第46話 新しい時の幕開け
いつも呼んでくださいありがとうございます。
「とりあえずさ、付いて来てよ。」
ロシィが夢叶の手を引き、部屋を出て歩き出す。
ガチャ、ガチャ、ガチャ。
「うーん、違う。ここも違う。こっちも違う。」
何かを探しているのか、手当たり次第に部屋の扉を開け、歩き回る。
最近、ロシィは頼みを聞いてくれ、頑張ってくれているし何か礼はしたいとは思っていたので今回の頼みは逆にありがたいとも思っていた。独占したいというのが何ともあれな表現な気はするが、今まで強者であった黒龍であるロシィは甘えると言ったこともほとんどなかったのだろう。きっとそういうことだと思っていた。
「おい、何を探しているんだ?」
ガチャ。
「あ、ここで良いや!」
10か所ぐらいは開けただろうか、その扉を開けた時の声で、質問の答えは発見?妥協?的な言葉で返って来た。
開けて入った部屋は、王室だろうか、壁の端に大きな屋根の付いたベッドがあり、その横に小さめの丸いテーブルがあり、果物が置かれている。中心付近には高級そうなソファーと大きめの机があり、寛げるような部屋となっている。
ロシィは夢叶の手を引き、ベッドに腰掛け、夢叶を横に座らせた。
「ねぇ、ユウ・・・。」
「な、何だ?」
いつもの子供らしい、やんちゃな感じではなく、甘い声で呼びかけてくるロシィに少し動揺してしまう。
へ、平常心だ。平常心。リカバー。
平常心を取り戻していると、ロシィにベッドに組み伏されてしまった。
「食べて良い?良いよね?」
ロシィは頬を真っ赤に染め、どこかをトロンとしたような顔で顔を近づけてくる。
「ちょっ!ちょっと待て!」
顔を背け、声を上げる。
「な、何よ。私とじゃ、嫌だっていうの?」
頬を膨らませムスっとする。
「やっぱり、そっちの意味の食べるかよ。何だって急にこんなことを。」
正直、迫られて嫌ではない。見た目も可愛い。美少女と言っても全く問題ない。見た目の年齢的にギリギリとある人達の趣味の範囲に入ってしまうかもしれないが、中身は黒龍で500年以上生きている。それに、少し悪戯好きというか、冷やかしたりとかすることとか調子乗りだったりするが、仲間想いの良い奴だ。好きか嫌いで言えば当然好きと言える。ただ、こういうことはお互いに好意を持って同意の上で行いたい。その場の勢いでしたくはないのだ。
「えー。まぁ、急は急なんだけど。今私発情期みたいだし。」
「は!?」
「大丈夫。そこらの魔物や野生動物見たいな、ただ繁殖する為だけになんてことはしてないよ。」
何が大丈夫なのかさっぱりわからない。
「そもそも、黒龍を私以外に見たことがないし、ドラゴン同士でも発情期になってもこういうことをしたいと思えるほどの相手がいなかったんだよね。皆弱っちぃし、行為のことしか頭にないから私の事なんて見てない奴ばっかりなんだよね。私って結構誇り高いんだよ?だから、そう簡単にはやらせないんだよ。」
疑問形で誇り高いと言われても困るが、とりあえずロシィはさらっと処女であると言っている。
「だが、俺は人間、ロシィは黒龍。種族がまず違うぞ。それに、俺はマナ操作ができるだけであって、それ以外は普通の人間だ。身体能力もステータスプレートによるドーピングみたいなものだし。」
なんとか、思い留まらせようとする。
「種族に愛は関係ないよ。私は、ユウが好き。体を重ねたいと思うほどに。ユウは、私とは・・・嫌?」
しっかりと告白されてしまった。これは、しっかりと返事をしなくては男としては駄目だと思う。真剣に考え出す。
「あ、そんなに悩まなくても良いよ。」
「は?」
考え出す暇もなかった。
「別に私以外とも全然してくれていいんだよね。私を蔑ろとかにせず、他の事同じぐらい愛してくれたら問題ないよ。ユウを好いてくれる人が多いということはそれだけ、ユウが良い男ってことだから誇れることだと私思うんだよね。逆に、誰も言い寄って来ないというのはあまり良い男って思われてないと言うことだから。女の数だけ男の価値が上がるってことだよ。ハーレム万歳だよ!?」
・・・ハーレム万歳。
・・・素晴らしい!
「いや、しかし・・・。仮にだが、ロシィがハーレム良くても他の女は嫌がるんじゃないのか?」
「それは、その女の器が小さいってことだよ。遅かれ早かれ別れることになると思うよ。私は。でも、ちゃんと皆公平に愛して上げなきゃ男としても駄目だからその辺は気を付けないと私でも怒るからね。」
当然だな。皆と添い遂げると言うならばそれぐらいはしないと相手にとっても失礼だし、そんな最低な男にはなりたくはない。
「じゃ、いただきます!」
「ちょっ!」
いろいろと考え、心に誓っていると食べられてしまった。
「あーー!!」
適当に薄い本に載っているような内容を頭に浮かべてください。
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少し時間を遡る。
城を出て、街を歩くリリィとエリィ。
「エリィ。」
「ん?」
小さめの声でリリィがエリィに呼び掛ける。
「ロシィの様子、少しいつもと違ったよね?なんだか、嫌な予感しかしないのだけど。」
「私にはよくわからないが、照れているぐらいにしか感じなかったが。」
どうにももやもやした感じが消えない。
「仕方ない、今回、ロシィは頑張ってくれたし、御褒美ということだし今は置いとこう。」
「街の様子でも見て回ろう。」
レンガを中心とした街並みで、ところどころに戦いの傷跡があるがどれもたいしたことはない。酷い場所でも、一角だけ、ロシィが通常の炎を吐いた時に壁が燃えた跡があるぐらいである。
あとは、ロシィが中央広間に降りた時に広間の真ん中にある何かの銅像が粉々になっているぐらいで、その広間に50人ぐらいだろうか人が集まっている。今は、この街には夢叶一行以外は奴隷だった者しかいないはずだから全員元奴隷のはずだ。
「どうかなさったのですか?」
リリィがその人達に問いかける。
「貴方は?」
一番近くにいた、赤髪のツンツン頭の少年が答えた。
「あ、えーと。黒龍・・・ブラックドラゴンさんの仲間です。」
「おお!それはちょうど良いところに。」
ブラックドラゴンの仲間ということに集まっている人々は喜んでいるようだ。誰もブラックドラゴンの仲間と言うことに疑いもしないのは良いのだろうかと少し心配になるリリィ。
「えっと・・・何かお困りですか?」
「何をすればよいですか?」
「我らに何か指示を!」
口々に言いだす。
「・・・あー。」
奴隷の習慣が染みついてししまっているのだろう、指示がなければ何をして良いのかわからないのだ。解放されたからといってすぐに普通の人の暮らしができるわけではなかったのだ
「うーん。そうですね。この中で農業の知識がある方はいらっしゃいますか?」
「・・・はい。」
遠慮気味に手を上げる中年ぐらいの男性。服もボロボロでまともな服も与えられていなかったようだ。
その後を続くように10名の人が手を上げた。
「では、11名の方はこちらに集まっておいてください。続いて、戦うことができることができる方はいらっしゃいますか?剣士や魔法使いの方。」
これに誰も手を上げない。先ほどの戦闘で参加している者もいるはずだ。いないはずはないのだが。
「あまり、言いたくはないのですが、肉壁、魔法使い補佐の方。」
「「「「「はい。」」」」
これには残り2名を残し全員が手を上げた。確か、奴隷は剣士とは言えないらしいからそれで誰も手を上げなかったのだろう。魔法使いも同様で、奴隷が魔法使いと名乗るのもおこがましいといことで、補佐でないと許されなかったようだ。奴隷は奴隷の使い道は戦闘に対する者の方が圧倒的に多いようだ。
剣士30人、魔法使い7人がそれぞれ別れて集まる。
「えー。これからは肉壁の方は剣士と名乗るように。貴族とかそんなものは関係ありません!もし、今後も自分は肉壁だという者が、自らを物と考えている者がいるならば、この国に住むのは相応しくありませんので出て行って貰います。ここは、人間を物扱いを禁止する国です!ブラックドラゴンさんはこの世界から奴隷を物扱いするのを排除しようと考えているのです。人間は人間なのです!人間らしく生きて行こうではありませんか!」
自分達が奴隷でなくなることにはそう簡単には受け入れないようだ。物として扱われることに対して、不満等があっても、奴隷商人達によって物として育てられたのだから仕方がない。
しかし、人間らしく生きて行くことには奴隷達にとっては夢の1つであり、皆リリィの言葉に頷くのであった。
生きて行く為には農業の知識を持った人間は必須である。自炊できなければ食料がないのだから。今は、帝都だったこの都の各建物に残った物で多少は賄えるが、泥棒みたいだが背に腹は代えられないというやつだ。しばらくすれば、すぐに食料がなくなり餓死してしまう。
そして、剣士や魔法使いがいないと防衛することが出来ずすぐに制圧されてしまう為、都を護ることに警備に少しでも早く慣れさせた方が良い。
「えっと、そこの2人は何ができるのですか?」
農業、戦闘以外で残った2人に尋ねる。
「私は、鍛冶のお手伝いの方を少々しておりました。」
「私は、アーティファクト作成のお手伝いの方をしておりました。」
「「アーティファクト!?」」
リリィとエリィが顔を見合わせる。何故驚いたのかわかっていない周囲の人間は首を傾げることしかできない。
「コホン。申し訳ありません。では、農業の知識のある方と、えっと剣士の方ここからこちらの方は一緒に農業を行ってください。まずは食料を確保しないことにはどうしようもありませんから。剣士の皆さんは知識のある方の言うことをしっかりと聞くこと。それと知識のある方達は、しっかりと自分の知識を言って指示を出すように。黙っていては何も進みませんよ。人間としての一歩を踏み出しましょう!」
剣士30人の中から適当に7人残して区切り、農業知識の有る者と一緒に行動するように言う。
「次に、剣士と魔法使いの方は2人1組となって街の警備、巡回をして怪しい者がいないかなど探してください。もし、怪しい者がいれば、炎の魔法を空高く打ち上げて場所を知らせるようにしてください。決して、無茶はしてはいけません。命を大切にしてくださいね。」
剣士と魔法使いは近くにいた者どうして組み始めた。
巡回場所、休みの日、当番などを簡単に決める。
ついでに、このやり取りの間、エリィは整列などサポートに徹底していた。
「鍛冶師の方は、この都に残っている武器や防具の手入れをしておいていただいてよろしいでしょうか?手入れが終われば、警備の方達から順に渡して行ってあげてください。」
「そして、アーティファクトの方は、作り方を知りたいと言う方がいらっしゃるので作り方をその方に教えていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「わかりました。」
アーティファクトを作成することができるエメラルド色の髪で、ボロボロの服装をした短髪の少女が返事をした。
改めて全体を見るとボロボロの服を来ている者がほとんどだ。
「えー皆さん!これから毎日作業を行ってもらうことになると思うのですが、まず、服装をちゃんとした物に着替えましょう。とりあえず、適当に店にある物から作業しやすい格好に着替えてください。それから、それぞれの担当の作業をお願い致します。警備の方は装備もしっかりとしといてくださいね。」
いざという時に武器も何もなければ話にもならないからね。
それぞれが、服がある店に向かって歩き出した。
これでしばらくは彼らは行動に困ることはないだろうと思う。
「えっと、私は・・・。」
アーティファクトを作成することができる少女が訪ねてきた。
「貴方、名前は?」
「いえ、名前など私には・・・。」
名前がないということは良い扱いはされてきていないはずだ。ひたすらアーティファクト作りをさせられていたのだろう。
「そうね・・・なら、私が決めても良いかしら?」
その言葉にエメラルド色の目を見開き、輝かせる。
「あ、そうか。この世界では名前を付けるということは、主従関係になるのか。」
「そうだな。契約みたいな縛るような行為はないし、完全に信頼関係による主従関係だけど。」
そういえば、と如何しようかと考えている所にエリィが追加説明してくれる。
「じゃぁ、アーティエ・グラディオ。なんてどうかしら?アーティエはアーティファクトから捻ったのと、ラストネームのグラディオは私の世界の名前なの。」
「良いです!よろしいのですか!?」
もの凄く喜んでくれているようだ。
夢叶と同じように、リリィ自信が付けた者達は自分の世界の名前をラストネームにすることにしたのだ。恐らく、この都にいる者たちでもほとんど名前は持っていないはず、これから名前を付けるのに忙しくなるなと考えていた。
――――――――
再び時間は少し遡る。
「・・・その、やっぱり、するんですかね?」
「ロシィはする気だろうな。」
城を出てからのルシアナの質問にさらっと答えるシルヴィ。
表には出さないが、アース家は心の中では年頃の女の子のようにキャーとでも言ってそうな表情を押し殺しているような顔をしている。興味津々のようだ。
「私達もいつか、良い男の人と巡り合うことができるのでしょうか・・・。」
アクシアが夢見がちな表情でうっとりとしている。
「僕達は、ユウトさん達のお陰で人間として過ごせるのだからきっといつか巡り合えると思いますよ。」
イエルスが自分にも言い聞かせるように言うとうんうんとアース家が何やら決意を固めているようだった。
「何故か盛り上がっている所悪いのだが、どうやらお客のようだぞ。」
シルヴィの声にハッとするアース家。シルヴィの視線の先を見ると、都入口の所を塞ぐように人がずらりと並び、中の様子を窺っているようであった。




