第2話 冒険者になる為の試験開始!
「ガハハハハッ!少年。いや、お子様。そんなので大丈夫か?んん??」
大きな笑い声を上げながら近寄って顔を覗いてくる、坊主頭のおっさん。近い近い。と離れる。チェーンメイルだろうか、それに、肩から地面に付きそうな大剣を背負っている。2メートルは身長ありそうだ。
ついでに、俺は168センチで小柄だ。
「すいません、一般冒険者のステータスってどれくらいなんですか?」
おっさんをスルーする。
「そうですね、なりたてなら、全員レベル1から始まって、だいたい体力以外の全ステータスは15はありますね。子供はだいたい、・・・オウセさんぐらいですね。」
少し、気まずそうに教えてくれる。外野が馬鹿にしたように笑っている。それよりも初めて、少年以外で呼ばれてちょっと嬉しい。
「少年。いや、お子様はさっさと帰った方が身のためだぞ。ガハハ」
ほんと、少年って言葉好きだな。だが、それもお子様になるようだが。
「ついでに、おじさんのステータスはどうなってるんですか?」
こういうおっさんは苦手だが、なんとか平静を装って問う。
「いいだろう、見せてやろう。俺様は、ランクBの冒険者だ。ほれ。」
ドーンと顔面に付きだしてくる。どれどれ。
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名前 ハーゲン・オジサン
職業 冒険者 ランクB
レベル 24
体力 620
力 72
防御力 70
素早さ 30
次のレベルまで 10850
――――――――――――――――――――
・・・禿げのおじさんだった。
技能とかスキルといった類のものは出ないらしい。そもそも、スキルとかというのは存在するのだろうか。
「どうだ!」
どや顔してくるおっさん。いや禿げのオジサン。
「どうと言われても、初めてなのでわかりません。」
事実をそのまま言った。
「そりゃそうか、ガハハハ。」
豪快に笑う、禿げのおじさん。なぜか憎めない笑い方だ。
「そういえば、ここに来る前にドラゴンがどうのって軍?が大勢出て行ったみたいだけど、冒険者はドラゴン退治に行かなくてもいいんですか?」
場の空気が変わったような気がした。
「ガハハハ。ドラゴンはSランクの冒険者でようやくまともに戦えるような相手だ。軍の野郎共は、仕事で強制的に連れて行かれるが、強くても、ランクで言えば、Bランクがいいとこだ。それを数でなんとかカバーして討伐するのさ。何人犠牲が出ようともな。俺ら冒険者は大金詰まれても死ぬとわかっているようなところにはわざわざ行かないのさ。そりゃあ、ここまで入って来るようならそりゃ戦うがな。わざわざ死ぬために行くなんて御免こうむるわけだ。お子様。ガハハハ」
禿げのオジサンの笑い声で、場の嫌な空気が少しマシになった。
「まぁ、本気で冒険者を目指すなら必死で頑張れよ。でないと、速攻でおっちんじまうからな。ガハハハ。」
背中を向け、手をひらひらと振り去っていく禿げのオジサン。思ったより、絡んでこなかった。だいたい、こういう時って面倒事になると思うんだけどな。
と、思ったけど気のせいだったようだ。
「おいおい、これじゃあ、俺達もこんなのと同じ新人って言われるんじゃないのかだぜ?」
「そうそう、同じ、レベル1でも俺らは全員全ステータスを20越えているんだぜ。」
「そうとも、俺らだったらいずれドラゴンを倒すことだってできる英雄と言われているんだぜ。」
気分が悪くなった。まるで、昔のあいつらを見ているようだった。
「あれが、噂の3人組か。」
しかも、有名なのか、おおーとどよめきが起きる。
「くくく、雑魚は未来の英雄様に献上の一つでもしていきな。」
ドカっと足払いをされ、尻もちをついてしまった。チャリリンと残りの手持ちの全て、銀貨1枚、銅貨4枚が落ちてしまう。
「っつ」
思わず、睨みつけてしまう。
睨みつける視界の隅で、黒髪の少女が指を指して笑っている。く、めっちゃ恥ずかしい。リカバーで落ち着く。
「ぁぁ!?なんか文句あるのか?少年。」
思わず、吹きかけたじゃないか。せっかく落ち付けたというのに。
「しけているんだぜ。少年。まあ、いいんだぜ。こいつは選別だ、貰って行くぜ。」
笑うのをこらえていると、全財産を持って行こうとする3人組。
「それは、全財産!返せ!」
慌てて声を上げる。
「あ!?知らないんだぜ!」
取り返そうとすると簡単に蹴飛ばされてしまった。
「お前が弱いのが悪いんだぜ!クククッ」
3人組はそのまま出て行った。
くそ、これがステータスほぼ3倍という決定的な差か。赤くもないのに。周りを見てみると皆見て見ぬ振りだ。
「大丈夫ですか?」
受付の人が心配そうに駆けつけてくれる。
「はい、まぁ。」
虐められていた時の記憶が、蘇った。動揺する気持ちを状態異常回復定番のリカーバーで治す。今回は、違う、ここは地球じゃない。ステータスプレートもある。レベルも次のレベルまでという項目があるからおそらく経験値制だ。モンスターを倒せば、きっと自然と強くなれるはずだ。そうすればいずれ、どうとでもできる。
「申し訳ございません。あの人達は、伯爵様のご子息でして、下手に手を出すと何をされるかわからないのです。」
今度は権力も持っているのか。そして、通常の冒険者より高いステータス。修行もしたのだろうが、生まれ持っての才能も十分あるだろう。なんと鬱陶しい。
「あと、申し訳上げにくいのですが、あと30分で、試験が開始されますが、参加なさいますか?」
「もちろん。依頼を受けてお金を稼がないといけませんから。1文無しになったので。」
笑顔で返す。
「わ、わかりました。場所は、街の正門です。御武運を。」
カランカランと、ギルドを出る時に中をチラっと見たら、禿げのオジサンがガッツポーズをしてくれた。
禿げのオジサン。普通に良い人だと思った。
――――――――
正門に到着する。
そこには20人ほどの新人冒険者がいる。少年少女がほとんどでパーティを組んでいるようだ。胸当てに片手剣を装備した2人組から立派な鎧を着た女性の4人組など様々だ。その中には、当然先ほどの3人組がいる。こっちを見てニヤニヤしている。
うぜーと殴りたい衝動を我慢する。普段は温厚なんだよ?俺。昔のあいつらみたいだから、異常になんか腹が立ってるだけだから。たぶん。
「注目!!新人冒険者諸君。これより、試験の内容を説明する。このすぐ近くの森、コノエ森林で、ラビットを10体倒してもらう。」
回りでは安堵する物が多く出ている。ラビットってなんだ?ウサギか?見たことないだが。あとどうやって討伐したかの確認をするんだ?
「普段はおとなしい奴だが、命の危険がせまると襲ってくる。ラビットの蹴りだけを十分注意すれば問題なく倒せる奴だ。もし、蹴られたら骨は折れると思え!場所が悪ければ最悪死ぬことだってある。決して油断はするなよ!」
「ラビットに蹴られて死ぬやつとか見てみたいんだぜ。」
「ほんとだぜ。」
「案外、見れるかもしれないだぜ。」
とか3人組がこっちを指して笑いながら言っている。
その声で視線がこっちに集まる。
「あいつがお子様か。」
「ステータス子供の。」
馬鹿にするよな目、憐む目、興味なくちらっと見ただけなど様々な反応があった。
しかし、さっきギルドでお子様呼ばわりされただけなのに広まっていると言うことは、あの3人組がけなすように言いふらしたに違いない。ほんとムカつく奴らだ。
「静かに!倒したラビット、ラビットだけでなく魔物全てには核がある。それを持ちかえるのを忘れないように!期限は、夕方5時とする!それでは、諸君!健闘を祈る!開始ーー!!」
全員がコノエ森林に向かって駆けて行った。
2017/10/03 微修正
2017/11/13 微修正