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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第2章 魔法の世界
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第38話 第一歩

「あ、あれ?自己紹介ですか?」

 4人はキョトンとしている。


「あ、ああ。何だと思ったんだ?」

「いや、その。養う余裕がないとか仰っていらしたので、てっきり、体で支払ったり、体を売れとかそういう話かと。」

 赤面しながら答える。


「皆いるのに、そんなことさせるはずないだろ?」

「いなかったらさせたんだ~。さすがケダモノだね!」

 ロシィが冷やかす。

「御相手なら言ってくれれば、私がいつでも!」

「リリィ!?」

 エリィがリリィの大胆発言に驚く。そうか、エリィは、リリィが俺に対して恋愛感情を抱いているのは知らないのか。


「まぁ、とりあえず君からどうぞ。」

 先ほどから返答している女性へと促す。


「あ、はい。えと。魔法補佐をしていました。14歳です。得意属性は氷属性ですが、初期魔法ぐらいまでしか鍛錬できていません。えとえと、処女です!申し訳ありません。」

 

 顔赤くしながらペコっと頭を下げる。青髪の短髪で古いローブを着た少女。


「・・・ケダモノのユウは何か言いたげだね。」

「そうだね。」

 ロシィとリリィがじぃっと見てくる。


「な、なんだよ。お前ら最近、仲良いなって思っただけだ。俺を弄る時は特に。」


「あー、微妙に話逸らした!まぁ、仲が良いのは認めるけどねー。」

「ねー。ケダモノのユウにはない仲だよねー。」

 とキャイキャイしている。どこのタイミングでそんな仲が良くなる出来事があったのだろうか。


「そうか。漏らさせた者と漏らした者の仲か。」


「・・・ユウ?」

 リリィさんが青筋を浮かべて笑顔だ。目が笑ってないけど。


「なんでもないです。」

 敬語になって目を逸らす。


「えーそれで、何で処女なんて言ったんだ?」

 しまっ・・・

 つい口走ってしまった。


「さすがだね。」

「だね。私達の話を逸らす為にした発言がそれとは。さすがとしか言えないよ。」

 ロシィとリリィのニヤニヤが止まらない。シルヴィとエリィに至っては呆れているようだ。


「はい、処女の方が価値が高いと。不要になった際に手放す時に高く売れるとかで、体には手を出されなかったのです。」


「何で、律儀に答えるんだ。まぁ、14歳だしな。物好きじゃなければ手を出さないか。」

「申し訳ありません。」

 涙目になりながら頭を下げる。


「え!?いや、ごめん。」

 戸惑う。

「あーあー。いたいけな少女を泣かしたー。」


「ロシィちょっと黙ってろ。」

 ペシっとチョップする。


「あー、その、名前は?」

 バツが悪そうに言う。


「いえ、そんな、私には・・・いえ、私達に名前はありません。」

「「「「「は!?」」」」」

 これには全員驚いたようだ。


「どういうことだ?」

「私達には名前すら必要なかったのです。肉壁1や魔法補佐2とかそこの物や抽象的な呼び方で済まされてきましたので。」


「まじかよ。やっぱ、クズだな。・・・それでも、産んでくれた親が名前を付けてはくれたんじゃないのか?」


「・・・いえ、私達は奴隷商で生まれ育ったため、生まれた時に親から売られたそうです。ですので、全く名前もなく、商品管理としてその頃も番号で呼ばれていました。」


 この4人の親は奴隷として売る為に産んだのだ。商品として。


「本当に物扱いをしているんだな。同じ、人間なのに。」

「ちょっと、この世界潰したくなるね。」

「全くだ。同族にそのような仕打ちをするなどありえん。」

 ロシィとシルヴィが物騒なことを言い出し、殺気が漏れだす。その言葉に元奴隷達4人はガクガクブルブルしている。あ、青髪の子が内股にこれは、ひょっとして。


「申し訳ありません、申し訳ありません。」

「ロシィとシルヴィのせいだぞ。」

 何度も青髪の子が謝り、床を濡らす。


「わかる。わかるよ。怖かったんだよね。大丈夫、私も仲間だからね。」

 リリィが寄り添い慰めているが、それは自爆発言ではなかろうか。他の耐えた3人が微妙な反応をしている。青髪の子をシャワー室へと連れて行くリリィ。

濡れた床を放置するわけにもいかないので、床をクリエイトの素材にして再びクリエイトし直すと、あら不思議。その部分だけまるで新品に早変わり。


「ほう。そういう使い方もあるのか。」

 シルヴィが感心している。その他の者たちは唖然としている。


「えー、さっきの感じだとお前達3人も名前はないってことだよな?」


「あ、はい。そうです。」

 今度は、赤髪の少年が答える。


「ねぇねぇ、名前を付けて上げたらどうかな。」

「あ、それは、いいな。」

 ロシィの提案にエリィが賛同する。


「そうだな。名前を付けよう。」


「・・・私達なんかが名乗っても良いのでしょうか。」

「言いに決まっているだろ?同じ人間なんだから。それに名前がないと呼ぶ時にも不便だしさ。何か、希望の名前あるか?」


 あれ?何故か、3人とも急に泣きだした。


「に、人間として扱って貰えるなんて、生まれてきて初めてで、しかも名前まで。」

「人間として扱ってもらえるのがこんなにも嬉しいなんて。」

「うん、うん。」


 3人が涙ながらに言う。


「お、おう。そうか。4人はずっと一緒に暮らしてきたのか?」


「は、はい。アオイズマに4人一緒に購入されたと聞いています。」

「なら、4人は家族も当然だよな。ラストネームは皆同じ名前にしようと思うんだが、どうだ?」


 3人は皆、顔を見合わせ満面の笑みで頭を下げた。

「是非!お願いします!」


「実は、名前を決めるって所からすでに、1つ閃いているんだ。」

「それは?」

 興味津々のようだ。ロシィも。


「“アース”というのはどうだ?俺の故郷の星、地球から取っているんだ。これも何かの縁だし、悪い奴等とも思わないから君達に使ってもらいたいと思うんだが。」

「・・・アース良いですね!嬉しいです!な?」

「はい!」

「うん!」


 喜んでもらえたようだ。


「あとは、それぞれのファーストネームなんだが。」


「ドキドキ。」

 1人が声に出してドキドキして楽しみにしているようだ。他の2人も顔に出ている。先ほどまで縮こまっていたのが嘘のようだ。それだけ嬉しいということだろう。


「っていうか、俺が全員決めるの!?」

 普通にそんな流れになっているのに気付き聞いてみた。


「もちろん。」

「ん?付けないのか?」

「うむ。」

「「「お願いします!」」」


「お、おう。」

 俺が付けるのが当然と思われていたみたいだ。


「嫌だったらちゃんと言えよ。」


「そんな!?ユウト様の付ける名前ならなんでも構いません!」

 赤髪の少年が言うとうんうんと他の2人も頷く。そんな様子に夢叶は頭を掻き考える。


「・・・そうか。なら、お前から順に、アホ、バカ、ウンコな。」

 指を指してそれぞれ言う。


「「「「「「「な!?」」」」」」」

 全員が驚く。


「そ、それは!?・・・いえ、あ、ありがとうございます。」


「ユウ!どういうつもりだ!?」

 エリィが詰め寄り、ロシィがソーダソーダと手を上げて抗議してくる。シルヴィは、怖い顔で睨んできている。


「ごめんね。お待たせ。ってどうしたの!?」

 リリィが部屋に戻って来てその様子に驚く。青髪の子はひたすら頭を下げ謝っている。


「聞いてよリリィ!かくかくしかじか。」

 かいつまんで名前の話をする。


「ちょっと!どういうことなの!?」

 当然の如く詰め寄ってくるリリィの顔をグイっと押し戻す。


「だって、なんでも良いって言ったのはお前達だろ?お前達の望み通り俺が決めたんだが、嫌なのか?あ、あと君は、モラシな。」

 悪びれも無い様子で青髪の少女にも名前を言う。


「そ、そんな、ユウト様が良いと御付けになられたのでしたら喜んでお受けいたします。」

 その表情は、先ほどの嬉しさの涙ではなく悲しさの涙が目に溜まり辛い様子だ。


「申し訳ありません!申し訳ありません!せっかく、奴隷から解放していただけてそれだけでもありがたいのですが、申し訳ありません!名前まで付けていただけるなんて嬉しくてしょうがないのですが、申し訳ありません。申し訳ありません。」


 早口でいろいろと青髪の子が言っているが謝ってばかりで何を言いたいのかわからない。

「落ち着け、何が言いたいんだ?」


「えと、その、あの!確かに私達に名前を付けるほどの価値なんてないのかもしれませんが、そのような名前は、あんまりだと思うのです!ちゃんとした名前が欲しいです!申し訳ありません!申し訳ありません!」

 体を震わせながら頭を下げる青髪の少女。彼女も含め、4人は奴隷として育てられ、逆らえば様々な罰を与えられていたのだろう。だから、断ったりすれば何かしらの罰を与えられる恐怖から逆らうことができないのだ。


「そうか、嫌か・・・。」

 ジっと睨みつけるように青髪の少女を見る。その間もすいませんと謝り続けている。

「ユウ!いい加減に!」

 痺れを切らしたリリィが夢叶の肩に手を触れようとした時。


「アクシアっていうのはどうだ?」

 笑顔でちゃんとした名前を言う。


「え?」

 雰囲気の変わりように驚く青髪の少女。


「良い名前だと思ったんだが・・・駄目か?」

 うーむと腕を組み考えなおし始める。


「いえ!いえ・・・と、とても嬉しいです。申し訳ございません、申し訳ございません。」

 口元に手を多い、膝を着き、涙を流し嗚咽するアクシア。


「そうか、良かった。」

 ベッドから立ち上がり、アクシアに近づき軽く頭をポンポンとする。

「宜しくな、アクシア。」

 アクシアが微笑む夢叶の顔を見ると声を出して泣きだした。


「あーもー。ユウ、泣かしちゃダメでしょー。」

 リリィが笑顔でヨシヨシとアクシアの背中を撫でる。



「えー、じゃぁ、残りは何だっけ?ボケ、バカ、カスだっけ?それで良いよな?」

 アクシアが落ち着きだしたので、話の続きをした。


「え、いや、でも。」

「ど、どうして、私達にはそんな名前なんですか!?」

「1人だけ贔屓は良くないと思います。」


「ん?別に贔屓はなんてしてないが?ボケ、バカ、カスで良いんだろ?」

 再び問う。


「・・・もう、いいです!解放していただいたことには感謝していますが、このような扱いされるとは思いもしませんでした。これでは、アオイズマと同じです!私は、ギルドでなんとか働いて生活してみせます。ありがとうございました!」


 有無を言わさぬ感じで腰近くまである茶髪の後ろで三つ編をした剣士は部屋を出て行こうとする。


「待て!仮にギルドで収入を得ることができたとしても、お前は今日の決闘で顔もあの場所にいた奴らに知れ渡っている。この世界のギルドは、簡単に奴隷だった奴を信用して仕事を紹介してくれるのか?それに、今は一銭も金がないんだろ?もう、日は落ちかけてきている。出かけるのにもかなりのリスクがある。野宿しようとしても、奴隷とわかっていれば、その扱いは簡単に想像できる。それでも、お前はこの部屋から出て行くのか?」


「御心配、ありがとうございます。1人でもなんとかしてみせます。先の見えた未来よりも、良い未来の可能性に私は手を伸ばしますので!さようなら!」

 バンっとドアを閉め出て行ってしまった。

 思い込んだら一直線なタイプだな。俺の求めていたことを飛び越しちゃったか。


「あー。まぁ、いいか・・・」

「おい!ユウ、放っておいていいのか?」

「たぶん?それよりも、残りのボケ?カス?はそれで良いのか?」


「え、あ、その、はい。」

「ユウト様がそう仰るなら・・・。」


「はあぁ。お前らなぁ。」

 ベッドに腰掛け直し、大きな溜息をつく。


「な、なんでしょうか?何か気に触るようなことでも言いましたでしょうか?」

 ビクビクしながら質問する。


「まぁ、生まれた時から染み込んでるだろうから、いきなりは無理か。」

 しょうがないと言うように呟く。


「あー、まぁその悪かった。ボケとかカスは冗談だ。」


「そ、そうですか。」

「よかった。」

 若干涙を浮かべ、ほっと胸を撫で下ろす。


「でもな、俺、最初に言ったよな?嫌だったらちゃんと言えって。」


「あ、なるほど。」

 リリィが察したようだ。最近、リリィが良く俺の気持ちをわかってくれるようになった気がする。


 まだ頭に?マークが付いている2人に説明する。


「簡単に言うとだな。お前達に、ちゃんと自分の意思を言えるようになってほしかったんだ。会話すればするほどお前達は、はい、ばっかりだ。おそらく、アオイズマが聞いている間違った情報とかぐらいしか訂正の言葉を言わなかったんじゃないのか?自分から意見も最悪一回も言ってなかったんじゃないのか?」


「そ、それは・・・。」

 図星のようだ。


「だから、最初の一歩として、わかりやすい、アホみたいな名前を付けようとしたら嫌がって違うのにしてくれって言ってくることを期待してたんだ。」


「最初、アホとか付けてたけどね。クスクス。」

「ロシィ、水差さないの。」

 ベシっとチョップする。


「それをめちゃめちゃ謝りながらだったが、アクシアは拒否しただろ?だから、ちゃんと考えた名前を言ったんだ。自分の意思をちゃんと言えたからな。まぁ、正直、喜んでくれてほっとしてるけどな。」


 皆、「そうだったんだ・・・」という反応している。おい、リリィはわかったんじゃなかったのか。


「だから、お前達に比べたら、出て行った奴の方がしっかりと人間しているぞ。自分の意思で出て行ったんだから。」


2人は俯き、黙ってしまう。


「それで、2人は、ボケ、カスだっけ?その名前で今後もやっていくのか?」

 真っ直ぐと2人の目を見る。


「あ、あの!できれば、に、人間らしい名前に変えていただけないでしょうか!」

 赤髪の少年が言う。


人間らしいって・・・思わず笑いそうになるが堪える。


「そっちは?」

 もう一人の、金髪の少年に問う。


「私も、しっかりとした名前が欲しいです!」


「「お願いします!」」

 2人はお互いを見て頭を同時に下げた。


「ああ、良い名前を付けてやるさ。お前達の新しい人生の第一歩が始まるんだからな!」

 立ち上がり、微笑んだ。

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