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少女とカゲ 2

掲載日:2026/05/24

少女とカゲ 2


人間関係に疲れた私は時々丘の上に行く。

私はここで目の前に広がる景色を見ていた。 風が気持ちいい。

今日晴れて良かった。

雲が流れていく。

目の前には山が広がる。

反対を向くと私の住む町が見える。

こんな丘がある町に住める私は運がいい。

私はこの丘に吹く風になりたい。

私に吹く風になってどこまでも飛んで行けたら良い。

ずっとそう思っている。

私は丘の上に寝そべって空を見上げた。

そのまま横を向くと私よりも少し背の高い女が、私の横に立っていた。

彼女は遠くを見ていた。

私は彼女に話しかけた。

「ここの丘の景色最高ですよね。私、好きなんです。」

彼女は少し気まずそうに頷く。

「う、うん。そうだね、、、。」

私は彼女に聞いた。

「あなたもこの景色が好きなんですか?」

彼女は答える。

「うん、、、。好きだよ。」

私はさらに話し続けた。

「ここって標高が少し高いじゃないですか。

だから風も涼しくて気持ちが良いんです。

私、学校生活で疲れた時ここに来るんです。

ここが私の安らぎの場所なんです。あなたはどうしてここに来るのですか?」

彼女は遠くを見ながら答える。

「私は、、、分からない。」

しばらく沈黙が続いた。

この沈黙すら心地が良い。

全く気まずくならない。

それほどまでにこの場所は落ち着く。

自然豊かで風が涼しくて目の前には山しかない。

まるで別世界のようだ。

反対方向を向くと私の住む町や私の通う学校が見えるので現実に引き戻されちゃうけど。

彼女は最初からずっと暗い顔で私の横に立っていた。

どうして暗い顔をしてるのだろう?

私は寝そべった状態のまま彼女を見上げていた。

彼女が私の視線に気づいて私を見た。

私達は目が合った。

彼女は答える。

「学校、行ってるの、偉いね。私はずっと不登校だったから。」

私は彼女のカミングアウトに少し驚いた。

「そうなんですか?」

彼女は頷く。

「学校、、、全然楽しくなかったから」

私は彼女の置かれた環境を知らない。

けれど彼女はきっと学校でとても追い詰められていたのだろう。

イジメが原因だろうか?

当然、世の中善人ばかりじゃない事を私は知っている。

だから私達が何もしていなくても相手は私達を勝手に傷つけようとしてくる。

私は思う。

この世界は被害者よりも加害者の方が有利に出来ているのではないか?と。

そんな不条理が通用して良いわけがないと言いたいところだが、もしこの世界が加害者が被害者よりも圧倒的に損をするような仕組みだったら、この世界に加害者も被害者もいないだろう。

だれも加害者になりたがらないからである。

つまりこんな不条理な世界でも私達は受け入れて前に進むしかないんだ。

この命が続く限り。

私は彼女に聞いた。

「いつから学校行ってないんですか?」

彼女は答える。

「中学生から。」

私は今高2である。

彼女は高校も通っていないらしい。

私は彼女に聞いた。

「どうして学校に行かなくなったのですか?」

彼女は少し黙ってから答えた。 

「私はね。中学校が苦痛でしか無かった。まず、友達が居なかった。私はいつも一人だった。だから私は学校に行かなかった。ただそれだけ…。」

沈黙が流れる。

私達はお互いに黙ったままだった。

私は彼女に聞いた。

「もし良ければ私と友達になりませんか?」

彼女は私を見て聞いた。

彼女は私の言葉に驚いていた。確かに私も話すのが急すぎたかもしれない。彼女は戸惑っていた。私は付け足した。「いや、その、いくらなんでも急すぎるよね!出会ったばかりですぐ友達になるなんて…。」

彼女は答える。

「うん、、。私も驚いた。」

私は聞く。

「で、どう?」

「!?」

彼女は私を見て目を丸くした。

そして少し目を逸らす。

またしばらく沈黙が流れる。

そして彼女は言った。

「私、性格良くないよ。それに話も面白くないし、何も言えないよ。それでも良いの?」

私は答える。

「そんなの関係ある?誰が何と言おうと友達は友達でしょ。あなたがどんな性格でも、面白い話が出来なくても今の私とあなたは友達。それで良いの。深く考える必要なんてない。」

私は彼女の目を真っ直ぐ見て彼女に言った。

彼女の目は潤んでいた。

私は彼女と二人きりで丘の上から晴れた空と雲とその向こうにある山々の連なりをいつまでも見ていた。

空がオレンジに染まり、丘の上にいる私達二人を夕日が照らしている。

彼女は私に言う。

「懐かしい…。」

私は聞く。

「懐かしいって?」

彼女は答えた。 

「私ね。夢を見たの。余りよく覚えてない。けれどね、私はそこで秘密の友達と出会った。その友達が私の心の中にいる。そう考えてると心が軽くなるの。私は一人じゃないって思えるの。その秘密の友達と出会った時に感じた感覚が私の中で今蘇った気がしたんだよ。私、一人じゃないって。」

そう言うと彼女は大粒の涙を流した。

私はそんな彼女を隣で見ていた。

私はいつまで彼女と友達でいられるのだろう。この友情は永遠に続くかもしれないし、どこかで終わるかもしれない。 

友情が終わる時はすぐに来るかもしれない。

それでも私は彼女と出会って友達になる事が出来た。

そんな大切な今を私は彼女と二人で抱きしめる。

あなたは一人じゃない。

私だってそうだ。

私は彼女に言う。 

「これからよろしくね。あ、そうだ。あなたの名前は何て言うの?」

彼女は答えた。

「私の名前はヒカリ。…あなたの名前は?」

「私はね。カゲって言うの。皆にはカゲちゃんって呼ばれているんだよ。」

彼女は大きく目を開いた。

そして小さな声で呟いた。

「え…。どうして、、、。」

その後、彼女は言った。

「私、全て思い出した。」

私は彼女が何を言っているのか分からなかった。

「何を思い出したの?」

私は彼女に聞いた。

しかし、その後彼女はこう言った。

「…ごめん。私、また忘れてしまったみたい…。」夕日が射す丘の上で、私は彼女に「またね。」と別れを告げた。

彼女は「うん。」と頷いて小さく手を振ってくれた。

帰ってる途中私はずっと気になっていた。

彼女は一体何を思い出したのだろう。

そして何を忘れてしまったのだろう。

結局私はそれを知る術がなかった。

私は今日彼女と丘の上で出会って居心地が良かった。

丘の上の景色と彼女との出会いが私の心を少し軽くしてくれた。

これで私は明日からも頑張れる。


ヒカリとカゲ。

二人の少女はその後、一生の友達になった。

初めて出会った日から、少女達はずっと友達のまま生涯を終える。

けれど、カゲという名の少女がヒカリと初めて出会った日の帰り道に抱いた疑問の真相を知る事はなかった。


終わり

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