第7話 とんでもない仲間
なんやかんや1ヶ月経って人口が150人になりました。流民が来たり、難民助けたり、ゴブリンとオークを迎え入れたり、知能のない害獣オークやゴブリンぶっ殺したり、近くの山賊団を叩き潰したり、食うに困って仕方なく賊やってた奴らや義賊を説得したりして受け入れたりと大変でしたよ。だが大工が増えてボロ廃村だったここも綺麗になってるし、農地開拓も出来ている。野菜とかはスラムに行って買ってきたり、肉は狩猟したり、オークが熊や猪ぶっ倒してくれるので意外と困らないんですよ。けど野菜不足ダメ絶対。え?スラムでよく買い物できたなって?脅されたのでいい笑顔で20人くらいでこっちも剣を抜いて臨戦態勢に入ったよ?平和的に解決したよ?
「だいぶ良くなってきましたね。ここにきたばかりの頃が嘘のようです。」
「そうだな。みんなのおかげだよ。どんどん発展させていかなきゃいけないが…。」
「何か不安なことがあるのですか?」
あるんだよなぁ…。それは単純明快、金だ。維持費、他の村との交流、税収、国を作るには必要なことだ。今は俺が揃えた農具があるが、壊れたら新しく買わなきゃいけない。俺のポケットマネーでは足りないぞ。
「金だ。単刀直入に言っちゃうけど。ここがさらに発展したら交易が始まるし色々買わなくちゃならないからな。武器も上手くやりくりしてるが…。」
「確かに…急いで対策しなくてはなりませんね。」
しかしどうするか。鍛治職人はいないからな。大工さん達に無給でやらせるわけにはいかんしなぁ。ジャックやジグを呼んで会議するか?材木切っても小遣いにしかならんぞ。
「う〜ん…。」
考えろ俺。オークとゴブリンを使ったり、元山賊を使って金鉱山探すか?いやだが金を見つけてもなぁ…。考えがつかねえ。
俺が足りない脳みそを使って考えていると1人の元賊のおっちゃんがやってくる。
「どうした?」
「親分、ちょっとやばいんですよ、ここから5キロくらい離れたところなんですけどね?巨大蜘蛛の巣がある森があるんですよ。近くの山賊とかは絶対に近寄らなかったほどです。
「え、蜘蛛?」
蜘蛛?うそ、しかも巨大蜘蛛?まじで?
「ひ、ヒロナカ様?顔が真っ青ですよ!?」
「お、おう。俺蜘蛛ダメなんだよ。マジで無理なんだよ。ハエトリグモ以外ダメなんだよ。絶滅しろって思うくらいダメなんだよ。タランチュラとかもう無理。ジョロウグモとかコガネグモとか絶滅しろって思うレベル。」
「その蜘蛛は知りませんがそんなに苦手なんですか!?」
無理無理無理!俺ガキの頃ある映画を見てトラウマになったんだよ!あいつらなんで生まれたんだよ!目が8個で足8本とかもう無理!ホラーだよ!バケモンだよ!気持ち悪いんだよ!よし決めた。
「焼き払おう。戦闘員60人全員集めろ。松明で焼き払う。燃やせ!焼き尽くすぞ!」
「決断はええっすよ親分!?」
知るか!奴らは皆殺しだ!しかも巨大蜘蛛だと!?化け物確定だよ!ゴキブリの方がまだ可愛げあるわ!ハナですらドン引きしてるが知らん!奴らは人類の敵である!!これは正義の行いだ!
「いや正義の行いではないです!明らかに私情入ってるじゃないですか!」
「やかましいぞハナよ!奴らは敵だ!我らが人類の敵だ!アストリス王国より敵だ!」
「ええ!?そこまで言います!?と、とりあえずみんなを集めてきます!」
ヒャッハー!焼き払ってやるぜー!前世でコガネグモが俺の顔面に張り付いたトラウマと恨み忘れんからな!!
というわけで35人で向かうことにする。全員で行くと流石に守る人がいないからな。全員が俺の恐ろしい形相に怯えながら松明持って進軍ですよ。さて、その例の森に着いたぞ。たっぷりと油を染み込ませた松明にライターで火をつけて焼き払ってくれるわ!
「よし、田中、高橋、火をつけろ。」
「お、おう。ご主人、オデら以上に悪魔になってる。怖いぞ。」
「知らん!行けい!」
高橋と山田が近づくと1メートル50センチくらいの巨大蜘蛛がガサガサと音を立てて現れる。気持ち悪い!!マジで気持ち悪い!黒くてテカテカしてやがる!沖縄のオオハシリグモみたいな見た目をして、デカくて黒くなった奴が3体現れやがった!!ぶっ殺してくれるわ!
「ま、待て待て!?お前ら、我々の森に何をする気だ!?」
「………喋った!?」
「うわぁぁぁぁぁ!?巨大蜘蛛が喋ってるぞ!?」
蜘蛛が必死に燃やそうとするのを阻止しようと前足を出して必死にシッシと追い払ってくる。しかも喋って。
「え、喋れんの!?」
「あ、ああ…。な、なんで森を燃やそうとするんだ?」
「ん?蜘蛛が嫌いだから。村に近いから。あと人間襲いそうだから。以上。」
これ以外理由なんてありません。怖いもん!ホラーだもん!
「そんな理由でか!?いや、確かに生き物は襲うが…それは生き抜くためでな…。まてまて!取引しよう!な!?」
「親分、取引しようと提案してますが…。とりあえず燃やすのは中断して、話聞いてみても…」
「わかった…。とりあえず聞くか。」
蜘蛛のリーダー格が冷や汗をダラダラ流しながら何かを提案してくる。うーん、確かに多種族国家を作る気でいるが…こいつら何が出来んだよ。化け物じゃねえかよ。
「そうだな…我らは蜘蛛だから糸を出せる。そこでだ、実はねばつかない普通の糸を出せるんだ。それを生産するからそれを使ってくれないか?」
「…今なんて言った?もう一度言ってくれ。」
「いやだから糸を…。」
そんなもんで交易すんのか?糸だけかよ?みたいな表情を仲間達はしている。
いや、最高の交易品だぞ…?こいつら知らねえのか?あの糸だぞ!?しかも蜘蛛の糸ってかなり優秀なんだぞ。防弾チョッキに使われるケブラーより頑丈なんだぞ!
「おい、それ本当に出せるのか?」
「勿論。それじゃ実物出すからな。太いのと細いのを両方出すぞ。」
カサカサと音を立てて振り向いて糸を出す。白くて綺麗な糸だ。
あまり触れたくないが、触り心地と感触を確認する。すげぇ、本当にねばつかないぞ。縫い物用の糸と変わらない。
「こ、これをくれるのか?」
「勿論だ。いや、我らはこれしか渡せないが…」
「いや、これをくれるなら良い…。最高だ。」
水で洗うがな。こいつは良いぞ‥。これなら金を稼げる!
「えええ!?糸でいいんですか!?糸ですよ!?」
「良い。むしろこれは…村の発展に役立つぞ。まさか嫌いな生命体から素晴らしいものをもらえるなんて…。」
「いや…我が言うのもなんだが…本当に良いのか?糸だぞ?」
蜘蛛ですら困惑してる。良いんだ。糸は最高の交易品だ。蚕を知っているだろうか?いわゆる蚕の糸、絹は歴史上最高の交易品と言っても過言ではない。シルクロードなんてできちまったくらいだ。そして絹に匹敵する羊毛、綿、これも交易品に使われた。勿論糸以外には香辛料などもあるが、糸はそれだけすごい交易品なのだ。
「いや、良い。これができるなら安泰だ。対価はなんだ?」
「そうだな…ゴブリンとオークの亡骸でいい。」
「契約成立だ。」
こんなんで良いなら喜んでやるよ。うんうんと頷いていると10人のオークとゴブリンが抗議してくる。
「ご、ご主人!?俺らいやでゲスよ!?」
「ふざけるな!!俺たちは食べ物じゃないぞ!?」
やべ、これ誤解されたな。知能ある奴らは仲間にするんだからそんなことしねえよ!
「すまん、言葉が足りなかった。餌にするのは知能のない連中だ。お前達知能がある奴らは仲間にするからな。」
「あ〜よかったデゲス。」
「それを先に言ってくれ…あせったぞ」
すまん山田、ジャグ、今のは反省する。しかし疑問に思うことがある。
「なぁ、お前らなんで喋れるんだ?言い方は悪いがモンスターみたいなものだろ?魔王軍の配下みたいに思えるが?」
そう、そこが疑問だ。田中、高橋、ジャグに聞いたのだが、オークやゴブリンが魔王軍にいないのはちゃんとした意味がある。少し長くなるが、魔王軍の主戦力はスケルトンやスライム、ゴーレムといったモンスターだ。それに対してオークとゴブリンはモンスターに近いが亜人だ。だからこそ仲間にならず対立してるらしい。だが蜘蛛は違う。モンスターに近くないか?虫ではあるがこんなにでかいとなぁ。
「ああ、実は我らは人間の死体と蜘蛛を合体させて作られた存在だ。」
「…は?」
「ゴブリンやオークと同じで、我々にも知能がある者とない者がいる。我々は少数派でな、必死に逃げてこの森に住み着いたのだ。なるべく知能のあるものは糸で巻いて追い出したりしてな。だが知能のない奴らは別だ。奴らはとにかく襲いまくる。数も多い。」
マジか…流石に自分の過激な行いに反省する。こいつら被害者なのか…。流石に俯いて自己嫌悪に陥ってしまう。蜘蛛は嫌いだがそれとこれとは別だからな。
「それに我々にはあることができる。」
「え?」
リーダー各の2人が光に包まれると人間になる。男女になった。だがよく見ると額に6つの目が、小さくて跡にしか見えないが。間違いなく目がある。
「多少の魔法が使えてな…人間体になれる。体力を消耗するから半日しかなれないが。」
「これなら良いでしょうか?敵にならない事、あなた方を襲わないことを誓いますから。」
まさか心強い仲間になるとは思わなかった。こんな優秀な仲間そうそういないぞ。
「わかった、焼き払おうとしたことを謝罪する。だが本当に対価はそれで良いのか?」
「構わない。我々は蜘蛛だからな。なんでも食えれば良い。家畜でもいいぞ。」
「あと私たちの糸は燃えにくいのよ。」
女性の蜘蛛が丸めた糸を仲間に出してもらい火に当てる。煙が出るだけであまり燃えない。まじか…綿の代用もできるのか!
「こいつは良い…取引成立だ。俺は他人種国家を作ろうとしている。もしよければ俺たちの村に来ないか?歓迎する。俺は弘中牧男だ。よろしくな。」
俺が自己紹介するとリーダーが考え込んでいる。嫌か?
「すまないが我々がいると嫌がられるだろう。見た目でな。だからこの森に住むが、仲間であることに変わりはない。我はアズチ。」
「私はメキリ。よろしくね。」
「わかった。ところで…何体いるんだ?」
そこが気になる。いくら俺でも入りたくないぞこの森の中には。
「510匹はいるぞ。我と同じ成体は30匹ほどだが、他はまだコグモだ。とはいえ大型犬くらいの大きさはあるがな。」
「だけど外に出たいメンバーもいるの。10匹ほどだけど良いかしら?空いてる場所で糸を作らせるから。あなたの村に余裕ができたらどんどん受け入れてあげて?」
まぁ我慢しよう。俺ほんとダメだから。マジで。
「ならこれでも良いか?この姿なら一部のものだが体力を使わずにいつでもなれる。」
アズチが魔法を使う。光に包まれると下半身は蜘蛛、上半身は人間の蜘蛛バージョンのケンタウロスみたいになる。まぁこれなら良い。
「これでいてくれ。まだ耐えられる。」
「本当に蜘蛛が苦手なのね…」
メキリがため息をつくが許してくれよ…苦手なものは苦手なんだから。
だがこれで人口がさらに増えた。蜘蛛種族と言うとんでもない仲間が。村人がこれで160人。そして森の蜘蛛が500匹…。しかも糸と言う最高の交易品を手に入れた。これを加工して他国に売る。さて、問題の一つは解決したぞ!
さて、村に戻りジャックさんや他の大工を呼ぶ。蜘蛛を仲間にしたこと伝えたら驚かれたが、そんな事はどうでもいい。製糸場を作るための設計図を書くのだ。アズチと仲間2人が蜘蛛の姿のままで現れ、試しの糸を出してもらう。
「ならこうしたほうが‥」
「そうですね、こうすれば綺麗な束として撮りやすくなるかもしれません。」
「ここに洗うための水場を置きますか。」
大工達が職人としての本領を発揮するように話し合い、図面を書いていく。職人さんってすげえなぁと思いながら眺める。言い方は変だが、手慣れたように設計していくその姿はかっこいい。さて経済問題の解決の解決も見えた。どんどん発展させるぞ!




