第29話 決着
「用は済んだのか?」
「済んだというか、これからだな。」
エリィの問いかけにリリィの頭をポンとしながら答える。
「え・・・?嫌な予感しかしないんだけど・・・」
「大丈夫、もうじき慣れる頃だろ?」
ゲッソリとした顔をするリリィ。
「せめて、飛ぶ所がわかっていればもっとマシなんだと思うんだけど。」
「それは、俺の思考を呼んでくれ。」
サムズアップ。
「いまいちよくわからないが、リリィをあまり虐めないでやってくれないか?」
エリィが心配そうにしている。
「スパルタでレベル上げしてるだけだから大丈夫だ。」
「助けてエリィー。」
泣きながらエリィに抱きつくリリィ。
「お前の為でもあるんだぞ。レベルが低いままだと戦えないし、逃げることもできないだろ?今なら、すぐにレベルが上がるフィーバータイムだ。ポチっとするだけだぞ。ほら、しっかり持つ。」
ポチっとする槍をリリィにしっかりと握らせる。
「エリ・・・」
フッとリリィが言っている途中に夢叶とともに姿が消える。
「リリィーー!!」
虚空の空へと手を伸ばすエリィ。
「なんだこれ?」
ロシィがつっこむ。
「はい、ポチっと。次、ほら。ほら。」
「うぅ。うぇ。うぷ。」
ポチ、ポチッ、ポチッ。
ランクSとランクSSの魔物を次々に脳天直撃雷撃をお見舞いしていく。常に、レベルが上がり、リリィの体が光り続けている。一度にレベルが上がらなければ、痛みは生じはしない、急激な変化になれるのに時間がかかるぐらいである。生活に支障がでるかもしれないが、慣れだ、慣れ。
もともとシルヴィのお陰で少なかった魔物が全て姿を消した。
「ユウ殿。何やら面白いことをしているようだな。リリィを可愛がってやればいいのか?」
優雅に現れ、悪い笑みを浮かべるシルヴィ。それを全力で首を振るリリィ。「うぷ」多少は慣れたようだが、駄目っぽい。ダバー。
「悪い悪い。今がお手頃だと思ってさ。」
リリィの背中をさすりながら誤る夢叶。
「御嫁に行けない・・・グスン。」
よよよよ~と泣く。
「それは、さっき言ったろ?」
夢叶のその言葉にパーと明るくなり顔を赤くする。
「ユウ殿。ちょっと、詳しく聞いて良いか?」
「良くない。」
何故か興味津々なシルヴィに即答する。むーとしているが、言えば冷やかされるに決まっている。
「皆の所に戻るぞ。ゲート。」
もうテレポートはかわいそうなのでエリィのそばに出るよう、ゲートを開ける。シルヴィもいるしね。
「大丈夫だったか?」
リリィをエリィが心配して聞いてくる。
「御嫁には行けないけど保険はできた!」
良く分からないことを言っている。
「ロシィ!こっちにそいつ連れて来てくれ。」
「あーい。」
軽く返事をし、マジェストの服を掴んでブラブラさせながら飛んできた。
オオオオオオオオーー!!
「なんだ?」
空気を振動させるかのような大きな雄叫びが響き渡る。
「くっくっく。ちょうど良い。タイミングだ。あいた!」
マジェストが不敵に笑うので、イラっとしたロシィが地面に落した。
「まだ、何か企んでいるのか?」
「いたぞ!あそこだ!」
「本当に殿下がいたぞ!」
「エイリ親衛隊隊長もだ!」
「あ、あれは!ビギワンス王国、兵団達!?2番隊、3番隊、4、5、7、10番隊まで!?」
エリィが驚きの声を上げる。
「なぜ、彼らがこのようなところに・・・」
「おのれ、殿下とエイリ隊長を操る魔物め!成敗してくれる!!行くぞー!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオーー!!!
5000人はいるであろう兵団が押し迫ってくる。
「これが、私の本当の切り札だ。貴様らに同胞のビギワンス王国の兵達を殺せるか?」
マジェストが勝ち誇った顔をしている。
「はぁ、お前、馬鹿だろ?」
「あ?」
呆れた態度をとる夢叶にマジェストは不快な反応をする。
「忘れたか、俺は魔法使いだ。この世界の人間がいくら押し迫ろうと関係ないんだよ。」
その言葉に少し動揺をしだすマジェスト。
「は!?貴様らの同胞だぞ!?味方を殺すと言うのか!?」
「勘違いしているようだが、俺の同胞、仲間はこいつらだけだ。赤の他人なぞどうでもいい。」
「あの、ユウ・・・できれば、殺さないでいただきたいのですが。ユウには違っても私とエリィを慕ってくれる者達を簡単に死んでほしくはないの。」
リリィが上目づかいで頼んでくる。
「ば、馬鹿な・・・。」
リリィの言葉で意味がないと察したマジェストは動揺しながらも必死に何か練ろうとしているようだ。
「ったく。タイダルウェーブ。」
津波が兵団を飲み込んでいく。津波が収まり、ほとんどの兵は地面に倒れた。
「な、何だ!?今のは・・・」
「水を操ったのか・・・?」
「あれほどの力を持った魔物が知性まで持っているとは・・・こいつは、ここで倒さなければ今後どれほどの犠牲が出るか・・・。」
「なるほどなー。やっぱり、俺が魔物でエリィとリリィを操っていることになっているんだな。」
100人ほど立ち上がり、決死の覚悟の様子だ。
「皆さん、私は操られてなどいません!話を聞いてください!」
リリィが声を張り上げる。
「これは・・・」
「ああ。」
「ギルドの情報通りだ。」
やな予感。
「黒い奴が元凶だ!」
「殺せば、元に戻るぞ!」
「やっぱり・・・」
「なぜ、私の言葉を信じてくれないのですか!?」
「無駄だ、リリィ。」
悲しい声で叫ぶのを遮るように言う夢叶。
「てめぇ、ギルドにまで手を回してやがったな・・・」
「それは、ありえない!ギルドは公平でどこの国にも属さないし、誰かを特別待遇することもないはず!」
「そう、だが例外はある。」
「例外?」
「こいつがギルドを仕切っていたらとしたら?」
「「え!?」」
「へー。」
「ほぅ。」
驚くエリィとリリィ。特にどうでもよさそうなロシィ。関心するシルヴィ。目を逸らし、押し黙るマジェスト。その反応で認めているも当然だ。
「そもそも、魔物という存在がどういうものか知っているか?」
「え?野生の動物が突然変異して増殖していったと伝え聞いているけど・・・。」
「その変異っていうのは何が原因なんだ?」
魔物について離しながら、もう一度タイダルウェーブを放つ。兵士たちがあっぷあっぷして溺れないように必死だ。
「そ、それは・・・。」
「知らなくて当然だろうな。伝えて来なかったんだろうからな。」
ジロっとマジェストを見る。
「こいつが、魔物を作り出しているからだ。生成方法などは当然秘匿だし、この世界には魔法というものがない。ならば、唯一自分だけ魔法が使える利点を失わずに適当に理由を丁稚上げた。大方、世界でも乗っ取ろうと計画していた・・・違うか?」
「でも、それだとこの男は何百年も生きているということになるのでは?」
エリィがもっともな質問をする。
「ああ、おそらく、ステータスプレートの応用だろう。・・・いや、ステータスプレートが応用か。」
ステータスプレートは、魔物を倒すことにより、ステータスプレートにマナを溜め、一定値が溜まると肉体を変化させる機能が付いている。細胞そのものを変化させることにより、常人ではありえない身体能力を獲得することができていたのだ。そういう効果を細胞を衰えない、または新しくするといったことに利用することにより、老化を防ぎ、寿命を延ばして力を蓄えながら生きていたのだろう。
そもそも、魔物の核、それこそが魔物を作るのに必要な素材である。倒された魔物の核を冒険者に改宗させるためにギルドを作り、倒された魔物の核を回収し、再び魔物を作り出していたのだろうという夢叶の仮説を説明する。タイダルウェーブ(弱)。
「くっくっく。良い推理だ。だが、違うな。私は、世界など、どうでもいいのだよ。」
憎しみを込めてロシィを睨みながら言う。
「そもそも、世界を取ろうとしている人間が、何故わざわざギルドを作り、ステータスプレートまで支給して冒険者を育てる必要がある?」
「ああ、そこだけがどうもわからなくてな。もう、世界を獲るでいいやということにした。」
諦め顔でいう夢叶に、イラつきを抑えながらマジェストは話を続ける。
「もう、500年ほど前だろうか、この世界に来た時に、そこの憎きブラックドラゴンに我が同胞を、私以外葬り去られたのだ。」
「あー。なんかそんな気はしてた。」
「んー?ひょっとして、あれかなぁ~。空をぶらりと飛んでたら急になんか、ペチペチとなんかやたらと攻撃してきたから、弓でもない珍しい攻撃だったからペチペチされながら見てたんだけど、しつこいから薙ぎ払っちゃった記憶は今蘇って来た。今、思えば魔法だった!」
テヘ☆
「なー、ドラゴンに先にちょっかい出したお前らが悪いんじゃね?」
「う、うるさい!!とにかくその時いた100人もの同胞が一瞬で消されてしまったのだぞ!それからずっと、こいつを殺すことだけを考えて生きてきたんだ!」
指を指して叫ぶ。唾を飛ばすなよ。
・・・おや、いつのまにか、誰も兵団の誰一人も立っていない。さすがに、何回も溺れかけては体力が一気に持っていかれてしまい、戦うほどの体力が残されていないのだろう。
「ともかく、その後、細胞の変化を利用しながら、ステータスプレートの作成に成功し、自分で使いレベル100までしてもあっさりとやられ、100以上は簡単には上がれないから、100以上は急激に上げると、強さと引き換えに人間の形を保てない変化を起こすから地道に少しずつ上げるしかないのだ。ならばその間に戦力を増強しようと考えたのがステータスプレートの配布による人間の戦力アップだ。魔物を作り出し、魔力をステータスプレートに溜めることにより肉体の変化を起こせるようにとしたのだ。」
つまり、一言で言うとロシィへの復讐、ただそれだけだ。しかし、規模は馬鹿でかい。この世界を巻き込んでいる。
500年も前から魔物を作り、この世界の人間のステータスを上げ、魔物がいて、ギルド、冒険者があって当たり前という環境になっている。
しかし、マジェスト曰く、仮想ロシィ。“魔物”ブラックドラゴンを倒せる者が長い年月を経ても現れることはなかった。
あー。だからロシィは純正って言っていたんだな。
そして当然ながら、自分でも戦力を強化し、ロシィの為の魔法を作り出しもしたが、ロシィには届かず、切り札であるグングニルも夢叶に止められてしまった。マジェストからすれば、この世界で魔法が使える者が現れるとは完全に想定外であった。おそらく、ロシィ1人だけでは、破れていただろう。夢叶にシルヴィ、エリィがいてこそ問題なく乗り越えられたのだ。
「さぁ、もはや、どうでもよいわ!私の宿願は達成されることはもはやないのだろう。さっさと殺すがいい!」
やけくそに言うマジェスト。
「いや、あんたにはこれからも生き続けてもらう。」
「ほう、命を狙った私を見逃すと?」
「ああ、この世界はすでにあんたの魔物が世界の一部として成り立っている。いきなり、それが無くなってしまえば、世界や、国との間のバランスが崩壊しかねない。それならば、あんたには今まで通り魔物を、ギルドを運営してもらった方が良い。」
確かにとリリィとエリィが考えている。
「あと、魔物を作る方法を教えてくれ。」
ギランとマジェストを見る。そもそも、これが目的でここまで来たのだ。聞かない理由がない。
「・・・条件がある。」
少し考え、そう言った。
「貴様のその圧倒的な魔力はいったいなんだ?無詠唱に魔法陣もなしで一体どうやって私のグングニルを防ぐほどの魔法を放つことができたのだ?グングニルは10年以上も魔力を溜めていたものを使用したのだぞ。」
「いや、普通に、マナ操作で自然のマナを使っただけだが?」
「マナ操作・・・だと!?」
マジェストは驚愕する。
「し、信じられん。貴様、それがどういうことか理解しているのか?」
「ん?、魔法使うのにマナは必要だろ?」
何をそんなに驚いているのか夢叶にはさっぱりだった。
「マナは確かに使う。しかし、それは自分の魔力を使いマナに干渉して初めて成立するのだ。そもそもマナとは全てと言っていい、力の源だぞ。それを直接操ることができるなど、神にでもなったつもりか!?」
「まじで!?」
実は、神の領域に踏み込んでいたらしい。




