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killer elite
いいモノ読みたかったら金払え
マイスリーを飲み下した途端、やわらかな眠りの予兆を感じた。
小林一郎はベッドで横になることにした。と、シーツに目をやると、もの凄い形相でこちらをにらむ女の顔がシーツにべっとり浮き出ている。
見覚えのない顔。小林は睨み返してやることにした。
10分。
いつのまにやら、小林一郎はシーツにくるまってうとうとしている。
うとうと感から鋭角に眠りの奈落へ堕ちる。
午前4時。窓がハトで鳴いている。いや、ハト辺で窓が鳴いている。いや、窓辺でハトが鳴いている。羽の生えたドブネズミめ。ボーボ、簿、簿、ボーー。昨夜、なぜ私の心に仏が宿ったのか。小林遅漏は「元祖・浪花屋の柿の種」を窓辺に撒いてしまったのだ。ハトが食うように。ハトがついばむように。ハトが無意味にくちばしで柿の種を攻撃してくれるように。
もう、あの仏の時間から4時間34分が経った。マイスリーの持続時間の正確さは驚くべき事実だ。連日連夜ぴったり4時間34分の睡眠。なにがなんでも。