第37話 学校生活オワタ
「さぁ!来たまえ!私に君の魔法が届くかな!?」
ハーッハッハッハと手を広げ、クィクィっとどっかの格闘家のように手招きする。
「燃えろ、悶え死ね!」
手を前に翳し、詠唱?する。
「クハハハ!なんだ!?その詠唱は!」
腹を抱え笑う。会場にも笑いが広がる。
「ファイアボール。」
冷たく言い放つ。
「そんな詠唱でファイアボールが出るわけないだろう?」
体を仰け反り大声で笑う。
ボゥと、赤くどこまでも赤い野球ボールほどの炎の玉が現れる。
「ほぅ、これは、なかなか。魔力値18とは思えない魔法だ。・・・実に残念だ。君を鍛えればそれなりの使い手になれそうだったのだがな。」
無言でファイアボールを放つ。これもボールを投げたほどの早さだ。
「ファイアボールとはこうやるのだよ!」
マドニクスも手を前にだし、直径1メートルほどの大きな炎の玉が放たれる。
「おお!!」
「これが国家魔法使いの魔法か。」
「すばらしい!」
「レベルが違いすぎる。」
「あの少年も愚かだったな。」
会場が国家魔法使いの魔法を見て感動している。
ファイアボール同士がぶつかり、片方が霧散する。
「な!?バカな!?」
当然消えたのはマドニクスのファイアボールの方だ。
「くっ!?」
余裕だったが、自分のファイアボールがまさか負けるとは思いもしなかったのだろう。咄嗟に夢叶のファイアボールを回避する。
「驚いた、今のは、あの小さなファイアボールに炎を圧縮し、威力を向上させたのか。・・・やはりおしい。殺してしまうのは実におしい。君!君も私の物にならないか?」
今度は、夢叶まで奴隷にしようと提案してくる。
「寝言は寝てから言え。」
瞬間、マドニクスの右足首が燃える。
「な!?ぐ!?熱い!」
右足を上げ、慌てふためく。
「ウォーター!」
ザバンと右足首を水が覆い流す。
「な、何をした!?」
痛みで余裕が完全になくなったのだろう、睨みつけてくる。
「あ?そんなこともわからないのか?国家魔法使いっていうのもたいしたことないな。」
「・・・いいだろう。後悔するなよ。ヒール。」
額に青筋を浮かべ、足首を治し、詠唱を開始する。何をしたのかなどもはや、関係ない、遊びは終わりだと言わんばかりだ。
「聖なる光よ、刃となりて、降り注げ!ホーリー・ランサー!」
5本の光の槍が夢叶めがけて降り注ぐ。
「うーん。マジェストってやっぱ、自称最強じゃなかったんだね。もっといっぱい出てたよ。」
壁際でロシィが感想を言うと。マルクスがそれに反応し、詰め寄る。
「おい、今のはどういう意味だ?まるで、マジェスト様と戦ったことがあるような言い方だな。」
「え?この前、倒したけど?」
「バカな!?あの方が負けるはずが、マジェスト様は完全に規格外の強さだぞ。そんな言葉を信じるとでも思うのか!」
ロシィの言葉を否定してくる。
「いや、別に、私、あんた達に興味なんてこれっぽちもないからどうでもいいんだけど?」
首を傾げる。
「ま、まさかな。それでも倒したのはお前だろう?闇属性で見た所かなりの実力を持っているようだ。」
「ううん、私だったらちょっとヤバかったかも。だからユウがぼこったよ。だって、私対策しすぎだよ、あのおじさん。」
「・・・私対策?」
ハリー家でのみで秘匿されていることがある。それはマジェスト・ハリーが異世界で生きており、そこで仲間を殺したブラックドラゴンを倒すためにいろいろな事をしていたということだ。
マジェストは、度々、こっちの世界に返って来ては、巻物やアーティファクトを仕入をしている。ステータスプレートによる肉体強化に関してもハリー家でのみ秘匿としている。それをこの世界で使用してしまうと、急激に世界のありようが変わってしまうからだ。肉壁だったものが魔法使いが魔法を放つ前に接近でき、潰すことができるようになる。そうすると、今まで自分達が気付いた地位が壊れ、肉壁だった物が優位になり、立場が逆転しかねないからだ。
「お前達はまさか・・・あっちの世界の。」
それに気付いたマルクスは、嫌な予感をしながらどうにか父親、マドニクスに伝えようとマドニクスの方に走り出す。
「あれを躱だと!?」
ホーリー・ランサーが簡単にかわされ動揺するマジェスト。そこに容赦なく先ほどと同じファイアボールを放つ。
「かわせば、何か発動するのだろう?ならば、撃ち落とせばいいだけだ!ウォーターボール!」
先ほどの自身のファイアボールと同じ大きさの水の玉を放つ。
「何故だ!?炎属性は水属性に弱いはず!」
水の玉を簡単に打ち破り、マドニクスのマントに当り、焦がす。
「水は蒸発するということも知らないのか?」
「く、馬鹿にしおっ、ギャー!?」
再び、マドニクスの右足首が燃える。
「クソ!クソ!クソ!国家魔法使いの私がなぜこのような者に!」
再びウォーターとヒールで態勢を立て直し、悪態をつく。
「聖なる光よ、その光を持って、邪悪な敵を滅せよ!ホーリー・シャイン!」
夢叶の周りを眩しいばかりの光の柱が立ち上がり、夢叶を滅する。
ワー!と歓声が起こる。
「ふん。私に巻物を使わせたことは誉めてやろう。」
フン、とローブを靡かせロシィ達の方へと歩き出す。しかし。
「な・・・んだ?」
マドニクスは一瞬何が起こったのかわからなかった。なぜ地面に倒れているのかが。
「どこに、行こうとしてんだ?」
夢叶の声が背後から聞こえる。
「バカな!?あれをまともに受けて生きているはずが!」
夢叶は黒炎を纏い、防いだのだ。マジェストのグングニルよりも遥かに弱いマナ感知の反応によりそれで十分だと判断したからだ。
「くっ、何故、立てない!?」
先ほどから何度も立とうとしているが、立ち上がろうと足に力を入れるたびに倒れてしまう。
「お、親父!足が!?」
マルクスの悲痛の叫びで、マドニクスが自分の足元を見る。
「あ、あああ!?足が!私の足がー!!!」
マドニクスの両方の足首が亡くなっているのだ。ついていた部分は黒く燃えた後になっており、血は完全に止まっている。黒炎で足首が滅されたのだ。
会場のざわめきが悲鳴へと変わる。
「な、なんなんだ!?お前は!?」
「お前に、言う価値はないだろ?」
「私は国家魔法使いだぞ!?」
「だから?」
両手で必死に後ずさるその左手を地面から出した槍で貫き、マドニクスを宙にぶら下がらせる。
「ああー!!」
「親父!そいつはきっと向こうの奴だ!聖なる光よ、刃となりて、降り注げ!ホーリー・ランサー!」
懐から巻物を取り出し、6本の光の槍が夢叶へ襲う。
それを黒い炎の壁が遮り、消し去る。いくら聖属性だろうと、純度が低すぎれば、簡単に分解できる。
「くそ、あれはあの奴隷のやつか!」
チラっとロシィを見るが、そのロシィは腕を組んで見ているだけの様子だ。
「む、向こうのだと・・・?フン、馬鹿な。向こうの奴らは魔法が使えないはずだ。しかし、あの肉壁の動き・・・否定もしきれないか。」
自分で納得しながら、懐から手の平サイズのアーティファクトを取り出し、それを握り壊す。マドニクスに大きな魔力が宿る。
「聖なる光よ、その正義の光で、邪悪なる敵に聖なる裁きの鉄槌を!滅せよ!ホーリー・ジャッジメント!」
先ほどとは比べ物にならない視界を奪うほどの光が夢叶を飲み込む。
「ギャー!!」
マドニクスの右腕が黒炎によって消滅し、悲鳴が響き渡る。
「その程度、マジェストに比べればたいしたこと全くないな。」
「あーー!!!!」
今度は串刺し状態になっていたマドニクスの左手部分を太くさせ、貫かれていた部分を破裂させ、地面に落とす。
会場はその悲惨の光景に、静まり返っている。
「おら、最後に何か言い残すことはあるか?」
ゲシっと両手両足が亡くなり、倒れているマドニクスの横腹を蹴りあげる。
「ぐふ。こ。国家魔法使いである、こ、この私が。こ、のような死に方・・・あるわけが・・・。」
「現実だ。諦めろ。」
再び蹴りあげる。
「お前!何、人を物のように蹴っているんだ!親父から離れろ!」
マルクスが立ちふさがって来た。
「・・・お前が、お前らがそれを言うのか?あいつらを物のように、そして俺の仲間も物のように扱ったお前らが!」
親指でロシィ達と元奴隷達を指差す。
「奴隷と俺らとは違うだろ!」
「何が違う?同じ人だろ?」
マルクスの言葉に怒声で答える。
「あいつらは人であっても1人では何もできない。物として生きて行くしか生きる術を持たない奴らだ。そんなどうしようもない奴らと一緒にするのはおかしいだろう?」
「おかしいのはお前の!お前らの頭だ!」
無茶苦茶言い分に腹を立て、瞬時に近づき全力で顔面を殴り飛ばす。文字通り顔面を。夢叶のステータスで思いっきり顔面を殴ったのだ。ステータスプレートによる強化されていない肉体が平気な訳がない。胴体だけ残ったマルクスが血を噴き出しながら倒れる。
「マ・・・マルクスー!!」
父親であるマジェストが涙を流し叫ぶ。
「次はお前だ、このクズが!」
睨みつけながらマドニクスに近づく。
マドニクスは両手両足がない体でじたばたともがく。股の間が濡れている。
「あー。なんか、まだそんなに経ってないはずだけど、もの凄く懐かしいなー。」
ロシィがしみじみと言う。
「ちょっと!ロシィ!それは忘れて!」
リリィが顔を赤くしながら講義する。
「なるほど。」
と、シルヴィが1人納得している。
「ちょっとシルヴィも何か誤解してない!?」
キャーキャーしている。
「クズの国家魔法使いさん。怨むなら自分の行いを怨むがいい。」
「ギャー!!」
マドニクスを体のしたから黒炎で滅していく。しばらく、悲鳴が響き渡るがすぐに力尽きて、跡形もなく消え去った。
「う、嘘だろ?」
「国家魔法使いが、あっさりと殺されてしまった・・・。」
「もう、この国はお終いだわ!」
会場が悲鳴と混乱が巻き起こる。
「・・・また、やっちまった。」
しゃがんで頭を抱える。怒りに我を忘れてしまうタイプなのだろうか?俺は温厚だと思っていたんだが・・・。
「ドンマイドンマイ。いつもの事だよ!」
「それに、私達の事を思っての事なんだから、私達はユウの味方だよ。」
ロシィが肩に手をポンポンとし、リリィは背中にそっと手を当ててくれる。
「しかし、この世界・・・この国であってほしいのだが、クズの塊だな。全く、人間のこういう所が理解できん。同じ種族なのにも関わらずこのような所業を平気でするとは。」
シルヴィが溜息をつく。
「気になったのだが、あの国家魔法使いとマルクスとか言ったか?マジェストとどうやら度々会っていたみたいだ。ということは、定期的に、マジェストはこちらの世界に来るということじゃないのか?」
エリィが思案する。
「だろうなぁ。マジェストには悪いが、あいつのほとんど結果的に俺らが奪ってしまっているような状態な気がする。」
「仕方がないよ。どちらも向こうが悪いのだし。」
「そうそう、マジェスト自信だって、急に私に攻撃してこなければ私だって何もしなかったんだから自公自得だよ。」
悪い気になっている所をリリィとロシィが慰めてくれる。
騒がしかった会場が、誰もいなくなり静かになった。
「あ、あの!わ、私達は、どどうすれば・・・よろしいのでしょうか?」
元奴隷の1人が恐れながら訪ねてくる。ここで自分達も逃げては殺されるだろうとでも思っていたのだろう。
「あー、どうしよっか・・・。」
困ったなと頭を掻くが、その動作に「ひっ!?」と怯えれられてしまう。
「ちょっと、ユウはあなた達に何もしないよ。あなた達は被害者も当然なんだから。」
リリィが宥めようとするが、それすらもビクッと怯えられてしまう。
「あっれー。ちょっと傷つく。」
「プークスクス。怖がられてやんの。こんな脳筋女怖いよねー。」
ねーと元奴隷達に振り向くが、「ひぃぃ!?」っともの凄い勢いで後ずさった。
「ムカ。」
ロシィが口で言う。
「コラ、怖がらせないの。」
ロシィとリリィの頭をポンポンとする。
「そんなつもりは!?」
「そうだそうだー!」
ブーブーと言う2人に。
「知ってるよ。ありがとな。」
と頬笑みかける。
2人とも仕方がないなもうと言う感じで引き下がる。
「とりあえず、今日は一旦宿に戻ろう。落ち着いて今後の事を考えよう。4人もそれで良いか?」
「良いのですが、私達は、その・・・一銭も持ち合わせていなくて・・・。」
申し訳なさそうに言う。
「あー。まぁ、しょうがないわな。こっちで持つよ。とりあえず、宿に行こう。今さら学校に行っても騒ぎが起こってるだろうし、そもそも俺達の学校生活はもう無理だろうしな。それに、お前たちを放っておくわけにもいかないしな。」
「申し訳ございません。ありがとうございます。」
4人全員頭を下げる。それに対して、いいっていいってと手を振る。
――――――――宿屋 兼 ギルド
宿屋まではまだ騒ぎが届いていないのか、まだいつも通りだ。夢叶の部屋に集まり、夢叶はベッドに腰掛け、肘を膝の上に置き、手を組み顔を埋め、元奴隷4人を見る。
「さて、君達。」
何とも言えない夢叶の空気にビクっとする4人。
「まずは、自己紹介をしてもらおうか。」
「「「「申し訳ございません!」」」」
何故か即答でしかも全力で謝られた。
「あれ?」




