第17話 魔物使い襲来とさようならお父様
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――――王都北側 ホクシナ街
叫び声、悲鳴、泣き声、逃げまとう声が街に響き渡る。
「魔物の群れが来るぞ!早く逃げろ!!」
街の外には1000体を超える魔物の群れが押し迫っていた。
「ここの街の壁は薄い。すぐに突破されてしまう。王都からの援軍はいつぐらいになる!?」
ホクシナ警備隊隊長が問う。
「早くてもあと2時間は掛かるかと思われます!」
ここホクシナ街は王都から比較的に近い方だ。しかし、それでもこの世界では2時間もかかってしまうのだ。車のような移動手段や通信手段もないのだからしょうがないのだが。
魔物の群れが街に来るまでおよそ約10分。
「兵と冒険者は外で待ち構えろ!決して中に入れるな!」
街の外で1000体以上の魔物を待ち構える兵と冒険者はおよそ50人程度。
ランクS 1人
ランクA 5人
ランクB 15人
ランクC 20人
ランクD 10人
こんな感じの戦力だ。
この街は生息する魔物の影響で、幸い、冒険者ランクBを中心として集まる街である。
相手の魔物は数は多いものの
・ラビットホーン(ラビットに角が生えただけだが、足だけでなく角にも気を付けなければならなくなった。) ランクC
・ウルフファング(牙が異常に鋭くなった狼) ランクC
・スネークファング(牙が異常に鋭くなった蛇) ランクC
ランクCを主体とした魔物がほとんど。
他に見える範囲には、オーク(ランクB)10体や、ハイゴーレム(3メートルほどの巨大人型ゴーレム)のランクAが3体
数が多いだけで、1体1体は大したことがない。オークやハイゴーレムに対してもランクSも1人おり、ランクAとランクBの数もこちらの方が多い。しかし、そのほかは、新人ともいえるランクD、ようやく板についてきたという感じのランクCが半分以上では、戦力的にはかなりの不安である。
問題は魔物の圧倒的な数だ。こちらの20倍ほどの数だ。いくら、ランクSやAがいようと数の暴力には勝てないだろう。
「ランクAとBの者を中心に展開せよ!!Dの者は逃した魔物を2人以上で倒せ!」
魔物の群れが目視でもわかる所までやってきた。
「総員!掛かれー!!!」
「「「「オオー!!」」」」
雄叫びを上げる。
警備兵、冒険者約50人と魔物1000体以上がぶつかろうとしていた。
――――――― ビギワンス王国 王都 広間
「さぁ、白状したまえ!貴様は魔物使いの仲間なのだろう!?」
陛下が叫ぶ。
「この状況で、逃げれるはずがなかろう!潔く投降したまえ!」
立派な髭の老人が叫ぶ。
壁際に夢叶とロシィがおり、広間が警備兵等によって埋め尽くすかのように2人を取り囲んでいる。
「殿下さん、一緒に少しだが旅をしたよしみだ。あれってお前の父親だろ?どうする?」
殿下を指差し、リリィナに訪ねる。気楽に言ってはいるものの明確にどうするかは言わなかったのは殺すからだとリリィナは思った。
夢叶自身、まだ人殺しに慣れたわけではない。過去の3人組達のようなクズどもにならなんの迷いも無いが、特にたいした理由もなく平気で殺せるほど容赦のない人間にはまだなっていない。
しかし、脅すように言ったのにも意味はあってのものだ。些細なことではあるが、ビギワンス王国が自身に干渉されないようにするためだ。手を出せば、国が滅ぶぞと。
干渉されれば、指名手配だってされるだろう。そうなれば非常にこの世界での居心地が悪くなってしまうからだ。不干渉でさえあれば、今までどおりの生活ぐらいはできる。と言ってもまだ3日程度しかこの世界では過ごしていないのだが。
「貴様!!陛下に向かってなんという態度だ!早く捕えなさい!」
「やめてーー!!」
兵達が動き出した時、悲痛な叫びが響いた。
「ど、どうしたというのじゃ、リリィナよ。」
リリィナの叫びに広間にいるエイリ以外の者達は動揺する。
「エリィが言った事は、真実です。どうか、ユウト様をこれ以上怒らせないでください。」
涙を流し訴える。
「怒らせるも何も、この不届き者を捕えようとしているだけではないか。」
「ユウト様は確かに、口は悪く、上の者に対する敬意といったものはお持ちでございませんが、逆に言えばそれだけです。確かに、普通なら不敬罪で処罰されても致し方ありませんが、ユウト様は私を一度、サラマンダーから助けていただいているのです。」
「ふん、平民がサラマンダーを相手に逃げきれるわけなかろう。」
まさに、ふんっといった態度で言う陛下。
「・・・私の言葉を信じてくださらないと?」
リリィナは、少し怒りが混ざった瞳で睨みつける。
「ならば、ステータスプレートを見せてみなさい。」
陛下がこっちに振って来た。まぁ、当然。
「だが、断る!」
キリッ。
「「な!?」」
このタイミングで断るなど誰も思っていなかったのだろう。リリィナも驚いている。エイリだけはやっぱりといった顔をしている。
「ほらみたことか。とてもサラマンダーに敵うステータスではないということだ。」
この世界でレベル100っていうのは、今はいないみたいだし、いいように使われたり、国際問題的なのに巻き込まれたらやっかいだしな。断るに決まっているだろう。
「ユウト様!」
リリィナが懇願する。
「ユウト様か、ロネシリィ様・・・お手数ですがお手合わせ願えないでしょうか?」
エイリが前に出てきてそう願い出る。
・・・なるほどね。ロシィの方を見ると察しているようだ。
「私が相手になってやろう。」
ニッっと偉そうに返答した。
(ロシィ、絶対殺すなよ。)
(わかってるよ。旅をしたよしみってやつでしょ。)
頭をポンポンとする。
「じゃぁまかせた。」
「うむ。」
「感謝します。陛下、よろしいでしょうか?」
「う、うむ。」
有無も言わせないようなエイリの態度に陛下は頷くしかない。うむ、とは言ったけどね!
陛下からしてみれば、このようなエイリは初めてだろう。今まで忠誠を王国に誓い、王国の為に励んで尽力を尽くしてくれていたのだ。
陛下とロネシリィにお辞儀をして距離をとる。
その際、兵が端っこにより、中央が直線状に空く。その中に、エイリ、それに対峙してその少し後ろの壁際に夢叶がいる。
「本気でまいります。」
剣を構えるエイリ。
「いつでも構わんぞ。」
偉そうに言う。威厳は大事だね。
一瞬、静寂が訪れる。
ッフ。
エイリが消えたと思った瞬間、ロシィの後ろに回り込み切りかかっていた。
それをパシっと簡単にエイリが握っている柄部分をロシィが手で往なす。
再び、エイリが消え、ロシィを様々な角度から切りかかるが全て無駄な動きなく避けるが往なした。
「はぁはぁ、さすがです。」
バク宙で最初の間合いまで戻るエイリ。
「もう、終わり?」
つまんなーいといった様子で聞く。
「はい。手を煩わせて申し訳ございません。」
お辞儀をし、陛下の方へ顔を向ける。
「陛下、ご覧になっておわかりいただけたと思いますが、このように私では、まるで歯が立ちません。そのような相手に陛下は何をなさろうとしているのかお分かりでしょうか?」
「な、何を言っておる。ランクMであるお主の攻撃がこんな容易く、しかも素手のこのような少女にあしらわれる訳無かろう。本気を出していなかっただけだろう?」
「誰か、私の動きを捉える事ができた者はいるか?」
エイリは、まだ認めようとしない陛下に呆れながら周囲に問う。
沈黙が続く。
「陛下直属の護衛であり、ランクSSであるお二人はどうでしたか?」
2人は、目を会わせ答えた。
「親衛隊隊長の動きは、捉える事はできました。」
「ほらみなさい。」
陛下が言い、横で老人達も頷いている。そうだろうそうだろうと。
「ですが、それだけです。1度や2度ならばなんとか防ぐことはできるかもしれませんが、先ほどのような連続で何度も来られてはすぐにやられてしまうでしょう。それほどの動きでした。」
「「バカな!?」」
老人達が揃って言う。
「しかし、これだけのランク上位の者達がいてはどうしようもあるまい!と、捕えなさい!」
陛下は、決して認めようとしなかった。不敬に扱われたのがそれほどプライドを傷つけたのだろうか?それぐらいしか思い浮かばない。もし、本当にそうならなんと器の小さな王だろうか。
「お父様!ここまで、お父様がわからずやとは思いませんでした!現実を見てください!」
リリィナは、怒った口調で言う。
「何を言う!現実を見ているからこその対応だ!エイリ親衛隊隊長でも勝てないというのならば、そのような者を野放しにしては危険だろう!」
「・・・もう、いいです!わかりました!私は、ここを出て冒険者としてユウト様達と一緒に旅をします!」
「「「な!?」」」
みんな驚いてらー。俺も俺も。
「行きましょう!ユウト様。」
夢叶の手を引っ張り出て行こうとする。
ロシィは何こいつ?っていう反応をしている。それを夢叶はまぁまぁと手でストップを掛ける。
「者共、そやつらを即刻捕えよ!リリィナは、騙されておるのだ!」
動揺している兵達に命令を出す。
戸惑いながらも捕えようと近づいてくる。
「やれやれ、エイリ!どうする?」
こんな大勢の前で大声出すとかしんどいわー。今日、何回リカバーすればいいんだ。
喋るときはだいたい使ってる気がするぞ。
夢叶に初めて名を呼ばれた。エイリは、これには意味があると思い考える。
「早くしてくれー。」
じりじりと兵達が夢叶達に近づいてきた。
「私は、殿下についていきます!」
私は、決して国に従っていたのではない。幼き頃から殿下と共に過ごし、殿下の為に働いてきたのだ。ランクMになったのだって、殿下を護る為の力がほしいがゆえだ。
殿下の言葉を信じようとすらしない陛下には呆れてものも言えない。
私は、これから何があろうと殿下の為にあろうと改めて決意した。
「はぁ、しょうがないなぁ。ロシィ。」
「はいはーい。ドーン!」
手を上げ返事をして軽く跳び上がり、着地と同時に地響きが鳴り響き、地面に亀裂が入る。
「「「!!??」」」
「行くぞ~。」
声にならない驚きを余所に出て行こうとする。
「な、何をしておるか!?リリィナが攫われてしまう!」
「・・・お父様。」
さすがに、リリィナが可哀想になってきた。
ギンって感じでロシィが殺気を飛ばす。
「ひぃぃ!?」
ほとんどの者が後ずさり、前にいた者は腰を抜かし座り込む。
「さようなら、お父様。お達者で。」
そうリリィナが言い残し、王城を後にした。




