貰わねばならないのだが、皆も先ほどの二人の戦いを見ていただろう?彼等は、あのチームエメランスに匹敵する嫌、もしかしたらそれ以上の力を持っている!殺し前提での全力勝負ではどうなるか私にもわからないが少なくともお互い殺さないことを考えながらでのあそこ迄の勝負を見せてくれたのだ。そして、エメランスの副リーダーでもあるストームカッターを無傷で防ぐほどの魔法の使い手に、惜しくも敗れはしたが、リーダーをギリギリまで追い詰めるほどの実力者だ。皆も知っている通り、チームエメランスは、ガントリーとして貢献もしておりこの街を拠点とし、この街にもかなりの貢献をしてくれているこの国でもトップクラスの実力者だ!そのリーダーと副リーダーを相手に先ほどの結果にまで持ち込んだその実力を見込んで、特例中の特例ではあるが、彼等を一気にランクSへと昇格させたいと思う!意義のある者はいるか!?」
静まり帰る会場。
「皆の同意も得た!よってここに!新たなランクS冒険者二名の誕生だ!」
会場全員が立ち上がり、拍手が巻き起こる。
夢叶は、ああ、あいつら主人公補正掛かっているなぁと眺めながら、あそこにいなくて良かったとしみじみと思っていたのであった。
「君達二人はこれからランクSの冒険者だ。今後の活躍を期待する。手続きをする為、あとでギルドに来てくれ。」
じゃっ!と手を上げて嵐のように去っていった。
「良かったな。いきなり俺達と同じランクSの冒険者だ。おめでとう!」
ランエスが手を差し出す。
「・・・ありがとうございます。」
正直、アークは困惑していた。前の世界では奴隷だった自分がいきなりランクSの冒険者だ。信じられないような状態に夢?とすら思ってしまうほどだ。しかし、現実でランエスの手を取る。
「なんだか、あまりうれしくなさそうだね。」
「い、いえ。あまりの出来事に驚いてしまいまして。」
ランエスが訝し目で見るがアークの返答に納得する。
「ああ、まぁこんな事は滅多にないからね。ランクBとかなら偶にいきなりなれる人はいるけどランクSにいきなりなったのは初めてじゃないかな。驚くなという方が無理があるか。ごめんごめん。」
軽い調子で返すランエス。
「申し訳ございません。そろそろ仲間の元に戻りますね。」
会釈して、トテトテと夢叶達のいるベンチに戻るアーク。
「あんな子がねぇ。」
「だな・・・。」
エメラとランエスがアークが戻って行く姿にどこにあの強さがあるのかと眺めていた。
「只今戻りました。」
「お疲れ!」
「お疲れ様。」
「おつおつー。」
それぞれがアークに労いの言葉を言う。
「お疲れ。アーク。あの竜巻の時はヒヤッとしたぞ。」
レンが近寄りアークを心配する。
「私もやられると思ったんですけどね。威力が全然なくてちょっとチクチクする程度だったんです。殺したら駄目だから加減を間違えてしまったんですかね?」
苦笑いしているアーク。しかし、それを聞いて絶望している者がいた。
「・・・エメラ?」
その絶望しているエメラを心配するランエス。
「あの子達・・・化け物だわ。私の聞き間違いじゃなかった。あの子、私のストームカッターに何もしないで無傷だったのよ。防具とかならまだわかるわ。何か凄い防御の効果が付与されているとしたら納得はできる。でも素肌まで完全に守られるわけじゃない。効果が強いからと言ってかすり傷が一つも付かないなんておかしいの。防具の性能がそこまでに高いのならそれは国宝級よ。そんなの持てるはずがない。だから、あの子の体には何かカラクリがあるはずなのよ。」
「そんな・・・エメラのエアカッターを直撃して無傷なんて・・・人間なのか・・・?」
風の魔法により、アーク達に興味を持ち始めた為、盗み聞きをしたらそんな恐ろしい事をサラッと言っていたのだ。
「・・・ちょっと待て。ならレンやその仲間達は・・・。」
「ええ、最低でもレンと言う子も化け物の一人でしょうね。よく見ると、服に汚れが多少あるけど肌に傷はついていないわ。何か理由があってワザと負けたとしか思えないわ。・・・!?待って・・・会話が聞こえなくなったわ。」
「ばれたのか!?」
「・・・そうみたいね。」
普通、風魔法による声を聞き取るのは簡単にはばれない。風の動きで声の振動をこちらにも届くようにしているからだ。感じない程度の風しか動いていないはずなのにも関わらず気付いたのだ。これもエメラにとって初めての出来事だ。ランエスとエメラは恐怖故か体が震える。
「・・・何だか面倒な事になるような気がするなぁ。」
はぁとため息をつく夢叶。
「大丈夫だよ。」
「そうか?」
珍しくこんな事で慰めてくれるロシィ。
「ユウだもん。」
・・・気のせいだった。いい笑顔だね。かわいいよロシィ・・・。グスン。
「盗み聞きされている事に気付くの遅れちまったからなぁ。あの様子だとたぶんロシィが氷で守っていなかったのはばれているよな。」
「だろうねぇ。」
チームエメランスの方を向き言う。
チームエメランスが何か?とほかのアース家も顔を向けるとチームエメランスがビクっとなり、そそくさと会場を出て行った。
「アース家の諸君!」
「「「「はい!」」」」
いきなりビシっと司令官風に言う夢叶にビシっと反応してしまうアース家。
「尻拭いとか自分でしてくれよ。俺を巻き込まないでね。」
「分かっていますよ。」
「期待しといてください。」
レンのニッとサムズアップ。
「それ、周りの期待に応える適な奴だろー。」
そして、皆で笑いながらベンチを出てギルドマスターに会いに行った。
「・・・君達は何者だね?」
ギルドに戻り、ギルドマスターの部屋に入り、アース家四人が座らせられ、ギルドマスターの第一声がそれだった。




