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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第3章 剣と魔法の世界
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第59話 ギルド試験

「試合形式は一対一とし、基本的に何を使っても構いませんが、相手を殺した場合は無条件で牢屋行きですのでご注意ください。降参、気絶、また私がこれ以上は危険と判断した場合、終了とします。お二人ともよろしいですか?」


「「はい!」」

 レンとランエスが、会場中心付近で50メートルほど離れた所でお互い鞘を抜かずに構えて対峙しており、受付のお兄さんに返事をする。鞘に入れっぱなしなのは誤って殺してしまう確率を減らすためだ。夢叶一行とエメラはそれぞれ反対側のベンチ的な所で座って見ている。


「レン、大丈夫かな。」

 アークが、アース家が心配している。


「大丈夫だとは思うけどなぁ。グラディオのランクMでようやく互角に戦えるぐらいの強さはあるはずだし。」

 夢叶は、そう言いながらも少し心配である。実際、ステータスプレートだけの判断で現地の者とアース家は戦ったことはなく、夢叶一行とだけしか模擬戦等したことがないのだ。


―――― 観客席


「おい、どっちに賭ける?」

「そりゃあ、エメランスに決まっているだろ。」

「だよな。賭けにもならないな。チームエメランスは、この国でもトップクラスのパーティだ。それを世間知らずな冒険者なり立てが叶うわけがない。」

 チームエメランスは、この国でも有名で人気であり、皆が認める実力者の集まりであるリーダーと副リーダーである。万が一にも勝てる要素がないと観客席にいる者たちはそう思っている。なのになぜ、見に来るか。単純だ。チームエメランスの戦い、または顔を見たいから、ただそれだけである。


――――


「それでは、始め!」

 受付のお兄さんが開始の合図をするが、両者動かない。


「どうした?来ないのかい?」

 ランエスが余裕の対応をする。


「・・・そう・・・だな。できれば、そちらから来てくれると助かる。」

 レンが一瞬、迷い言ってみる。いきなり全力で行って殺してしまっては駄目だということからだ。実際、どの程度の強さなのかさっぱり未知数な為、その心配も杞憂に終わるかもしれないがそうでなかった場合は殺してしまう恐れがある。


「フッ。いいよ。ご要望通り、こちらから行かせてもらおうか!」

 ランエスが助走しながら近づいてくる。

 間合いに入ろうかという瞬間、ランエスは速度を上げ、その速さは実力のない者が見ると消えたかのような速さだ。


 ガキィン!


 後ろから振り下ろされた槍を鞘の入った剣で受け止める。


「この速さについてこれるか。・・・これは、君の強さを見直さなければいけないな。」

 バッと後ろに飛退き、笑みを見せるランエス。思いのほかの実力者で嬉しいのだろう。戦闘民族側の人間らしい。


「まさか、今のが全力ってわけじゃないだろ?」

 レンもまたニヤっと笑い、挑発するように言う。


「言うねぇ。正直、あれ一発で終わると思ってたんだよ。君の強さは認めよう。だが、年上に対する礼儀というのがなっていないね!」

 先ほどより一段上の速さで迫るランエス。再びレンの後ろに回り込み、槍を振り上げる。それに反応して振り向き防ごうとしようと剣を上に上げたところに槍は振り下ろされてこず、横から薙ぎ払うように槍が脇腹に迫る。それをレンはジャンプしてかわし、そこからそのまま着地の際に剣を振り下ろす。


「おわ!あっぶね。」

 ランエスは薙ぎ払う槍の遠心力を使って体を捻り躱し、そのまま回転して着地したレンを再び槍が横から襲う。

 それを今度は躱さずに剣で受け止める。躱すと体力の続く限り無限ループが発生するかだ。


―――― 観客席


「お、おい。今の凄くないか?」

「あ、ああ。ランエスさんの攻撃を防ぐどころか反撃までしている。」

「俺達ならどうだ?防ぐだけで手一杯になるだろうな。」

 観客席から見ている冒険者3人の男達が感想を言い合っている。この者達も冒険者でランクAが3人のパーティで、それなりに名を馳せているパーティ。キンメッキだ。その名の通り金色が大好きなパーティである。もちろんかねきんも大好きである。


「キンメッキがああ言うのならあの子の実力も相当なものなんだな。」

「だが、さすがにランエスさんには勝てないだろう。もしも、勝てばあの子はこの国でもトップクラスの実力者ということになるぞ。」

 一般の観客がざわつきだす。


――――


「これは、ちょっと本気を出さないとまずいんじゃないか。」

 間合いをお互いに取り合い、ランエスは苦笑いして、フーと深呼吸する。


「なぁ、これは実力を量る試験じゃなかったのかい?」

 レンも違う理由で苦笑いしている。


「確かにそうだが、正直、人とこれほどの戦いをするのは久しぶりでね。血がたぎるというか、最後まで戦いたいというのが俺の正直な気持ちだ。」

 ニッと笑うランエス。


「確かに、こっちも身内としか戦ったことがなかったからな。自分の力がこの世界のトップクラスにもどこまで通じるか試したい。」

 ニッと笑い返すレン。


「この世界?」

「今度はこっちから行くぞ!」

 首を傾げるランエスに、しまったと慌てて会話を切り戦いを再開する。


「お返しだ!」

 正面からの攻撃をすると見せかけて、更に横と見せかけて、後ろに回り剣を振り下ろす。

 ガキィン。


「読んでたよ。」

 後ろを見ずに槍で防ぎ、少し後ろに飛び槍をクルクルと回すランエス。


「本気で行くぞ!死ぬ気で避けろよ!」

 ランエスの雰囲気が変わる。

 ランエス本来の槍術へと切り替え、変幻自在とでも言うべき突きを連発する。


「くっ!?」

 レンはその突きをさばくので精いっぱいで反撃に移ることができない。



―――― 夢叶一行


「あちゃー。レンの奴苦戦してるじゃん。」

 ルーシーが、やれやれと言う。


「いや、苦戦というより戸惑っているという感じだな。」

 エリィが答える。


「戸惑っている・・・ですか?」

 何に?ということで聞くイル。


「ああ、槍術にだ。私との鍛錬も剣でしかやってこなかったからな。槍の間合い、自分の間合い外からの鋭い突きに対処が慣れていないのだ。突きを躱して下手に懐に入ろうしてもそのまま槍を横に払われて対処されるしな。まぁ、レンにとってもいい機会だな。」

 エリィの解説になるほどなぁと頷くアース家。


「あと、恐らくだがランエスの強さはグラディオだとランクSぐらいだと思う。」

 エリィの捕捉にロシィとシルヴィ以外の皆が驚く。「何でユウまで驚いてんのと」ロシィにツッコミを入れられた。だって、まだそこまで動きとかで判断できるほどじゃないもの。体内のマナ感知で多少分かるぐらいで、大雑把でしか分からない。そして、さすが異世界と思う夢叶である。実際、ステータスプレートというか魔法、マナによる肉体強化というか変化でもしない限り、地球で考えたらあり得ない動きをしているわけなのだから。そして、それはアース家も同様の反応である。確かに地球よりは凄い動きは出きるが、それでもあそこ迄の動きは見たことがない。リリィとの試合で初めてみるまでは。


「でもそれならレンの勝ちですね。」

「だねー。」

 アークの問にロシィが当然のように返事する。


―――― 観客席


「おお、やはりランエスさんが押しているぞ!」

「さすがにランエスさんには勝てなかいようだな。」

「ああ、でもランエスさんを本気にさせるほどの実力とは恐れ入った。俺達より強いんじゃないか?」

 笑いながら話しているキンメッキの3人だが、内心全く笑えない。自分より年下で未成年が自分たちより強いのだ。鍛錬をおろそかにしていたわけでもないのにあの若さであの強さ。嫉妬すら出てきてしまいそうだ。

 3人揃って、鍛錬をもっとするかと意気込む。


――――


「ほらほら、どうした!これのまま終わりか!?」

「そんなわけないだろ!」

 ランエスの煽る言葉に、突きを力任せに弾き、その一瞬で後ろに飛退く。


「フー。槍相手は初めてだったからな。悪いが、それが全力か?それならもう、俺に勝てないぞ。慣れたからな。」

 フッと笑う。


「まじかよ。初めてでここまで捌かれたのは初めてだぞ。」

 驚くランエス。後ろのベンチでエメラもランエスの槍術で勝てると思っていた為、驚いている。実際、ほとんどの者達は先ほどのランエスの槍術に敗れているのだ。


「そりゃあ、どうも。それで?もう、打つ手はないのかい?」

 レンは軽くその場でストレッチを始める。


「これは驚いた。まだ余裕があるのか。後は、小細工と切り札ぐらいだが、切り札では君を殺してしまいかねないからね。今は使えないよ。つまり、現状これが僕の全力とも言えるね。」

 肩を竦め苦笑いするランエス。


「そうかい、ならあとはその小細工とやらが俺に通用することを祈っておいてくれ。・・・行くぞ!」

 一気に間合いを詰める。


「な!?」

 予想以上の速さでレンに正面に迫られ、驚きつつも何とか上からの攻撃を防ぐ。レンはそのまま剣を斜めにして滑るように懐に入り回し蹴りを背中に当ててランエスを吹き飛ばす。


「ガハッ!」

 地面に一度叩きつけられるがすぐさまに体制を立て直す。


「ペッ。いってー。」

 口の中を切りながらもまだ余裕があるように見せるランエス。ランエスにもランクSとしての誇りと威厳があるのだ。気を抜くとすぐに倒れそうな程のダメージだが、そう簡単に地に伏するわけにはいかない。しかも、こんな、まだ成人もしていないような子供に負けるわけにはいかないのだ。


「何て力だよ。小細工と行くぜ!我が身、それは風の如く、疾風の如く!エンチャント!スイフトゥ!」

 ランエスの周囲にまるで風が纏うように渦巻く。

「ついてこれるか!?」

 先ほどまでとは比べ物にならない速さでレンに迫る。しかし、常人には見えないこの速度をレンは何度も防ぐ。ランエスの槍術と速さでまるでオールレンジ攻撃のように繰り出される。さすがのレンもこれには防戦一方である。何とか隙を探そうとしている。レンはこのまま耐え続ければ、相手の体力の消耗とダメージですぐに動きが鈍くなり対処ができるというのは分かっている。しかし、相手がまだ動きがこれ以上鈍らない内に突破したいと考えていた。化け物染みた仲間に強くなったと言われても実感が出来ずにいた為これを突破出来れば、自分は強い、いや、決して弱くはないと実感できるということからだ。


『レン。こっちだ。』

「え?ぐぅ!」

 しかし、その突破するということは出来ないどころか、寧ろこっちの防御が突破され吹き飛ばされてしまった。何故なら、夢叶のテレパシーにより呼びかけられベンチを見ると、一番後ろの方でアークとルーシーが何故かキスをしようとしているではないか。一瞬、頭が真っ白になったというか目が点になったところを槍の柄で突かれて防いだもののまともに当たってしまったために吹き飛ばされたのだ。


『そのまま、気絶した振りをしとけ。』

 レンは、吹き飛ばされてそのまま、倒れて動かない。


「しょ、勝者!チームエメランスのランエスさんです!」

 受付のお兄さんが試験ということを忘れて、実況風になっているが、そんなことは誰一人も気にすることはなく、大きな歓声と拍手が会場に響いた。

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