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……

………先日のやりとり…?


何かが脳裏に引っかかった。


『明日もここに来るって言わなければ動かない』

『明日、ここで待ってるからな、ハニー』


…お、思い出した…。


「っていうか、ちょっと待て。あれはお前の一方的な言葉であって俺は『約束』した覚えはない!」


相手の俊敏な回し蹴りを避けながら、なんとか主張する。


「俺が口に出した時点で、それは絶対に守られなきゃいけない約束事なんだよ!」

「………」


絶句した俺を誰が責めよう。今まで生きてきた人生の中で、ここまでの俺様に遭遇したのは、たぶん初めてだと思う。

頭のおかしさに俺様要素まで追加されたら、それはもう最凶だよな。

のん気にそんなふざけた事を考えていたら、…思いっきりやられた。


「…ッグ…ぅ…!」


両腕でカバーしようとしたものの僅かに遅く、相手の蹴りが脇腹に入る。

致命的ではないにしろ、結構なダメージをくらってその場に崩れ落ちてしまった。

横になって腹を押さえながら何度か咳き込んでいると、目の前にしゃがみこんだオレンジ頭が顔を覗き込んでくる。


「何まともにくらってんだよバ~カ」

「…ゴホッ…、お前…せめてすまなさそうな顔くらいしたっていいだろ」

「すまないと思ってないから無理」

「…あぁ…そうかよ」


やっと苦しさが治まり、一度大きく深呼吸して息を整えると、また立ち上がるのも馬鹿らしくなってそのまま仰向けに寝転がった。

なんかもう、この前のやりとりと一緒だなこれ。


あー、空が青い…。


「オイ、人の存在を無視するな」


なんか隣に煩い奴がいるけど、…風も気持ちイイし、疲れたし、…このままサボるか…。


「…って、何してんだお前!」


顔に影が落ちたかと思ったら、唇に柔らかな何かが押し当てられ、影と共にすぐ離れた。

何が起きたかわからずに一瞬固まったけれど、それが何かわかった瞬間、勢いよく上半身を跳ね起こしてオレンジ頭を睨みつけた。


…信じられねぇコイツ。


「俺のこと無視するアンタが悪い」

「だからってキスするか?!普通しないだろ!」

「俺、普通じゃないから」

「………」


脱力感と怒りで震える拳をグッと握り締めて、殴りたい衝動をなんとか堪えた。

ダメだ、コイツとは意思の疎通が出来ない。…もう無理、これ以上関わりたくない。


意識すると鈍く痛む腹に手を当てて、ゆっくり立ち上がる。

金輪際コイツに関わるのはやめよう。

そう心に固く誓って歩き出した、…いや…歩き出す『はず』だった。


「…手ぇ離せ、オレンジ頭」

「イヤだね」

「………」


制服の上着の裾を思いっきり掴まれてしまっては、これ以上進むことが出来ない。

振り返って、しゃがみこんだまま腕を伸ばしている相手をジロリと見下ろすと、何故かこっちが睨み返された。

それも、恨みがましい目で。


…なんでだよ…。どちらかといえば俺のほうが被害者なのに、これじゃまるでこっちが加害者みたいだ。


「…手を離、」

「イーヤーだ」


再度言葉を放てば、その途中で遮られる。


…ムカついた。


「いい加減にしろ。離せ!…っていうか、もういい」


コイツの返事をいちいちとりあっていたら話が進まない。

力づくで足を踏み出した。

この際、制服の裾が解れようが、多少腕と首が苦しかろうが、問答無用でこの場を去ってやる。

そんな決意のもと、オレンジ頭も一緒に引きずる勢いで歩き出した、…はずだった…。


「……これ以上俺を無視するなら本気で殺るからな」


耳元で囁かれる本気で怒っている低い声。

いつの間に立ち上がっていたのか、背後からスルリと首元に絡まる腕。

いま振り向いたら確実にお互いの顔がぶつかると想像がつくほどの近距離で毒づかれ、それでも何とも思わずに歩き出せる奴がいたらお目にかかってみたいものだ。俺には無理。







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