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第一部になります。第二部は性描写があるため、ムーンライトノベルズに掲載させて頂きます。


昼休みの屋上。

陽射しは強烈だが、給水塔の影に入ってしまえば風が心地よい。

額にかかる自分の黒髪が風に揺らぐ様子が、何とはなしに瞼の裏にうつる。

夏の屋上はあまり人が来ない為、静かに寝るのにはうってつけだ。


二年になってから見つけたこの穴場。今日もいい天気だと給水塔の日陰で寝ころんでいたところで、それは起きた。


「…ッ…!」


いきなり脇腹に走った衝撃に、思わず呻き声がこぼれる。

思わぬ事態に遭遇すると、人の脳はそれをそれと認識するまでに時間がかかるようだ。

いったい何事かと瞼を開いた先、見知らぬ人物が横に立ってこっちを見下ろしている姿が視界に入った。


癖のないオレンジ色をした鮮やかな髪。気の強そうな吊り上がり気味の猫目。

白の半袖シャツにチャコールグレーのズボン。それにボルドーの斜めストライプのネクタイという、俺と同じ制服を着ているのを見ると、この高校の生徒だという事はわかる。不審者ではないようだ。


けれど、数度瞬きをしてから相手を確かめるように見ても、何度見ても、…絶対に知り合いではないと言いきれる見知らぬ容貌。

そしてその数秒後。ようやく脳が動き出したのか、さっきの脇腹に走った衝撃は、この見知らぬ相手に蹴られたからなのだとわかった。

怒りよりも先に疑問が湧き起こる。


…なぜ俺は蹴られた?


片手をついてゆっくりと上半身を起こし、確実に目の覚めた状態で相手をもう一度見つめる。

そこでもうひとつ気が付いた。どうやらこちらも同じように相手から観察されていたのだと…。


なんなんだ。


この状況におちいった意味がわからず、気をとりなおすように片手で無造作に前髪をかき上げた。


「…お前、いま俺のこと蹴った…よな?」

「まぁね」

「まぁね…って…、見ず知らずの相手を蹴らないだろ普通」

「俺は普通じゃないんだよ」


堂々と返されたその言葉に呆れて、大きく溜息を吐きだした。

あまりにも悪気のない様子に、毒気さえ抜かれる。


見た感じは普通、というか、俺と同じような体躯をした生意気そうな男。

とりあえず、いきなり蹴られてそのまま済ませるほどお人好しではない俺は、お返しに相手の脛に蹴りを入れた。…ところから戦いは始まった。


お互いに、本気で相手を倒そうという気が無い事がわかる軽いジャブの応酬のような取っ組み合い。

襟首を掴んで締めつつ脇腹に蹴りを入れてみたり、腕を掴んで後ろ側に回りつつ尻に蹴りを入れてみたり。

急所を狙わないそんな軽い殴り合いをしばらく続けた数分後、だんだんと面倒くさくなりどうでも良くなってきた俺がいた。


相手の襟首から手を離して仰向けに寝転がり、はぁ…と気の抜けた溜息を吐きだす。

天が高くて青い。こんな空の下で見知らぬ奴と何をやってるんだろう。


「なに、もう終わり?」

「飽きた。…ってなんで俺の上に乗るんだお前は」


どうしてこうなった…と、20分前に起きた出来事から現在までを記憶に呼び起こして改めてうんざりしていると、何故かオレンジ頭が俺の大腿を跨ぐ形で座り込んできた。

重いし暑い。

それだけならまだしも、続いて上体を屈めたオレンジ頭は、両手を俺の顔の両サイドに着いた。


…顔が近すぎる…。


間近から見下ろされているこの状況を一言でいうと、不快。


「……ホントになんなんだお前」

「ん?こんな所で寝てたから」

「…寝てるからってなんで見ず知らずの奴に蹴られなきゃならねぇんだよ」

「素敵なコミュニケーションだろ」

「…どこが…」


何故こんな事になってしまったのか意味がわからない。

いや、状況より何よりもっと根本的な疑問がある。


“目の前でドヤ顔しているコイツはどこの誰だ”







すみません、また短編です;;

出来る限り連続で更新したいと思います。

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