第4話 本気
「ひ、ヒロナカ様?本気ですか?」
「チョ、チョット待ツデゲス!出来るわけないでゲス!」
「不可能?知らんな。俺と契約した以上最後までついてきてもらうぞ。」
焚き火を囲みながら俺の計画を話したら5人が「こいつまじかよ…。頭おかしいんじゃねえの?」的な目で見てくる。失礼な、本気だ本気。ゲンコツくらわすぞ。
「オデ、頭悪イ、ダケドムリナノワカル。ゴ主人、ナンデソンナコトヲスル?」
「ん?王国潰すため。魔王軍も。」
「……エ?」
まぁ普通は意味わからねえよな。仕方ないから俺は経緯を話した。別に隠すことじゃないし。異世界から召喚されたこと、そして魔法をかけられてそれなりに強くなったこと、そして本当は罠で有り、使い捨て同然で、復讐しに向かったが返り討ちにあったこと、傭兵生活を送っていたことを話す。
「ま、まさかそれで国を作るんですか!?」
「おう。とことんやるぞ。だからこそ最北端に向かう。だから防寒着も買ったんだ。」
「マ、マツデゲス!ク、国ッテ、俺トオークガイルデゲスヨ!?邪魔ジャ…」
ゴブリンの意見は尤もだ。だが俺がお前らを買った理由はちゃんとあるんだよ。むしろゴブリンとオークがいないと成り立たない国だ。
「いや、俺は多種族の連合国家を作る。こう見えても傭兵生活で調べててな、北部大陸は空白地帯だ。そして、南とは違い難民の宝庫でな、スラム、小国でも治安が悪すぎて国と言えるかわからない国、さまざまな種族が入り乱れてる。」
「それがどうしてオークとゴブリンを?」
「オークとゴブリンも国民にするからさ。全ての種族による国…勿論オークとゴブリンが2種類いるのは知っている。知能があり、対話ができるお前たちのようなタイプとただ無秩序に暴れる対話もくそもないただの害獣タイプ。まさか本当にいるとは思わなかったがな。」
何よりこんな優秀な種族はないと思っている。ゲームとかだとやられ役だが、仲間にすると心強いからな。俺は教える。俺が作ろうとしてる国は難民や流民の人間、エルフ、ドワーフ、オーク、ゴブリン、ダークエルフ、コボルト、ケンタウロス、獣人など多くの種族が平等に暮らせる国だと。
「ゴブリンとオークは最高の種族だ。言い方は悪いがゴブリンは繁殖力が高く、数が増えやすい。オークも数が多く力がすごい。鎧を着せ、ちゃんとした装備をさせればゴーレムとやりあえる。他の種族はまぁそこはお楽しみさ。」
「適当デゲスネ…ッテ待ツデゲス!俺ラゴブリンハ弱イデゲスヨ!?」
ハイ出ました。ゴブリンが弱い?んなわけねえだろ。弱かったら仲間にしねえよ。むしろ役に立つわ。
「誰がゴブリンが弱いって決めた?戦争の本領は数。ゴブリンが3た…いや、3人いれば人間一人を倒せる。戦争は少数でやるんじゃない。数だ。大人数でやるんだ。」
兄妹が怯える。自覚していなかったが…俺はこの時笑み…悪魔のような、外道のような笑みを浮かべていたらしい。
「そしてこの連合国家…多種族国家だから連合という言葉を使ったがまぁいい…建国して…大きくなったら魔王軍と王国軍の横合いをついて…思いっきり殴りつける。」
俺が拳を掌に叩きつける。これが俺の計画だ。無謀で結構、とことんやるぞ俺は。
5人が唾を飲む。ごくんという音が鳴らし、冷や汗をかいている。「この人は本気だ。」と理解した。
「んで、お前ら名前あるのか?獣人とかオークとかいうの疲れたぞ俺。」
「ナイ。オデモ、ゴブリンモ故郷ヲ滅ボサレ、仲間ハ皆殺シ。名前ヲ奪ワレタ。オソラク、アノ獣人タチモ。」
「ええ、オークの言う通りです。名前を奪われました…。ヒロナカ様、新たな名をつけてくれませんか?」
なんてこったい、俺ネーミングセンスねえよ!俺あれよ?名前決めるのめんどくさがってデフォルトで済ますタイプだぞ!?某SRPGロボットゲーとか!あれ?子供二人は?
「ん?お前らは?名前あるのか?奪われてないのか?」
「う、うん。私はお兄ちゃんと共に奪われなかったから…。兄はシルク、私はルキと言います…。」
「そうか…言い方は悪いが名前を奪われなくて良かったな。いい名前だ。」
しかし悩むな。名前ねえうーん悩む。
「ゴシュジン、ナヤンデルデゲス」
「ナガイ…」
うるせえ!ネーミングセンスのない男舐めるな!あーどうすんだこれ。マジでどうすんだこれ。うむむ…。よし、決めた!
「よし、オークはオーク高橋、ゴブリンはゴブリン山田。獣人の姉ちゃんは…うん。ハナだ。」
「チョットマテコラ」
「俺トオークノ名前ハ適当ニ決メタデゲスネ!?」
高橋と山田が青筋浮かべてる。ていうか困ってるぞ。別にいいじゃねえかオーク高橋とゴブリン山田。語感がなんかいいじゃないか。
「妙に私はまともですね…。」
「これはひどい。」
「ていうか高橋と山田ってなんですか!?」
ん?俺の国の一般的な苗字。んーさすが俺。センスあるな。天才だろ?うん。
「ボゲェ!?」
「ジャーマンスープレックスの次はパンチかよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
オークにぶん殴られました。痛えよ…傭兵の頃戦争してた傷よりも痛えよ…。あ、涙が飛んでる〜。すげえ…。
「何すんだテメー!?」
「ウルセーボケ!高橋ッテナンダ!?」
「別にいいだろ!ネーミングセンスないんだから!」
いきなりグーパンしやがってこの野郎、許さん!!俺と高橋で殴り合う。そりゃもうとまらんレベルで。覚悟しろやコラァ!!
「自業自得ですね。」
「自業自得よ」
真っ当な意見でございますがもう名前は変えられません!お許しください!
殴り合いが終わり、互いに息を切らしてると高橋が頭を掻いてぼやく。
「マア、契約シタイジョウツイテク。名前カエラレナイノハシカタナイニシテモ次ハ真面目ニヤレ。流石ニソレハ主人モ部下モ関係ナイ」
「いやほんと真っ当な意見でございます。」
みんなの目線が冷たかったので土下座敢行しましたよ。本日2度目の。何よこれ、おれご主人だよね?妙にひどくね?泣くよ?泣くぞ?まぁいいや。準備するか。
「まぁいいや、シルク、ルキ、洗い物を頼む。近くの川でいいからな?。ハナは火の始末を、高橋と山田はとりあえず先に荷物用の馬車に乗っててくれ。寝れるスペースあるから。」
「マァソレハ仕方ナイ。女子供優先ダカラナ。」
高橋の山田は簡易的な屋根のついた荷物用の馬車に乗り、獣人3人は川に向かい、2人は食器を洗い、ハナは水をバケツに入れて火にかけて消化する。さて、準備完了だな。
「全員乗ったな。忘れ物はないな?もう15時だから出発するぞ。俺が運転するから高橋、山田は見張を頼む。山田は左右を交互に、高橋は後ろを頼む。疲れたら寝ていいからな?」
「ヒロナカ様、こちらの馬車はお任せください。私も馬車を運転することはできますので。」
「ありがとう。」
「オデモ運転デキル。マカセロ。」
「わるいな。んじゃ行くぞ。」
高橋とハナに感謝して出発する。勢いよく走るとゆっくりできないからな。焦らずゆっくり行こう。長話をしすぎたから進まないとな。悪いな馬たち、頼むぞ。最北端までおよそ3.5、遅くて5ヶ月。悪いなみんな。付き合ってくれ。
奴隷から解放された安堵と疲労があったのだろう。シルクもルキも毛布にくるまって2人が寄り添いあって寝ている。寝顔が可愛いな。もし家族に会えたら、故郷が残ってるかはわからないが…その時は家族のもとに帰らせてやろう。
夜というのもあり10キロくらい移動したら止めて寝る。獣人3人は穏やかに睡眠をとっているが高橋、山田、俺は馬鹿みてえにいびきをかいて寝る。しかもせめえよ。でっけえ馬車だけど荷物乗せてるから俺藁の上で寝てんだよ。我慢しよっと。
翌朝、高橋と山田は爆睡している。まぁ夜見張り続けてたからな。馬車を止め、シルクとルキを起こして飯を用意しながら提案する。
「な、なんですか…?」
「ああ。シルクとルキの故郷を探したいと思ってる。北部出身だろ?住んでた場所とかわかるか?」
「わ、わからないよ。北部って昔大変なことがあってさ、村なんていっぱいあるし、地図見てもわからないくらいなんだよ。俺が住んでた所はいきなり山賊に襲われてさ、必死に父さん達と逃げてたんだけど、離れ離れになって‥」
「すまない、嫌なことを思い出させたな。」
「う、うん‥大丈夫だよ。」
辛いことを思い出してしまい涙を流すシルクの頭を撫でる。
「どれだけ時間がかかるかわからないが、必ず見つけるからな。」
「うん…。ありがとう。」
「私も手伝います。同じ種族として、見捨てられません。」
起きてこっそり聞き耳を立てていたハナが馬車からでてくる。2人は子供というのもあり、同族故にハナは心配していたのだ。
「いいのか?」
「ええ、私の故郷は滅ぼされましたが、2人には希望はあります。シルク、ルキ、私も手伝うわ。」
「あ、ありがとう!」
「よかったな。それじゃ美味い飯作ろうぜ。ハナ、水汲み頼むわ。ルキはゆっくり休んでてな。シルクは火をつけててくれ。俺が食材を切るから。」
「はい!」
さて、国家建設と同じく2人の故郷も探さないとな。スープを作り、パンを切り皿に盛り、高橋と山田を叩き起こして朝食を取り、片付けて出発する。




