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英雄様の従者s  作者: 時鳥
序章 異世界への旅立ち
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2.召喚

 代わり映えのしない日常。イベントの起きないゲームを延々と続けるような生活の中で物語のような冒険がしたいと思っていた。このとき俺はありえないことに思いをはせるも思うだけで実際に起こるとは微塵も考えてはいなかった。




(やけに眩しいな……。もう朝か?)


 気が付けば周囲が眩しいと思えるほど明るくなっていたので目が覚めた。

 そこは何か儀式を行うような祭壇、たくさんの装飾が施された煌々と輝く魔法陣にいくつもの透き通る石がある。そして何より目立つのはフルフェイスの兜に全身鎧を着込み、両手でも片手でも使えそうな剣を腰に下げているいかにも騎士といった風の人物だ。

 あまりにも幻想的な、というか現実的でない光景に唖然としていると、全身鎧の人物が呆然としたように、


「せ、成功した……」


と呟いた。


……夢かな。




「ずっと、ずっと会いたかったです、主」


 現実逃避をしている俺に鎧の人は震えるような声で話しかけてきた。

 かなり頑丈そうで重いであろう重装備であったために男性だと思い込んでいたが、声を聞く限りどうもとても若い女性のようだ。


「ど、どなたですか?」


 返事を待っているかのように黙ってしまったので勇気を出して素直に疑問に思ったことを口にすると相手はビクッっと体を震わせたと思ったら崩れ落ちてしまった。


「召還失敗? いや、でも姿も魂もあの人と同じ。召喚のときに主の記憶を混乱させたのでしょうか……」

「服装も変わっているし変な場所だし一体何だっていうんだ」


 寝る前に着ていた服は着心地の良いラフな寝巻だったはずだが、今は見たことの無いたくさんの紋様が入った真っ青なローブを着ている。ローブなんて見た事無いが多分そうだろう。禍々しい灰色の腕輪をつけており、首には蔦が絡まった牙のような青い首飾りをしている。

 拉致でもされたのだろうか? それにしては拘束されている様子もないし変なことばかりだ。


「わ、私はアイリーンです! 覚えていないんですか?」


 覚えていないのかと言われるくらいだからどこかで会ったことでもあったのだろうか。

 しかし俺の知り合いに鎧なんて着る趣味のある人なんて居たこと無いし名前からして外人みたいだが外人の知り合いなんて居ないからな。


 アイリーン……。アイリーンといえば仲間NPCのエルフの少女にそんな名前をつけた記憶がある。でもまさか関係があるはずがないだろう。


「主の従者としてラバクト大陸を共に冒険したアイリーン・エンリルです! 主が失踪した百年前からずっと探し続けてきたんです!」


 ラバクトっていうとやっぱりあのゲームのラバクト大陸のことなのだろうか。失踪とかよく分からんけどまさか、ね……。


「ラバクト中を探しても見つからなかったからウラインに行って探し回ったのですが、見つかりませんでした。でも! もしかしたらと思って、この凍れる時の神殿にある召喚陣を使って主を召喚したんです」


 矢継ぎ早にそんなことを言われる。正直信じたくはないが俺はゲームの世界に来てしまったのだろうか?


「文献には古代の邪神が魔物を呼び寄せるために使ったものと言われていましたけど、もう探せる場所がなくなってしまったので最後の希望と思って……」


 俺が何も言わずずっと考え込んでいる間も相手はどんどん話を進めていく。


「納得はしたくないけど分かったから」


 なおも謝罪するかのように言葉を続けるのを遮った。最初に感じた全身鎧の怖い人という印象がもう完全になくなっていたため、軽く話せるようになっていた。


 このアイリーンと名乗る人によればここはEach Colorsの世界オリアスで、俺は百年前に失踪?したらしい。そんでもってずっと俺を探していたみたいだが、今のこの状況を作り出した原因の召喚とやらで強制的にここへ連れてこられたみたいだ。

 強制的に連れてこられた?


「な、なぁ。元の場所に帰ることってできるのか?」

「この召喚陣は召喚専用だから送還はできないと思います。もしかして迷惑でしたか? 突然居なくなったので何か大変なことに巻き込まれたと思い必死でしたから」


 どうやら俺はもとの世界に帰れないようだ。




 何が何やら分からんが、とりあえずアイリーンから情報を集めたところ、ここは大型アップデートで追加された新大陸ウラインのほぼ中央に位置する凍れる時の神殿という場所だという。

 アイリーンに話を聞いていると、


「私のことは以前みたいにアイリって呼んでください」


と言われたのでアイリさんと呼んでいる。さん付けも止めて欲しいと言われたが、俺にとっては初対面、しかも女性なのでさんは付けることにした。


 放置育成を始めた後三十年くらいは戦い続けていたらしいが、突如主こと俺が消失した。従者とは魂的な繋がりがあるとかで俺が生きていること事態は分かっていたが、何かに巻き込まれたのではと百年間探し続けたが見つからなかった。そして藁にもすがる思いでこの場所の召喚陣を使ったそうだ。


「まさか主が異界の方だったとは思いもしませんでした。誰も知らないようなことをたくさん知っている素晴らしい方だとしか」

「兎に角これからどうするかを考えんとな」

「す、すいません……」


 あまりにも衝撃的な事実に働かない頭でなんとか現状を把握するよう努めた。


「で、これからの方針なんだが……」


 異世界に来てしまったことは、まぁ良くないけど良いとして、俺には元の世界での生活もあるし、帰還の方法を探さないといけないだろう。


「とりあえずゆっくり話せる場所に移動しましょう? ここから一番近くの町の宿でなら落ち着いて話せると思いますから。ここだと魔物が来ることもありますし」

「ま、魔物が居るのか」

「……? 案内します。今度は私が貴方を守るから」


 俺の呟きに少し不思議そうにしながらもごつい小手に引かれながらこの大きな神殿を後にした。


 元の世界と全然違う常識の世界で俺はこれから先どうなるのだろうか……。


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