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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第2章 魔法の世界
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第35話 決闘しちゃった。

「決闘だ!その奴隷を掛けて決闘だ!」

「嫌だけど。」


 品がないとか言っていた青髪の青年が立ち上がり叫ぶのに対して即答する。


「凄いな。ユウト。闇や聖属性と相性の良い人間はそんなに多くはないんだぞ。光に至ってもそうだ。位置的に上位属性となっているが、最上位属性にかなり近い属性だ。」


 教師が夢叶を褒めるように言う。持っているのはロシィとリリィなのだが。


「ええい!ユウト・オウセ!貴様に拒否権はない!アオイズマ・ライ・サンドリスと勝負しろ!貴様が勝てば、この我の!奴隷4人を差し出そう。肉壁2人に魔法補佐2人だ。属性も2人は氷と上位属性もいる。悪くはないだろう?」

 

 アオイズマは手を広げ、後ろの奴隷をどうだと言わんばかりだ。しかし、その奴隷達は複雑そうな暗い表情をしている。


「お前達はそれでいいのか?」

「なぜ、我に聞かない!奴隷に聞いても意味がないだろう!」

 アオイズマを無視したような発言にイラついているようだ。


「お前達はそれでいいのか?」

 もう一度、奴隷達の目を真っ直ぐに見て問う。


「・・・ご主人様の言が全てでございます。」

 目を逸らしながら奴隷は辛そうに言う。

「貴様!誰の許しを得て発言している!」

 アオイズマは杖で発言した奴隷の腹部を強く突く。

「申し訳ございません。申し訳ございません。」

膝をつき謝罪を繰り返す。


「おい、止めろ。そいつはもうすぐ俺の所に来るんだ。何してくれてんだお前。」

 怒りを込めて問う。

「貴様・・・貴族とわかってからでも先ほどからのその程度!・・・まあいい。ようやくその2人を渡す気になったみたいだな。」

 態度よりもすでに2人を手に入ると決めつけ笑みを浮かべている。


「頭大丈夫か?誰が、渡すなんて言った。お前がそこの4人を渡すんだ。勘違いするな。」

「な!?貴様、魔力値18の分際で!我に勝てるとでも思っているのか!?」

「ああ。だからさっさと終わらせたいんだが?ルールを言ってくれないか。」

 当然のように応えるとアオイズマが顔を真っ赤にして叫ぶ。

「いいだろう!ルールは簡単だ!己が持つ全ての力を使って相手を倒すだけだ!」


「それだけか。いつだ?」

「今からでどうだ?」

「わかった。」


「おい!お前達、今授業中ってことを忘れていないかー?」

 火花を散らしていると教師が突っ込みを入れてきた。うん、忘れてました。


「申し訳ありません。マルクス先生。しかしですね。」

「気にするな!存分にやれ!」

 ニカっとサムズアップする先生。


「ちょっ。先生!?私達平民が、貴族の方に勝てるはずが!」

「こういう蟠りは、早いうちぶつかり合って解消する方が良いだろ?」

「奴隷までかけあうなんて、ぶつかりすぎですよ!」

「まぁ、本人同士が良いって言ってるんだからいいじゃないか。それに、お前達にはこれが魔法使い同士の戦いをまじかで見る良い機会だぞ。」

「そうかもしれませんが・・・。」

 平民生徒の抗議を軽くかわす教師。


「よし、とりあえずお前ら!決闘場に向かうぞ!」


 決闘場なんてあるのか。


――――――――――――


「準備は良いか!?この、御都合ダメージ処理アーティファクト、通称ダメくんが光ったらそいつは脱落だ。」


 御都合ダメージ処理アーティファクト、通称ダメくん。その名の通り、御都合の良い物だ。装備者の能力に合わせ自動でダメくんがライフポイントを設定し、ライフが0になるとダメくんが光る。それまでのダメージは体のどこにあたろうとダメくんが吸収してくれるというものだ。ただし、光ってから吸収能力がなくなるので注意が必要であるが、オーバーキルや即死には対応している優れ物である。


「ふん、やはり3人だけか。所詮、平民だな。」


 野球ドームほどの大きさの中央近くで対峙しているアオイズマの周りには奴隷4人の他に別クラスの平民と思われる5人が侍っている。

 観客席もあり、過半数を埋めている。うぅぅ。


「私、平民だって。」

「一応、王族なんだけれど。」

 リリィと小声で言い合いクスっと笑い合う。緊張していたが少しましになった。まぁ、リカバーを事あるごとにしまくっているんですけどね!それでもリリィの気遣いは嬉しい。


「貴様ら何がおかしい!準備はできたのか!杖はどうした!?」

 余裕を出していると勘違いしたのか怒声を上げる。


「え?持ってないけど?」


「くっ。あはははは!こいつは傑作だ!杖もなしに決闘だと!?我らを愚弄する気か!?」

「いや、全く。そんなのどうでもいいし。今回はリリィの初陣だ。エリィにしごかれた成果を見せてくれ。」

「初陣だと!?もうよい!完膚なきまでに倒してやる!」


「よーし、もういいなー。始め!」

 マルクス先生の合図でいきなり始まる。


 相手との距離は役100メートといったところか。実は、リリィ。レベルが前の戦いで61になっていたのだ。ワイバーンとか倒しまくったし、ブラックドラゴンも倒したしね。

 そして、こっそりと王族の力で内密にステータスプレートを更新し、スキルを1つ習得している。


「頑張ってくる!」

「気をつけろよ。」

 両腕をグっとし、剣を抜いてゆっくりと様子を見ながら走り出す。それをロシィがバイバーイと手を振る。


「肉壁が走って来るとは、粋がった所で平民は所詮平民か。初級魔法で十分だろう。」


 アオイズマ達の魔法補佐が懐から巻物を取り出し広げる。そこに魔法陣が描かれており、その巻物をアオイズ等の前にしゃがんで掲げる。構図がださい。


「「「燃え盛る炎の玉よ、相手を焼き払え!ファイアボール!!」」」

 

 魔法陣が光、野球ボールより一回り程度大きな炎の玉が3つ放たれる。速度もボールを投げた程度の早さ150キロぐらいだろうか。


「え!?」

「フン。まずは1人だ!」

 リリィが驚きの声を上げたことによりアオイズマ達が確信した。しかし、それは当然違う。リリィが驚きを上げたのはファイアボールの速度の遅さだ。エリィの剣に比べれば遅すぎ、なおかつ距離があるため、あまりの低レベルな魔法に驚きを上げたに過ぎない。


「「「な!?」」」

 今度、驚き気の声を上げたのはアオイズマ達だ。リリィが全てのファイアボールを真っ二つに切り裂いたのだ。そして、そのまま速度を上げながら近づくリリィ。


「魔法を切り裂くなんて!?」

「な、何をしている。中級魔法を使うぞ!」

 別クラスの平民が驚いて止まっているのに対し、声を上げながら支持を出すアオイズマ。中級魔法は普通、貴族で、幼少期から鍛錬していないとまず無理なクラスの魔法である。

 再び魔法補佐が巻物を取り出し掲げる。


「燃え盛る炎の玉よ、相手を串刺す槍へと姿を変え、焼き刺せ!ファイアランス!!」

 ファイアボールの玉が槍へと形を変え飛んでくる。それと同時に、他の魔法使いがファイアボールを再び放つ。

 ファイアランスの速度はファイアボールよりも早い。リリィは剣を縦にし、ファイアランスを受け流すようにして弾く。弾かれたファイアランスは地面へと刺さり霧散する。しかし、ファイアランスはファイアボールより熱量があり、リリィの剣が少し変形して歪んでしまう。だが、まだ大きな影響があるほどではなく、そのまま遅れて飛んできたファイアボールを切り裂く。

 そのまま、アオイズマの懐へ踏み込み、アオイズマを切り裂こうとする。


「肉壁!!」


 キン!!と剣によって阻まれる。一旦、一歩後退して再び間合いを詰め、肉壁に斬りかかる。数合の打ち合いにより、肉壁が地面に倒れダメくんが光る。


「ちっ!役立たずが!」

 肉壁と打ち合っている間に距離を取られ、再びファイアボールが3発放たれた。それを2発かわして、1発を切り裂く。


「もう!面倒くさい!」

 いちいち距離を取られてちまちまと攻撃されるのが非常に厄介となってきたというか面倒になってきたみたいだ。


「まさか、肉壁ごときがここまでやるとはな!いいだろう。見せてやるこれが貴族たる我の最高の魔法だ!」


 自らの懐から巻物を取り出し、補佐に持たせる。


「なぁ、補佐って、巻物の持ち役なのか?」

「さぁ?てっきり、詠唱する時間を稼いだりするのが役目だと思ったんだけど。」

「俺も。時間稼ぎは剣士がする感じっぽいよな。っていうか、捨て駒にしてやがったよなあいつ。」

 ダメくんにより身体にダメージはないが衝撃は来る。痛みが完全にゼロになるわけではない。今は決闘だから死人は事故でも起きない限り大丈夫だが、実践なら完全に死んでいる。

 ロシィと話しているとアオイズマの愚行にイライラしてきた。


「我が名、アオイズマ・ライ・サンドリスによって発動せよ。」


 アオイズマが詠唱し始める頃にはすでに、リリィが懐に再び入り、アオイズマに斬りかかろうとする。アオイズマの残りの1人である肉壁の剣士が前に出て剣を受け止めようとするが、リリィの攻撃はフェイントで、斜め前方に大きく跳び、平民である魔法使いを切り裂く。不意を突かれた平民魔法使いは一気に態勢を崩し、そのまま魔法使いをさらに2人倒す。残り、平民魔法使い2人と平民の奴隷3人、アオイズマにその奴隷3人。


「くっ。おい!貴様の肉壁に奴を捕まえさせろ!」

 アオイズマの指示に平民がそれぞれその肉壁2人に指示する。残りの1人肉壁はすでに主を失っておりどうしたら良いのかわからず座り込んでいる。


「くっ。」

 リリィが2人の肉壁に挟まれ、必死に抵抗する。魔法使いと違い、肉壁は剣士。近接戦闘では、簡単にやられてくれない。まぁ、リリィの動きが悪いだけなのだが。本来ならリリィのレベル的にあの程度に遅れを取るわけがない。ただ、リリィの実戦が今回が初めてでなおかつ今までエリィとの1対1でしか鍛錬してこなかった。1対多という戦いは今回が初めてで戸惑ってしまっているからである。


「あ、これちょっとやばいね。」

 ロシィが動き出す。

「頼む。」


「雷の如き稲妻よ、火花を散らし、相手を焼き払へ!サンダースパーク!!」


 巻物に描かれた魔法陣が光を放ち、電撃がバチバチと前方後半に稲妻が何本も走る。その稲妻は自分の味方であるはずの肉壁2人とリリィを飲み込み、砂塵に覆われ姿が見えなくなる。


「フン。平民が!我に雷属性の魔法を使わせたことだけは誉めてやろう。」

 アオイズマはかなりの魔力を使ったのだろう、フーと息を吐く。


 砂塵が消えて行き、姿が見える。


「バカな!?」


 サンダースパークの範囲にいた者達は誰一人として倒れていなかった。


「ちょっと、やり過ぎだと思うんだよね。リリィが傷つくのは当然嫌なんだけどさー。」

「ロシィ!」

 リリィが喜びの笑顔をロシィに向ける。それを、頬を染めながら顔を逸らす。

「味方にまで当てようとするとか人として最低だと思うんだよねー。」

 照れているのか口を尖らせながら言う。


「そんなことより!我のサンダースパークをどうやって防いだ!?」

「そんなこと?お前は本当にクズだな。」

 夢叶が怒声で言いながらアオイズマに近づいて行く。チラっとロシィを見るとサムズアップしていた。


「貴様!貴族に向かってクズだと!?死んでも知らんぞ!」

 後ろに飛び退き、再び巻物を取りだす。それをまた補佐が掲げる。

「雷の如き稲妻よ、捩じれ纏まれ集束し、相手を焼き尽くせ!サンダーボルト!!」


 サンダースパークが最高の魔法じゃなかったのかよ。そもそも、ダメくんで死ぬことはないんだが。


 サンダースパークが広範囲攻撃ならサンダーボルトはそれを一点にまとめて火力を上げた魔法だ。速度もファイアランスやサンダースパークより圧倒的に早い。


 が、躱迄もない。サンダーボルトは夢叶に当たる前に消滅した。


「な、ななな、何なんだそれは!?」


 サンダーボルトをいとも簡単に消滅させたもの、そう黒炎だ。ロシィが夢叶の前に黒炎の薄い柱作ったのだ。

 黒炎が消え、うろたえるアオイズマのすぐ近くまで寄る。


「な、なんだ?なんとか言ったらどうだ!」

 動揺して、近づかれていることに何も思わないのだろうか。


「ユウ、怒ってるね。」

「怒っているね。」

 ロシィとリリィが頷き合う。


「この・・・クズがー!!」


 顔面を思いっきり殴る。

 アオイズマの体が決闘場の壁までぶっ飛び、叩きつけられる。会場がシーンと静寂につつまれる。


「ひ、ひぃ!!」

 平民の魔法使いが、尻もちをついて涙目で後ずさりしようとするが、あまりの動揺により、足を滑らせ、後退できていない。


「まだ、やるか?」

 夢叶の言葉に首を全力で横に振る。


「しょ、勝者!ユウト・オウセ!」

 マルクス先生の宣言により、観客席から大歓声が巻き起こる。


 あ、怒りで観客いるの忘れてた・・・リカバー。

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