第28話 魔法使いとの決戦
「※×※○※※」
マジェストが声にならない悲鳴を上げる。
ロシィがドン引きして後ずさる。
ドラゴンの頭に着地し、槍を杖代わりにするリリィ。
「う、う~。気持ち悪い・・・。」
「悪い、大丈夫か?リリィ。」
ポチッ
心配してリリィの背中を擦る夢叶の耳にボタンを押す音が聞こえた。
バチバチバチ
「おわ!?」
ドラゴンの頭、脳に雷撃が直撃し、瞬く間にドラゴンが霧散する。
「ちょ、こいつは、まだ早い!」
ものの数分でリリィが倒したのはキングラビットを10体ほどだけだ。レベルが16までいったが、上がりにくくなったため、ランクSの魔物だと20も上がらないだろうと思い、戦況が気になるのもあって戻って来たのだ。
「う、うぐ。ひっぐ。も、もう、お、お嫁に行けない・・・。」
夢叶の腕の中からリリィの体がレベルアップにより、大きく光、嗚咽する声が漏れる。
ドラゴンが霧散したことにより、現在落下中にも関わらず、そんなことを言っているリリィ。よほどショックだったのだろう。前回の方がどうかとも思うが。むしろ、両方してしまったことにより、許容量がオーバーしたのだろうか。
それよりも、ランクMを倒したことによってレベル20ぐらい一気に上がってそうだが、夢叶の時ほど一気に上がってはいないとはいえ、それなりの痛みはあるはずなのだが、痛くはないのか・・・それどころではないほどにショックだったのか・・・。リリィのみぞ知る。
ロシィは近くでまたやっちゃったよこの子は、的な感じで一緒に降下している。
「うがーー!!浄化の水よ!この邪悪な穢れを洗い流せ!セイクリッド・ウォーター!」
顔面に盛大な水を出し、全力で洗い流しているマジェスト。その洗い流した水が、こちらに飛んできた。洗い流した水であるからして当然、そこにアレが混ざっている。
「くっ!奴め!なんて攻撃を!浄化の風よ!穢れた水を噴き返せ!セイクリッド・ウィンド!」
強風が巻き起こりセイクリッド・ウォーターを押し返し、そのままマジェストへと向かう!
「き、貴様―!!聖なる壁よ!穢れを断ち切れ!ホーリー・ウォール!」
透明な壁がセイクリッド・ウォーターを遮る。セイクリッド・ウィンドもあり、かなりの衝撃だったが、なんとか持ちこたえることに成功したようだ。
「う。」
ホーリー・ウォールの壁に、アレがベチョっと残っており、貰いそうになるマジェスト。すぐさま、ホーリー・ウォールを消し、アレを視界から消す。
「ワー、スゴイコウボウダッター。」
ロシィが棒読みで言う。
「どうせ、お、お嫁に行けない、女の、扱いなのよ・・・。」
嗚咽が限界に来て今に多泣きしそうなリリィ。
「すまない、悪気はなかったんだ。反射的につい・・・。」
地上に着地し、ロシィが周囲の敵を薙ぎ払ってくれる。
「ど、どうせ、私は汚れた女なのです。そのまま汚れて捨てられるんだわ。グスン。」
「悪かったって、御嫁には大丈夫だって行けるさ。保障してやる。・・・お前次第だけど。」
「?どういうこと?」
鼻を啜りながらキョトンと返してくる。
「・・・相手が見つからなかったら俺でいいなら面倒みてやるってことだよ。」
ボソっと早口で、少し照れたように夢叶が言うと、リリィの顔がボッと真っ赤になった。
「ねー。私はー?」
唇に人差し指を当ててねだるように聞いてくるロシィ。
「当然だろ?」
笑顔でロシィの頭をポンポンとしながら返す。
リリィが横でキーっとしているのをニヤニヤしながら見ているロシィ。
「聖なる光纏いて顕現し、我に勝利をもたらせ!聖愴、グングニル!」
魔法陣が夢叶達に向いて10以上もの描かれた巻物が円を描くように宙に展開されている。円の中心に膨大なマナが凝縮され、槍を形成していく。
「あれ、結構マジでやばそうなんだけど。」
ロシィが苦笑いする。おどける様子がなく、羽だけでなく、尻尾までだし、ドラゴンへの変化をすぐにでもできるようにしている。マジで油断できないみたいだ。
「ならば、護って見せるさ。」
あの槍は、恐らく一点突破に特化した物だ。それに加えて聖属性を付与されており、黒炎を使い聖属性を相殺することはできるが、槍本体にに貫かれてしまうだろう。しかし、聖属性には闇属性が有効であって闇属性は必須と言える。ならば、こちらも闇属性を付与した盾を作ればいいだけだ。あとは、槍の突破力とこちらの盾のどちらが上かの勝負だ。
「漆黒纏いし、滅する盾よ!全てを焼きつく護りとなせ!ダークシング・シールド!」
土を媒介にし、黒炎を纏う盾を出現させる。
「喰らえ!我が最高の技を!」
手を翳し、グングニルが放たれる。
リリィを抱えロシィと別れて跳躍して躱。グングニルが地面に突き刺さる瞬間、方向を変え、ロシィに再び迫った。
「チッ!さすがに、グングニルといことはある!」
的を射損なうことなく、自動で持ち主の手に戻る槍。グングニル。なぜ、地球の神話がこっちでも存在するのか、そんなことはどうでもいい。ただ、確実にロシィが殺られる。そう直感した。
「マジ!?」
空中で、咄嗟に黒炎を放つが、咄嗟の威力ではグングニルは全く止まらない。
目の前まで迫ったその時、ロシィの前に夢叶がテレポートで現れ、グングニルをダークシング・シールドで防ぐ。
「ぐっ!」
かなりの衝撃だ。聖属性は闇属性で相殺し、土を媒介にした盾を貫こうとするが、マナで強化されているため、なんとかヒビがいく程度で済んだ。防がれたことにより、勢いがなくなったグングニルは持ち主の所に戻っていく。
「させるかよ!」
テレポートでマジェストの目の前に出て、腹部に拳をめり込ませる。
「がはっ。」
マジェストが跪く。そこにグングニルが戻って来た所を黒炎を発動し、滅する。戻って来た時のグングニルはすでに、聖属性付与が無くなっており、簡単に黒炎で消すことができた。
「ば、馬鹿な・・・。私の切り札がこうもたやすく・・・」
「ロシィ1人ではきつかったかもしれないな。最悪、相討ちだ。グングニルがお前が倒れても効果が維持されているなら、だがな。」
ロシィ1人では、黒炎だけでは防げないグングニルを、盾を作り出して守ることはできないのだ。しかし、テレポートで夢叶と同様に先にマジェストを倒すことはできる。放たれて当るまでの間は常に、聖属性を纏っているだろうし、速さもかなりある為、何かしらのグングニルを耐える障害物でなければ、止めることはできなかっただろう。
「ロシィ、こいつを頼む!とりあえず、エリィを助けてくるわ。」
「あーい。」
軽く言い合い、エリィを探す。
――――――エリィ視点
「ハアー!!」
何体倒しただろうか、目に見えるランクSの魔物はもういない。ランクSSも数体倒した。途中もレベルも上がったが、体力が限界に近い。
まだ、数分だが相手が相手だ。おまけに数が多い。常に緊張状態で、休む暇なく戦っている。
ユウ達はどこかへ行ってしまうし、ロシィは、ブラックドラゴン5体に魔法使いの男と対峙している。さすがに、ブラックドラゴン5体では、余裕などないだろう。頼みの綱はシルヴィなのだが、どうやら、向こうも思ったより苦戦している様子だ。最初のうちは一瞬で周囲を薙ぎ払っていたように見えたが、ブラックドラゴンなどには簡単にはいかないようだった。
まだまだ、迫りくる魔物の群れ。逃げることに徹すれば、ユウ達は戻って来てくれるだろうか?否、ユウが身捨てるはずはない。まだまだ付き合いの時間は短いが、ユウが仲間と認めてくれているのだから。きっと、リリィのレベルを上げてすぐに戻って来てくれるはず。そう、信じて決意したとき、黒い炎が魔物の群れを焼き払った。
「悪い、遅れた。」
「ユウ!遅い!」
ユウの登場により、安堵するエリィ。実際、かなりギリギリだった。
――――シルヴィ視点
キシャー!!
ブラックドラゴンやブラックワイバーン等が襲い掛かってくる。
「せっかくだ。ユウ殿から授与されたマナ操作を使ってみるとするか。」
糸ほどの大きさの炎を弓で引き、迫りくる魔物に狙いを付ける。そこに、固有能力でもある、合成を使い、炎をさらに混ぜ込んでいく。炎の矢は、太く、赤く赤くなっていき、矢の如き紅蓮の炎となる。それを先頭で突っ込んで来ていたブラックドラゴンへと放つ。
ブラックドラゴンの胴体に突き刺さり、刺さった所から熱により体を焦がしていく。紅蓮の矢が刺さった周辺は瞬く間に燃えて、その部分が炭となり霧散していく。あまりのダメージに地面に落ち、魔物の群れがブラックドラゴンを旋回して押し迫る。
「さすがは妾の主となっているだけはあるの。この力は壮大すぎる。」
弓を地面に突き刺し、体の前で掌を向かい合わせ、その中に赤い珠を作り出す。そして、それは大きく、赤くなって行き、炎が混ざり合う。バレーボール程の大きさになると、それを高く空に浮かび上がらせ、紅蓮の矢でその珠を打ち抜く。すると、その珠から無数の紅蓮の矢が魔物の群れに向かって放たれていく。無数の紅蓮の矢は次々と当った所を炭と化し、霧散させていく。
傷ついたブラックドラゴンが這うように飛んで襲い掛かってくるが、それを直前にブラックドラゴンの頭部を弓で射ぬき、霧散してシルヴィを通り過ぎて行った。
「うむ。悪くない。」




