第11話 出発
「ねえ、本当の目的、教えてよー。」
甘えるようにロイネシリィが聞いてくる。
「・・・いいだろう、絶対に誰にも言うなよ?」
「わかった!」
夢叶の膝の上にある瞳を輝かせて頷く。
「美少女との縁を無くしたくないからだ!」
キリッ
ガンッ!
「いってー!」
頭突きをオデコに喰らって後ろにベッドに倒れた。
「失礼するわよ!」
バンっと扉が開き、殿下が入って来た。後ろでエイリが勝手に入っては・・・というような感じになっている。
「・・・何をしているの?あなた達。」
呆れた顔で見られた。ベッドで仰向けになりオデコを押さえ、ロネシリィもその膝の上に頭を置き、オデコを押さえているのだから。
「えっと、どうした?」
「どうしたじゃないわよ!私達に協力する件よ。」
「あー。っで?どうなんだ?」
「残念ながら、あなたの魔物を操る術の情報提供は、私でも独断で決めれる事ではないの。私は、まだあなた達を全く信用していないのだけれど、エリィが珍しく、他人を信用しているみたいだから、私はエリィを信じてお父様に話を付けて上げる。それで、問題ないわね?」
「ねぇねぇ、ユウト。あの生意気なの殺っちゃってもいい?」
瞑らな瞳で聞いてくる。殿下達は、ゾクっと体が震え出す。エイリだけは、殿下の前へと立ちふさがる。その後ろで殿下と男親衛隊はへなへなと地面へと座り込んでしまった。
その周辺の殿下のスカートに水が染み込んでいっているのは見なかったことにはしてあげない。
「駄目だ。俺に付いてきたいなら、俺の言うこともちゃんと聞くように、わかった?」
子供に言うように言いつつ、当然まだ、ロネシリィを信頼していないわけで、このような言い方をして、殿下の用に殺っちゃってもいいやとか思われたらやばいので、気持ちは界王○!4倍だー!的な感じで身体強化を発動している。当然、体の負担が半端なくでかいが、動かなければその負担は極小だ。
「えへへー。やっぱり、ユウトは面白いねー。今も魔・・・」
一瞬で口を塞ぐ。
(魔法の事は、できるだけばらさない様に。)
耳元でロネシリィに言う。モガモガしている。
(とりあえず、できるだけ早くこいつより強くならないとまずいな。最低でも通常身体強化ぐらいで、対応できるようにしないとこっちの体が持たない。)
今さらながら、身体強化は約3倍、身体能力が上がる。4倍だーってことは12倍上がるわけで、当然、負担はその分大きくなる。
「そ、その・・・いいか?」
動けない殿下達の代わりにエイリが問う。
「あ、ああ。つまり、殿下さんと王都に行って、そこで王様に言ってくれるってことでいいんだろ?」
「ああ、申し訳ないがそれで頼めるか。」
「了解。」
男親衛隊と殿下を立たせ、殿下に寄りそいながら部屋を出て行く。
出て行った後、とある床を見て、夢叶も立ち上がり部屋を出ようとドアノブに手を掛けようとすると、ロネシリィが呼び止めてきた。
「ねえ!待ってよ、さっきは、何の魔ほ・・・。」
バンッ!言いかけた時、ドアが勢いよく開き、顔面を強打して、完全な不意打ちを食らってしまった為、バランスを崩して、尻もちをついた。
ベチャ
勢いよくドアを開けた犯人、服が変わった殿下が顔を真っ青になった。殺されるとでも思ったのだろう。震えて立っているのもやっとのようだ。後ろでエイリも顔を真っ青にしていた。
後ろでは、腹を抱えて転げまわっている黒龍さんがいらっしゃる。
・・・
クンクン。手の匂いを嗅いでみた。
「っちょ!?」
真っ青から真っ赤になった殿下が詰め寄ろうとする。
夢叶は顔を顰めた。世の中には、これを聖水だの黄金水だという人間がいるが、夢叶にはわからなかったようだ。わかりたくもなかった。
「ちょっと、シャワー風呂入ってくるわ。」
夢叶が立ち上がり、部屋を出て行く。その後ろを殿下が恥ずかしさで怒りをぶつけられずに拳をワナワナと震え指していた。
そんな、様子を黒龍さんは転げ回ったり、ベッドをバンバンして笑いを堪えている。
エイリは、黙って濡れた床に屈みタオルに聖水を染み込ませている。落ち着いた殿下もタオルに黄金水を染み込ませていく。処理をしに来たようだ。
「な、なによ?」
ニヤニヤとしているロネシリィに顔を赤くしながら問う。
「べっつにー。」
プークスクス。
怒りたいのを我慢する殿下。エイリですら勝てない相手に喧嘩を売ることなんてできない、ましてや協力してくれようとしている相手に自分が不始末をしたにも関わらず、いくら笑われたからといって、怒っては協力してくれなるかもしれない。恥ずかしさやら怒りやらといろいろと葛藤して真っ赤になりながら我慢する。
そんな殿下をおいたわしやというような顔でエイリが見ていた。
――――3時間後 (昼過ぎ)
「殿下!準備できました。」
男親衛隊が言う。
「御苦労。他の者も準備は良い?・・・ですか?」
殿下がロネシリィに敬語を使う。
「うむ!」
元気よく胸を張って答える。
宿屋を出ると前に立派な馬車が停まっていた。
そう、王都に向かって出立するのだ!
夢叶はリュック1つで来ていた為、特に準備する必要もなく、せいぜい、旅路の間の食糧を仕入するぐらいだ。しかし、それも、男親衛隊がやってくれている。よって、馬車に乗るだけだ。
「おー。馬車に初めて乗る。」
夢叶は馬車に乗る必要は全くないのだが、冒険って感じがするからドキドキだ。
殿下とエイリが後ろに、夢叶とロネシリィが前の席へと座る。男親衛隊が外で馬車を操縦する。
街の出口付近で、かなりの人が道の端で並んでいる。殿下を見送っているようだ。
「また、この街に来てくださいねー!」
「こっち向いてー!」
「今度は、うちの店にもぜひいらしてください!」
などなど、どこかのアイドルみたいな歓声を受け、場所の中から手を振り答えている。
「結構、人気あるんだな。」
夢叶が感心している。
「お漏らし殿下なのにね!」
ニヤっとロネシリィが後ろを向きクックックとしている。
「それは!あなたが!」
顔を赤くして、抗議しようとするが、まだ外にはたくさんの人がいるため、なんとか我慢する。
「こら、ロシィ。からかったら可哀想だろ。もし、自分がされたらどうするんだ?」
「殺す!」
「それが、殺せない相手なら?」
「ムー・・・。」
「ほら、ごめんなさいは?」
「・・・ごめんなさい。」
不満たらたらではあるが、夢叶の言うことを聞き、殿下にしぶしぶと頭を下げる。
「よし、良い子だ。」
よしよし、ロシィの頭を撫でるとにへぇ~と喜ぶ。
一体、この短い間に何があったのかと殿下とエイリは顔を向かい合わせている。
街の外に出て、しばらくすると
「ねえ、ユウト。ロネシリィ・・・さんとはどういう関係なの?」
先ほどのロネシリィより立場が上のようになっていることを問い質す。
「・・・ユウト?」
あん?っという感じでギロっとロネシリィが殿下を睨む。
ベシッ
「あいた。」
ロネシリィの頭を軽くチョップする。
「別に呼び捨てぐらいいいよ。」
「簡単に言うとだな。ノリと勢いで主従関係になった感じかな。」
「「っは?」」
2人揃って目が点になっていた。




