表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄様の従者s  作者: 時鳥
一章 リアルとゲーム
6/12

4.初依頼と能力値

「なぁアイリさん。聞きたいことがあるんだが」


 俺は先ほどのギルドの話を聞いていてとても気になったことがあった。


「なんですか?」

「アイリさんのギルドカード見せてくれないか?」


 そう。アイリさんのステータスである。放置育成する前のステータスは知っているが、やはり放置育成した後の劇的な成長というのはとても気になるものだ。ちなみに俺のギルドカードに書いてある情報はこんな感じ。


タカシロ タクミ

人間

52歳

賢者

Lv45

詠唱(103) 槍(62) 杖(48) 軽装(43) 合成獣(105) 

自動人形(130)騎乗(72) 武術(40) 生命回復力(45) 

マナ回復力(80)隠密(67) 探知(53) 回避(34) 料理(25) 

魔導具(63)


 このステータス、実はレベルにしては異様にスキルレベルが高いのだ。というのもこのゲームではレベルというのはあまり上げすぎてもメリットが少なく、逆にデメリットとなることが結構多い。スキルに入る経験値は敵とのレベル差で決まるので成長させたい場合はレベルを上げすぎないように敵を倒さずに能力ばかり使って逃げるか、魂食いの腕輪というレベルに入る経験値を吸い取ってしまう装備をしたりしてレベルを上げないようにする必要があるのだ。

 俺は逃げるなんてまどろっこしいことしたくなかったので魂食いの腕輪を装備している。今腕に着けている禍々しい灰色の腕輪がそれだ。


 スキルのレベルの強さはこの世界の基準で50で一人前、70で一流、100もあれば達人と言われるという感じだ。


「私のギルドカードですか? 構いませんよ」


 そして金色の下地に赤いギルドマークが描かれたカードを手渡された。ランクによってカードの色が変わったりでもするのかね? 何かかなり高級そうなんだが。


 そして俺はギルドカードに書かれた情報を見て目を疑った。


アイリーン・エンリル

エルフ

151歳

剣聖

Lv25

詠唱(165) 剣(289) 重装(267) 武術(307) 直感(324)

生命回復力(173) マナ回復力(125) 隠密(141) 探知(214)

回避(243) 魔導具(58)


 強すぎでしょこれは……。

 ゲームの時は俺の三分の一くらいのステータスだったはずなんだが。放置育成恐るべし。

 そういえばアイリーンにも魂食いの腕輪を装備させていたんだったな。だからレベルが以前と全く変わっていないし。

 にしてもレベルとスキルレベルの差が開きすぎだな! 普通のNPCは大体イコールなのにレベル詐欺も良いところだな……。


「どうですか? 何か変なところでもありましたか?」

「いや、色々とおかしいけど納得はできるから別に変なところはないな……」


 アイリさんがものすごく強いということが分かったのでギルドカードを返した。これからこの人だけは怒らせないようにしよう。年齢とかは突っ込んじゃだめだな。


「何か言いましたか?」

「いえ、なんでも」


 お、恐ろしいぞ……。




 何故か門番の人にすごいニコニコしながら見送られた俺たちは町の外に出てきていた。


 アイリさんの半端じゃない強さに驚きながらも今回の依頼の説明をアイリさんが話してくれた。そういえば碌に話も聞かないで来たんだよな。アイリさんがテンション上がっていたみたいでさっさと手を引かれてギルド出てきちゃったし。


「薬草は地中で自然発生している魔力と太陽の光を養分にして成長しているので生える場所は大体決まっているんですよ。少しでも根が残っていればまた魔力を栄養に育つので根こそぎ取っていっても問題になることはありません。この辺りの魔力が多い場所といえばこの町を南門から出た草原地帯ですね」


 ゲームでも薬草といえば光の差す特定の場所だったし、その特定の場所ってのが地中に魔力が多くあったということなんだろう。いつも同じ場所に生えているなーとは思っていたがそういった理由で同じ場所に生えていたんだな。


「草原みたいな開けた場所だとそう強い魔物は出現しないんです。あったとしても森から出てきた魔獣だったりオークが徘徊することがあるくらいですね」

「だから初心者お勧めってことなんだろうな」

「それでも回復用の薬草は青魔法が使えなかったり魔力が少なかったりする冒険者にとっては必須といっても過言ではないアイテムですから需要が途絶えることはないんです。私もギルドに入ったばかりの時はこの依頼をやりましたよ」


 この世界の魔法には勿論回復魔法というものもあるのだが、それは使える人が魔力光で限定される青魔法しかないのだ。といっても普通なら青魔法は三分の二の人が使えるはずなのでもっぱら魔力の節約に使われるんだろう。


 アイリさんは純色の赤なので回復薬が手放せなかったようだ。


 話しているうちもアイリさんは警戒を怠っていなかったようで、魔物出現することはなかった。

 しかし、薬草の群生地にたどり着くとそこには魔物が居た。


「薬草を主食としているグリーンスライムですね」


 む、魔物か……。グリーンスライムならゲームの時でもかなり弱かったし怖くもないだろう。


「魔物ですけどどうしましょうか?」


 以前俺が魔物を見て気絶してしまったためかなんだかすごく気を使われている気がする。俺の精神力じゃスライムを見ただけで卒倒するとでも思われているのだろうか。


「俺が倒してみるよ」

「頑張ってください!」


 スライムに気が付かれないように小声で叫ぶという器用な真似をしながらアイリさんが応援してくれているがすごい屈辱を感じるな。こうなったらさっさと終わらせてそこまで俺がヘタレじゃないと行動で示さんとな!


「アイシクルレイン!」


 ゲーム中ではよく使っていた上位魔法を唱えてみる。荒野の時は初級呪文しか試してなかったけど多分使えるだろ。あの時もゲーム補正があったし。


 するとやはり魔方陣の知識が湧いてきて初級魔法と比べるとかなり複雑かつ大きな魔方陣が描かれ、比較にならない程の魔力が流れていく。しかしそこまでは良かったのだが、何故か魔方陣はガラスが割れるように砕け散ってしまった。


「ど、どういうことだ」


 かなり焦ってしまい結構大きな声を出してしまう。

 するとスライムに気が付かれたようで動きがかなり活発になっている。飛び掛る準備でもしているのだろうか。


 俺は魔法が不発だったことにかなり狼狽してしまう。


「魔方陣も魔力の流れも完璧でした。イメージをしっかり持ってください!」

「お、おう!」


 何が原因か分からず動揺していたので原因が分かれば少しは落ち着くことができる。

 スライムは今にも飛び掛ってきそうだが、どうにか集中して魔法のイメージを固めていく。

 アイシクルレインっていうくらいだから氷の雨が降るんだよな。ゲームの時は詠唱のスキルレベルに応じた効果範囲を氷属性のダメージだった。それなら……。


「アイシクルレイン!」


 大きな氷の飛礫がスライムをなぎ払う光景を思い浮かべながら再度詠唱すると、今度も青く輝く魔方陣が現れ、多くの魔力が注ぎ込まれていく。するとついに俺の望んだ現象は起きた。


 薬草の群生地一帯に数えるのもバカらしいほどの巨大な氷の塊が薬草ごとスライムを消し飛ばした。スライムの姿が消えた後も大量の氷は薬草に降り注ぎ草原を荒らしていく。


 あまりにもあんまりな光景に俺は唖然としながらその結果を見ていた。


「さすが主ですね! あっさり上位魔法まで使いこなしてしまうとは!」


 ……アイリさんあんまり空気読めないんですね。

 後に残ったのは氷漬けになった荒れ果てた薬草の群生地だった。


 依頼どうしよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ