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「あ…あぁ、うん…。でも本当に成瀬と深い仲なの?」

「………」


自己嫌悪から一転、今度は唖然とした。

だから何故そこを気にする、七堀。


「そうそう、とっても深い仲なの俺達」

「…相羽…、お前も黙れ」


いつの間にか横まで来ていた相羽が、ワザとらしい満面の笑みを七堀に向けて余計な口を挟む。


「他人行儀に名字で呼ぶな。圭介って呼べって、何度言ったらわかるんだよ」

「お前は相羽でじゅうぶんだ」


横目で睨みつつ反撃すると、さっきまでのわざとらしい笑みから一転、また不機嫌さを醸し出す相手に笑いが込み上げてきた。

自分の感情を誤魔化す事をしない。自分に素直で、裏表が無さすぎる。


「…なに笑ってんの?」

「いや、可愛いなと思って」

「は?!誰が?!」

「お前に決まってんだろ」


今度は顔を真っ赤にする相羽に、堪え切れなかった笑い声が口からこぼれ出す。

慣れてきた今では、いつもの傍若無人な態度が小さな子供と同じだとわかった。

要は、駄々をこねてるのだ。

そう思うと、ころころ変わる反応が可愛く見えてくる。


「…あの…、もしかして俺、お邪魔?」


その時、横から控えめで居心地の悪そうな声が聞こえてきた。

…一瞬だけ七堀の存在を忘れていた…。


「そんなことは、」

「うん邪魔」

「…おまえ…」


ここまで自分の感情に正直だと、いっそ清清しいほど。

見習いたくはないが、別の意味で感心する。

更に、片手でシッシッと七堀を追い払うようにしている相羽を見て、もう何も言うまい…と疲れてしまった俺を誰が責めよう。

おまけに、後輩に邪険にされたというのに、七堀は怒るどころか悲しそうな表情でフラフラと歩き出して本当に屋上を去ってしまった。


…とりあえずそこは怒った方がいいと思うけどな、七堀。


頭が痛くなる2人のやり取りに唸りつつ、結局相羽の思うとおりの状況になった現状に溜息を吐いた。


「…そろそろ昼休みも終わる。すぐに下りるくらいならこんな時間に上がってこなくてもいいだろ」


片手で前髪をかき上げながら言うと、憎たらしい事に相羽は、わかってないなーと両肩を竦めて首を横に振る仕草をした。


「そんな短時間でもアンタに会いたいって俺の気持ちが、どうしてわからないかな」

「…お前、それ絶対にふざけてるだろ…。いい加減に飽きたらどうだ?」


俺の事を好きだとか、俺しか考えられないとか…、相羽の言っている事を鵜呑みにするつもりはない。

俺への独占欲は、本当だと思う。ただ、そこまで好かれる程の事をした覚えはないし、なによりも俺たちは男同士だ。本気で受け止められるわけがない。







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