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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第1章 魔法が使われていない世界
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第3話 ラビット討伐

「まじかよ・・・」

 唖然とする。


森に入ってしばらくすると、そいつはいた。

後ろ姿のラビットだ。こいつがラビットでなければ、なんだというのだ。キョロキョロと時折見える凶悪そうな真っ赤な瞳が特徴的だが、その他はまるっきりウサギだ。

ラビットとの距離は30メートルぐらいだろうか、草影に隠れて顔だけ出している状態だが、まだ気付かれていない。

 さて、どうやって倒すか。


――――試験開始直後


「おい、見ろよ。お子様は武器も持たずに試験を受けるみたいだぜ?」

「っくっくっく。いくらラビットとはいえ、魔物を新人ごときが素手で倒せるわけがねぇんだぜ。」

「おまけに、防具も何もつけてやがらねぇ。こりゃぁ傑作だぜ。」

 3人組が馬鹿にしてくる。

「まてまて、まだお子様はリュックをお持ちのようだぜ?」

「きっと、あそこに短剣が入ってるんだぜ。」

「ああ、そうに違いないんだぜ。包丁という短剣だぜ!」

 はーっはっはっはと笑う3人組。

 他の周囲の人達もクスクスと笑っている。


「何をやっている!さっさと行け!」

 試験官に怒鳴られ皆駆け出していく。




ムカつくあの3人組の事を思い出しながら、素手だろうが、包丁だろうが俺には魔法がある。新人が剣で簡単に倒せる相手みたいだし、問題なく倒せるはずだ。そんなことよりも俺は・・・あんなに可愛いのに殺さなければならないのか・・・。もの凄く葛藤している。例え、異世界であろうと魔物であったとしても生物を殺すのに躊躇いがある。これは、慣れる為の試練なのだ。


「やー!!」

 何やら、可愛らしい声で奥の方から剣が振り下ろされ、ラビットの耳が切り落とされた。それと同時に、耳が黒い霧となり霧散する。耳が切れた所からは血が出ず、先ほどの黒い霧みたいなのが、まるで溢れ出てしまっているかのようにじわぁっと出ては消えている。

 今のはマナか?よく、魔力がうんぬんかんぬんで魔物になったりするって話があるからこの世界もやはりそうなのだろうか。



「きゃあ!」

 おっと、観察してたら何やら女の子が苦戦している様子。


「ちょっと、そこに誰かいるんでしょ!?手伝ってよ!」

 どうやら、向こうはこちらにお気づきの様子。スッと立ちあがると。


「え”っ!?お子様!?」

 白い髪に左右を大きめの黄色のリボンで結ばれたロングツインテールに、立派な黄色を基調とした鎧にロングスカートの美少女が現れた。ついに、俺に美少女フラグが!?

 と思った矢先。

 あれ?お子様だと気付いた瞬間、一目散に逃げていった。


 姿が見えなくなっていく女の子を唖然と見ていたら、耳を斬られたラビットが矛先をこちらに向けてきた。かなりお怒りの様子。ピョンピョンと可愛らしく、近づいてくる。一瞬、緩みかけた瞬間。ラビットが目の前に現れ、全力でドロップキックを仕掛けてきた。

 咄嗟に目を瞑り、腕をクロスさせてガードをする。・・・しかし、いつまでもたっても衝撃が来ない。目を開けると、ラビットが霧散していた。

目の前に少女が剣を鞘にいれていた。黒い長髪の後ろの方で結んだポニーテール。先ほどと同様の黒を基調とした立派な鎧に短パンにニーソ。そして、腰マントをなびかせていた。


「すまない。」

 鋭い目つきではあったが、一言言うとそのまま、白髪ツインテールの女の子が逃げて行った方に向かって走って行った。その後をさらに2人の男女が駆け抜けて行った。

クールだなー。と見送った。


ふと、下を見ると、何やら、メダルのような物が落ちていた。拾って見ると、中にラビットっぽいシンボルが刻まれている。これが、魔物の核だろう。そして、意識を集中しないとわからないほど極僅かだが、このメダルからマナを感じる。まぁ、魔物自体がマナで変化したみたいだから、当然か。


さて、気を取り直して、ラビットを倒すか。血とかがでないなら、なんとかなるだろう。


「我が封印されてない、右手より現れよ!ファイヤーボール(棒読み)」

 無駄なポーズをとりつつ、どの程度でラビットを倒せるのかわからないので、とりあえず、初級の魔物らしいので周囲を確認して、軽くファイヤーしてみた。拳ほどの大きさのファイヤーボールは高速で飛んで行き、ラビットに当たる。


「キュー!キューー!」


 あ、これはだめだ。残った肩耳が崩れて行く。足がボロボロになり、崩れて行く。燃えている。グロい。幸い、霧散していくので、血生臭いまでにはならなかったのが救いだ。

遊び半分で火系の魔法を使うのはやめようと心に決めたのであった。


「キュー・・・・」

 チャリン・・・悲しい鳴声と共に核が落ちる。なんか泣きそう。ごめんな、ラビット・・・


「大地より出でよ、我がつるぎ!」

 手を地面に向けると地面からの剣の形をした土が作られていく。

「我がつるぎよ、大地からの眠りから目覚めよ!!」

 瞬間、土だったものは、鋼鉄の剣に早変わり。土を土台に、切れ味のよい鉱石を纏わせる。

 マナにより、火や水など、様々な現象を現実化することができる。当然、マナにより物を作ることだって可能だ。しかし、マナを物として作るのにはかなりのマナが必要で、時間もそれ相応にかかってしまう。頑張れば、召喚魔法みたいなのも可能だ。ただ、ロボットのように決められた動きの物ならできたが、意思持つほどの物はできなかった。


マナにより、作られたその剣は、そこらの剣よりも圧倒的に切れ味が良い。なぜなら、鉄など鉱石から形を変え、磨き上げ切れ味を上げるのではなく、最初から切れ味が良い物として出来上がるからだ。

ラビットも豆腐みたいにスパッと斬れるほどだ。しかし、切る感触は残る。この感覚になれるのに時間がかかりそうだ。


5体ほど倒すと、ステータスプレートが光だし、体も包まれる。そして、すぐに光は消える。

(なんだ、今の。)

 ステータスプレートを見てみると


―――――――――――――――――

 名前  ユウト・オウセ

 職業  冒険者

 レベル 2

体力  65

 力   12

 防御力 7

 素早さ 6

 次のレベルまで 20

―――――――――――――――――


 タラララッタッタッター♪

レベルが上がったようだ。なんだか、前より気持ち、体が軽い気がする。気持ち・・・。

あの光に包まれると、肉体を強化してくれるのか。しかし、やはりあの光にマナを感じる。魔法の一種なのだろうか。ステータスプレートから光が出たということはステータスプレートを所持している間だけそのレベル分の肉体を強化してくれるのだろうか。


・・・試してみるか。


ステータスプレートの草影に隠し、空を見る。

「テレポート」

 空に転移し、街の方には軍隊が見える。来る前にすれ違った軍隊のようだ。どうやら、街に戻っているようだ。帰りにしては、慌てているようだ。ドラゴンはいたのだろうか。

 ついでに、現在、重力を操り、空を飛んでいます。テヘ。

その反対には、都市が見える。その反対にはその頭上の空に転移、さらに、その都市の向こう側にも大きなコノエ森林より大きな森林が見える。そこの頭上に転移し、そのまま重力を操り地表へ下りる。


体をピョンピョンさせてみたり、ストレッチしてみたり、シャドーボクシングしてみたりと体を確認するが、レベルアップした時のままのようだ。何これ凄い。一時的な肉体強化はできるが、常に、魔法による影響も受けている気配もない。マナ消費もなく永続的に強くなれる魔法なんてどうやるのかイメージができない。さすがに、レベル上がる時はマナを使うようだけど、十分凄すぎる。あれは、いったいなんだろう。アーティファクトってやつだろうか。


さて、戻ろうかと思った瞬間、何か出てきた。ラビットだ。おっきいラビットだ。何メートルあるだろうか。あのラビットの背中のモフモフにダイブできたら気持ちいだろうなと見上げている。


見た目、ぴょん♪と可愛らしく飛んでくるように見えるが、何分大きい為、脅威以外のなにものでもない。踏まれたら終わりだ。

さすがに身体強化の魔法を使い、瞬時に後ろにかわし、首元を狙って飛び、切りつける。


「っく。浅い!剣が短いのか!?」

大きいラビットの後ろに着地すると、大きいラビットはやっぱり、お怒りで踏みつぶそうと、怒りの心をぴょんぴょんしながら踏みつぶそうとしてくる。


しかし、それをなんなく避けて、今度は頭を狙う。

「すまない!」

 頭に剣を突き刺す。浅い!・・・が、

(俺の心が痛みにピョンピョンするんじゃー!!!)

心で叫ぶ。誰も聞いていないからと言って、口に出すのは恥ずかし過ぎた。

バチッ!っと大きな電撃が大きいラビットの脳天を走る。


脳を電撃で焼かれてはさすがに一溜まりもなかったらしく、すぐに霧散した。

チャリンと核が落ちる。見てみると核の模様がラビット普通のラビットに冠を付けているものになっていた。

魔物によって絵柄が違うのかな。

ひょっとして、コレクションできるんじゃ・・・。



さて、今度こそ戻ろうとしたら、もう一体出てきた。


っく。なんて、試験なんだ。


教えてくれ・・・俺は、あと何回あの大きいラビットとあの小さいラビットを殺せばいいんだ・・・


 先ほどと同様の倒し方で、その一体で済んだ。小動物?を倒すのはなかなか慣れない。


 ステータスプレートを隠した位置に戻ってくると、ラビットがいたので

「南無三!」

 と、首真っ二つにして倒す。すぐに、霧散して消え、チャリンと核が落ちる。

 ステータスプレートを回収すると、ステータスプレートが光、体を包む。レベルアップだ。見てみると。



―――――――――――――――――

 名前  ユウト・オウセ

 職業  冒険者

 レベル 12

体力  250

 力   33

 防御力 27

 素早さ 30

 次のレベルまで 220

―――――――――――――――――



おお!?あの大きなラビットは実は結構強いモンスターだったらしい。

魔法で、簡単に倒すことができたが、確かに魔法がなければあの巨体にかのモフモフという分厚い毛皮を突破するのはなかなか厳しいのかもしれない。


 ステータスプレートを身につけていないとレベルは上がらないと。しかし、経験値は蓄積はされている。まぁ、体にでも付いていると思う。何か纏わり付いている感じがしたし。



 落ちた核を拾おうとすると

「お、お子様が、なんか核を拾ってやがるんだぜ。」

「誰かのお零れだぜ?」

「お子様には、それが限界でちゅよねー?だぜ。」

 相変わらずのク・・・、ゴ・・・、・・・3人組が笑いながら現れた。


「んん??おいおい、お子様。こんな良さそうな剣、どこで拾ったんだぜ?」

「お子様の武器は、包丁だぜ?」

「お子様には、この剣は似合わないから俺達が頂いてやるぜ。」

 ックックックっと相変わらず、殴りたくなるような事を言ってバシっと剣を奪い取られた。違う人物で時間が経ったとはいえ体が痛みを虐められていた恐怖が体を言うことをきかすことができなかった。一刻も早く克服しなければならないことだ。


 だから、この世界は、地球とは違う。そう何度も自分に言い聞かせる。それに、ここには魔物だっている、地球とは違い死がもっと近くにあるのだ。殺してしまっても、別にかまわんのだろう?

 そう思うと何故か、可愛い小動物や罪のない人とかは殺すのにはまだ抵抗あるが、こういうクズみたいなゴミみたいな連中は昔の事もあって怨み積もっているからだろうか、逆に殺したくなってくる。

 だけど、我慢。俺は、温厚な性格。自分に言い聞かせてみる。


「すいません、それがないとラビットを倒せないんですが。」

 もの凄く、不機嫌な顔される。

「お前、また俺らに盾突く気だぜ?」

「言っただろう。お前が弱いのが悪い・・・と!だぜ!」

 顔に指を突き立ててくる。

「よって、この剣は強い、俺らの物というわけだぜ!」

 ニヤニヤしている3人組。


「それは、強ければ、何をしても許されるということか?」

 無表情に問う。

「当たり前だぜ!」

「俺らはステータスも強く、権力も強いんだぜ。」

「当たり前だぜ!」

 大事なことのようだ。


「そうか、なら・・・」

 もう、こいつら殺ってしまおうと思ったその時。


ピーーーーーーーー!!!!

 笛の音が辺りを鳴り響く。


「警笛だぜ!?」

「何かあったのかだぜ!?」

「やばいんだぜ!?」


 警笛の音でその場の全員森林の入り口の方へと行く。3人組は当然、邪魔だと、俺を押しのけて行く。

その後を適当に駆け足で追いかけていると、前方から3人組が戻ってきた。


「ひーーだぜー!!」

「やばいんだぜーー!!?」

「だぜーー!!??」


 そろそろ、語尾のだぜにツッコミを入れるべきだろうか。

 ぶつかってくる勢いで走ってくる、これは俺、体当たりされて飛ばされる奴だ。前方の走っている3人組の足元の土を少し盛り上げる。

 ズッテーンと、見事に3人同時にこけた。


「どうしたんだ?そんなに慌てて。」

 こけた3人組を見下ろして尋ねる。ニヤニヤして。


「う、うるさい!どけだぜ!?」

「早くしないと奴が追い付いてくるんだぜ!」

「奴は今の俺達じゃやばすぎるんだぜ!」

 相当必死なようだ。立ち上がり、走り出そうとする3人組の後ろに、ズシンと大きな音がなった。


 赤い体をした大きなトカゲに鋭い牙を何本も生やしたような魔物が迫ってきていた。

2017/10/03 微修正

2017/11/13 ステータスプレートを離してからも持ってる感じになっていたので修正。他微修正。

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