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異世界召喚されないので、行ってみた。  作者: 手那
第1章 魔法が使われていない世界
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第9話 宿屋付近にて

「傷めつけてやる!」

 わー。問答無用とはこのことか。

 誰と聞いているのに答えてもくれずに殴りかかって来た。


 辛うじて、致命傷は受けず、ギリギリで躱したりガードをしている。最初は念のために身体強化を発動していたが、相手の動きが遅く感じたので試しに、解除してみると結構回避できたのだ。さすがに5人相手だと避け続けることもできず、ダメージを着々と受けている。多少の痛みに慣れておくのもいいだろうと思い、続けているが、これなら昔にサンドバックされていた方が全然痛い。


エイリさんまーだー?と心の中で呼んで見ているが、来る気配が全くない。宿屋の前で騒いでいるのになぜ来ないんだ。通り過ぎる人も見て見ぬ振りだ。


「この!お子様がうろちょろと!」

 なかなかまともに当らない拳にイラついてきたのか、捕まえようとしてきた。


「何をしている!?」

 女親衛隊が出てきた。君じゃない。


「っう。親衛隊の方ですか。これにはわけがありまして。」

 なぜ、この人が親衛隊とわかるのかと思ったが、今さら気が付いた。服装か。立派な鎧だし、思い出してみると、男の親衛隊とは色違いなだけだし、エイリともほぼ一緒だ。エイリのは隊長仕様って感じだろうか。


「この、お子様がエイリ隊長に対して礼儀がなっていないので体に教えてやろうかと。」

 ・・・女親衛隊が少しぼろぼろな感じの夢叶を見る。


(エイリ隊長はこのような下っ端の兵士にここまでやられる男をどうして・・・。確かにあの時の寒気がするような殺気は異常だったが、あの殺気ほどのレベルではないはずだ。サラマンダーだって、討伐隊で傷を負って瀕死だったに違いない。)


「・・・それは、良いことだ。私もこの男には少々いろいろと教えてやらねばと思っていた所だ。」

 悪い顔だ。さすがに、ランクS相手だと身体強化なしだと無理だな。ということで発動する。


「取り押さえなさい。」

 女親衛隊の号令におおーっと再び襲ってくる。

 ガシガシとワザと捕まる。不用意に魔法で倒すわけにはいかない。誰かに見られたら面倒だ。


「さっきの私の恥のお返ししてあげる。」

ニターと笑い、夢叶の腹に拳をめり込ませようとする。


(そんなお返しはいらん!)

と心の中でツッコミを入れ、

「グフッ」

 拳がめり込んだ。思った以上に痛かった。

 涙がでるのを我慢しながらどうしたものかと考える。

エイリさーん!と再び心の中で今度は叫ぶ。


人通りが少ないとはいえ、いつ人が通るかわからないうえにすぐ近くにエイリ達がいる。


(ッハ。これはあれか、エイリは俺がどうこいつらを倒すのか見ているってやつか。)

 周囲を探してみると宿屋の屋根にエイリの姿があった。

 じっと見ている。


「殿下に散々怒られただろうにいいのか?こんなことをして、殿下の顔に二度も泥を塗っているんだぞ。」

「ふん。適当に後から言えばどうとでもなるわ。」

 駄目だ、この子完全に駄目な子だ。殺っちゃいそうだわ。


「すでに見られているから言い訳できないと思うが?」

「何を馬鹿な。」

 女親衛隊の驚きの声で、宿屋の屋根の方を見るがエイリの姿はなかった。


「あれー?」

 まだ、自力で何とかしろというのか。


「はったりだけは得意なようだな。」

 女親衛隊も同様に宿屋の屋根の上を見るが、姿がないことに安心し、少し冷や汗が出ていたようで額を拭っている。


 正直、困った。最初の5人相手はどうとにでもできるだろうが、ランクS相手だと今の俺では魔法なしで退けるのは無理だろう。相手は剣もしっかりと持っている。そこに身体強化したところで近接戦闘ど素人の俺が素手で勝てるかどうかは非常に怪しい。かといってテレポートで後ろに回り込んだり懐に入るのもリスクがある。ランクMであるエイリがまだどこかで見ているはずだ。世界で5人しかいないというランクMのエイリですら見えない動きをするならばそれはそれで異常だ。高速で動いた。素早さだけは速いなどと誤魔化して納得してくれたとしても異常な者であることに変わりはない。まぁ、すでにサラマンダーを倒した時点で異常なのだが、この世界では魔法が使われていない。使えば、どういう事態になるのかが正直わからない為、リスクが大きい。


「ねえ、あなた達、ここに面白い新人冒険者がいると聞いたのだけど知らない?」

 後ろから、可愛らしい少女の声が聞こえた。


「誰だ!?」

 女親衛隊が叫ぶ。


「聞いているのは私。ねぇ、知っているの?」

 ゆっくりと近づいてくるその少女は肩より少し長い黒い髪に赤い瞳。黒のワンピースでどこか禍々しい姿だった。あと可愛い。


「お嬢ちゃん、こんな夜遅くに出歩いていると危ないよ。」

 少し厭らしい手つきをしながら5人の内の1人が近寄る。


「汚らわしい。お主たちは我の言うておることがわからないのか?」

 近づいて行っていた者の姿がない。

 先ほどまでとは違い、ドスのきいた声で訪ねてくる。


「な、なんだ貴様!?魔物か!?」

 女親衛隊の悲鳴にも似た叫びで問いかける。


「魔物?そんな物と同じにしないで貰おうか。我は純正なる黒龍じゃ。」

 黒龍と名乗る少女の臀部の部分から尻尾が生えてウネウネしている。


「黒龍だと!?人の姿をしたドラゴンがいてたまるものか!」

 尻尾を見た時、暗がりで見えなかったが黒龍と名乗る女の近くに血溜まりが出来ていた。近くには消えた者の姿はない。おそらく、一瞬のうちに跡形も無く殺されてしまったのだろう。


「その尻尾も飾りだろ!?お前達、やってしまえ!!」

 女親衛隊が叫ぶ。残った4人もオーと黒龍と名乗る女に迫る。

 やはり、女親衛隊は馬鹿だ。何を見ている。あの尻尾はどう見ても本物だ。飾りで尻尾があんな動きをするはずがない。

 そして、やはり一瞬のうちに4人全てが跡形も無く消え去った。


「っひ、ひぃい。・・・きっと、こ、こいつです!この宿で新人冒険者となればこの者しかいないはず。」

 圧倒的すぎる力に腰を抜かし、夢叶を指差す。


「こいつっ!」

 キッと女親衛隊を睨むと涙を流しながら笑っていた。


「ふーん・・・」

 その睨んだ一瞬の間に、黒龍と名乗る女の顔が目の前にあった。

 バッと飛び下がる。やばい・・・こいつはまじでやばい。攻撃の尻尾の動きですら、視認するだけで精一杯だ。避けられるわけがない。無理をすれば、もしかしたら倒せるかもしれないが、勝てる気がしない。


「なるほどね。やっぱり、あなた・・・」

 黒龍と名乗る少女の頭上に剣が振りかかり、それを尻尾で防いでいる。そして、そのまま尻尾で反撃をするが、それをギリギリ避ける。


「っく、なんて強度に速さなの!?」

エイリだ。2回ほどバックステップを取り距離を取る。


「エイリ隊長!!」

 救いが来たと喜び縋りつこうとする。


「邪魔だ!死にたくなければ、下がっていろ!」

 っぁ・・・としゅんとなって慌てて下がる。その間もエイリは相手を女親衛隊を見もせずにずっと捕えていた。

 エイリは女親衛隊の一部始終を見ていたのだろう。冷たい対応だった。


「・・・あなた、やるわね。人間でいう、ランクMってやつなの?」

 興味津々といった感じだ。

 しかし、いくらエイリでも、こいつには勝てるとはとても思わない。奇襲をなんなく防ぎ、反撃すらしてみせてなお、この余裕である。


「ま、待て、俺に興味があるんだろ!?」

 女親衛隊はどうでもいいが、エイリには死んでほしくはない為、黒龍と名乗る少女の意識をこちらに向けさせる。


「んー。さっきの奴ほど愚かじゃないみたいだし・・・まぁいっか。でーも。」

 目の前から一瞬でエイリの後ろにいる女親衛隊のところに移動した。

 やはり、目で追うのがやっとだ。体がついていかない。

 しかし、エイリは女親衛隊との間に割って入っていた。あの黒龍と名乗る少女の動きにしっかりとついていっているのだ。


「邪魔するの?私、そこの人、私のに手を出したから許せないんだけど。邪魔するなら一緒にやっちゃうよ?」

 ギリッと歯を食いしばるエイリ。


「そいつは、見逃してやってくれ!」

 思わず大声で言う。


「ん?そいつってどっち?」

 エイリを指す黒龍と名乗る女。頷く夢叶。


「じゃあ、こっちはいいよね。」

 と、女親衛隊を指差す。


「そっちは、どうでもいい。」

「そ!・・・」

 エイリの後ろにいた女親衛隊が跡形も無く血溜まりだけを残して消えた。


「なっ!?」

 今のは、エイリにも反応できなかったようだ。

 

 クルリと可愛らしくこっちを向く。

「邪魔ものはいなくなったし、ようやくお話できるね。」

「お、俺になんのようだ?」

 震える足をリカバーでこっそり止める。


「あなた・・・う~ん、魔法使えるでしょ?」

 なぜか言葉を探しながら言う黒龍と名乗る少女。


「・・・な、なぜ。」

「今のこの世界ではありえない、大きなマナの動きがあったの。それで、ちょこちょこっと調べてみたら、新人冒険者ではありえない速度でレベルが上がった人がいるってわかったから、その居場所は調べて今に至るって感じかな。」

 マナを感じることができる黒龍?人間?がこの世界にいたのか。


「あと、今も不自然に足の震えが止まったよね。何かしらの魔法で止めたんでしょ?」

 もの凄い洞察力だ。


「・・・だとして、俺をどうするんだ?」

「ん?特に何もしないよ?何十年ぶりだろ?ようやく見つけたから様子を見に来ただけだよ。」

 何か問題がある?といった様子だ。おそらく、本当にそれだけなのだろう。


「・・・つまり、暇人か!?」

 思わず、ツッコミを入れてしまった。


「テヘッ☆」

 舌を出して、頭を軽く拳を当てる。典型的なのをいただきました。


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