第42話 帝国道中
「何で、私が~。」
「フフフ、ユウ殿、妾の足元で何やら嘆いておるぞ。」
「じゃんけんに負けたんだから頑張って。」
ロシィとシルヴィにじゃんけんをしてもらい、負けた方が龍となり、帝国付近まで乗せて行って貰うということになった。
そして、シルヴィがロシィの頭の上に仁王立ちしているのである。
「しかし、結局、学校2日しか行ってないぞ。無駄金もいいところだ。帝国では学校なんて行かずにアーティファクトを直接教えてくれる所に行こう。」
「そうだね。あとは、資金も調達しないと。お父様に頼むと言うのもありますけど。」
「いや、それは最終手段だ。リリィの父親も国王だろ。その金を使うということは一般市民の税金を巻き上げるのと同じだからな。そこまで迷惑を掛けられない。」
アース家がえ?王族!?という顔をしている。
それに対してリリィがテヘッと頭を押さえる。
「気にしないで、今まで通り普通に接してくれて良いから。」
まぁ、今まで通りと言っても、奴隷の習慣で全員敬語で控えめなのだが。
「資金調達で私達にできることと言えば、やはりギルドしかないだろうな。」
エリィが言うことに皆頷く。
「あ、何か街っぽいの見えてきた。王宮っぽい感じの建物もあるよ~。」
ロシィが街を見つけたようだ。
恐らく、あれが帝国だろう。
――――――――――――――
離れた所で降り、ロシィが人の姿に戻る。
街道に沿って歩いていると、何やら30人はいるだろう赤いローブを着た兵隊達が駆けつけてきた。
「おい!そこの者達!」
嫌な予感しかしない。
「今さっき、こっちに黒いドラゴンが来なかったか!?民が見たと言っているのだ!」
「見ていないが、その黒いドラゴンは放っておくと危ないのだろうか?」
エリィが訪ねてくれる。ブラックドラゴンではなく、黒いドラゴンという所が引っかかる。
「わからん。黒いドラゴンなど初めてだ。普通のドラゴンでも軍隊を動かさないといけないほどの脅威だが、それ以上の脅威の可能性があるドラゴンを何もせずに放っておくわけにはいくまい。」
ブラックドラゴンという存在は前の世界でのみ存在を確認されているのか。王国はマジェストがいたからその存在を知っていたということだろう。
「まぁ、そんな危険なことは兵隊さんに任せて行こう。」
その場を去ろうと進みだすが、
「ちょっと待て、お前達。」
止められてしまった。
「・・・何?」
面倒そうに振り返る。
「この街道を通っているということは、王国の者達だろう?見た所、旅のようだが、何をしに来た?」
「あー。実は、王国が恐らくそのブラックドラゴンが王都?を滅ぼしたから、俺達はもう逃げて来たんだよ。元々、奴隷の扱いが気に食わないところだったし良い機会だと思ってな。」
「「「「!?」」」」
まぁ驚くだろうな。隣国のライバル国がいきなり滅びたのだから。白龍までいるっていうとまた面倒になりそうなので黙っておいた。
「そ、それは本当か!?」
「ああ、この目で見てたからな。」
ロシィとシルヴィが物足りなさそうに暴れている所を。
「伝令!今すぐ、帝都に戻り報告してこい!」
「ハ!吹き抜ける風、我に疾走の加護を!エアボード!」
風の塊がまるでボードのようになり、帝国の方へ空を飛んで行った。
「へー。なかなか面白そうな魔法だな。」
「お前達、奴隷が嫌いなのか?」
訝しい目で見てくる。
「奴隷が嫌いと言うか、奴隷に対する扱いが嫌いなんだ。同じ人間なのに物扱いだ。」
「どこの田舎から出てきたのか知らないが、残念ながら、この世界は、奴隷は当たり前の存在だ。帝国でも物扱いはしているから、たいして変わらないはずだ。」
「・・・そうか、なら世界の在りようを変える必要があるのな。」
真剣に考える。
「ははは、まぁ皇帝や、国王にでもなれば可能性はあるだろうが、殆どの人達は奴隷に依存していると言ってもいい。奴隷は自分の価値を上げるし、命綱の1つだ。そうそう奴隷廃止など受け入れる者はいないだろうな。」
「今の皇帝も今の奴隷制度に賛成なんだろ?」
「そりゃもちろんそうだ。」
当たり前のように言われた。
他の兵が話していた兵の肩を叩き、先を促す。
「おっと、しまった。黒いドラゴンを調査しなければ。失礼する。」
その2人の兵は共に王国方面へと向かった。
「・・・帝国も潰すか。」
そう呟いた。
「お前!今、何て言った!?」
さっきの兵が急反転して戻って来た。なかなか耳が良いみたいだ。
「帝国もと言ったか!?」
凄い形相で問い詰めてくる。近い近い。リカバー。
「・・・どうしよう?」
顔を逸らし、皆の方を見た。
「口は災いの元とどこかのお偉いさんが言っていました。」
「その言い方だとまるでお前らが潰し見たないいようだな。」
怪しそうに見てくる兵。
「えーと、その潰した奴が奴隷制度が気に食わないみたいなので、同じ扱いなら帝国も潰しに来るんじゃないかなと思っただけです。」
何故か敬語になってしまった。
「なぜ、そうだとわかる?その場にいたのか?」
「いや、収まった後に行ったんだが、玉座の会った所の地面にそういうふうに刻まれていたんだ。」
兵は何やら話し合いだした。
「お前達は、ここからもう少し言った所に見張り小屋がある。一旦、そこで待っておけ。おい、そこの5人、こいつ達を連れて行け。」
近くにいた兵5人を監視に置き、残りは半分に別れ王国の方とブラックドラゴンの探索に向かって行った。
「とりあえず、様子を見ようか。」
そう皆に言い、言われた通りに兵5人と小屋へと向かった。
―――――――――――――――――
「しばらく、待っていろ。」
そう兵に言われたので適当にあった椅子にそれぞれ座る。
「これからどする~?」
ロシィが暇そうに聞いてくる。
「帝国が王国を見てどう判断するかだなぁ。改めようとしてくれるならそのままでいいだろうし、違うようなら本当に潰すしかないかなぁ。」
う~んとしている。
「・・・あの、王国はほとんど勢いだったのだろうけど。」
リリィが少し気まずそうに言いだす。
「関係のない人達はどうするの?」
気まずそうに聞いて来てはいるが、その返答は真剣に答えろと言っている。
「・・・そうか。」
完全に頭になかった。民間人や、奴隷を扱っていない人。奴隷その者すらあの周辺にいた人を殺してしまったのだ。無自覚だったとはいえ、大量殺人鬼となってしまったのだ。後悔したってもう遅い。すでに大勢の無関係な人を殺してしまっているのだ。もう戻ることはできない。
「気にすることはないよ。」
「ああ、手を下したのは妾達だ。」
夢叶が殺したわけではないと言ってはくれる。だが、
「指示を出したのは俺だ。責任は俺にある。」
机に肘を置いて俯き、頭を抱えるようにし、手が震える。
「そうだね。責任はユウにあると思う。だから、責任を取らないといけないよね。」
リリィが傍に来て、震えている手に手を重ねてくれる。
「責任・・・か。」
震えていた手が止まり、俯いたまま、どうやれば責任を取れるのか、何をしたら報いることができるのか必死に頭を巡らす。
「それは、自分で考えないといけないことだよ。他人の意見を使えば、それはその人に責任を押し付けたことになるから。あなたが言ったことをやったのに意味がなかった、逆効果だったなんていう逆恨みみたいなことになるから。それに、私達は貴方が決めたことに付いて行くよ。契約しているからだとかそんなの関係なく私達はユウに付いて来てるんだから。私達を信じて自分が最善だと想うことして!」
リリィの真剣な言葉を聞き、皆の顔を見渡すと頷いてくれる。目に涙が溢れそうになる。
「ありがとう。少し考えさせてくれ。」
立ち上がり、皆に頭を下げる。
「おい、何か盛り上がっているのかもしれないが監視されている立場だと言うことを忘れるなよ。」
兵が注意しに来た。
「すまない。やることが特にないのでな。話が少し盛り上がってしまったようだ。」
エリィが変わりに謝ってくれる。
「気をつけろ。」
兵はぶっきらぼうにそう言い放ち、近くの椅子にドカっと座った。
「ひ~ま~だ~な~。」
ロシィがイスを斜めにユラユラと器用にしながらぼやく。




