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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第1章 魔法が使われていない世界
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第4話 サラマンダー

腰を抜かしたのか、3人組があたふたと尻を地べたに付きながら手足をバタバタさせて後退していく。涙目だ。


「何あれ?」

 正直、大きなラビットの方が一回りぐらい大きかったが、見た目の厳つさ全く違う。さすがに、これはやばいんじゃね?と冷や汗が出てくる。

 むしろ、なんか熱い。


「あいつはサラマンダーなんだぜ!?」

「バッ!バカなんだぜ!?」

「ランクAの魔物なんだぜ!?」

 ビビっているのに説明してくれる余裕はあるらしい。


 これから、こういう厳つい魔物と戦うことが増えると考えると、慣れるのに良い機会か・・・俺の足、震えているけど。


ピーーーーーーーーー!!ピーーーーーーーーーーー!!


 と警笛が遠くで鳴り響いている。おそらく、こいつが迷い込んだせいだろう。普段は、こんな所に生息しない魔物のはずだ。でなければ、この森林で新人の試験をするなんてありえない。

 しかし、サラマンダーといえば、炎のトカゲとかで炎を纏っているイメージがあったんだが、赤いだけか?動きはやたらと遅いし。

 いや、サラマンダーの近くの木々がしばらくすると燃え始めている。サラマンダー図体で気付かなかったが、後ろの方からも煙が出ている。これは、早くしないとこの辺が火の海になる。

魔法を使えば、なんとかできる自信はあるが、3人組がいる。


「・・・リカバー」

 ボソッと状態異常回復魔法を使う。体内マナを使い、見た目には特に光纏ったりといった現象は起きない。足の震えが止まった。でも、まだビビっている。しかし、落ち着いて思考はできるようになった。


 そうだ!魔法を使おう。もともとこいつらは殺すつもりでもあったんだ。魔法を使ってどういう反応をするのか確かめてみよう。

 落ち着いて思考した結果がこれである。


「ウォール」

 3人組が後退しているところに、ドンとぶつかる。木だと思い後ろを見てみるとそこには土の壁が出来上がっていた。


「だぜ!?」

「なんだぜ!?」

「壁だぜ!?」

 なぜ、こんなところに壁が!?と驚いている。


「おい、弱い3人組のゴミ共。」

 後ろからサラマンダーがのっしのっしと迫っているが、3人組を見下ろす。


「お子様が何言っているだぜ!?」

「何さまなんだぜ!?」

「イラってするんだぜ!?」


「お前ら、レベルは幾つだ?」

 ハ?とした顔をする3人。そんなことよりサラマンダーが、と目が訴えている。

「いいから、言え!」

 少し、強めの言葉でいうと、すぐに答えた。


「ラビットを倒したから全員2だぜ!」

「そうなんだぜ!」

「それがどうしたんだぜ?お子様!」

 イラっとする。

「これが俺の、お子様のステースだ。」

 レベル12となったステータスプレートを見せる。


「だぜ!?」

「これは嘘なんだぜ!?」

「どうやってこんな短時間で!?」

 さすがに驚いている。


「ステータスプレートを弄る方法があるなら教えて貰いたいね。つまり、何が言いたいかわかるか?クズ共。」

 嫌な予感はしているのだろうが、3人とも首を横に振る。


「強ければ、何をしてもいいんだったよなぁ?」


「俺達を殺す気だぜ!?」

「パパが黙ってないぜ!?」

「ただで済むと思うなよ!だぜ!?」


「まぁ、落ち着きたまえ。クソ共。」

 サラマンダーは、すぐそこまで来ている。

 

 とりあえず、魔法のお披露目だ。

 サラマンダーは強いからそれなりに強くいく。あいつは定番の火属性だろうから水系だな。

 手を翳し、詠唱する。

「数多の水よ集え、燃え盛る炎を飲み込み鎮圧せよ!タイダルウエーブ」

 掌から、大量の水が現れ、津波となりサラマンダーを飲み込もうと出てくる。

 背後にいる、3人組の様子を見る。


「っひ、化物だぜ!?」

「なんなんだだぜ!?」

「なななな、何者なんだぜぜ?」


 魔法を初めて見る反応だろうなこれは。

 サラマンダーを飲み込み、後ろの燃えていた木々を消火されていく。


「魔法を見るのは初めてか?」

 聞いてみることにした。


「魔法だぜ!?」

「今のがだぜ!?」

「おとぎ話じゃなかったんだぜ!?」


「おとぎ話?」


 津波が引いて、サラマンダーの姿が見えてくる。


「それは、どんな内容だ?」

「皆、知ってるんだぜ!?」

「そんな、ことよりもサラマンダーなんだぜ!?」

「まだ、倒せていないんだぜ!?」


ただの津波で倒せていないのは予想通り、サラマンダー姿が完全に現れ、濡れて少し弱ったように見えたが、それと同時に怒っていらっしゃる。スピードを上げて突進して来るようだ。

 この世界の魔物はみんな怒るのか!?・・・まぁ、攻撃されたから当然なのだが。


・・・さて、皆知っているのならもういいだろう。


「選択肢を上げよう。あのサラマンダーと戦って生き抜くか。今すぐ、俺に殺されるか。どっちがいい?」

 笑顔で聞いてみた。


 3人とも絶望している顔だ。冒険者ランク最低の3人に対して、冒険者Aランクがようやく勝てる相手と未知の技を、しかも、大規模な水を操る人並み外れた者。

 3人は顔を見合わせ、

「お前を殺して、サラマンダーから逃げきる!だぜ!」

「だぜ!」

「だぜ!」

 3人同時に剣を抜き、襲いかかって来た。前よりも相手の動きが遅く感じる。これがレベルアップのおかげか。素晴らしい。

 ふらり、ふらりと無駄にカッコ付けて避ける。

 サラマンダーと対峙していた後方から3人組が襲いかかり避けられた為、前のめりになり、夢叶の後方に、必然的にサラマンダーの目の前に出てしまう。夢叶はズシンズシンと迫ってくるサラマンダーの突進を避けることができたが、3人組はバランスを崩してしまっている為、目を瞑り、頭を下げる。奇跡的に3人組の頭上を通り抜け、突進は3人組が逃げるのを封じた壁を粉々に粉砕した。

上を見れば、サラマンダーの腹が見える。ひーっと言わんばかりの涙目に、サラマンダーの熱で汗だくとなった悲惨な顔をしている。その場から逃げようとするが、サラマンダーが動く。迂闊に動くと踏みつぶされてしまう。しかし、ゆっくりしていると、サラマンダーの熱で、火傷ではすまない事態になりかねない。必死に我慢し、タイミングを見計らい、腹の下から出ようとした瞬間、サラマンダーの体から炎を放ちそれを纏ったのだ

当然、サラマンダーの腹の下にいた3人組はその炎が体に燃え移る。


「ぎゃー!」

「熱い!」

「助けて!」


のたうち回る3人組。だぜを言うことすらできないらしい。ゴミ共の死に方は同じか。昔を思い出す。少し気分がすっきりした気がする。



 さて、剣がなくなってしまっている。

(もう一度作るか?いや、近づいて切ろうとすれば火傷を負ってしまいそうだ。やはり、魔法で押し切るか。)

 いろいろと考えていると炎を纏ったサラマンダーが突進してきた。水で弱ったように見えた姿はなく、怒りで元気いっぱいだ。速い!


「ブースト!」

 さすがに身体強化の魔法を使う。Aランクの魔物レベル12で剣で戦うのは自殺行為だ。この突進を避けれるかどうかも厳しいだろう。横に飛んでかわす。横を通り過ぎるだけで凄い熱気だ。通った近くの木々が燃えだしている。


 せっかく、消火したのにまた燃えだした。これは短期決戦で決めなきゃまずいな。


「きゃあー!?」

 悲鳴が聞こえた。

 サラマンダーと女の子が正面でそれなりの距離はあるが見つめ合っている。といっても、女の子の方は震えて恐怖で眼が逸らせないだけのようだが。

 

「ん?」

 女の子は、白い髪に左右を大きめの黄色のリボンで結ばれたロングツインテールに、立派な黄色を基調とした鎧にロングスカートの格好をしている。ラビットの耳だけを切って逃げて行った美少女だ。


「い、いや・・・」

 へなへなと力が抜けたのか、地面に座り込んでしまっている。

 サラマンダーが足に力を入れた。


(やばい!)

 身体能力を強化された体で全力疾走する。


「助けて!!」

 美少女が叫び、顔を護るように腕を出している。ギリギリの所で美少女を抱き抱え、突進を喰らわずにすんだが、全速力のスピードを自分で放ったタイダルウエーブの水でぬかるんでいた地面で滑ってしまい、尻もちをついてしまった。


「いって!」

「きゃっ!?」

 抱き抱えていた美少女は夢叶のお腹の上に乗っていた。

 美少女はきょとんとして、周りを見渡し、サラマンダーを見つけると再び目があったようで、ビクっとした。


「あー。どいてもらってもいいか?」

 遠慮気味に残念な気持ちを押さえながら尋ねる。もう少し、美少女の感触を楽しんでいたかったが、さすがに魔物を目の前にしてゆっくりすることはできない。特にこれといったところは触ってないですよ?


「え?キャー!」

 バッチン!

「いった!!」

 全力でぶちやがった。涙が出てきた。


「何してるのよ!この変態!」

 お腹の上にまだ乗ったまま指を顔に突き出している。


「っちょ、そんなことより、サラマンダーがまた来た!」

 その言葉で慌てて離れる美少女。

「早く、逃げろ!」

「え!?あなた1人で何ができるって言うの!?」

「囮ぐらいはできる!逃げるのには自信がある!それよりも、助けを呼んできてくれ!」

 そう言い、迫ってくるサラマンダーに石を投げつけ、サラマンダーの矛先をこちらに向け、美少女と距離をとる。

 ギリギリでサラマンダーの突進を避け、美少女と距離を話す為に奥へと走る。


(あっついあっつい。)

 熱いのを必死に我慢している。

「ほらな!早く行け!!」


 美少女は迷いながらも、駆け出しながら、

「死ぬんじゃないわよ!お子様!」

 ようやく行ってくれた。これで、戦える。あの美少女の前で魔法を使えば、どんな騒ぎになるかわからない。

勇者召喚された勇者が、魔法が使われていない世界で魔法を使ったとしてもさすが勇者様!となるだろうが、呼ばれてもいないただの人間が魔法なんてものを使えばどういう扱いを受けるのか、これまでからの反応的に良いことが待っている気が全くしない。


「さて、再び消火と行こうか・・・。集え、数多の水が集いし空間に囚われよ!レインドーム!」

 水の塊の球体がサラマンダーを包み込む。サラマンダーの炎を弱くなっていくが、それと同時にレインドームも蒸発させられて行き、小さくなっていく。

「弾けて混ざれ!」

 混ざらないけど!レインドームを弾けさせ、大量水が周囲に降り注ぎ、木々に燃え移っていた火を消火してく。さすがにこれだけでは、燃え移っている木々を完全には消火しきれていない。


 サラマンダーは大量の水を再び浴び、纏っている炎が小さくなった。サラマンダーの口から火がボッボッとでている。するとサラマンダーは口を大きく開け、炎を吐いてきた。

 

「もう、燃やさせるわけには!水ガード」

 詠唱なんてカッコ付けている暇はない。水の盾を出し、サラマンダーの炎を消化しながら防いでいる。

「くそがー!」

 サラマンダーの頭上に氷の塊が現れ、どんどんと大きくなり、岩とも言うべき巨大なものとなったのをそのままサラマンダーに叩き落とす。


 ズドーン。ちょっとした地響きが起きると同時にサラマンダーがグシャっと潰れ、霧散する。

 霧散を確認するとすぐに氷を割り、空へと弾けるように雨となる。僅かに残っていた森の火が完全に消火される。

 ふぅと、息を吐き、肩をグルグルと回す。さすがに疲れた。マナ消費は自然のマナを使っているが、扱う、イメージするのには精神力がいる。精神的に疲れたというやつだ。


 よいしょと、サラマンダーの核を拾う。ラビットよりもマナが濃い感じがする。


 カチャと、金属音がすぐ近くで聞こえ、後ろを向くと同時にすごく嫌な汗がでてきた。


「貴様が、サラマンダーを倒したのか?」

 黒髪ポニテの、ラビットを瞬殺していった少女に剣を首筋に当てられている。

技名とかそのまんまやんけという突っ込みはなしでお願いします><

そのうち、オリジナルのかっこい技名出せたらなと思ってます。

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