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泉 -Spring-  作者: zaku
7/30

クラスマッチ

 いよいよクラスマッチ当日。

 麻衣は少し緊張しているように見える。

 「増渕さん、大丈夫?」

 泉が麻衣に声をかける。

 「うん…」

 麻衣は自信なさそうに答えた。

 泉は麻衣の手をそっと握った。

 麻衣は泉の顔を見た。

 「大丈夫。頑張ろっ」

 泉は笑顔で麻衣に言った。

 「うん」

 麻衣は安心したように、笑顔で泉の手を握り返した。

 審判の合図で六人がコートに入る。

 「頑張って!」

 麻衣はコートの外から手を振った。

 試合は25点先取の3セットマッチ。

 先に2セット取った方が勝ちだ。

 「ピッ!」

 明日香のサーブで試合が始まった。

 初めて参加する試合。

 麻衣はドキドキしながら試合を見つめた。


 19‐25。

 1セット目は、終始リードされたまま取られた。

 麻衣の出番はなかった。

 「お疲れさま」

 麻衣は六人を拍手で迎えた。

 「ごめんね…」

 泉は汗を拭きながら言った。

 試合の勝ち負けなんかどうでもいい。

 楽しければそれでいい。

 ただ、リードしている場面で麻衣を出してあげたい。

 泉は、1セット目を取られたことよりも、麻衣を試合に出してあげられなかったことの方が悔しかった。

 「次は絶対取るよ」

 泉は自らに言い聞かせるように呟いた。

 さぁ、2セット目。

 「みんな頑張って!」

 泉は声に振り返ると、麻衣に向かって小さくうなずいた。


 試合は一進一退を繰り返し、両チームに得点が積み重なるだけで、なかなか麻衣を出してあげられるような展開にはならない。

 19‐18

 わずか一点のリード。

 次のサーバーはリカだ。

 「どうする…?」

 明日香は泉を見た。

 「…」

 泉は迷っていた。

 「大丈夫。こっからリード広げるから」

 リカが言った。

 リカのこの根拠のない自信はどこからくるのだろう。

 しかし数分後、リカの言葉は現実となる。

 連続ポイントで22‐18。

 そして、23‐19で再びサーブ権。

 サーバーは泉。

 ここだ。

 泉は審判に選手交代を告げた。

 「増渕さん」

 麻衣にボールを渡す。

 「大丈夫。練習どおりにやればいいから。落ち着いて」

 麻衣は大きく深呼吸をしてうなずいた。

 頑張って―

 見ている方が緊張する。

 泉は両手を合わせて祈るように麻衣を見つめた。

 打った。

 麻衣のサーブはきれいなアーチを描いて相手コートに吸い込まれた。

 レシーブがネットにかかる。

 24‐19。

 よし。あと一点。

 「麻衣!頑張って!」

 泉は思わず叫んだ。

 そして次の瞬間、麻衣のサーブが相手コートに弾んだ。

 「麻衣!」

 泉は麻衣のもとへ走った。

 「泉!」

 泉と麻衣を中心に歓喜の輪ができた。

 まるで優勝したかのように飛び跳ねて、抱き合って、喜んだ。

 3セット目は取られて試合には負けてしまったが、泉たちと麻衣の距離を縮めるには十分すぎる試合だった。



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