第41話 潰すことにしました。
「お、おお。まさか、あの魔法を一瞬で消すとは。もしや、本当の主様ですかな?」
国王が愚かなことを問う。
「ううん、本当の主はユウだよ。」
もう、隠す必要はない。知る者はいなくなるのだから。
「「「「「え!?」」」」」
国王側全員が驚いた。あとアース家も普通に驚いていたが。恐らく、アース家も国王と似たような事を思っていたのだろう。ロシィとリリィから主従契約して力を授かっているために強いと。
「どーも、物扱いしてくれてありがとう。本当の主です。」
悪い笑みを浮かべる。つもり。
「さて、国王。確認だ、俺が何故、アオイズマと決闘、そしてマドニクスと決闘したのか分かっているか?それぐらいの情報は入っているんだろう?」
「あ、ああ。その物達が、物扱いされて怒ったと言う風に聞いておる。先ほどの会話から、主を物扱いされて怒ったと思ったのだが・・・。」
「ああ、違うね。主とか従属とかそんなの関係ない、誰だって、仲間を物扱いされれば怒るだろ?最初に言ったよな?仲間だって。」
「そ、それは・・・」
国王が言い淀んでいる。
「奴隷を全否定とまでは思わないが、奴隷でもせめて人として扱うならまだ、許容できたと思うんだが、物のように扱う、この国には虫酸が走るんだ。俺はな、国王、お前と会って、この国はそんなことを認めてないか改善しようとでもしている可能性があるかもという僅かな期待を胸に抱いていたんだが、国王も物扱い当りまえときた。なら、この国はもう俺の許容範囲を超えている。だから、潰すことにしたんだ。」
「「「「な!?」」」」
「お、お主達たった数人で何ができる!」
唾を飛ばしながら叫ぶ国王。
「だから、この国を潰すことができる。」
呆れて言う。
「この場にいるのは、マドニクスほどではないが、この国のトップクラスの魔法使い達だぞ!それをそんな数人で倒せるとでも思っているのか!?」
「ああ、言っておくが、さっきの黒炎はこいつだけでなく、俺も使えるぞ。そして、本気の欠片もまだ出していない。」
ポンとロシィの頭に手を置く。なでなで。目を細めるロシィ。羨ましそうな目で見つめてくるリリィ。
「な、ならば、世界最強、伝説の魔法使いにも出ていただきましょう。」
世界最強?
「お願いします。マジェスト様!」
何やら国王が巻物を取り出し、魔法陣を展開すると、ゲートの用に空間が空く。しばらくすると、その空間から、前の世界でリリィのものをかぶったマジェスト・ハリー、世界最強の魔法使いと言っていた男が姿を現した。それと同時に巻物が燃え尽きる。使い捨てのようだ。
「フハハハ!あの伝説の世界最強の魔法使い!マジェスト・ハリー様だ!この国の危機があれば即座においでくださるように無詠唱で発動できる特別製の巻物だ!マジェスト様は、その世界最強の力で寿命すら引き延ばすことに成功しておられるのだ。国家機密だがな!フハハハ。」
マジェストの方が立場的に上らしい。そして、マジェストが出てきたことにより勝ちを確信しているようだ。確かに、あのグングニルを連発されれば、なかなか厳しいかもしれないが、長年溜めた魔力で発動したとか言っていたからその恐れはないはずだ。
「よう、マジェスト。」
笑顔で声を掛けてみた。
「!?」
マジェストは一瞬、驚愕するがすぐに落ち着かせる。リカバーだろうか。
「お主!無礼であるぞ!この方こそ正真正銘のマジェスト・ハリー様だぞ!」
どうやら、知り合いだとも夢にも思っていないようだ。
「国王よ、この者がどうかしたのか?」
恐る恐ると言う感じにマジェストが国王に問う。
「マジェスト様!この物達が我が王国を潰すと言っておるのです。我が国家魔法使いも殺されてしまいました。どうか、マジェスト様のお力でこの物!」
「はぁ、貴様、何故この国を潰す?」
「奴隷の扱いが気に食わないから。」
マジェストが大きく溜息をする。
「なるほど、私も奴隷の扱いについてはどうかと思っていたのだ。・・・国王よ、諦めろ。この国は滅ぶ。」
マジェストの奴隷についての考えは本当だと思った。前の世界ではほとんど、マジェストが構築したような世界だ。奴隷は確かに存在するが、入手はかなり難しいようになっているし、能力授与の方がどちらかといえば主流のようになっているからだ。
「な、なぜですか!?マジェスト様!?」
「国王よ、私が向こうの世界でブラックドラゴンの為に、10年掛けて魔力を溜め、私の過去最高の魔法、グングニルを作ったことは知っているな?」
「はい。」
「つい最近、ブラックドラゴンと対峙してな。」
「それでブラックドラゴンを倒したのですよね?」
この前の戦いの事は、まだ話していないのか。
「いや、防がれ、グングニルを相殺された。魔法陣も無しに。」
「な、なんですと!?そこまでにブラックドラゴンは強かったのですか!?」
国王、他の者が驚愕し、あり得ないなどとざわつく。
「いや、私のグングニルを相殺したのは、ブラックドラゴンではなく、そこの男、ユウト・オウセにだ。」
指を差される。視線が集中する。リカバーするしかないじゃない。
「そんな・・・この物は魔力値18、例え、能力授与の契約があったとしても、従属がそこまでの力を授かることなど・・・。」
俺が主と信じていなかったのか。
「いや、ユウトが主だ。そして、そこにいる少女はブラックドラゴンでユウトの従者だ。」
今度はロシィを指差す。
「ブラックドラゴン!!?そ、そんな・・・ドラゴンが人の姿に・・・!?」
国王が震えだした。
「今の会話で分かったと思うが、私は彼に負けているのだ。グングニルを使ってさえ勝てなかった相手を、そのグングニルすら今は使えない私が相手になるはずもなかろう。ましてや、ここにいる兵達全員と私1人でも互角なのだ。私以上の存在にさらに、もう一人ブラックドラゴンまでいるとなれば、どうしようもないだろう。」
「そんな・・・」
国王、兵達全てが絶望の顔に染まる。
「アース家の皆~。私がドラゴンっていうのはナイショだぞ!」
そんな中、アース家の皆に星マークが出てきそうな気楽な感じで言う。
「ばらしたら、じゅるり・・・・わかるよね?」
唇を舐めまわし、可愛くウィンクして言う。アース家の皆は首を縦に全力で振る。
「よし、ロシィ!あんまり、ドラゴンになる機会もないだろうし、今のうちになって感が鈍らないようにしておこうか。」
「いいの!?ひゃっほーい。」
ピョンピョンと跳ねる。
「ユウ殿。妾も良いか?」
シルヴィが近づいてくる。
「ああ、一緒に暴れていいぞ。この国がどこまで大きいのか知らないから、とりあえず、ここ周辺だけな。」
「2人では、少し狭すぎるが仕方あるまい。」
「ちょっと、待て!ユウト、貴様今のはまるでそこの女もドラゴンのような言い方だったが、まさか!?」
「そのまさかだよ。マジェスト。シルヴィは、ロシィと対となるようなドラゴン、白龍だ。ホワイトドラゴンとでも言うべきかな。ロシィと同等の力を持っている。」
「な・・・んだと・・・!?」
驚愕し、打ち震えているようだ。
「巻き添え食らいたくなかったらさっさと向こうの世界に行けよ。」
「そうさせてもらおう。」
イソイソと巻物を取り出し、ゲートを展開する。
「お、お待ちください!我らも連れて行ってください!」
国王が縋りつくこうとするが、それを避け、ゲートに飛びこみ、消えた。
「そ、そんな・・・・こうなれば、やるしかない!者共!道はただ一つ!この物達を殺せ!」
オオオーーーーーーー!!
叫びと共に途中から兵達もわかっていたのだろう、一斉に詠唱が始まる。
「リリィ、エリィ、アース家は俺の傍に。」
リリィと共に、アース家の近くに移動する。
「よっし行っくぞー!」
ロシィとシルヴィが翼と尻尾を出し、詠唱中の兵達に左右別れて突進する。
人がポイポイというように飛び跳ねて倒れて行く。まるで漫画だ。
そのツッコンだ兵達の中心でロシィとシルヴィの体が王宮を壊しながら龍へと変わる。
「ひ、ひー!」
その姿に逃げまとう者、
「エクスプロード!」
立ち向かう者。
エクスプロードがロシィに当り、爆発する。
「やったか!?」
「それフラグっていうんだよ。」
フラグを壊した無傷の本人が教えて上げている。
「そんな・・・。」
腰を抜かし動けなくなる者。
ロシィとシルヴィ側ではほとんどに同じような光景が広がる。
アース家も空いた口が塞がらない状態だ。
龍の姿で兵達を踏みつぶし、国王と文官だけを残し、ロシィとシルヴィは空に飛び立つ。王宮の壁は、夢叶達がいる所以外、全て壊れ外の景色が広がっている。
ロシィとシルヴィはそれぞれ左右に炎を撒き散らし、王宮のあった街を火の海へと変えた。
2人が夢叶の傍に人の姿に戻りながら降りてくる。
「むー。物足りない・・・。」
「全くだ。」
2人ともむくれる。
そんな2人に苦笑いしていると。
「う、動くな!動けばこいつがどうなっても知らぬぞ!」
生き残りの兵が、アクシアの首を絞め、ナイフを突きつけ人質としたのだ。
「申し訳ありません!申し訳ありません!」
涙を溜め、謝る。
「こいつ!動くな!」
強く首を絞める。
「お前、すぐに離せば、楽に殺してやる。5秒以内に離さないなら、後悔させながら殺してやる。・・・5~」
夢叶が睨みつけ、秒読みを始める。
「お、お前が何をしようとこいつを盾にすればいいのがわからないのか!?」
「よ~ん。さ~ん。に~。」
無言で秒読みを続ける。
「クソ!せめてこいつだけでも!」
やけになったのか、秒読みが終わる前にナイフをアクシアに突き刺そうとする。
しかし、そのナイフは黒炎に阻まれ消滅する。そして、突き刺すその勢いで手が黒炎に触れ手首までも消滅する。
「うぎゃー!!手が!手がー!?」
そこは違っても目と言うべきじゃないのか?アクシアが解放される。
「申し訳ありません申し訳ありません。」
何度も謝るアクシア。
「アクシア、助けられたら謝るんじゃなく、ありがとう、だ。」
アクシアの頭にポンと手を置く。
「・・・はい。ありがとうございます。ありがとうございます!」
2回は言うのね。2回言うのは口癖みたいなものだろうか。
「俺の仲間に手を出したんだ後悔して死ね!」
左足首を燃やし、残っていた左手首も燃やし、右足首を燃やし、残っている腕、足、体と順番に部位を燃やして殺した。
殺しに抵抗がだいぶ亡くなって来てしまった。まぁ、良い。死に近い世界にいるんだ。もう地球には住み戻る気もない。仲間さえ無事ならそれで良い。
「さて、この国にいるのはお前ら二人だ。どうやって殺そうか・・・。」
邪悪な笑みを浮かべ国王と文官に近寄っていく。
「や、やめ!」
「助け・・・」
怯え、恐怖で言葉がまともに出せないようだ。
「アース家の諸君、この国を憎んでいないか?自ら復讐できるチャンスだがやりたい者はいないか?」
奴隷制度を人間を商品、物と認めているこの国があるおかげでアース家とその他の奴隷達は不幸な目に会い続け、理不尽な死にもあっているはずだ。そんな、国を作った、支持していた国王、根源の1つを潰すことで少しでも奴隷だった頃の気が晴れればと思ったのだ。
アース家はお互いに目を見て頷く。
「「「「やらせてください!」」」」
全員が声を上げた。相当、この国に嫌気がさしていたんだろうな。
「んじゃ、お好きにどうぞ。」
手首をクイっと上げ、手の平をグっと握るように閉じる。国王と文官の両手首、両足首を地面から出た土が固定し、動けないようにする。
国王の前にルシアナとレンディル。文官の前にアクシアとイエルス。剣士と魔法使いで別れて立つ。
4人は国王と文官をジッと睨みつけ、唾を飲む。深呼吸し、
「「覚悟!!」」
ルシアナとレンディルが剣を振り上げる。
「「燃えさかれ炎、燃えろ!悶え死ね!ファイアボール!」
アクシアとイエルスが夢叶の適当な詠唱を真似して初級魔法である野球ボールほどのファイアボールを放つ。当然、夢叶より炎は圧縮されおらず、威力も非常に弱いが、炎だ、当れば衣服に燃え移るから十分だ。
「ギャー!!」
「あ!?熱い!?助け!」
涙ながらに、叫ぶ。
国王は、急所を切られず、生きている状態で何度も切られる。
文官は、じわじわと体が焼け焦げて行く。
悲鳴が収まり、死に絶えた2人を、アース家はなんとも言えない感情、表情で見つめ、背を向けて夢叶達の方に歩いて戻る。
「満足したか?」
「・・・わかりません。ですが、何か区切りはついたような気がします。」
「そうか・・・。」
微妙な空気になってしまった。
「それで?これからどうするの?」
ロシィが聞いてくる。
「う~ん、他の国もこの国と同じなのか?」
アース家に聞いてみる。
「すいません、私達はこの国を出たことがなくて・・・。」
レンディルが答える。
「どうしようか・・・違う国にでも行ってみる?」
「この国と同等の大きい国が帝国と聞いています。距離も、ここからさほど遠くはない距離のはずです。」
大陸の中央に王国と帝国が別れおり、それぞれを中心にそこから小国に別れているようだ。実質、この世界の国は、王国と帝国の二つだけということらしい。お互い、この先を通りたければ倒してから行けという思考の元こういう立地になったようだ。
「なら、その帝国に行くか。大きい国の方がいろいろとわかるだろうしな。」
「「「「はい!」」」」
「あーい。」
「「「了解。」」」
「うむ。」
それぞれ、返事が帰ってくる。
「あとは、ここに、こうしてっと。・・・行くか!」
玉座があった付近に、
奴隷も人間だ。それを忘れればこうなる。
と地面を削って書いておいた。




