第57話 カーベダの街
「おつかれ。」
シュンとテレポートで人の姿で戻って来たシルヴィに言う。
「うむ。全然大したことなかったぞ。アース家の皆でも殲滅できたであろう。」
「やっぱりか。魔物の強さって異世界共通なのか?」
首を傾げる。
「ああ、少し人間達の様子も見ていたが、剣と魔法しっかりとお互いを支え合って戦っていたぞ。この世界は、ユウが求める剣と魔法の世界というやつではないか?」
「おお!?冒険の予感がするぜ。」
シルヴィの報告に喜ぶ夢叶。あと街もあったぞとおまけ程度な感じで教えてくれた。
「街に行ってみるか。」
一同頷き、歩き出す。魔物の真黒に燃え尽きた中を通りながら・・・。
「・・・ねぇ、ユウ。」
「わかってる。」
リリィが何を言いたいのかは明白だ。魔物の焦げた臭いが凄い。まともに歩いて街まで行ってられない。
「ゲート。」
いそいそと皆開かれたゲートに入る。
「「「「きゃーーーーー!!!」」」」
「「ギャーー!!!」」
「ひゃっほーー!!」
とりあえず、空から落下中である。
ゲートの先を確認せずに潜った結果である。
なぜ空に開いたか。それはいきなり街の近くに現れて、見つかりでもしたら大変だ。そもそも街を見ていないからまともに転移できない。シルヴィが見た街とでもすればできるかもしれないがそれだとどこにでるのかわからない。街のど真ん中に出るかもしれない。だから、一度空に出て、空中から人気のない街の近くに転移仕様というつもりで空にゲートを開けたのである。そして、臭いのきつさから急いでゲートを潜った結果、ロシィとシルヴィ以外はそれぞれ悲鳴を上げていたのであった。
空から街を確認し、すぐ傍にある森林の人気の少ない所にテレポートで皆を連れて転移する。
不意なテレポートによりドテっとそれぞれロシィとシルヴィ、エリィ以外は短い悲鳴を上げる。
「先に言っておいてくださいよ~。」
涙声のイル。イルとは、イエルスの愛称だ。
アース家とも愛称で呼び合う仲になったのだ!
「正直、そんな余裕なかった。すまん。」
片手を顔の前に上げ、謝る。
「まぁ、こちらもあの臭いから逃げるので必死でしたから文句は言えないんですけどね。ゲートを開いてくれてありがとうございます。」
イルは、ゲートの先を確認せず潜ったこちらにも落ち度はあるしそれ以前にゲートがなければあの臭いから逃げるのにかなりの時間がかかったはずだ。何せ、街までずっと魔物の死体が続いているのだから。それゆえ、街の近くでも魔物の死体はあるが、天と地ほどの差がある。
「とりあえず、街に行ってみようか。」
少し、落ち着いてからそう言う。
「「はーい。」」
「ですね。」
「うむ。」
「はい。」
など、それぞれ返事する。
「※※〇※!」
何か言われ、町の入り口に着くとそこにいた門番2人に槍を交差させて止められた。
「通ることはできないのか?」
とりあえず、エリィが聞いてみてくれた。
何やら門番二人がヒソヒソと話している。
「駄目なのか?」
エリィのその言葉に門番二人が頷き合い、槍をこちらに突き出してくる。
「※※※〇〇×〇!!」
何か叫び威圧してくる。
「ユウ、何を言っているのかわからないのだが。」
たじろぎながらエリィがユウに助けを求めるエリィ。
「あー。なるほどな。」
頭をワシワシと掻き、ため息をつく。
「言語が違うんだよ。この世界と今までいた世界との言葉が違うんだ。」
門番二人が何やら言っているが無視して説明する。
「前の世界とエリィたちの世界グラディオは、元は田中太郎が作った世界だ。正確にはグラディオはマジェストが作ったようなものだが、そのマジェストも田中太郎が作った世界から来たんだから言語は当然同じだ。そして、俺と田中太郎は同じ世界から来ている。だから俺とエリィやリリィ達、アース家の皆とも言葉がわかるわけだ。」
ティエ(アーティエの愛称)が「私は!?」と自信を指さしてプンプンしているが放置。
「なるほど、それは分かったのだが、この状況を何とかしてもらえないだろうか。」
門番に手を挙げて顔を引きつらせているエリィ。
「しょうがないなー。まさかユウが翻訳魔法を使えないなんてビックリだよ。」
ロシィがそんなことを言いながらほい、と淡い光が全員を包む。
「き、貴様!何をした!」
あらビックリ。門番の言葉が理解できる。
「たぶん、ユウ難しく考え過ぎてるんだよ。単純に、この世界の言葉を変換して耳に届くようにすればいいだけだよ?」
なるほど。確かに、難しく考え過ぎていた。まず、自分がこの世界の言葉を理解し、それを元に他人に魔法をかけることによってその理解した言葉を反映させるという風に考えていたからだ。そもそも、マナを操れば事象を起こせるのだ。ロシィの言うとおりのことでも十分可能だ。
単純に、理解できる言葉に直して耳に届けてくださいというだけだ。
「そのようだ。しかし、ロシィは扱いがだいぶ上手くなったな。」
「で、でしょー。」
マナという単語は不用意に言うのは危険だ。前の世界でもマナは魔力によって操ることで事象、現象を起こすもの。それを直接操れると知られれば厄介なことになることは間違いない。なので、伏せて素直に思った言葉を言ったら、なぜかロシィは一瞬焦ったように見えた。
「おい!今のは翻訳魔法か?無詠唱だったようだが、貴様らどこの国の者だ!?このカーベダの街になんのようだ?」
ふむ、翻訳魔法は結構一般的なのかな。それにどこの世界でも魔法は詠唱は必要なのだろうか。無詠唱ほど実力が上ということだろうか。門番なら使えとも思うが黙っておく。
「あれれ~?もしかして、あんた達は翻訳魔法を使えないのかな?かな?」
人差し指を口元に当て、下から覗き見るように言い、煽っていくスタイルのロシィ。
「うるさい!そもそも、翻訳魔法も使わずに来る他国の者など、怪しい以外の何者でもないだろうが!」
ぐぬぬという反応。それに対してくプークスクスとしているロシィ。
「き、貴様ら何が目的でここまで来た!翻訳魔法も掛けずに他国の者と話すなど余程の世間知らずと見る。」
門番が話を進める。まぁ、この世界に来たばっかりだから世間は知らないわなと思う。
「ただの冒険者だ。最近、田舎から出たばかりで最初の町がここだったのだ。何かと世間知らずなことを言ってしまうかもしれないが御了承願う。」
とても田舎から出て来た者とは思えない貴族のようなエリィの振舞いに一瞬、門番は驚く。
「ま、まぁそういうことならば仕方があるまい。」
内心、こんな簡単に信じて大丈夫かと心配になってしまう。まぁおかげでこちらは楽に事が進めれるのだが。と言っても、とりあえず中に入るしかないのだが。
「とりあえず、街の中に入れてもらっても良いだろうか?何をするかは街を見て相談しようと思っているのだ。」
「あ、ああ。ギルドカードを提示して貰えるか?ないなら、銀貨一人1枚だ。」
ギルドカードは当然ない。銀貨もこの世界の物は当然ない。
「これでも良いだろうか?」
エリィはとりあえず、今まで使っていた銀貨を一枚取り出す。
「ん?我が国の銀貨の加工が違うな。おい。」
もう一人の門番に声をかけ、何やら小さい鉄の棒だろうか?銀貨に当てている。すると僅かながらに銀貨がそれに引き寄せる。どうやら磁石のようだ。そして、自信のポケットからも銀貨を取り出し同じようにする。この世界の銀貨とは大きさは似たようなものだが、模様が違うようだ。門番が取り出した銀貨も同様の反応を示した。そして、銀貨を掌の上に置き、厚みを見ているようだ。僅かにこちらの方が分厚い。
「まぁ模様が違うが良いだろう。それぞれ一枚ずつだ。」
「お待ちください。こちらの方が僅かに厚みがあります。価値はこちらの方が高いのではないですか?」
銀貨を徴収しようとする門番にアーク(アクシアの愛称)が問う。
「ああ、そうだな。しかし、違う国の銀貨の場合は妥当かもしくはもう少し厚みがなければ通ることは許されない。」
当然の反応をする門番になぜですか?と問うアーク。
「この模様を消し、加工しなおすからだ。削って掘り直すわけだから当然その分の厚みは要求しなければならない。」
「それならしょうがないさ、無駄に揉め事を起こすメリットもないしな。これで良いか?」
夢叶はどっしりとした革袋から銀貨を取り出し、残り9人分渡す。
その革袋を見て門番二人が驚いた様子だ。一方、アークは納得いかないご様子。
「あんた、田舎から来たのに結構な金を持っているんだな。」
門番の一人が関心したように聞いてくる。アークにその金が入った革袋を手渡す。
この革袋はどこから出したのか。
夢叶は遂に亜空庫を使えるようになったのだ。
魔石の中に空間を作り、魔石の中の空間という風にすれば、その魔石さえ持ち運べばそこにどんどん物を入れれるという仕組みだ。当然、この仕組みになると欠点もある。魔石が壊れれば、魔石の空間というものが消滅するので中の物も全て消滅してまう。その為、何十にも結界や使用者を限定したりといろいろと対策はしている。
「ああ、皆で頑張って貯めたんだ。旅とかになると金は必要だろ?」
頑張って貯めたんだぞというふうに言う。
「そうか、街に行って何をするのか知らないが頑張れよ。とりあえず、ギルドに行ってギルドカードを作ってもらうと良い。身分証明書にもなるし、今後街に入る費用は必要なくなるからな。」
「あと、ついさっき、魔物の群れがこの街に襲撃してくるという異例なことが起きて街は大騒ぎだ。先の先頭でかなりの被害者が出ている。おそらく、この状態で次が来るともう駄目だろう。できれば、この街の為に力を貸してもらいたい。」
門番二人が助言と協力を申し込んでくる。
「ああ、考えておくよ。」
手を振り、街の中に入る。その後を皆が付いてきた。
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「おい、どいつだ?」
門番の一人が街に入っていく夢叶達を見ながらもう一人に問いかける。
「俺はあの、三つ編みの女の子だな。なかなか大きい。お前は?」
ムフフとする。
「やはりか。当然、俺はあの無詠唱で翻訳魔法を使ったちっぱい子だ。」
ムフフとする。
二人してムフフとしている。ムフフ。




